声優アーティストユニット・DIALOGUE+のニューシングル「奇跡は起きない」が、4月22日にリリース。表題曲は静かなピアノの音色から始まったかと思えばどんどんドラマチックに展開し、そこに8人の歌声が切実さを与えてくる、聴き応え抜群の胸に迫るナンバーに仕上がった。本稿ではそのリリースにあたって、メンバーの中から鷹村彩花と村上まなつへのインタビューを敢行。表題曲とは対照的に、DIALOGUE+らしい明るいロック調のナンバーとなったカップリング曲「シンギュラレポート」も含め、本作を制作するなかでの取り組みを中心に語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 須永兼次
――最近は対バンライブ“DIALOGUE+WITH”を多数開催され、フェスへの出演も多かったように思います。これらを通じて、良い経験になったと感じられたことは、お二人はありましたか?
鷹村彩花 はい。その対バンライブはお相手がソロアーティストの方が多かったですし、先日出演させていただいた“P’s TRIVAL 01”もお相手2人がそれぞれソロだったんですね。そのなかで拝見した、ソロの方ならではの見せ方が非常に勉強になりまして。自分が歌っている間の見せ方などの参考になりました。それに、ライブのMCでまなつが言っていたとおり、皆さん歌も本当にお上手で。そういったところでも「私たちももっと頑張らなきゃな」という闘争心というか(笑)、向上心にもさらに火がつきました。
村上まなつ ひと口にソロと言っても、“DIALOGUE+WITH”でご一緒した方には色んなタイプの方がいらっしゃいまして。ロックな大橋彩香さんや夏川椎菜さんに加えて、これは田淵(智也)さんもおっしゃられていたんですけど、良い意味でアイドル然とされている岡咲美保さんとで、異なる方向性で「ファンの方へ自分の魅力をどう見せていくのか?」を明確な目標にされていたのを感じて。そんな皆さんのパフォーマンスを拝見して、「こうすれば、私たちはもっと成長できるんだな」と思ったところでもあります。でも逆に、ソロの方がお相手だからこそ、ユニットというものの持つ強みがより明確になったようにも思うんです。
――それはどんなところから感じられましたか?
村上 まずはパフォーマンス面で「人数がいるからこそ迫力あるダンスができたり、生でハモれる」というのがありますし、何か不測の事態があった時に人数がいるからこそ対応ができる、ということも実感したんです。特に昨年末の“DIALOGUE+WITH vol.5 -大橋彩香-”は、体調不良でメンバーが2人出られなくなってしまい、私も病み上がりで万全の体調ではなかったんですけど、それも1人じゃなかったからこそ支え合って臨むことができたんです。もちろんソロの方の歌の上手さというのも目指したい場所ではありますけど、そういうユニットとしての強みもより実感することができました。
――そういった様々な経験を経て、今回リリースとなるシングルが「奇跡は起きない」です。まずは表題曲について、タイトルや楽曲からどのようなイメージが浮かびましたか?
鷹村 DIALOGUE+には比較的明るい曲が多いんですけど、この曲はまずタイトルにも結構驚きがありましたし、曲調にも悲壮感があるというか……あまり明るい曲ではなくて。なので「良い意味で、DIALOGUE+らしくないな」と思いました。でも、私的にはやさぐれた心にはこういう曲のほうが響くようにも感じましたし、「翼をもがれた天使が、もう一度天使に戻ろうと願おうとしている」ようなイメージが浮かびましたね。
村上 私は最初にスケールの壮大さを感じて、そこから天気のようなイメージが湧いたんですね。序盤は不穏な空気はあってもまだ嵐の前の静けさのような状態なんですけど、それがサビ最初の“ふざけんじゃないわ”のフレーズと共に、急に竜巻が起きるくらいの荒天になって。で、2番が始まると一旦落ち着いたかと思いきや、またサビで大荒れになる。でも「こんなんじゃダメだ」と思っていたら、最後の“僕たちはここにいるよ”から急に雲に裂け目ができて、光が差してくるような……奇跡は起きないと言ってはいますけど、そこで希望に気づけたといいますか。奇跡は起きないことを自覚しても、幸せな未来へ向かって進んでいくような希望みたいなものを、最後のパートで感じられました。
鷹村 あと私、この曲はDIALOGUE+の曲で言うと、ちょっと「僕らが愚かだなんて誰が言った」に通ずるものがあるなと思うんです。悲壮感という部分もそうですし、“ふざけんじゃないわ”とか“巻き戻したい”という言葉から感じる後悔の念とか強い感情も、共通しているような気がするんですね。でも、この曲は最後の「僕たちはここにいるよ」まで割と救いがなくて、ずっと苦しんでるじゃないですか?そういう面はあまり今までの曲にはなかったので、歌いながらこの曲の苦しさが伝わるような感覚もありました。
村上 そういうこの曲ならではのポイントだと、この曲はレコーディング前の段階から、田淵さんが「すごく難しい曲だから、覚悟してください」と私たちに伝えてくださっていたというのもありまして。この曲、サビの音域がとにかく高いんですね。
鷹村 うんうん。
村上 でもこの曲は、裏声を使って弱々しくなってしまうと表現したいものの雰囲気に合わないだろうなと感じたので、できるだけ裏に行ってもミックスボイスみたいな地声成分多めの声で頑張ろうと思ったんです。でもそれって1人ではどうしても無理なので、8人で力を合わせて高音を出していまして。今までにもそういう曲はいくつかありましたけど、より8人の「この音を出すんだ!」という明確な意思が合わさらないと、この曲は歌いこなせないような気がしています。
――ただ、そのサビの高音では強さを持たせながら綺麗にハモられているので、そこからも凄みを感じました。
村上 サビには2つハモリがあるんですけど、そのうちサビでは、ちょうど私とやかんちゃん(鷹村)がAというハモを2人で歌っていまして。
鷹村 ハモも複雑に何個かあったりして、サビでは三声が走っているんです。なので、実質12人で歌っているような感じになっています。
村上 そのうち私たちは、結構低めの音域だったのかな?
