前作のシングル「チョコレート・メモリアル」で昭和歌謡へのリスペクトに満ちたスタイルに挑戦した小倉 唯の次なる一手は、クール&ハードな大人モード!現在放送中のTVアニメ『ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。 ~魔導書の力で祖国を叩き潰します~』のOPテーマとなるニューシングル「Q.E.D.」は、祖国への復讐心に燃える主人公・エリーのキャラクター性に寄り添って生まれた、刺激的なエレクトロニックサウンドに満ちたダンサブルなナンバー。作品との出会いがもたらした、アーティストとしての新境地を切り拓く1曲となっている。それとは対照的な王道路線となるカップリング曲「泡沫マーメイド」は、今夏に開催されるFCツアーのイメージソング。この2曲を持って2026年の夏を駆け抜ける小倉 唯の最新モードに迫る!
INTERVIEW & TEXT BY 北野 創
――新曲「Q.E.D.」はTVアニメ『ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。 ~魔導書の力で祖国を叩き潰します~』(以下『ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。』)のOPテーマ。楽曲制作にあたり、作品のどのような要素を意識しましたか?
小倉 唯 今回の楽曲はオープニングテーマということもあり、まずは作品の顔としての役割を意識しました。主人公であるエリー(エリザベート・レイストン/エリー・レイス)は、冷静沈着でありながら、その内側には必ず報復を果たすという強い信念を秘めています。時には狂気じみた雰囲気さえ感じさせる彼女の二面性や複雑な心情、そして作品全体がもつ独特の世界観をどのように音楽で表現するか、という点を突き詰めて制作を進めていきました。
――その独特の世界観を楽曲で表現するにあたり、サウンドの方向性や楽曲のテイストとしてはどのように表現しようと考えたのでしょうか。
小倉 物語の核が「復讐劇」ということもあり、曲調がめくるめく変化していく展開や、エキセントリックな空気感、そしてダークビートを意識しました。また、エリーは頭の切れるキャラクターなので、彼女が論理的に物事を進めていく際のスピーディーさや、機敏に立ち回る切れ者感も音の中に反映させています。
――作曲はディアステージ所属のアイドルグループ・ChumTotoなどの楽曲も手掛ける新進気鋭のクリエイター・ずまでスコトさん、編曲はORESAMAでの活動でも知られるHIDEYA KOJIMAさんが担当。お2人とも小倉さんとは初顔合わせで、クールかつトリッキーで刺激的なエレクトロニックチューンに仕上がっています。
小倉 元々ライブではダンスチューンがファンの方々からの人気が高いのですが、意外とこれまでのシングル表題曲では、がっつりと踊るようなダンスナンバーがあまりなくて、以前から「シングル表題曲でMVも含めてしっかりダンスを披露できたらいいな」というフワッとした願望を抱いていたんです。今回はまさにその念願が叶ったので、個人的にもやりがいを感じました。
――「Q.E.D.」の作詞には小倉さんご自身も参加されています(ずまでスコトとの共作)。数学の証明終了を意味する「Q.E.D.」というタイトルを含め、歌詞の世界観はどのように組み立てていきましたか?
小倉 全体としてはエリザベートの「報復劇」をイメージしています。タイトルの「Q.E.D.」に関しては、彼女の復讐が単なる感情任せのものではなく、冷静かつ合理的に相手を追い詰めていく思考から発想しました。その隙のなさや理詰めで進めていく様は、ある種の数学的な「証明」に近いのかなと思ったんです。すべてを緻密に計算し尽くしたうえで、復讐の一撃を放つ。そんな彼女の人間性を象徴する言葉として、このタイトルを選びました。
――“いま You & Me 至って証明”“ねぇ Q.E.D. だって求めたい”などリズミカルでキャッチーなフレーズをふんだんに盛り込みつつ、強気でメッセージ性の強い歌詞になっている印象を受けました。作品から一歩離れて、小倉さん自身の表現として意識したポイントはありますか?
小倉 もちろん作品のテイストがベースにありますが、私自身のパフォーマンスに落とし込みやすいキーワードも意識的に散りばめました。例えば冒頭の“感情は無い この世界中で”というフレーズは、エリザベートらしさの表現であると同時に、今のどこか世知辛い世の中にも通じる部分があると思いますし、人は強くなる過程で、守るべきものや不要な部分を淘汰していかなければならないことがあると思うんです。望んでいたわけではないけれど、そうしなければ生き残れない。アーティスト活動に限らず、社会の中で生き抜くうえでの厳しさや複雑な心境も、この曲には描かれていると思います。
――祖国に裏切られるも亡命して復讐を誓ったエリザベートのように、生き残るために必要なタフさが投影されているのですね。
小倉 そうですね。ある種、達観していないと生きていけない部分と言いますか、人として強くなるための手段としての「冷静さ」を表現したかったんです。
――そうしたクールでドライな表現は、小倉さんの楽曲としては新鮮な印象を受けます。
小倉 確かにそうかもしれませんね。これはMVを撮影しながら感じたのですが、この曲は「ニコッ」と笑うような曲ではなく、どちらかというと「ニヤリ」と不敵に笑うような雰囲気なんです。そこが、これまでの私のダンスナンバーとはまた違う、新しい空気感に繋がったのかなと思います。なおかつ、この曲では「いかに余裕を感じさせられるか」が重要だと思っていて。エリザベートは復讐するといっても、力技で押し通すようなタイプではないので、私もこの曲をパフォーマンスする時は、相手を自分の手のひらで転がすような余裕感を大切にできればと思っています。
――楽曲自体の展開が複雑なので歌唱の難易度も高いと思うのですが、そのなかで余裕を表現するためにこだわったポイントはありますか?
