INTERVIEW
2026.07.16
キャリア20年を超える現在もなおアニソン/ゲームソングシーンの先頭を走り続けるシンガー・KOTOKO。1年にわたってコンセプトで挑んだツアーを5月に終えたばかりの彼女が、この夏に新曲とアルバムの2作を連続でリリース。それが、昨今タッグを組んで注目曲を量産し続けてきたAiobahnとの楽曲「SAY-BYE!!」(TVアニメ『うしろの正面カムイさん』EDテーマ)、そして大ヒットコンピレーションの第2弾となるゲームソングベスト盤『KOTOKO’s GAME SONG COMPLETE ALBUM “The Bible 2”』だ。この強力な2作について、今回はKOTOKOのアニソンの新機軸、そして彼女のキャリアで欠かすことのできないゲームソング、というそれぞれの視点で語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 澄川龍一
――まずは昨年7月から行われた“KOTOKO LIVE TOUR 喜怒哀楽”が今年の5月で完結しました。自身の楽曲を喜怒哀楽のカテゴリーに分けて、1年かけて4つのツアーを行うというチャレンジングなサーキットとなりましたが、改めてこのツアーを振り返っていかがでしたか?
KOTOKO “喜怒哀楽”ツアーは本当にありがたい話で、たくさんの楽曲を持っている私だからこそできるコンセプトなんじゃないかなということで、ずっと温めていた企画だったんですね。ただ、いざやるとなった時に「本当にそれで成り立つんだろうか?」みたいな一抹の不安がなかったと言えば嘘になります。“楽しい”とか“嬉しい”のカテゴリーは盛り上がるものが作れると思ったんですが、“怒り”と“哀しみ”だけで括った時にどんな感じになるんだろう?というのは自分自身でも想像つかなくて。
――確かに。感情で括ると曲調が似てくるんじゃないかというイメージがありますよね。
KOTOKO はい。でもセットリストを作る際には曲調でそこまで括る必要はないし、“哀しみ”や“怒り”にも色があっていいんじゃないかなと思って。例えば“哀”にもバリエーションがあって、哀しいからといってバラードだけにする必要もないんだって、自分の中で視界が開けた瞬間があったんです。そうなった途端、一気に“喜怒哀楽”ツアーのセットリストが全部作れて。そこで「このツアーはいけそうだな」という手応えが生まれました。
――なるほど、ツアーが始まる前のセットリストを組む段階で手応えは掴めたと。こうした感情で楽曲を括ることで、これまで聴き馴染んだ楽曲もまた違った聴こえ方をしたのが印象的でした。
KOTOKO そうですね。例えば今回“哀”の中に「覚えてていいよ」を入れたんですよ。これまでのライブで言うと最後の最後の盛り上がりで歌うことの多い曲なので“楽”に入ると想像をしていた人がたくさんいると思うんですが、この楽曲って友達が失恋をして落ち込んでいる時に、上手く元気づけてあげられなかった自分の経験から、じゃあ友達の涙をどうやって乾かしてあげればいいのかなと思って出来た曲だったんです。だからこの曲は私の中では“哀”だったんですね。なので、改めてこの曲はこういう世界観だったんだ、みたいなものをライブに来てくださる皆さんにも感じてもらえたらなというのはすごくありましたね。
――名曲再解釈という点でもすごくチャレンジングな試みでしたよね。
KOTOKO もちろん有名な曲を中心に組んでいった部分はあるんですが、すごく久しぶりに歌ったアルバム曲も入れられましたし、今回だからこそ歌われた楽曲もたくさんあったんです。そういった意味でこの企画ならではのセットリストでお届けできたという実感はすごくあります。
――20年以上のキャリアを重ねても、新しいことはまだまだありそう?
