卓球に情熱を注ぐ少女たちの青春を描いた劇場アニメ『卓球少女 -閃光のかなたへ-』が5月16日より全国公開される。中国発のオリジナルアニメーション企画として制作・WEB配信され、中国国内で話題を呼んだアニメ作品『白色閃電』の日本語吹替版となる本作。そのメインキャストおよびTrySailとしてOPテーマ「アストライド」を担当するのが、夏川椎菜(ジャン・ルオイ役)、雨宮天(ワン・ルー役)、麻倉もも(リ・シントン役)の3人だ。彼女たちはどんな想いを込めてそれぞれの役を演じたのか。TrySailの10周年イヤーを飾る新曲の制作エピソードを含め、たっぷりと語ってもらった。
INTERVIEW & TEXT BY 北野 創
――まずは皆さんが演じるキャラクターについて、それぞれの印象とご自身との共通点、演じる上で意識したポイントなどをお聞かせください。まずは主人公のジャン・ルオイを演じた夏川さんからお願いします。
夏川椎菜 オーディションではジャン・ルオイ、ワン・ルー、リ・シントンの3役を受けたのですが、ルオイは見た目的に私があまり演じてこなかったクールキャラという印象だったので、「これは多分私じゃないだろうな」と漠然と思っていました。ただ、演じてみると、自分の素直な本来の声というか、家族と話している時の砕けた地声に近い声でお芝居できそうだな、と感じました。実際にアフレコが始まってみると、方向音痴な部分があったり、甘いものが苦手だったり、ちょっと天然で抜けてるところがあって、私にも馴染みやすく、演じる上での取っ掛かりがたくさんあるキャラクターだなと思いました。卓球に関して、物語的に挫折して諦めたところから始まるのですが、ラケットは常に持参していたりと、卓球への熱や想いが残っていることが描写されているので、実は顔に出ないだけで愛に溢れた子なんだと思います。
雨宮天 私はワン・ルーとジャン・ルオイでオーディションを受けました。ルオイは挫折から歯を食いしばって立ち上がる、ストイックでクールなキャラクターという印象だったのですが、実際は夏川が言ったようにポヤポヤしていて天然な感じです。そうすると、確かにルーが私に一番しっくりくるのかな、と今となっては思います。ちょっと神経質でプライドが高いところは自分とも似ているのかなと。でも、演じやすかったわけでもなく、結構難しかったです。というのも、私の中で作っていたキャラクター像があったのですが、アフレコで「ジャン・ルオイとトーンが似ているので、かわいくなってもいいから、声をもっと高くしてほしい」とディレクションをいただいたんです。ルーのクールな一面を出しつつ、そこの部分を調節するのに苦労しました。
麻倉もも 私はリ・シントンとワン・ルーを受けたのですが、シントンで決まったと聞いた時は、しっくりきました。というのも、元の中国語版のキャストの方の声質が私に近いというか、張った時の声がみんなの中でもちょっと高めだったので、これは私か夏川かな、と思っていたんです。ただ、リ・シントンは本当に卓球が大好きな卓球オタクなので、卓球について解説をしたり、バーッと早口でしゃべるシーンが多くて。逆に私は卓球初心者だったので、専門用語もひとつひとつ調べるところから始めて、それをあたかも詳しくて好きでしゃべっている体で演じなくてはならなかったので、そういう意味ではちょっと難しかったです。
――ジャン・ルオイ、ワン・ルー、リ・シントン、戸松 遥さん演じるディン・シャオのメインキャラクター4人の中で、普段のご自身に一番近い、親近感が湧くキャラクターはいますか?
夏川 リ・シントンの、自分の好きなことに対して早口になっちゃう感じはすごく共感できます。私も目の前で好きなヒーローが技とかを出したら、「あれは、あのエピソードの時にこういう展開があって体得した技なんだよ!」みたいに解説しちゃうなと思って(笑)。なので「わかる!」と思いました。
雨宮 私はひとりに絞るのは難しいかも。どのキャラも、すごくわかるな、と感じる部分があるんですよね。私はジャン・ルオイみたいにぼーっとしている時もあるし、ワン・ルーみたいに「ちゃんとしたい!」って神経質になる時もあるし、リ・シントンみたいにオタク語りが止まらない時もあるし、ディン・シャオみたいに「イェーイ!」ってノリが良い時もある。性格がいっぱいあるんですよ。だから、どのキャラも似てる部分があるのかなと。
麻倉 私は逆に誰だろう?あんまり自分に似てるな、とは思わないんですが、この中だとやっぱりリ・シントンだと思います。私も「これ」って決めたら、割とそればかりになってしまうタイプなので。例えば何かの食べ物にハマると、ずっとそれを食べ続けたりとか。
夏川 確かにこの中だったらリ・シントンかもね。他が違いすぎるから。
――ちなみに皆さん、卓球の経験はありますか?
