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2023.05.17

WANDSがアニソンシーンに刻んだ功績ーー“J-POP×アニメ”の礎を築き上げた彼らが今放つ、『名探偵コナン』新OPテーマ「RAISE INSIGHT」に迫る

WANDSがアニソンシーンに刻んだ功績ーー“J-POP×アニメ”の礎を築き上げた彼らが今放つ、『名探偵コナン』新OPテーマ「RAISE INSIGHT」に迫る

WANDSが『コナン』に還ってきた――!今年、WANDSの20thシングルとなる最新曲「RAISE INSIGHT」がTVアニメ『名探偵コナン』の新OPテーマに起用されたというニュースが発表された際、“新曲が楽しみ!”というWANDSファンの声と同じくらいに、“WANDSがまた『コナン』のOPを歌ってくれて嬉しい”、“WANDSと『コナン』のコラボに外れなし!”というたくさんの声がSNS上に流れてきたのを思い出す。しかも、その声を上げているのは、リアルタイムの『コナン』ファンだけではない。男女問わず、長年アニメを見続けてきた年輩から10代、20代の若者まで、それはもう“老若男女”という言葉をそのまま体現する幅広い層からの声だった。それほどまでに、彼らの音楽がアニソンファン、『名探偵コナン』ファンに愛されているのには、理由がある。WANDSの長いキャリアとヒストリーが、“J-POP×アニメ”の礎をしっかりと築き上げてきたからだ。

TEXT BY 阿部美香

J-POPアーティストの先駆けとしてWANDSがアニメ界に提示したもの

WANDS×アニメのそもそもの繋がりは、90年代に遡る。WANDSがデビューしたのは、1991年12月。CMソングとなった翌年の3rdシングル「もっと強く抱きしめたなら」が160万枚を超えるヒットを飛ばし、その後も中山美穂とのコラボシングルとなった「世界中の誰よりきっと」や「時の扉」「愛を語るより口づけをかわそう」など、今もカラオケで歌い続けられているビッグヒットナンバーを連発し、J-POP界を代表するトップアーティストとなる。そんなミラクルな活躍の真っ只中の1994年、世に解き放たれたのが彼らの8thシングル。TVアニメ『SLAM DUNK』第2期EDテーマに起用された、平成アニソン史に今も燦然と光り輝くミリオンセラー曲「世界が終るまでは…」だ。

90年代当時、アニメソングを声優やいわゆるアニソンシンガーではない本格派の音楽アーティストが、人気アニメとコラボレーションすることは珍しいことだった。アニメやゲームに夢中になっている若者は“オタク”と呼ばれ、正直世の中の印象はあまり良いものではなかった、というサブカルチャー全体の印象も影響していたかもしれない。

だが『SLAM DUNK』がWANDSや大黒摩季、ZARDら、爽やかな楽曲を提供するJ-POPアーティストを多数主題歌に起用するようになった90年代半ば――特に1995年放送の『新世紀エヴァンゲリオン』の社会的ブーム以降は、アニメ、アニソンはクールでポピュラーなカルチャーとして、より広く認知されるようになる。そんな背景も後押ししてか、WANDSはそれ以降もアニメとコラボレーションを続け、『ドラゴンボールGT』EDテーマ「錆びついたマシンガンで今を撃ち抜こう」や『遊☆戯☆王』EDテーマ「明日もし君が壊れても」など、大人気アニメの主題歌を世に送り出していく。

令和を迎えた今、米津玄師やOfficial髭男dism、BUMP OF CHICKEN、YOASOBI、Aimer、Ado、Vaundy、yama……など名前を挙げればキリがないほどの名立たるJ-POP、J-ROCKアーティストがアニソン界を席巻し、ヒットを確実なものとしているが、“J-POP×アニメ”の良さをハッキリと音楽シーンに提示し、アニソンを歌うJ-POPアーティストの先駆け、レジェンドの1人として、WANDSがアニメ界に刻んだ功績は非常に大きい。昨年“Animelo Summer Live 2022 -Sparkle-”にWANDSとして初出演を果たし、会場を大興奮に包んだ彼ら――アニソンファンにとっての彼らの存在の大きさは、このような瞬間からも感じることができる。

