声優・アーティストの岡咲美保が、9月2日に3rdミニアルバム『MY ÉTOILE』をリリース。神前 暁が作編曲を手掛け、歌に加え自ら紡いだ歌詞でもファンへの感謝やこれからへの想いを込めたリード曲「フローリア」をはじめ、粒揃いの新曲5曲を収録。間もなく迎えるアーティストデビュー5周年までの音楽活動の充実ぶりをうかがわせる作品に仕上がった。
本稿では、そんな同作のリリースを前に岡咲へのインタビューを敢行。各楽曲や本作全体に込めた狙い、そして6年目以降へ向けた今の想いについて、たっぷり語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 須永兼次
――前作『MY GLEAM』のリリース後、今年5月には自身初となるライブツアーを開催されました。
岡咲美保 まずは「なんとかなったぁ」という安心感がありまして……(笑)。
――確かに。セットリストを見ましたが、8曲も入れ替わっていましたし。
岡咲 そうなんです。大阪公演の4日後が東京公演というツアーだったので、両日参加してくださる方にも楽しんでいただきたくて、結構曲を入れ替えまして。そういう短いスパンだったからこそ、自分が一番心配だったのは体力面だったんです。私、いつも無理をしていることに気づかずにはしゃいでしまうといいますか……終演後に「あれ?だんだん横隔膜が痛くなってきたぞ?」みたいなことに気づくようなタイプなんですね(笑)
――アドレナリンが出ていて、落ち着くまで気づかないというか。
岡咲 なのでそういう自分の暴走が心配ではあったんですけど、2公演とも無事楽しい時間にすることができて、良かったです。
――東京公演では、みほちゃんず(※岡咲のファンネーム)の皆さんの近くで歌うこともできたんですよね?
岡咲 そうなんです!客席の後方にサブステージを作って、かなり距離の近いところで360度囲まれたなか歌って、曲間に客降りをしてメインステージに向かう……みたいな演出もあって、みんなのパワーをすごく近くでもらうことができました。それに大阪公演もあったことで届けられる人の数も増えましたし、“ハッピーラッキージェット!!”というタイトルを引っ提げて、同じ伝えたいことを込めたライブを二度開催できたことで、思い出も濃くなったように思います。
――そして今回、3rdミニアルバム『MY ÉTOILE』がリリースとなります。「ÉTOILE」には「星」のような意味があるので、「煌めき」という意味をもつ前作『MY GLEAM』の「GLEAM」から、目指すものが具体化されたのかなとも思ったのですが。
岡咲 私としては、「進化した」というよりも「どちらも大事だな」という感覚です。『MY GLEAM』には、影めいた日や上手くできなかった日があるからこそできた時の喜びもひとしお……みたいな、そういう日々の自分あっての煌めきを乗せていたんですね。でも『MY ÉTOILE』では「ここぞ!」という時や、日常の中でも目指す場所を見えるところに置いたからこそ進んでいける強さ、みたいなものを描きたかったんです。だから、言いたいことに似ている部分はあるんですけど……。
――違ったアングルから描いている。
岡咲 はい。それにきっと「星を目指して頑張るぞ!」だけだとしんどくて、パキッと折れてしまうかもしれないじゃないですか?でも『MY GLEAM』みたいにくすぶるような想いも知っているからこそ、強くなれる部分もあるはずだから、どちらも大事にしていきたい想いなんです。
――その想いを踏まえたうえで、全体としての構成も決まっていった?
岡咲 そうですね。5周年を迎えられたことへの感謝の気持ちは大事にしつつ、やっぱり挑戦することもやめたくないので……「今までも、これからも」といいますか。今回は初めて楽曲提供をお願いするような方とも、今までお世話になってきた方々ともご一緒させていただいていまして。私の歌唱表現と作家さんとの化学反応を通じて、その「今までも、これからも」みたいなところをみせていきたい……という方向性が最初に決まりました。
――ここまでの歩みも大事にしつつ、未来も感じさせるような。
岡咲 ただ、やっぱりリード曲では「感謝」をお伝えしたかったので、その気持ちは歌詞も含めて「フローリア」に込めまして。他の4曲は今までのように「こういう曲を歌ってみたい」という想いから作っていきました。
――ちなみにこの『MY ÉTOILE』というタイトルは、どのように決まったんですか?
