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2026.07.31

坂本真綾×FGOの主題歌すべてを集めたベストアルバム『余韻』をFGOの歴史と共に振り返る!

坂本真綾×FGOの主題歌すべてを集めたベストアルバム『余韻』をFGOの歴史と共に振り返る!

『Fate/Grand Order』(以下、『FGO』)が、TYPE-MOONのシナリオライター・奈須きのこを中心に描かれる人理と神秘を巡る壮大な神話だとするならば、坂本真綾はその神話を象るうえで欠かせないミューズと言えるだろう。彼女の音楽は、奈須きのこおよび『FGO』という作品に多大な影響を与えている。そもそも奈須が『FGO』のローンチに向けて全体プロットを作成している際に、坂本の楽曲「スクラップ~別れの詩」(2003年)をよく聴いていたことが主題歌のオファーに繋がったと、両者の対談にて語られている

通常の“作品と主題歌アーティスト”の関係性に留まらず、より深い核の部分で共振し合っているのが、『FGO』と坂本真綾の音楽である。2015年夏にスマートフォン向けRPG『Fate/Grand Order』がスタートしてから、2025年12月に盛大なフィナーレを迎えた「第2部 終章」までの約11年。その間に坂本が作詞と歌唱を担当した『FGO』関連の主題歌をまとめたベストアルバム『余韻』には、両者が紡いできた軌跡のすべてが詰まっている。互いに惹かれ合い、高め合うことで生まれた人理の極みと言うべき音楽に、全曲レビューで迫る。

TEXT BY 北野 創

<Disc1>
■01. 色彩
『FGO』と坂本真綾の音楽の初邂逅となった、スマートフォン向けRPG『Fate/Grand Order』の起点にして原点となる主題歌。どこか悲愴感や歪みを感じさせるピアノのイントロ、そのトーンに共鳴するように重く深い感情を滲ませた歌声には、孤独の色が浮かぶ。だが、そこにストリングスやバンドサウンドが徐々に重なっていき、強い意志と希望に満ちた声を合図に解放感あるサビへ。モノトーンの世界から一転、色彩に溢れた景色が広がっていくカタルシスは、同時に『FGO』の主人公(ゲームのプレイヤー)と運命を共にするパートナー、マシュ・キリエライトが第1部の物語の中で抱いていく感情と重なるもので、“私に色彩をくれた人(=主人公)”と今この瞬間を全力で生きる決意とシンクロする。奈須は本楽曲に背中を押されて第1部のラストシーンを書き切ったと公言しており、結末を知ったうえでこの曲を耳にすると、それまでとは違った感慨を覚えるはずだ。
楽曲提供および演奏は、元School Food Punishmentの内村友美(Vo.)とプロデューサーの江口 亮を中心に結成されたバンド・la la larks。ある種の激情を伴うアンサンブルは、School Food Punishmentと江口が作編曲を担った坂本の楽曲「Buddy」(2011年)に連なる雰囲気もあるが、全体に漂う重厚かつダークな色彩は、坂本のそれまでのディスコグラフィーの中でも特異点にあたるもので、アーティストとしての新たな指針を得ると共に今や代表曲の1つとして愛されている。なお、la la larksは1stアルバム『Culture Vulture』(2017年)で本楽曲をセルフカバーしており、坂本もコーラスで参加している。

■02. 逆光
鋭くも荘重に響くストリングスによる幕開けが、これから始まる新たな旅の苛烈さを予感させる、スマートフォン向けRPG『Fate/Grand Order』第2部の主題歌。“憂鬱だった”“ここには出口がない”という歌い出しで始まる歌詞の閉塞感、その絶望を乗り越えて自らの運命を切り拓かんと展開していく楽曲の勇壮さは、人類史を取り戻すために漂白された地球で孤立無援の戦いを繰り広げる主人公たちカルデア一行の想いに重なるもの……と思われていたが、本楽曲の発表から約7年を経た2025年12月、「第2部 終章」のストーリーにて、『FGO』のキーパーソンの1人である、とある登場人物の境遇や心情をそのまま表したものだと発覚した時の衝撃は凄まじいものだった。そこに込められたあまりにも悲痛なメッセージ、それまで感じていたすべての意味が反転するような答え合わせに、眩暈や無力感を覚えた人もきっと多かったことだろう。しかし、『FGO』の物語が我々に届けてくれるのは、それがたとえどんなに絶望的な状況だったとしても、自分の信じる未来を掴み取るために諦めず前に進むことの尊さ、運命に抗って必死に生きる人間の美しさである。坂本が楽曲タイトルに「逆光」という言葉を選び、“絶望のほとり”にいながら“逆光浴びて 泥だらけになれ 私はここにいる”と気高く歌う姿に、やはりこの楽曲は人間賛歌の歌であると感じずにはいられない。「色彩」で獲得した新たなアーティストカラーを、東京事変やthe HIATUSのキーボーディストとしても知られる伊澤一葉との初タッグで深化させ、より『FGO』の核心に踏み込んだ、強い逆光が生む暗い影とのコントラストが鮮烈な楽曲だ。