そんなWANDSは、デビュー以降、2度のメンバーチェンジを経て2000年に解体(解散)したが、長い休息期間を経て2019年に再始動を果たした。現在は、関西のインディーズバンドシーンで活躍し様々な音楽プロジェクトに参加してきた上原大史(Vo)、第1期、第2期WANDSのギタリストとして数々の名曲を産み出してきた柴崎 浩(Gt)、第2期、第3期のキーボーディストであり様々なジャンルの作曲・編曲を手がけてきた木村真也(Key)をメンバーとして、第5期WANDSを完全復活させている。解散して約20年もの年月が経ってしまえばもう過去の人となってしまいそうなものだが、WANDSは違った。筆者も、恐らくWANDSが解体した頃はまだ物心もついていなかったであろう若いアーティストと話をしていたときに、好きなバンドの1つにWANDSの名が挙がったことに驚いた記憶がある。ミュージシャンからも一般の音楽ファンからも彼らがリスペクトされ、愛され続けている、何よりの証明だ。

そんな彼らの復活劇は、音楽ファンを喜ばせただけではない。WANDSはアニメ、アニソンファンが彼らに寄せる愛情と信頼も決して裏切ることはなかった。2020年1月、WANDS通算16th、第5期WANDSの記念すべき第一弾シングル「真っ赤なLip」が、TVアニメ『名探偵コナン』のOPテーマに起用されたのだ。余談になるかもしれないが、現在のWANDSソングライターである柴崎は、WANDS解体後も2006年には西川貴教らとabingdon boys schoolを結成、『D.Gray-man』『DARKER THAN BLACK -黒の契約者-』『戦国BASARA』など数多くのアニメ主題歌を担当し、アニソンとの縁と絆を途切らせていなかった。

「RAISE INSIGHT」が描く『名探偵コナン』への愛情とオマージュ

J-POP×アニソンのレジェンドが、新たな一歩を踏み出す場として『名探偵コナン』を選んだのは、アニソン界が彼らの音楽性を欲した必然だったのかもしれない。それが証拠に、キャッチーなメロディーと爽やかなサウンドが魅力だった解体前のWANDSサウンドを、上原のインパクトある歌声をスパイスに、よりスリリングで挑発的なロックへとアップデートした「真っ赤なLip」は、『名探偵コナン』放送1000回記念プロジェクトの一環として2021年に行われた「The Best of OPED」投票企画において、シリーズ歴代115曲の主題歌中、第1位に選ばれるという快挙を成し遂げた。

『名探偵コナン』との新時代の名コラボは、再びOPテーマを担当した2021年11月リリースの「YURA YURA」でも果たされた。どこか懐かしさを感じる、硬軟併せ持った美しいメロディーと力強いボーカル、様々な音楽的要素を詰め込んだゴージャスで腰の据わったメリハリのあるサウンドで展開するミディアムナンバーは、新生WANDSの豊かな音楽性を提示しつつ、『名探偵コナン』ファンにも好評を博した。

そして、今年のWANDSは「RAISE INSIGHT」で三度目となる『名探偵コナン』OPテーマという幸せなコラボレーションを果たす。デジタライズされたインパクト大のイントロから始まる「RAISE INSIGHT」は、これまでより引き算の魅力を発揮した上原のキレのあるボーカルと、シンプルでありながらもリズミカルなサウンドで、随所に静と動を織り込んだドラマティックな展開をフィーチャーしたロックチューン。OPテーマとしてオンエアが始まった途端、またもSNS上では“誰が聴いてもカッコいいWANDSサウンド”であり“作品にぴったりな曲”だと『コナン』ファンを沸かせた。“作品にぴったり”という言葉は、アニソンにとっては最大の褒め言葉だろう。

