『モブから始まる探索英雄譚』のED主題歌である「ストロボ・ファンタジー」ではMay’nの中にあるポップを草野華余子と共に呼び覚まし。高校野球愛知大会のテーマソングである「ウイニングショット!!」ではEOをキャプテンに、AYAME(from AliA)とバッテリーを組み、自らの野球に対する情熱を生かした楽曲に仕上げ。「Pray」では限界突破感を込めた、壮大かつ情動的かつMay’nらしさ全開なところを見せ。さらにはボーナストラックの「戦乙女の歌」ではミュージカルで得た表現力で自分ではない誰かを憑依させながら慈愛を表現。あらゆる経験を歌に集約させるMay’nの真骨頂とも言うべき1枚、そんな22ndシングルを本人と共に掘り下げていく。
INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司
――まずは「ストロボ・ファンタジー」について。『モブから始まる探索英雄譚』(以下、『モブから』)ED主題歌というオファーに対してどのような楽曲を制作しようと考えたか教えてください。
May’n May’nらしい疾走感ある曲ではなく、ただ、ED主題歌ではあるけれどもポップでカラフルな感じの楽曲を、という(アニメサイドからの)要望が最初にありました。ただ、タイアップではいつも、作品が伝えたいこととMay’nが言いたい想い、その2つに共通するポイントを探し出す作業から始めるんです。『モブから』のシルフィーはパーティの中で最強のカードではあるんですけど、海斗くんが自分に対して見せる優しさや強さがあるからこそ冒険を楽しいと感じているし、力を発揮したいと思っている気がして。私も活動をしている中でファンの皆さんから「ありがとう」と言ってもらえますが、それってみんなに引き出してもらっている部分なので。ストーリーに浸る楽曲ではなく、ヒロインのひとりであるシルフィーが抱いている気持ちを伝えることでMay’nの楽曲としてもシンクロできると思いました。ただ、ダンスミュージックでもロックナンバーでもバラードでもない、ノリやすいポップミュージックを目指すと考えたとき、華余子さんなら私のルーツを知ってくださっていますし、May’nが得意とするリズム感みたいなニュアンスを汲み取ってくださるイメージがあったんです。結局、ポップではあってもキュートなかわいい曲にしたいわけではなかったんです。私が大事にしたいMay’nらしさ、May’nの中にあるポップ、という絶妙なラインを守ってくれるという信頼感があるのが華余子さんなんです。拍を裏でとるか表でとるか、どこで跳ねるかを感じ取るのがMay’nはすごく上手い、みたいなことを華余子さんは言ってくださるんですけど、確かにこの曲もデモで聴くよりも歌ったときのほうが難しくて。でもその何気ない跳ね感がかっこいいし、ポップにも聴こえる、というところで思い描いていた以上の楽曲を提示してくださったと思っています。
――草野さんとの間でどのようなやり取りがありましたか?
May’n 実は最初のサビは今とは違っていて。前半から急転換して後半で駆け上がるみたいな、段階を踏む構成にはなっていなかったんです。たしかに、いつもの疾走感ある曲とは違う方向というつもりではありましたけど、心が高揚するという意味での疾走感は失いたくなかったんですよね。基本的にポジティブで、人生のどんなときも1人で頑張ってきましたが、自分の中にあるパワーが何倍にも膨れ上がる瞬間があるのは、誰かのエールだったり信じてくれる気持ちだったりをもらったときだと感じています。なので、サビでは段階を作って、自分の中で膨らんでいく思いを表現していただきました。私には「HERO」という曲も「マイヒロイン」という曲もあるんですけど、今回も、私にとってのヒーローを思い浮かべながら歌うことができました。「今走ることができているのはあなたのおかげ」って。みんなが私のことを「部長」と呼んでくれて、自分自身でもヒーローでいたい気持ちは、私にとってもヒーローがいるからだと強く思っているので。ライブでみんなの前で歌うのが本当に楽しみな曲です。
――May’nさんと草野華余子さん、編曲にebaさんも加わり、というのは「蒼の鼓動」と同じ布陣ではありますが、今回はさらに岸田(岸田教団&THE明星ロケッツ)さんもアレンジャーとして加わっています。
May’n 私は、8(ビート)でとっていたのにいきなり16もとるとか、細かく拍を取る癖があると華余子さんに言われました。そのリズム感をナチュラルに表現できるアレンジャーさんって少ないと思いますが、岸田さんはビートの作り方が私の持つ細かいリズム感に合っている、ということを仰っていました。アレンジは、ここは華余子さん、ここはebaさん、ここは岸田さん、みたいにいいとこ取りをしてくださっているみたいなので、多分リズムワークは岸田さんなんだと思います。プロフェッショナルな皆さんがこの1曲に集結している、というのは本当に嬉しいことですね。
――歌詞については草野さんとの連名になっていますが、どのように作詞されていきましたか?