鷹村 うん。それで、結構平坦だった印象がある。
――なるほど。主線に加えてハモのラインにも、独特の難しさがありそうですね。
鷹村 そうなんです。ただ、本線のメロディは音の上下もあるなかで感情をしっかり乗せていくのに対して、ハモは音は平坦でも「感情の強さは同じにしてほしい」と言われて。そこが難しかったです。
村上 ただ私、実はやかんちゃんとは逆でハモリにはあまり感情を乗せていなかったんです。それはきっと、田淵さんがそれぞれに合ったディレクションをされているからだと思うんですけどね。
――そういった感情の込め方も、AメロやBメロとサビとではかなり差があるように感じたので、歌われていくなかでも気持ちの流れも大事だったのでは?
鷹村 そうですね。この曲、最初は凪いだ感じで、それも「ひとしきり泣いた後」みたいな感情だったと思うんです。でもそこからまだふつふつと込み上げるものがあって、どんどんクレッシェンドしていって。1-Bメロの“どうにかしてよ 空蝉”の辺りでは既にブチギレ寸前くらいまでイライラしているというか(笑)、サビ頭の“ふざけんじゃないわ”の一歩手前じゃないですか?それでサビを経てまた落ち着いて……を繰り返しているという、情緒不安定な感じがありまして(笑)。
――1曲の中に凝縮すると、そうなりますよね(笑)。
鷹村 はい。なので「自分、情緒不安定だな」と思いながら歌っていました(笑)。というのも私、歌でもお芝居でもそうなんですけど、どちらかと言うと考えるというよりも感じるというか入っていくタイプなんですね。なので自然と自分自身の感情も、最初凪いでいたところからふつふつと「……やっぱ、やっぱさぁ?なんで聞こえないの!?」みたいに怒りが湧いてきまして。だから多分、サビ頭の“ふざけんじゃないわ”はかなりキレて歌っていた気がします(笑)。
――曲で描かれた感情の流れどおりに。
鷹村 そうなんです。でも逆に全体としては、この曲で歌われていることを感じている人の痛みが伝わってきて、歌っているうちにだんだん悲しくなってきてしまったんですよ。それが多分、悲壮感みたいな形で歌に出ているんじゃないかなと思っています。
村上 私は割と考えてからレコーディングに臨むタイプなんですが、この曲に関しては……自分が最初に歌うパートが“大丈夫もう1人じゃないからね 雨は頬を かすった”というところで。ここで「“雨は頬をかすった”って、もうこれ絶対涙じゃん!」とは思ったんですけど、でも泣いたからといって暗い気持ちではなくて、私は包み込むような温かさや優しさをもって歌いたくて。
鷹村 うんうん。
村上 で、オーディションとしては落ちちゃったんですけど、続く“「弱さ」が「強さ」になるアルゴリズムとは違う力学 証明できるか?”もまだ勇気や自信があまり持てていないように歌ってみたりと、序盤は“弱”の感情で歌うよう心がけていたんです。でも逆にサビでは、“強”の感情を爆発させていきまして。いつも歌詞カードに「どのくらい強く歌うか?」のマークをつけるのですが、この曲は普段以上にマークの差が激しくなっていました。だから声量も、だいぶ違ったんじゃないかな?と思っていて……。
鷹村 わかる。絶対そうだよね?
村上 そう。エンジニアさんのマイクの調整、絶対大変だっただろうなと思っています(笑)。
――今オーディションのお話も出ましたが、この曲のオーディションについて印象深かったことはありますか?