■03. 空白
スマホアプリ版とは異なる世界線を舞台にした、2018年7月から2026年3月まで稼働していたアーケードゲーム『Fate/Grand Order Arcade』の主題歌。作曲と編曲・演奏は「色彩」に続いてla la larksが担当しており、不穏な立ち上がりから打ち込みを交えたポストロック的なアンサンブルと優美な弦カルテットが絡み合って陰影に富んだドラマを浮かび上がらせていく構成はそれまでの『FGO』×坂本真綾楽曲の流れを汲むものだが、締め括りの一節“結末は塗り替えられる いつでも”という言葉が示すように、“私の中の空白”と表された喪失感をも悲しみのまま終わらせることなく生きていく決意と覚悟が、より明解に表現されている印象だ。特にブリッジの壮麗なストリングスが助走となって一気にギアを上げていく終盤の高まり、分厚いサウンドと華やかな歌声が一体となって押し寄せてくる高揚感は、他の楽曲では得難いものとなっている。内村友美も参加したゴスペルのクワイアのような祝祭感に満ちたコーラスと、今や“結束バンドの中の人(演奏メンバー)”としても知られる三井律郎の爆発的なギタープレイが重なるアウトロは、どんな苦境に置かれても一縷の望みを繋いで未来を塗り替える『FGO』の精神性を象徴するものであり、この楽曲は日常を生きるすべての人の背中を押すエネルギーとなり得るものだ。

■04. 躍動
2017年12月から約8年の期間をかけて展開されたスマートフォン向けRPG『Fate/Grand Order』第2部の後期主題歌として、第2部第6章の開幕に合わせて発表された楽曲。「色彩」や「逆光」と同様に劇中で活躍する1人のキャラクターを明確に意識して制作されており、ネタバレになるため詳細の説明は控えるが、第6章のストーリーを結末までプレイすることで、その対象がはっきりとわかるようになっている。坂本とは本楽曲で初顔合わせとなったロックバンドのユアネス(現YOURNESS)が楽曲を提供・演奏しており(作曲は同バンドのギタリスト・古閑翔平が担当)、全体的に疾走感と躍動感に溢れたバンドサウンド+ストリングスで貫かれており、矢のように真っ直ぐ突き進んでいくような爽快さは、過酷な運命に翻弄されながらも振り返ることなくひたむきに走り続ける『FGO』の主人公の立場にも重ねられるもの。“手に入れるのが勝利なら 手放すのは敗北でしょうか”などの示唆に富んだフレーズの数々を含め、この時点で第2章の結末までを知らされていた坂本だからこそ描き出すことのできた、『FGO』という遠大な作品の一側面を切り取った楽曲と言えそうだ。

■05. 独白
スマートフォン向けRPG『Fate/Grand Order』第1部のストーリーの中でも人気の高い第6章を、主要な登場人物の1人・ベディヴィエールの視点から描いたアニメ映画『劇場版Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- 前編 Wandering; Agateram』の主題歌。奈須きのこは原作となる第6章のシナリオを執筆する際に、坂本の楽曲「レプリカ」(2014年)からインスピレーションを得たという経緯から、坂本は同楽曲を手掛けたandropの内澤崇仁に楽曲制作を依頼。悲しみを湛えながら静かに漂うようなバラード調の幕開けから、鋭角的なバンドサウンドとストリングスを伴いながら激しくエモーショナルに色づいていき、それぞれの要素がぶつかり合いながら展開する組曲的な作りになっており、歌詞も絶望的な状況のままエンディングを迎える前編の物語に寄り添うべく、ベディヴィエールの抱く失意や“誰にも届かない独白”がそのまま投影されている。とはいえ、ただ悲嘆に暮れるのではなく、それでもわずかな望みを信じて叫ぶ力強さ、心の深奥で燃え尽きることなく燻ぶっている熱が感じられるところは、やはり『FGO』の楽曲ならではのアプローチと言えるだろう。

■06. 時計
壮大にして苛烈な物語に寄り添うように、ここまで重厚にして圧倒的な熱量を放つ楽曲が並んでいた歴代『FGO』主題歌だが、2025年12月28日、スマートフォン向けRPG『Fate/Grand Order』第2部終章のフィナーレに合わせて配信リリースされた本楽曲は、まばゆい光に満ち溢れていた。坂本自身が「最後は私自身が作曲まで担当したい」と希望したのは、10年以上を共に歩んできた『FGO』への親愛と感謝がゆえだろう。「色彩」「逆光」を手掛けた江口 亮を編曲に迎え、あらゆる闇と重力から解き放たれたような明るく軽やかなサウンドに乗せて届けられるのは、善悪の彼岸で選択を強いられ続けてきたこれまでの旅路をすべて受け入れ、赦し、優しく包み込む、大団円の歌だ。終盤に置かれた“見えない盾になるの”というフレーズは、作中で唯一無二の存在であるシールダー(盾)のサーヴァント、マシュのことを思い浮かべずにはいられないし、モノトーンで始まった「色彩」や心に抱えた「空白」を経たうえで、“こうして僕らの冒険は終わる 真白に広がる 次のページへ”と結ばれる歌詞は、この先どんな色にも染まることのできる純粋な“白”という存在の可能性を改めて教えてくれる。時計の針が再び動き始める時、その向こう側には新しい景色が待っているはずだ。

