INTERVIEW
2024.08.31
ボーダー柄の服をトレードマークに、ユルくマジメに音楽と向き合うコンビ――。“ボーダーズ”こと北川勝利と藤村鼓乃美が贈る「ボーダーズの“音の場”」。東京大学の門前町として多くの文人が足跡を刻んだ本郷三丁目近辺は、江戸時代、大大名や幕閣の屋敷の並ぶ屋敷町でもありました。三代将軍徳川家光の乳母、春日局が拝領した屋敷があったことからつけられた春日も同様です。おふたりはこの地でどのような景色を見るのでしょうか。
PHOTOGRAPHY BY 山本マオ INTERVIEW & TEXT BY 田中尚道
――今回は東京大学本郷キャンパスからスタートです。
北川勝利 むっちゃ大きかった。
藤村鼓乃美 からあげ定食食べたかった……。
――食堂に入った時間が遅くて、からあげが残り2個しかなくて断念したんですよね。
北川 あんなに敷地が広いなんて初めて知った。池もあって。
――あれは三四郎池ですね。育徳園心字池が正しい名前なんですが、夏目漱石の「三四郎」の舞台になったのでそう呼ばれています。
藤村 北川さんが「いけ！」っていうから、どこに行くのかと思ったら池でした。
――「三四郎」は漱石が初めて新聞連載をした小説で、毎回オチをつけなきゃいけないことに大分苦労したようです。
藤村 オチに苦労するなんて漱石、ボーダーズに向いてないですね。メンバーに入れられない（笑）。
北川 もっと時間があればゆっくり観たかった。建物も全部かっこよくて。各建物にレリーフが飾られていたり。
藤村 カメラマンさんと、こんなに広い場所で一目ぼれしたら二度と会えないねって話してました。
――？ 東大は女子学生が20％ほどしかいないそうなので、探しやすいのでは？
藤村 男性が80%だから探せないですよね。
――ああ、失礼しました。確かに女性が男性を探すのは大変ですね。
北川 たぶん食堂に行けばいるよ。
――構内はキッチンカーも多かったですね。
北川 食べるものが多くないとね。
藤村 松茸のお吸い物の匂いがしました。
北川 そう。不思議だったよね。
――そんなメニューなかったですよね。
北川 化学なんとか館から匂いがしてた。
――アミノ酸の合成をしていたんですかね？
北川 僕らが学生の頃に比べると学食の値段も高いですよね。僕が行ってた大学の学食では、安いメニューは、かけそば100円、カレー150円、定食も300円くらいからみたいな感じでしたよ。今は校舎も建て替わって、メニュー激減と定食800円超えるみたい。。
――昔は今ほど外食の選択肢もなくて、学食って地方から出てきた学生のセーフティネットの役割があったわけですが、時代が変わりました。かつては食事付きの下宿も多かったですし。
北川 僕は函館の高校に通っていたわけですが、函館の郊外に家がある子もいて、そういう子たちは学校のそばの下宿から通っていました。
藤村 寮とは違うんですか？
北川 寮は学校や会社がやっていて、下宿は個人がやっている感じ。東大の後は？
――著名人の下宿めぐりをしました。東大（旧東京帝国大学）は日本中から学生が来ますから、学校の周りに下宿屋が乱立しています。そこに住んでいた人の中には著名人も多いので。
藤村 そういうことだったんだ。
――本郷のあたりは丘の上で土地も狭いので小規模な民家が多いのも下宿が多い理由だと思います。
北川 道が複雑だったよね。あれ、ちょっと待って。最初何見たんだっけ？
――下宿の前に、17号線にあった見送り坂と見返り坂の説明板ですね。江戸時代より前、太田道灌がこのあたりを治めていたころに川が流れていて、罪人が追放処分を受けると二度とこの川を戻ることができませんでした。そのため今生の別れをしたと言われている場所です。
北川 関所があったということですよね。そんなに張り巡らされていたの？
――関所を破ることはできたと思いますが、中で捕まれば死罪でしょうから戻れないんですね。
藤村 境に家を建ててそこで暮らせばいいのに。
北川 入れ墨を入れる刑もありますよね。
――入墨刑ですね。見せしめと犯罪抑止から入れ墨をいれて犯罪者とわかるようにするものです。入れる場所は土地によって変わるそうですが、おでこに入れるものあり、罪を重ねるごとに画数が増えて最後は犬になるところもあったようです。江戸時代には無宿人と言って、身元不明でも罪になったんですが、飢饉が起きたりすると都市に大量の難民が流入します。最初はこれを捕まえて佐渡島に送って金を掘らせていたんですが、無限に受け入れるわけにもいかず、追い出してもまた戻ってきてしまうので、月島～門前仲町の回で見た、石川島の人足寄せ場が作られます。とりあえずそこで手に職をつけさせて釈放するということをやったのが、池波正太郎の小説でも有名な長谷川平蔵です。
北川 藤村、「鬼平犯科帳」も知らないでしょ。
藤村 知らないです。時代劇を見ようと思ったこともないです。
――次が本妙寺です。これまでも何度か話に出てきている明暦の大火の火元とされているお寺の跡です。
北川 説明板の後ろにマンションが建ってたけど……。
――験が悪いですが、明暦の大火の火元も諸説あって、本妙寺は火元を被ったという説もあります。
藤村 そこから。
――石川啄木の下宿だった赤心館です。
藤村 ああ、金田一。
――東京に出てきたものの住むところがなかった石川啄木に、自分の住んでいる下宿に空きがあると誘ったのが金田一京助です。
北川 石川啄木。
藤村 聞いたことがあります。物書き？
――そうですね。詩人です。
北川 啄木はどこの人？
――岩手の出身ですが、故郷にいられなくなり函館に移住します。