鷹村 私は2番の中の“コンパスのいきさつ”というフレーズを歌っているんですけど、ここでは感情という部分で迷子になってしまったといいますか……「ここって、どういう気持ちを乗せればいいんだろう?」みたいなところがすごく難しかったのが強く印象に残っているんです。
――感情がどの地点にいるのか、というのが。
鷹村 そうなんです。「無感情までは行かなくても、ナチュラルな感じで」というディレクションをいただいたのもあって。決して“無”ではないんですけど、それに近いというか……1サビが終わって、1回また感情が落ち着くじゃないですか?でもまたAメロからイライラし始めているなかでこれが出てきて、ここの部分だけちょっと地に足が着いていないようなふわふわした感じがあったので、「んー!難しい!」となりまして(笑)。
村上 私はこの曲を家で歌ってみた時に、あまりにもこの歌のサビを歌うのが苦手すぎて。「サビのオーディションを取ろうとするのは、結構負け戦かもしれない」と、ちょっとだけ諦めてしまったところがあったんです。でも、歌割りって多いほうが嬉しいじゃないですか?(笑)。
――確かに(笑)。
村上 それに、自分の得意なところとそうでないところが明確に分かれそうだなとも思ったので、「じゃあ私は、Aメロ・Bメロのオーディションに全力をかけよう!」と狙いを絞ってレコーディングに挑みました。
――より長所を活かすことを大事に考えられた。
村上 そうかもしれません。もちろん難解な部分もある曲なので、それこそ「どうやって歌えばいいのか?」という解釈は丁寧にやりましたし、練習もたくさんして……メロディも歌い方も平坦ではありますけど、きっと内にふつふつと動く感情はあるだろうから、「表には出ない感情がある」くらいの歌い方なんだな、と考えて歌いました。特に、1-Aメロの“大丈夫もう1人じゃないからね”や2番最初の“右足を一歩踏み出したのに 左足は臆病で”なんかは、自分でも得意であり伸ばしたいポイントと考えている「感情を込めて歌うこと」が生きる部分だったので、「ここは私が取るぞ!」と思って歌ったのを覚えています(笑)。
――そんなこの曲、MVも今までの楽曲と雰囲気の違う部分が多いとお聞きしたのですが。
鷹村 そうなんです。今回はまず、ジャケット写真みたいにきれいでナチュラルな姿と、泥まみれで泥くさくなっている姿の2つが入り混じっていまして。後者では衣装も本当にボロボロで、顔にも土の汚れがついた姿で撮ったんです。
村上 だから今回は、衣装もまったく同じものを2つ用意してもらっていたんだよね。
鷹村 そう。1つはきれいなままで、もう1着は燃やされたり破かれたり……。
村上 土の中に2日埋められてたりもしたらしいんです。多分単に汚すだけじゃなくて埋めることで、よりリアルさや説得力を出してくださったんだと思います。
鷹村 「脱げちゃうんじゃないか?」っていうくらいボロボロだったよね(笑)。
村上 メイクも、メイクさんが戸惑うくらいかなりガッツリ汚していただきました。きっとここに至るまでに重ねてきた、色んな苦労や辛い経験を比喩したものだと思うんですけど……。
鷹村 だから、最初に公開されたアーティスト写真のイメージだけでMVを観たら、「……ええっ!?」って衝撃を受けるようなビジュアルになっていると思います。
村上 それに撮影場所自体も廃ビルみたいなところで。
鷹村 ね。コンクリート打ちっぱなしの。
村上 陥没したような穴も空いていたりして……そういうロケーションだったからこそ、そのメイクも相まって「ありのままの私たちのがむしゃらな姿を、見せつけるんだ!」みたいな、素で勝負するようなMVになったと思います。
鷹村 それと今回は、ダンスシーンも多いんです。大きく分けて2ヵ所で撮影したんですけど、撮ってたのはほぼずっとダンスシーンだったと感じたくらいなので、そのダンスもぜひじっくり観てもらえたら嬉しいです。あと個人的ですが……私、最初にチェックで観た時に「え、『十二国記』だ!」と思いまして。
村上 簡単に言うと、どんなお話なの?
鷹村 異世界に連れてこられちゃった女の子が、色んな人に裏切られて、制服だったのが服もボロボロになって、お金も全部奪われて。でも絶望の中から助けてくれる人がいて、そこから這い上がっていく……みたいなお話で。
村上 へぇー!
鷹村 その国で、その世界で生きていこうと決めて強くなろうと頑張っていく……みたいな感じなんですけど。まさにそれを連想して。もしかしたら『十二国記』がわかる方は「確かに!」と思うんじゃないかな?というようなMVにもなっています。
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