KOTOKO もちろん!でも毎回悩んでいます(笑)。まだネタ残ってるかな?みたいな気持ちはいつもあるし、ツアーが終わった時が一番悩むかも。ツアーが終わった後はいつも「次何しよう?」ってすぐに考えるんですけど、それと同時に「あとは何が残っているかな……?」みたいになるので、ツアーをやり切った後がある意味一番きついかもしれないです。これからも成長する姿を見せていきたいですし、もっとプロフェッショナルになっていきたいなとも思っているので。
――では次のツアー<KOTOKO LIVE TOUR 2026 “The Bible 2”>も期待しています!ではここからは新作のお話しを。まずはTVアニメ『うしろの正面カムイさん』EDテーマの「SAY-BYE!!」です。今回もまた今までにない衝撃的な楽曲となりましたね。
KOTOKO はい!本当に今まで自分の中になかったサウンドですし、Aiobahnさんとのタッグの中にも全然なかった曲調になりました。アニメも、原作からして私が大好きな世界観。原作を読んだ時に「もうこれは私がやらずして誰がやるんだろう?いや、私でしょう!」みたいな(笑)、それくらい自分の中でも相性ばっちりだなと思えた作品だったので、手がけさせていただけたことは本当に光栄でした。
――Aiobahnさんは「INTERNET OVERDOSE」などで近年お馴染みですが、今回彼にお願いすることになったのは事前に決まっていたんでしょうか?
KOTOKO はい、このタッグで行きましょうということがありきでお話をいただきました。そこから「どういう楽曲にしようか」というのは私に一任していただけたので、「こんな感じの曲調がいいな」というのを提案をして、Aiobahnさんに作っていただくという流れでした。
――サウンドのテイストはこれまでのAiobahnさんとの楽曲とは異なるものになっていますよね。そこはKOTOKOさんからの発想だったと。
KOTOKO そうですね。『カムイさん』という作品自体がすごくインパクトの強いものだったので、曲もすごくインパクトの強いものにしたくて。今のTikTokや触りだけ流れているものってインパクト重視と言いますか、数秒の間に引き込まれるような楽曲が好まれる時代じゃないですか。そういう時代に沿った楽曲を作りたいなというところもありつつ、今回のアニメはEDテーマが流れる秒数が通常より短いんです。なのでその短い中でもインパクトのある楽曲を作らなければ流されてしまうなという思いもあったので、しつこいくらいに同じ言葉を繰り返してそれに毒されるみたいなものが良いなと。かわいい電波ソングとは違う方向性で中毒性のあるような楽曲にしたいなっていうのが、まず最初に掲げたコンセプトでした。そこから作品が持つオカルトやエロスをきちんと入れ込んで曲のイメージを作っていった感じですね。
――確かに、今回のアニメで流れるのは約60秒なんですよね。
KOTOKO そう、普通は90秒なんですけどね。それもあって取り組んだのが最初のとっかかりの部分でした。Aiobahnさんに「こんな楽曲が良いです」って6曲くらい参考曲を送ったんですが、その楽曲がかなりロック調だったんですよね。Aiobahnさんにはない世界観でオーダーをしてしまったので最初は戸惑われていたんですが、揉まれて揉まれて出てきたのが今回の楽曲だったので、私たちのタッグで新しいものが出来たなと感じていますね。
――これまでのタッグの電波ソング的なものとはまた違いますよね。冒頭のギターサウンドもそうですが、フレーズが繰り返される辺りもかわいさよりもマッチョ感が漂うというか。レコーディングはいかがでしたか?
KOTOKO 実はかなり細切れに録っていったんです。ここのパーツはこう、このパーツはこうみたいな感じで、例えばBメロのところが難しかったんですけど、少し人間っぽくない感じにしていたりとか。レコーディングは分けて録れたから良いんですけど、この曲をライブでやる時がどうなることやら……コンマ何秒とかでパッとキャラ変をしないといけないので、「ライブで歌う時、どうしよう……?」って(笑)。
――観客と一緒にシンガロングするパートが多いのでライブ向きでもありますよね。
KOTOKO 今回は一緒に「セイセイ」って言ってほしくて書いたようなところはあります。初披露した東京公演では誰も聴いたことがなかったのに、お願いしたらみんなちゃんとやってくれたので、本当にできたファンです(笑)。
――確かに(笑)。最初に話したショート動画で流れそうなインパクト重視というのがどう受け止められるかも楽しみですね。
KOTOKO そうですね。それこそ若い世代の方に刺さってほしいなとは思っていますね。
――そして今回はアルバムのリリースも。ゲームソングコンピレーションの第2弾である『KOTOKO’s GAME SONG COMPLETE ALBUM “The Bible 2”』。大ヒットを記録した前作から6年ぶりとなりますが、早くも続編リリースとなりました。
KOTOKO 「続編はもう少し先かな?」と思っていたのですごく嬉しいです。もうアルバム1枚分くらいゲームソングが集まったんだと思うと、ありがたい気持ちでいっぱいです。
――それほどゲームシーンにおいてタイアップというKOTOKOさんへの需要が高かったこの6年だということですよね。改めて、KOTOKOさんのなかでゲームソングというものはどう捉えていますか?