岡咲 これは全曲のレコーディングが終わってから、改めて全体を象徴する言葉を考えてつけたもので。やっぱりリード曲である「フローリア」の意思みたいなものから持っていきたかったんです。なので、同じフランス語で「未来の自分」みたいなものに想いを馳せながら力強く歩む……みたいな姿を象徴する言葉を探して、“憧れ”という意味も持っている「ÉTOILE」に決めました。
――では、まずはそのリード曲「フローリア」から、楽曲についての話をお聞きします。先ほど「感謝」をテーマにされたというお話がありましたが、そういった楽曲の作編曲を神前 暁さんにオファーされたのは、なぜでしたか?
岡咲 まず、私もレコード会社のプロデューサーさんも世代的に神前さんの曲が好きで、普通に憧れていたというのがあり……(笑)。でももちろんそれだけじゃなくて、例えば「M@STERPIECE」(※劇場版『THE IDOLM@STER MOVIE 輝きの向こう側へ!』主題歌)のような「歩みや集大成を描かれる神前さんの楽曲ってすごく素敵だよね」という話になったので、「5周年という節目にぜひ」とお願いしたら受けていただけて……すごく嬉しかったです。
――ということは、その「集大成」という要素も、制作のなかで大事な要素のひとつに?
岡咲 はい。今まで頑張ってきた“等身大の歩み”みたいなものを感じてもらえるように。そしてそれを「これからも続いていく」ということを前提として、みんなで喜び合えるような曲にしたい……というお願いをさせていただきました。
――実際に、まさに「これからも一緒に」というイメージが強く湧く曲だと思います。
岡咲 すごいですよね。いろんな楽器の音や音階を通じて、それを伝えられるのって。私も作詞の時に何度もオケを聴きながら、メロディのもつメッセージ性の強さを感じていました。ただその作詞なんですけど、私が担当すること自体は結構前から決まってはいたものの、私は「歌詞はツアーが終わってから書きたい」と思っていました。
――それはなぜですか?
岡咲 みほちゃんずのみんなの喜んでいる顔や、私の音楽を聴いている時の姿の記憶が鮮明な時に書きたくて。あと、日常の自分とは違う「ライブの時の自分」の心持ちも本番でしかわからないものなので、それも味わってから書きたかったというところもありました。
――では、ツアーでそれを感じられてから、作詞のうえではどんな想いを軸にされたんですか?
岡咲 ツアーが終わって日常に戻った時、この曲を聴く機会が圧倒的に、ライブみたいな日よりもライブ以外の“日常”が多いことに気づいて。そこには温度差もありますし、やっぱり日常となるとその日ごとの出来事に左右されてしまうな、とも思ったんです。なので、「いかに気軽に『ここに行くんだ!』という自分をもってきて、『もう1人の、辿り着きたい私』と握手できるか?」の理想を、歌詞を通じて語りたいなと考えました。
――なるほど。だからこそ“ビルの隙間に流れる雲”のような日常的な景色も盛り込まれていて。
岡咲 そうですね。この曲は仕事終わりとかの帰り道で「今日、こういう日だったなぁ」みたいに思いながら、フラットな自分に座標を戻したい時に聴いてもらえたら嬉しいです。もし「この曲を聴きながら頑張ってます」とか言われたら、すっごく嬉しくなっちゃいます!そういうふうに、みんなにとっても私にとっても今の自分に戻りつつ、ちゃんと未来を信じられるような塩梅を意識しながら歌詞を書いていったので。……あとこの曲、実は最初は落ちサビの転調がなかったんですよ!
――そうだったんですか!?
岡咲 “抱きしめて歩くよ”のあと“フローリア 駆け出してゆく”から大サビが始まって、そのまま終わっていたんです。でも神前さんが私の歌詞を「良い歌詞だ!」と喜んでくださって、「僕がそれを、メロディでも支えたい」ともおっしゃってくれて……その追加のパートが上がってきました。しかも1日も経たないうちに!