<Disc2>
■01. 色彩 ~unplugged session~
2018年7月リリースのシングル「逆光」のカップリングに収められた、「色彩」のアンプラグドバージョン。2017年に全国7都市で開催された坂本真綾のファンクラブイベント“IDS! EVENT 2017 TODAY’S SPECIAL”にて同楽曲をアコースティック編成で披露したところ、手応えを感じ、改めてスタジオレコーディングを行ったという。同ツアーに参加した扇谷研人(ピアノ)、石成正人(アコースティックギター)、松本智也(パーカッション)に加えて、渡辺 等(ウッドベース)が演奏に参加。前半の静謐かつエレガントな合奏から、パーカッションの力強いリズムと共にパッションが満ち満ちていく後半の展開、より濃厚になったニュアンスや息遣いまで伝わる生々しいボーカルは、アンプラグドならではの魅力に溢れている。

■02. 逆光 ~unplugged session~
2020年12月リリースのシングル「独白↔︎躍動」の【FGO盤】のみに収録された、「逆光」のアンプラグドバージョン。同年11月に開催された“坂本真綾 IDS! presents Acoustic Live & Talk 2020”のセットリストにも組み込まれていたもので、演奏メンバーも同ツアーと同じ扇谷研人(ピアノ)、藤谷一郎(ウッドベース)、外園一馬(アコースティックギター)、福長雅夫(パーカッション)の4名。アコースティック編成の場合、原曲よりも穏やかなアレンジになるイメージが強いが、「色彩」と同様に楽曲が進行するにつれて熱量を増していく演奏がスタイリッシュながらも荒々しい印象を与え、坂本もファルセットを交えながら力強く優雅に歌い上げている。

■03. 躍動 ~unplugged session~
今回のベストアルバムのために新録された「躍動」のアンプラグドバージョン。「色彩」と「逆光」はミニマムなアコースティック編成でまとめられていたが、本楽曲ではドラムスやストリングスが加わってよりダイナミックなアレンジが実現。歯切れ良く打ち鳴らされるスネアドラムの乾いた音色やアグレッシブに蠢くウッドベース、リッチなストリングスが臨場感たっぷりに絡み合いながら駆け抜けていく様は、まさに躍動的。原曲にはなかった憂いを帯びたピアノのイントロパートも印象深く、坂本のコーラスパートが重ね録りされていることを含め、今までのライブ感溢れるアンプラグドのアプローチとはまた違う、作り込まれた音源になっている。

■04. 透明 ~self cover~
坂本が歌詞を提供し、ベディヴィエール役の声優・宮野真守がアーティストとして歌唱を担当したアニメ映画『劇場版 Fate/Grand Order -神聖円卓領域キャメロット- 後編 Paladin; Agateram』の主題歌をセルフカバー。宮野による原曲は生楽器とエレクトロニックな要素を融合させることでファンタジックな高揚感を演出していたが、坂本版は全体的に宮野版の雰囲気を踏襲しつつ、より生楽器のテイストを前面に押し出した地に足の着いたアレンジに。悲しみを湛えた「独白」とは違って坂本の歌声からは喜びと慈愛がこぼれるかのようで、クライマックスで星屑のように降り注ぐハーモニーの透明感を含め、“なりたかった私”を見つけたベディヴィエールを祝福するような1曲に。


●リリース情報
坂本真綾
『Fate/Grand Order』主題歌ベストアルバム 余韻
7月29日発売

【初回限定盤(2CD+BD)】

品番:VTZL-273
価格:¥4,950(税込)

【通常盤(2CD)】

品番:VTCL-60703~60704
価格:¥2,750(税込)

<Disc1>
01. 色彩 (スマートフォン向けRPG『Fate/Grand Order』主題歌)
02. 逆光 (スマートフォン向けRPG『Fate/Grand Order』第2部主題歌)
03. 空白 (『Fate/Grand Order Arcade』主題歌)
04. 躍動 (スマートフォン向けRPG『Fate/Grand Order』第2部後期主題歌)
05. 独白 (『劇場版Fate/Grand Order-神聖円卓領域キャメロット-前編 Wandering; Agateram』主題歌)
06. 時計 (スマートフォン向けRPG『Fate/Grand Order』最終章主題歌)

<Disc2>
01. 色彩 ~unplugged session~
02. 逆光 ~unplugged session~
03. 躍動 ~unplugged session~(新録)
04. 透明 ~self cover~ (新録/提供曲セルフカヴァー)

<Blu-ray>
2021年に東京オペラシティで行われた無観客配信ライブ「Fate/Grand Order 6th Anniversary Special Live~Maaya Sakamoto Unplugged~」
1. 独白
2. 逆光
3. 躍動

関連リンク

坂本真綾 オフィシャルサイト「I.D.」
http://www.jvcmusic.co.jp/maaya/

Fate/Grand Order 公式サイト
https://www.fate-go.jp/

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