北川 そうなんですよ。函館の海沿いに石川啄木の像があって。湯の川温泉には啄木亭という旅館もあります。だから石川啄木って函館の人なの？と思っていました。いつ住んでたの？
――学校を出て、故郷で代用教員をしていたんですが、父親のトラブルに巻き込まれる形で故郷に見切りをつけて函館に移住したようです。その後執筆活動のため上京して金田一京助の世話になりました。
北川 金田一はなんで世話してたの？
――金田一は同郷で4歳年上でした。その誼で世話をしていたんですが、啄木が生活力のない人だったので、お金が無くなるたびに服を質に入れたり、自分の蔵書を売ってお金を渡していたようです。啄木は26で亡くなってしまうんですが、残した詩はセンチメンタルなものが多く、その印象で見ていると、借金に限らず大分クズエピソードが多い人ですね。
北川 啄木に俄然興味が涌いてきた。
――「たはむれに母を背負ひて そのあまり軽きに泣きて三歩あゆまず」という詩があって、教科書にも載っているくらい有名なものなのですが、啄木の妹曰く、兄は母親を背負ったことなんかないとのことで……。
藤村 妹、いいわぁ。ちなみに金田一も誰だかわかっていないんですが。
北川 ジッチャンの名にかけて？
――金田一京助は言語学者です。アイヌの研究で有名な人ですね。
北川 辞書とかやっている人じゃないの？
――それは息子の春彦です。
藤村 探偵はやってないんだ。
――横溝正史の小説に出てくる金田一耕助は、横溝の近所に金田一京助の弟が住んでいたことからもじった名前だそうです。そこから金田一耕助の孫の金田一一が主人公の『金田一少年の事件簿』が作られたわけです。地方から出てきて東京で下宿するとその町に住み続けるという人が多いみたいで、金田一京助、春彦の家や坪内逍遥の旧居跡なんかもありました。あとは宮沢賢治ですね。宮沢も岩手の出身です。
藤村 階段の下の人だ。「注文の多い料理店」って書いてありました。「銀河鉄道」は？
――宮沢です。
北川 「セロ弾きのゴーシュ」とか。
藤村 宮沢はこんなに出てくるのに、啄木にもうちょっと頑張ってもらいたい。
北川 今回はずっとパネルを見て、あと狭い道を通ったなという感じです。
――それ以外で来ることのない場所でもありますね。特に知り合いが住んでいることもないでしょうし。
北川 啄木は昔から海に遊びに行くと銅像があるから名前はよく知ってたんですが、何者かは知らなかったので。写真で見るとカワイイ顔してますね。この顔で借金頼んでたのか。
藤村 しょうがないなそれじゃ。
北川 今回は比較的新しい歴史でしたね。それにしても不思議な土地でした。金田一の家も城壁みたいな壁があったし。坂が急で、登っていくと下の家の屋根を超えるとかなかなかない。
――縄文時代はあそこが海の縁だったそうです。ですから海の際の崖だったわけですね。そこから西に坂を下りたところが春日です。春日局の屋敷跡に由来するのですが、実際はもうちょっと西にあったようです。春日駅は後楽園駅と繋がっていて、講道館を見ました。
北川 講道館ね。滋悟郎先生。『YAWARA!』知らない？
藤村 『YAWARA!』？ 柔道の？ 聞いたことはあります。
――世代的に難しいですよね。主人公の猪熊柔のお爺さんが猪熊滋悟郎で、その名前のモデルになったのが嘉納治五郎で、柔道を作った人です。
北川 今回は石川啄木に俄然興味が涌いた。
藤村 興味ありますね。
――なるほど、では以降のボーダーズはスキャンダル系を多めにしていきましょうか（笑）。
＜INFORMATION＞
◆北川勝利
楽曲提供
8月21日デジタルリリース
Nao☆
「好きな歌をうたって」
※NegiccoのNao☆ソロ曲
詳細はこちら
https://negicco.net/news/?id=2512
ライブ出演
『花澤香菜 Zepp Tour 2024 “Memoirs and Fingertips”』
[Memoirs]
2024年9月8日(日)
KT Zepp Yokohama（横浜）
2024年9月22日(日)
Zepp Osaka Bayside（大阪）
2024年9月29日(日)
Zepp Nagoya（名古屋）
[Fingertips]
2024年10月5日(土)
Zepp Fukuoka（福岡）
2024年10月13日(日)
Zepp Sapporo（札幌）
2024年10月19日(土)
Zepp DiverCity （東京）
詳細はこちら
https://hanazawa-kana.com/news/archives/5249
北川勝利(ROUND TABLE)「LOOK AROUND vol.5」
2024年10月26日(土)
渋谷gee-ge
※Sold Out!!
◆藤村鼓乃美
サンリオピューロランドスペシャルイベント
「ピューロランドネオナツマツリ WA☆SHOWI BEAT！」歌唱参加中！
開催期間：7月12日 ～9月3日
音楽プロデュース：利根川貴之（Wicky.Records)
作曲：利根川貴之、坂和也
編曲：坂和也 & Wicky.Recordings
歌唱参加：藤村鼓乃美
イベント詳細はこちら
https://www.puroland.jp/parade-show/2024_summer_parade/
北川勝利 Twitter
https://twitter.com/roundkitagawa
ROUND TABLE オフィシャルサイト
http://www.round-table.jp/
藤村鼓乃美 Twitter
https://twitter.com/Necono3
SHARE