小倉 レコーディングの際は、少し達観した視点をもちつつ、どこか小悪魔的な余裕を感じさせるニュアンスを意識して歌いました。2番からはラップパートが入ってきたり、ボーカロイドっぽい声の加工で聴かせるパートもあって、言葉数が多くて滑舌良く歌うこと自体が難しかったですし、そこに感情やニュアンスを乗せて表現するとなると、技術的に難しいところが結構あって。とはいえテイクを重ねるごとに表現がブラッシュアップされていく手応えを感じたので、すごくやりがいのあるレコーディングでした。
――小倉さんのラップ、通称・オグラップもどんどん先鋭化されていて、今回はその最新型という印象でとてもかっこよかったです。小倉さんの中で、特に注目して聴いてほしい歌詞やフレーズはありますか?
小倉 ラスサビにかけて歌詞の内容がどんどん壮大になって、“Sun & Moon みたいに壮麗”や“私のステージ キミの闇 切り裂いて☆”といったワードが出てくるのですが、ここは歌いながら、自分が実際にステージに立っている姿が自然と頭に浮かんできました。大きな会場で堂々と歌い上げているような気持ちで歌ったので、その熱量を感じていただけたら嬉しいです。ただ、このパートは転調もあって難しいので、実際のステージでどれだけ壮麗に表現できるか、今から少しドキドキしています(笑)。
――ビジュアル面についても伺わせてください。アーティスト写真は大人っぽいスタイリングで、先行公開された時点で話題となっていました。どのようなコンセプトで作り上げていったのですか?
小倉 今回もいつものように、私からアイデアをいくつか提案させていただきました。楽曲が攻めた世界観なので、ビジュアルもハードで、今までにないテーマ性にしたいというところからスタートしています。アーティスト写真では、あえて私のパブリックイメージとは結びつかないような、かっこいい乗り物をモチーフにしてギャップを見せようと考えました。大きなバイクのように、自分とは相反する要素をミックスさせるのが今回のテーマです。
――衣装やメイクも、どこかギャルみのある攻めたスタイルですね。
小倉 そうなんです。全体を通してギャルっぽさやY2Kといったトレンドを取り入れつつ、トータルとしてお洒落な雰囲気に着地できるよう意識しました。
――MVではそれ以外にも様々なスタイリングの小倉さんが登場します。撮影現場でのエピソードを教えてください。
小倉 まず、アーティスト写真や【初回限定盤Q】のジャケットでも着用している蛍光色の衣装は、実物で見ると本当に眩しくて(笑)。撮影は早朝からのスタートだったのですが、あの衣装に着替えた瞬間に目がチカチカして、一気に目が覚めるなと思いました。この衣装のシーンでは大人っぽいビジュアルを意識して、MVでもドキッとするような鋭い視線や表情をたくさん切り取っていただいています。
【通常盤D】のスウェット風の衣装は、結構新鮮なスタイルになったんじゃないかなと思います。この衣装ではダンスパートの撮影もあったのですが、ラフさもありつつちゃんとお洒落さも兼ね備えていて、これまでの私にはなかったテイストだったので、個人的にもすごくお気に入りの衣裳です。
【通常盤E】で着ているヒョウ柄の入った衣装は、新しく作っていただいたもので、平成ギャルみのあるかわいらしい作りになっています。ハードな世界観の中にも、しっかりと「かわいい」要素を詰め込んでいただきました。それとMVにしか登場しない「令嬢風」の衣装もありまして、こちらは作品(『ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。』)の内容になぞらえたスタイルで、ヘアメイクも含めてとても気に入っています。
――MVの映像も、花火が上がったり、巨大化した小倉さんが夜の街を闊歩したりと、ド派手で見応えがありますね。
小倉 監督の荒船(泰廣)さんとは、約10年ぶりにご一緒しました。たしか「エンジョイ!」(2017年)のスマホビューMV以来だと思うのですが、その間に色んな話題のMVを手掛けて大先生になられてしまって(笑)。そんな経緯もあってか、監督もすごく力を入れて制作してくださったみたいで、壮大でインパクトのある映像に仕上がりました。私もすごく手応えを感じているので、ぜひ色んな方に見ていただきたいです。
――また、TVアニメ『ブチ切れ令嬢は報復を誓いました。』では、ルノア・カールトン役の声優としても出演されています。役どころや作品の見どころについてお聞かせください。
小倉 ルノアはエリーが経営する商会で働く、幼いながらも聡明な女の子です。エリーの背中を見て、色んなことを吸収しながら成長していくのですが、賢さだけでなく、年相応の無邪気な表情や心の揺れ動きももっているので、その両面の魅力をしっかりと引き出せるように意識して演じさせていただきました。
――アフレコ現場での印象的な出来事はありますか?
小倉 朝の時間帯の収録だったのですが、とにかくエリーのセリフ量が膨大なんです。それをエリー役のさおりん(大西沙織)が、流石のスキルでほぼリテイクなしで進めていくので、毎回スムーズに進行する現場でした。毎回、収録があっという間に感じるほどでした。
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