――ただメロディが増えたということは、歌詞を加筆する必要も出たわけで。
岡咲 そうなんです。もう出がらしみたいな状態の脳みそを、さらに絞ることになり……(笑)。でもそれって、神前さんにも言えることじゃないですか?なのに神前さんはご自分から、作品にさらに手を加えてくださった。そういう創作者としてのすごくかっこいい“どこまでも追求する姿”を見て、私も気合いが入りました。
――その追加パートを受けて、歌詞はどのように加筆されたんでしょう?
岡咲 大サビだった部分は元々すごくお気に入りだったので、落ちサビにもっていって大サビへのきっかけみたいな形にしまして。転調直前の「テン!」という音から駆け出していくような心象風景が見えたので、“走るよ”という言葉から大サビに繋げるようにしました。その大サビもただ前のサビを繰り返すのではなく、2サビで“夢も涙も追い越した『場所』で会いたい”と抽象的に言っているところを大サビでは“『僕』で会いたい”にして、「今の僕で、未来の君に辿り着きたい」という意味合いにして。おかげで、より詞の世界や音楽を通じて伝えたいことが明確になったように思います。
――しかも「さらに先へ進んでいく」姿も、よりはっきりと感じられますよね。
岡咲 そうなんです。思い描くだけじゃなくて、実際一歩踏み出して終わる、みたいな説得力が生まれていたらなぁって。
――そうやって歌詞を書かれて臨まれたこの曲、レコーディングで歌ってみていかがでしたか?
岡咲 この曲も難しかったです。私は自分が声優だからなのか、どちらかというと主人公が自分じゃなかったりと、イメージをしながら曲を料理していくほうが得意なんです。でも「フローリア」って真っ直ぐな曲なうえに、自分自身が作詞をしているから……逆に私が素材そのものじゃないですか?(笑)
――確かに(笑)。
岡咲 だからレコーディング前には、「フラットに歌いたいけど、どうしよう?」という悩みもありました。でもいざレコーディングが始まって、メロディに乗せて歌い重ねていくと、「あ、この声の温度感が、この曲の私の心象風景に一番合っているな」みたいなものがスッと決まって。私のレコーディングでは毎回絶対にどんなテイクも聴き返させてもらっているんですけど、この曲でもそれを丁寧にやりながら、今の私の真っ直ぐな歌声を出せたように思っています。……あと歌声で言うと、神前さん、「私の声が好き」って言ってくださったんです!(笑)。
――歌詞に加えて、歌声も褒めていただけた。
岡咲 はい。レコーディングには神前さんはお忙しくていらっしゃれなかったのですが、その後のトラックダウンの作業に私も参加させていただいて、そこで色々お話しできました。「フローリア」を作るにあたって私の過去作をとても聴いてくださっていたみたいで、「すごく好きな歌い方と声です」と!ずっとアニメやアニソンの業界を第一線で走られている神前さんにそういう言葉をいただけたというのも、なんだかこの5周年のご褒美みたいな気がします。
――そしてこの曲は、MVもすでに公開されています。こちらはどんなテーマのものに?
岡咲 この曲の歌詞では“僕”が今の自分を、“君”が未来の自分を指しているんですけど、その2人が見つめ合うみたいな……という作詞の時の心象風景を監督にお伝えして、制作していきました。ただ、私がそういうふうに想いの丈だけをお伝えしたにもかかわらず、少し霞がかったようなキラキラした世界で未来の私が振り向くシーンを作ってくださったりと、すごくエモーショナルに表現してくださったんです。
――自分の意図を的確に解釈して、具現化してもらえた。
岡咲 そうです!それと、メイクさんや衣装さんにも同じような話をしたら、髪や衣装の長さを変化させて“2人”を表現してくれて……自分が生み出したやりたいことを、たくさんのプロフェッショナルの方に形にしてもらえる贅沢さを噛み締めながら、MV撮影に臨みました。
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