REPORT
2025.04.14
2025年3月22日、Veats Shibuyaにてバンド初となるセットリスト全曲をファンからの投票で決めるライブ“岸田教団2025年度「聖域なきセットリスト総選挙」”の東京公演が行われた。これは2024年11月29日、岸田教団&THE明星ロケッツのツアー“BERSERKERS TOUR”東京公演のアンコールにて突如告知されたもので、メンバーの岸田=同オ党(同人オリジナル党)、ichigo=アニタ党(アニメタイアップ党)、はやぴ〜=東方党、みっちゃん=メジャオ党(メジャーオリジナル党)という政党の党首となり、ファンからライブで演奏してほしい楽曲を募るというもの。本公演はライブバンドとしてとてつもない熱狂を獲得し、新たなフェーズに突入した現在だからこそやる意義のある重要なステージとなった。果たして国民(ファン)がバンドに下した審判は?あるいは民意に対してステージ上からバンドが鳴らした声明とはなんだったのか?
TEXT BY 澄川龍一
PHOTOGRAPHY BY “SUGI” Yuuya Sugiura
会場となったVeats Shibuyaは、昨年行われた“BERSERKERS TOUR”ファイナルの地。改めてあのツアーは岸田教団&THE明星ロケッツが『BERSERKERS』というアルバムと共に各地で熱狂を獲得した、ライブバンドとしてのターニングポイントとなったツアーだった。それからおよそ4ヵ月後、この日のVeatsのフロアはあの時の熱量がそのまま残されていたかのように、多くのオーディエンスに埋め尽くされ物々しい雰囲気となっていた。
そんななか、前回ツアーでも流れていたザ・リーサルウェポンズ「あいさつメタル with マーク・ハドソン(DragonForce)」が流れ、岸田(b)、ichigo(v)、はやぴ〜(g)、みっちゃん(ds)とサポートのてっちゃんことT-tsu(g)が次々とステージに登場する。そこから一瞬の暗転と共に鳴らされたのは「ただ凛として」(総選挙10位)の軽快なギターリフだ。2007年に“岸田教団”名義でリリースされた同人音楽サークルとしての4thアルバム『星空ロジック』に収録される本楽曲。どこか若さを感じさせるクールなメロディに乗せて、客席はのっけから大きな歓声を送る。企画性の強いライブでも、岸田教団&THE明星ロケッツらしい熱量の高いライブ空間は健在だ。そこからそのままichigoが「声出していくぞー!」と叫んで「セブンスワールド」(総選挙7位)へ続く。ヒリヒリとしたサウンドと真っ赤なライティングのなかでの人気曲にグイグイと観客のボルテージが上昇していく。そこから間髪入れずに「群青」(総選挙11位)のベースリフが岸田から鳴らされる。ファンからの投票=人気曲ばかりを集めたセットなのは理解していたが、やはりこのテンションの高い序盤のブロックは格別だ。曲のクライマックスで披露されたはやぴ〜の歯弾きも含んだギターソロもかっこいい。「この日はやばい」と思わせる熱気のなか、それが冷めるのを待つことなく「Alchemy」(総選挙29位)へと突入。疾走感溢れる前3曲から転じてグルービーなサウンドがフロアを揺らしていく。そこから爆発していくバンドサウンドに乗せてichigoのボーカルも噛みつくようなアグレッションを誇っている。序盤から4人の脂が乗り切ったパフォーマンスを前に改めて「この日はやばい」と確信した。
そして岸田の挨拶からこの日最初のMCへ。ichigoが「改めて、今日はたくさん曲をやります!」と言うと、岸田が「今日はしゃべって笑いをとりにいかず、真面目に音楽をやりにきました」と返す。今まで真面目にやってこなかったのかというツッコミはさておき、岸田曰く「今日は皆さんが民主主義で我々に音楽をさせる日なんですよ」というこの日のコンセプト(?)を改めて告げると、客席からは「う〜う〜」という不穏かつかわいらしいサイレンの音が鳴り響く。どうやらこの日は曲数の関係もあって普段から長尺になりがちなMCに対し、時間が来るとichigoの声をサンプリングした警告音が鳴る仕組みとなっているようだ(他にも「お時間です」などバリエーションが豊富)。「普段からこれをすればいいのでは……?」という観客の心の声に後押しされるように岸田が続いて曲「自由への賛歌」(総選挙18位)のタイトルをコールすると、フロアからは悲鳴のような歓声が鳴り響く。サビでの“―“自由 (かぜ)” になる。 ― “無心(かぜ)” になる。”ではもちろんオーディエンスの大合唱が鳴り響く。それにichigoも「いいねー!」とご満悦。そこから「ネクロファンタジア」(総選挙13位)と東方アレンジ楽曲が続いた後に、ichigoが「明星ロケットー!」と宣言して「明星ロケット」(総選挙6位)がスタート。シャープなビートに乗せて、岸田教団&THE明星ロケッツのライブではお馴染みの光景ともいえるフロアがうねるような熱狂が見られる。
岸田が「民主主義を楽しんでいるか?もしくは民主主義への憎悪をたぎらせているか?」と指導者らしい問いかけをしつつ、はやぴ〜が「残念ながら1人の思いじゃこの世は変えられない」などとこの日の総選挙について放談していると、岸田が気を取り直したように「サイレンが鳴る前に曲に行きましょう!」と次の曲へ。ここからは岸田教団&THE明星ロケッツが手がけたアニメ主題歌が連発される。まずは「天鏡のアルデラミン」(総選挙19位)がはやぴ〜のトークボックスを駆使したギターサウンドとともにスタート。岸田教団&THE明星ロケッツのアニソンといえば観客がシンガロングするパートが多く、まさにライブ向けな楽曲が印象的だが、そんなライブで叫びたいという民意を反映した楽曲が続く。よりロッキンにアレンジされたサウンドが心地良い「ストレイ」(総選挙9位)から近年の代表曲ともいえる「nameless story」(総選挙16位)と、熱量高いサウンドで観客の歓声を引き出していく。そして「GATE II ~世界を超えて~」(総選挙12位)でどよめきが起こった後は「GATE ~それは暁のように~」(総選挙5位)と岸田教団&THE明星ロケッツによるアニソンのスタイルが確立されたアンセムを披露し、圧巻のアニソンゾーンを駆け抜けた。