KOTOKO 私の歌手歴を紐解くにあたって、ゲームソングというものはもう欠かせないものであるので。KOTOKOはゲームソングからデビューをして、そこから自分の名前を知っていただいて、アニソンデビューに至るという、自分を育ててくれたのはゲームソングであると私も思っていますし、リスナーの皆さんもそう捉えてくれていると思うんですよ。今はゲームソングもアニソンもオリジナル楽曲も幅広く皆さんに聴いていただけるようになりましたけど、核の部分はゲームソングにあるなって自分でも考えています。自分を育ててくれた畑なので、どんな状況になってもずっとゲームソングの世界には関わっていきたいですね。最近、2000年代のPCゲームが出てきた時代について、それこそ私がゲームソングに関わり始めた時期のものがまた注目されてきているんですよね。そういった嬉しい流れもあって、私が生かされてきた世界で、令和に入ってまた生かしてもらっているなという感覚です。
――確かに2000年代のI’veサウンドや電波ソングといったゲームソングがまた再評価されていますよね。そこでその元祖にあたるKOTOKOさんにオファーが行くのも時代の流れかなと。
KOTOKO 自分がちょっとした生き証人のようになっているのかな(笑)。”あの時”も知っていて”今”もこうやって関われるというのは、長くやっていたもの冥利に尽きるなと思います。
――本作のバラエティ豊かなサウンドというのがそれを証明していますよね。コンピレーションではありつつ、電波ソングだけではなくI’veサウンドなどのトランス系からバラードまでアルバムとしての構成もしっかりしていますね。
KOTOKO そうなんですよね。最初は電波ソングばかりになるのかなって思ったんですが、自分でも並べてみて「すごい」と思って(笑)。
――それこそ“喜怒哀楽”ツアーの話にも繋がりますが、KOTOKOさんのディスコグラフィにはそれだけバラエティがあって、人によって刺さるポイントが幅広くあるわけですよね。
KOTOKO 自分がやってきた様々なジャンルがこの5~6年に詰まっていたんだなと改めて感じます。
――そのバラエティ感というのは携わられたクリエイターの幅にも繋がっていますよね。
KOTOKO それこそI’ve時代から家族のように作ってきたところから、独立して色んな作家さんともコラボレーションするようになってここまでやってきました。高瀬(一矢)さんたちとのツーカーの関係という、心地良いゆりかごから出て切磋琢磨してきたことで成長できた部分もたくさんありますし、そうした安心のI’veサウンドから「こういうのも良いよね」みたいなものを色々楽しめてもらえるんじゃないかなという手応えはすごくあります。ライブをやっていても、独立当初はI’veサウンドを歌えばすごく盛り上がる空気感がありましたが、最近はそれ以外の曲でも盛り上がるようにもなっているので、ここまで色んな方と組んで色んな楽曲にトライしていったものが、ようやく実を結んできているのかなと思います。
――今作は改めてKOTOKOさんのキャリアも伺えるような構成にもなっていますよね。冒頭から高瀬さんとの「faith~信じる力~」ですし。
KOTOKO 私のアルバムの表紙みたいですよね。そこから様々なクリエイターさんとの楽曲に繋がっていくという。
――それこそ2曲目の「PHANTOM PAIN」(スマートフォン向けRPG「東方LostWord」挿入歌)に続くという新鮮さがまた興味深いですよね。
KOTOKO I’veにいた時代から東方さんはすごく盛り上がっているは認識をしていたので、それが時を経てこうして交われるっていうのも、やっぱり長くやってきたからこそというか。当時は交わることは多分ないだろうなと思っていましたが、今こうして交われたことがすごく嬉しくて。それこそ同じ札幌のIOSYSもI’ve時代は接点がなかったですが、今だからこそ垣根なく色んな方とやれているというのは、私にとっても喜びですし、それがこの1枚に詰まっているんですよね。
――他にもElements Gardenなど、当日から同じシーンで活躍していた人たちとこうして交わることがあるのはすごいことだなと。