夏川 授業でちょっとだけ。友達と何試合か、みたいなことはありましたけど、真剣に向き合ったことはないです。
雨宮 私は授業でもやったことがなくて。ただ、私以外の家族、両親と弟は卓球経験があるので、年始に集まった時に遊びでやったりするくらいです。
麻倉 私も実際に触れたのは、授業とか温泉に置いてあるものとか、本当にその程度で、ラリーも全然できないレベルです。でも、昔、卓球が盛り上がっていた時期に、ドキュメンタリーを観て「かっこいいな」と思った記憶があるので、かっこいいスポーツという印象はありました。
――皆さん初心者なんですね。では、もし3人で卓球をやったとしたら、誰が優勝すると思いますか?
麻倉 実は以前、(TrySailの)撮影現場にたまたま卓球台が置いてあって、休憩時間に遊び程度で少し触れたことがあるんです。試合と言えるほどのことはやらなかったですけど……。
雨宮 私とナンちゃん(夏川)でやった時は、ちょっとずつ上達して、それなりにラリーできるところまでは行った気がしますけどね。
夏川 誰が優勝するかなあ。でも、私は多分、最初に1回戦敗退すると思います。
雨宮 あっ、この3人で試合したらですか?それはさすがに私が勝つと思います(笑)。
麻倉 確かにそうかも。
夏川 (雨宮は)勝負事全般、強いもんね。
雨宮 というよりもなんか弱いんですよ、2人が。
夏川 そう、私たち(夏川と麻倉)が弱い(笑)。
――逆に、この競技ならこの3人の中で勝てる、というものはありますか?スポーツでなくても構いません。例えば腕相撲とかでも。
夏川 クリエイト系だったら勝てるかも。小物作りとか裁縫全般とか、何か道具を渡されて「作品を作れ」と言われたら、いいものが作れる気がします。そこなら負けない、多分。
麻倉 私はそれこそ腕相撲かもしれないです。以前、何かのメイキングの撮影で3人で腕相撲をして勝った気がするんですけど……記憶はちょっと怪しいですが。
雨宮 確かに負けた記憶がある。私はペットボトルの蓋も開けられないくらい力が弱いので。あと針に糸も通せないので、裁縫と腕相撲は一瞬で負ける自信があります(笑)。
――作品の話に戻りまして、アフレコでの思い出や、特に印象に残っているシーン、セリフなどはありますか?
夏川 収録の都合で、試合のシーンを最初に録ったんです。その試合が作品の中で一番見せ場にもなる熱いシーンで、緊張感もある難しい収録だったのですが、それを最初にやれて良かったなと後になって思いました。実際の選手も、卓球のラリーが続いている時は、過集中というか、息をするのも忘れるくらいの状態になると思うんです。そこから、得点が決まったり、球を見送るシーンで「ふぅ」と息をつく。アフレコ現場でもその状態になって、試合のシーンではみんなですごく集中して演じたので、緊張感もあってとても体力を使ったんですよね。だからこそ朝イチの熱量でできたのが良かったなと。もし物語の流れ通り、後半に収録していたら印象が変わっていたと思います。
雨宮 その試合のシーンで他にも大変だったことがあって。普段のジャン・ルオイは髪を下ろしていて、ワン・ルーはメガネをかけて髪を結んでいるのですが、その試合の時は2人ともメガネなしでポニーテールになるんですよ。そうすると、2人の恰好がすごく似ているので、台本を見ながらだと一瞬どっちだかわからなくなってしまうんです(笑)。しかも卓球は高速の球技なので、基本は「ハッ!」や「フッ!」といった(球を)打ち返す息遣いを入れるのですが、私はワン・ルー役なのに間違えてジャン・ルオイのタイミングで息を入れてしまったり、たまに「そんな!」みたいなセリフが入るところで息だけを入れてしまったりと、そこのアドリブは苦戦しました。
夏川 私もルーが髪をくくってメガネを外した時は「えっ!」って目を疑った(笑)。
――ブレス音で卓球の試合の演技をするのは、なかなか大変そうですね。
雨宮 実際の自分の心拍数が上がってない状態で心拍数が上がる演技をすると、だんだん酸欠になってくるんです。だから、長めの試合のシーンでずっと回していると、途中から手がしびれ始めて、目の前がクラクラしながら「フッ!」てずっとやり続けていました。そういう意味で体力勝負なところがありましたね。
夏川 なおかつ試合展開によって「ここは強く打ってるな」とか「ちょっと弱めに球を上げてるな」というのが変わっていて、それがアニメの絵からも伝わるので、その違いを演技でもつけようと思うと余計に難しくて。アフレコの本番も大変でしたけど、事前のチェックの段階も結構大変でした。
麻倉 ただ、現場はすごく楽しかった思い出があります。学園モノの作品というのもあって、当日はたくさんのキャストさんが参加していて、スタジオ内はもうみっちり。こんなに大人数の現場はなかなかないというくらいで、特にテストの時は入れ替わり立ち替わりで収録して、自分のセリフの時にマイクが空いてなくて「あ!」みたいなこととか、離れた場所のマイクまで慌てて走ることもあって。「こっち空いてるよ」みたいに目線で合図したり、みんなで結構わちゃわちゃとやっていたのですが、それが本当の学生時代の頃を思い出させてくれて、チームワークを感じました。
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