煮ル果実の提供曲らしいテクニカルなフレーズを満載した疾走感溢れる「子供騙し」では夜の街並み、4つ打ちロックの爽快感を湛えた「ばいばいまたあした」では雲海と太陽の壮大な景色を描いたイラストが映し出され、各楽曲に込められた感情や物語性を拡張。また、どのイラストにも少女の姿が必ず描かれており、その存在がにんじんのイノセントな歌声と重なることで想像の余地がさらに広がっていく。ロクデナシのライブは、まるでオムニバスのショートストーリーを矢継ぎ早に体感していくような面白さがある。あまりのスピード感にこちらの感情の整理が追いつかないほどだが、それもまた令和的な音楽の楽しみ方と言えるのかもしれない。
「前半戦、楽しんでいただけているでしょうか?」「素敵な1日にしましょう!」と、にんじんがオーディエンスに呼び掛けると、ここからはダンサブルなナンバーを続けて披露。まずはエレクトロニックなサウンドとスクエアなリズムが高揚感を引き出す「Slowly」、そこからドロップパートを含むGuiano提供のトロピカルハウス「About You」に繋げる。そして軽快かつしっかりとした足取りのリズムが印象的な「星寂夜」で観る者を煌めく銀河の景色に誘うと、ここでバンドメンバーの紹介を兼ねたインタールード的な演奏を挿み、「アルビレオ」と同じくナユタン星人が手掛けた代表曲のひとつ「スピカ」へ。オーロラのように発光する照明と映像、ラスサビ前で銀テープが発射される演出を含め、一等星のような輝きに満ちた景色がZepp Shinjukuに広がる。
そしてライブ本編はラストスパートに突入。寂しくも優しいタッチのピアノに導かれて歌われたのは「愛が灯る」。ロクデナシの楽曲の中でも指折りの人気を誇るバラード曲だ。序盤は歌詞に“ぽつりぽつりこぼれる言葉”とあるようにつぶやきにも似たアプローチで、そこから儚くも感情豊かに色づいていくにんじんの歌声が、会場いっぱいに沁みわたっていく。そしてMVのYouTube再生回数が1.7億回を突破している代表曲「ただ声一つ」へ。この楽曲もまたピアノの転がるような旋律が印象的なナンバーで、「愛が灯る」と同じくボカロPのMIMIとのタッグで生み出された名曲だ。スクリーンには星々が浮かぶ夜空の景色が投影され、その広大な情景の中で、にんじんの切なくも力強い歌声が静かに寄り添い、ささやかだけど大切な愛を与えてくれる。ろくでなしな人生に暖かな希望を灯してくれる愛の歌。それがロクデナシの紡ぐ音楽だ。
「次の曲で最後になります」とにんじんが告げて歌ったのは、ドラマ版『【推しの子】』第2話の主題歌となったカンザキイオリ提供のパワーバラード「草々不一」。ドラマチックなメロディと内省的な歌詞に込められた諦念と哀感、それでも伝えたい想い、溢れ出す言葉の切迫感を、ひと際エモーショナルな歌声で紡いでいくにんじん。少女の祈るような姿を描いたイラストの景色が、楽曲が進むにつれて変化していく。歌、音、映像、照明、空気、振動、匂い、そのすべてが合わさったこの日だけの唯一無二の体験が、そこにはあった。
アンコールの1曲目は、今年2月にリリースされたデジタルミニアルバム『溜息』のリード曲「心の奥」。これもまたMIMIが作詞・作曲したナンバーで、寂しさを湛えたピアノの音色とにんじんの切々とした歌声が溶け合って、痛みを抱えた心の奥に優しく沁み込んでいく。そしてにんじんが「本日は追加公演ということで、まだ誰も聴いたことのない新曲を歌いたいと思います」と告知すると、思わぬサプライズに会場からは喜びの声が上がる。そして歌われた楽曲のタイトルは「脈拍」。この楽曲を提供したのは、ロクデナシとは初コラボとなるみきとP。アコギの清涼感ある音色、シェイカーのような音が優しく刻むリズム、優美なストリングスの響き、センチメンタルなメロディと歌声、傘を差して渚にたたずむ少女の姿を描いたイラストが、淡く切ない叙景を描き出す。
その後のMCで、これからも新曲やライブを届けていきたいと改めて今後の意気込みを伝えると、ついにこの日のラストナンバーへ。ピアノの踊るようなフレーズと共に歌われたのは「眼差し」。カンザキイオリとのコラボレーションで生まれた、痛みや葛藤の中にあってなお“生きなければと思った”と歌う、強く優しい歌だ。その誰しもの身に覚えがあるであろう普遍的なテーマを持った楽曲を、にんじんは繊細さと力強さ、抑制と高揚を併せ持った歌声で表現していく。それらのともすれば反発し合いそうな要素を繋ぎ合わせる絶妙なバランス感覚、言語の別なく感情を揺さぶる歌力こそが、ロクデナシが広く海外でも人気を集める要因なのだろう。そのことがにんじんの生歌を通じて改めて実感できたのと同時に、きっとこの体験はいつまでも思い出になることなく記憶に鮮烈に残り続ける、そんなライブだったように思う。
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■ロクデナシ1st Oneman Live「思い出にならないように」
2025.4.9@Zepp Shinjuku
<セットリスト>
M01.アルビレオ
M02.僕らの在り処
M03.ブリザード
M04.言の刃
M05.逢瀬のままにあなたのもとへ
M06.三時のキス
M07.リインカーネーション
M08.アマネゾラ
M09.ユリイカ
M10.子供騙し
M11.ばいばいまたあした
M12.Slowly〜About You
M13.星寂夜
M14.スピカ
M15.愛が灯る
M16.ただ声一つ
M17.草々不一
ENCORE
M18.心の奥
M19.脈拍
M20.眼差し
●リリース情報
Digital Single「脈拍」
2025.05.07 Release
配信サイト:https://rokudenashi-ninzin.lnk.to/pulse
MV:https://youtu.be/wkRMEv1LcNs
●ライブ情報
ロクデナシ 2nd Oneman Live「行かないで」
・8月16日(土)大阪・なんばHatch
開場 16:30 / 開演 17:30
・8月31日(日)愛知・名古屋DIAMOND HALL
開場 16:30 / 開演 17:30
・9月07日(日)東京・LINE CUBE SHIBUYA
開場 17:00 / 開演 18:00
オフィシャル2次抽選先行
応募期間:5/10(土)12:00~5/26(月)23:59
https://eplus.jp/rokudenashi/
●ロクデナシ Profile
2021年6月より始動したボーカリスト「にんじん」と気鋭のボカロPらコンポーザーによる次世代音楽プロジェクト。
これまでMIMIやナユタン星人、カンザキイオリ等を迎えた楽曲を発表。
●「リスパレ!」とは
アニメ音楽メディアである「リスアニ!」と、大阪のラジオ局・FM802で、カラフルな音楽との出会いを描く番組「802 Palette」がタッグを組んだ新・音楽メディア。
アニメ・ゲームカルチャー・ネットミュージック、そしてその枠を越えた様々なアーティストの魅力を発信します。
ロクデナシ
公式YouTube
https://www.youtube.com/@Rokudenashi_ninzin
公式X
https://x.com/Rokudenashi_nzn
リスアニ! × 802 Palette「リスパレ!」
公式サイト
https://funky802.com/lispale/
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