May’n 草野さんと組んだのは3曲目になるんですけど、制作の順番としては「蒼の鼓動」の次が「ストロボ・ファンタジー」で「ハッピーエンド、」の前になります。歌詞も曲も編曲も華余子さんだった「蒼の鼓動」のあと、タイアップ楽曲でも華余子さんにお手伝いいただきたいという想いがあったんですけど、今回の制作を通して歌詞の書き方について刺激をもらえたことで、「ハッピーエンド、」の歌詞を私だけで書くことができたと思います。この曲は、シルフィーが海斗との出会いを「まるでファンタジーみたい」って感じていたら、本当に奇跡的な出逢いのように表現できるかなと思い、まず「ファンタジー」というタイトルで歌詞を書き始めました。ただ、よりフックを与えるために、「ストロボ・ファンタジー」という提案を華余子さんからいただきました。たしかに「ファンタジー」というタイトルの曲は他にもあるので。そういう気づきみたいなものを今回もたくさんいただきました。
――作詞で苦労、工夫したところというと?
May’n A、Bメロのような跳ね感があるメロディに日本語を乗せるのが難しかったです。「みんなで乗って行こうぜ。イエーイ!」みたいな意味がない歌詞ならいいんですけど、思いを言葉でも伝える曲、というところは毎回こだわっているので。その話を華余子さんにしたら、メロディは変えられるので字数は無視しても大丈夫と言っていただいたんです。Aメロは結構華余子さんに清書してもらった部分もあって。「葛藤、躍動、温情」も聴いたときに字が思い浮かばないと意味がないと教わりました。
――日本語は同音異義語も多いですからね。
May’n そう、“温情”のところを私は“厚情”と書いていたんですけど、“向上”だったり“工場”だったりもあるので。そこもオリジナルティを込めるために華余子さんが提案してくださいました。
――書いていて思い入れのある部分についても教えてください。
May’n サビの“希望を掴む右手 わたしを守る左手”といった手の表現は最初からこだわっていた部分で、作中にそういうシーンがあるわけではないんですけど、目の前にいる海斗くんが右手を前に伸ばして、左手でシルフィーを庇っていたり差し伸べたり手を繋いでくれたりしている様子を思い浮かべていました。お互いに向かい合って握手をしたり、並んで手を繋いでいたりする姿は違うと思ったんです。支えているようで支えてもらっているというか。その関係性が崩れないように、とは思っていました。
――歌入れで印象に残っていることは?草野さんとのレコーディングはいつも楽し気なエピソードを聞かせていただいていますが。
May’n 印象に残っているのは、華余子さんが真っ黄色の服を着ていて、私はその後にドラゴンズの試合を見ようと思っていたので、青いユニフォームをカバンに忍ばせていて、妙に野球を引きずっているというか。
――まるで竜虎対決のごとく。
May’n その光景をすごく覚えています(笑)。あとは、さっき言ったように私は拍を細かくとる、なんだったら倍速でとるんですけど、すべてが感覚で行っているタイプなんです。でも華余子さんは、このビートはこの音が聴こえているから裏で取らないといけないとか、言語化するのがすごく上手いんです。「May’nちゃんは後ろの鳴り物を聴いているんだね」「だから裏でとっているんだね」などと言ってくださるので、改めてアーティストの特徴を引き出せるプロデューサーだと思いましたし、「自分、すごいんだな」って思えました(笑)。
――気持ち良くレコーディングできた、と(笑)。
May’n できました!オンでとるか裏でとるかって、好みの問題も出てくるので正解はないんですけど、でもその感覚が華余子さんと似ているみたいで。「May’nちゃんに楽曲を歌ってもらうのはすごい楽しい」と今回も言ってもらえましたし、きっとどんな曲をお願いしてもMay’nらしさを大事にしてくださると思いました。実は今回、ポップな方向の楽曲ということで、初めての方でもそっち方面が得意なクリエイターの方にお願いする、という話も出たんですけど、シングルでもありますし、May’nが大事にしている芯は残しつつ新しい、という絶妙なラインを詰めていくには信頼できる方だと安心できます、というお話をさせていただきました。なので、そういう意味でも、最初に目指したところに辿り着けた曲という実感があります。
――CD+Blu-ray盤のBlu-rayには「ストロボ・ファンタジー」のMVも収録されます。どのようなMVになりましたか?
May’n MVは、ヘアメイクだったり衣装だったり、あとは全体の雰囲気でもよりポップな感じを出させていただき、今までで一番キラキラしたMVになったと思います。あと、最初のワンコーラス目のサビがワンカット撮影になっていて、なかなか見られない顔や表情が入っている気がします。カットが入ると「一番いい顔」を選べはしますけど、ワンカット撮影だからこそ普段なら使わないかもしれない何気ない表情も入り込んでいるので。ライブ感のあるMVという感じがします。ライブで歌っている姿がめちゃめちゃ想像つくMVだと思いました。あと、ダンジョンを思わせる表現というか場面というか、ラストは『モブから』とのリンクをつけるということをすごく意識した映像になっているので、ぜひ最後まで見ていただきたいです。
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