KOTOKO そうですね。今も新しいアーティストさんやクリエイターさんがたくさん出てくるなかで、2000年代を牽引してきた身としては嬉しくもあり、「でも負けへんで、頑張ってまっせ!」みたいなところはやっぱりありますよ。
――そうしたスピリットもこのアルバムには詰まっていると。一方で本作を紐解くうえでは「INTERNET OVERDOSE」をはじめとした電波ソングの存在も重要になっていますよね。
KOTOKO はい。さっきも言いましたけど体感的には電波が多いのかなと感じます。ここも自分の芸として続く限りはやっていきたいですね。
――それこそ電波も「INTERNET OVERDOSE」やアルバム『すぅぃ~とさいくろん-☆いぇいっ☆-』を出した辺りから現在にかけて、シーンとしても電波リバイバルが来ていますよね。
KOTOKO 『すぅぃ~とさいくろん-☆いぇいっ☆-』を出した時はもう一度電波を再燃させたいという気持ちがすごくあったので、それがタイミング良く繋がってすごく良い感じで実を結んでいっている感はあります。
――Aiobahnさんとの楽曲や、「電波的妄想美少女Q」「恋姫†集合☆いっせーのっせ!」など、今の時代の電波ソングというものは、2000年代のものと比べてどうアップデイトされていると感じていますか?
KOTOKO ライブでも昔の電波と並べて歌うとBPMから全然違っていて、昔の電波がバラードなんじゃないかと思うくらいBPMが速いですよね(笑)。曲もどんどん速くなっていますし、畳みかけ方がすごいですよね。例えばあるフレーズを歌った後に隙間なくセリフが出てきたりキャラ変があったり、さっきも言った通りライブで歌うのが結構難しいんです。本当に最近の電波は難易度が高いですね。
――カルチャーとしてリバイバルしながらも、音楽の強度はどんどん増していきていると。
KOTOKO 昔の我々が作ってきた楽曲を聴いた若い人たちが作っていったら、こうなるのも自然のことですよね。昔私が作った「Princess Bride!」も、作曲した時にみんなから「KOTOKOちゃんこれ歌えるの?」って言われて。私は「自分が作曲したから責任持って歌います」って当時のI’veの社長に言ったのを覚えているんですが、そう考えると当時の私もそうだったんですよね。「Princess Bride!」が歌えたから生まれたみたいな楽曲が今も曲たくさんあるので、既存の楽曲よりもっと詰め込みたくなる気持ちはわかりますし、そう考えると今の楽曲が難しくなっていっている理由の1つに自分のせいっていうのもあるかも(笑)。
――20年越しの伏線回収というか、それを自分で歌うわけですから見事な自業自得ですね(笑)。とはいえ、当時から活躍していたKOTOKOさんによってセルフ回収されるというのはすごいことですね。
KOTOKO 生涯現役を掲げているのもありますし、やっぱり私は負けたくないんです。もちろん最近のボーカリストの皆さんも、本当に技術が上がっていて、早口やセリフもすごく上手だなと思っているのでもちろんリスペクトしているんですが、「負けないぞ」という気持ちもすごく強いです。やっぱり「私にはできないことは若い人に任せたよ」ってなっちゃったらそれまでだと思っていて、そこに対してずっとファイティングポーズを取れる自分でありたいんです。自分の欲深いところや意地っ張りな部分というのは今のところ上手く作用していて、今もこうして誘っていただけているのかなって自分なりに分析しています。なのでこれからもずっと、諦めない自分でいたいですね。
――それがまたシーンの活性化に繋がっていくでしょうし。
KOTOKO はい。これからも色んな化学反応が起きていくと思うんですよ。私が歌うことによって懐古する部分もありつつ、新しいクリエイターさんが作る新たなエッセンスやスパイスが入った化学反応みたいなものもすごく面白いと思うので。こういう関わり方はずっとやっていけそうだなと思いますし、そういう自分でありたいです。
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