そして、ここで最初の話題に立ち戻る。ではなぜ彼らの楽曲は、『名探偵コナン』ファンから絶大な支持を集め続けるのか。それは、実力派アーティストとしてのWANDSが培ってきた力量が、間違いなく発揮されているからこその評価に違いない。ロックサウンドにポップな要素を加え、印象的なメロディーが耳に残るスタイルを貫いているWANDSの音楽は、ハードさとキャッチーさを絶妙なバランスで繰り広げる。これらの要素が合わさったWANDSの楽曲は、まさに“誰が聴いてもカッコよく”、幅広い年齢層にとっても聴きやすく、熱心な音楽ファンであるかないかに関わらず、万人の胸に残る。その音楽性はそのまま、ハードなミステリー要素とキャッチーな世界観を魅力とし、老若男女問わずライト層からもアニメマニアからも愛される『名探偵コナン』の作品性ととても親和性が高いのだ。

「真っ赤なLip」や「YURA YURA」でもそうだったが、「RAISE INSIGHT」の歌詞にも、“信じるべきモノ 見誤ってしまわぬように 導き出す力 RAISE INSIGHT”(“INSIGHT”とは、まさに江戸川コナンや仲間達の最大の武器である“洞察力”を意味する言葉だ)や、“He overcame his miserable past”といった、作品と親和性の高いフレーズが登場。ほかにもアニメとリンクする要素は散りばめられているのであろうが、ポジティブなメッセージを伝えるWANDSらしい楽曲でありながら、『名探偵コナン』への愛情とオマージュがしっかり込められていることも重要だ。

「RAISE INSIGHT」のリリースと同日の5月17日には、再始動後コロナ禍により二度開催を中止していた、ファン待望の第5期初の全国ツアーのファイナルを飾った神奈川・KT Zepp Yokohama公演収録のBlu-ray「WANDS Live Tour 2022 ~FIRST ACT 5th period~」も発売される。「真っ赤なLip」や「YURA YURA」はもちろん、あの「世界が終るまでは…」を含む解体前WANDSのヒット曲を、第5期ならではの新たなサウンドで聴かせるこの映像も必見。J-POP、J-ROCKシーンとアニメの架け橋となるWANDSのこれからにも、ぜひ注目してほしい。


●リリース情報
20thシングル
読売テレビ・日本テレビ系全国ネット毎週土曜よる6:00放送「名探偵コナン」OPテーマ
「RAISE INSIGHT」
5月17日(水)発売

【名探偵コナン盤(CD+Blu-ray)】

品番:GZCD-7013
価格:¥1,430(税込)
※「名探偵コナン」描き下ろしアニメ絵柄ジャケット

<CD>
1. RAISE INSIGHT
2. RAISE INSIGHT [TV-SIZE ver.]

<Blu-ray>
『名探偵コナン』ノンクレジットOP映像
「真っ赤なLip」
「YURA YURA」
「RAISE INSIGHT」

© 青山剛昌/小学館・読売テレビ・TMS 1996

【通常盤(CD+Blu-ray)】

品番:GZCD-7014
価格:¥1,430(税込)

<CD>
1. RAISE INSIGHT
2. RAISE INSIGHT [OFF VOCAL]

<Blu-ray>
LIVE 映像
「ROCK BONDZ -WANDS×BREAKERZ-」Zepp Haneda(TOKYO)公演 [2022.12.6] から3曲を収録
※ 曲目後日発表
「Burning Free」
「真っ赤なLip」
「愛を叫びたい」

LIVE Blu-ray
「WANDS Live Tour 2022 ~ FIRST ACT 5th period ~」
5月17日(水)発売

品番:GZXD-8002
価格:¥6,600(税込)

<収録曲>
01 時の扉 [WANDS 第5期ver.]
02 Secret Night ~ It’s My Treat ~ [WANDS 第5期ver.]
03 David Bowieのように
04 賞味期限切れ I love you
05 愛を語るより口づけをかわそう [WANDS 第5期ver.]
06 錆びついたマシンガンで今を撃ち抜こう [WANDS 第5期ver.]
07 もっと強く抱きしめたなら [WANDS 第5期ver.]
08 DON’T TRY SO HARD
09 星のない空の下で
10 天使になんてなれなかった
11 Jumpin’ Jack Boy [WANDS 第5期ver.]
12 真っ赤なLip
13 Burning Free
14 抱き寄せ高まる 君の体温と共に
15 愛を叫びたい
16 YURA YURA
17 MILLION MILES AWAY [WANDS 第5期ver.]
18 カナリア鳴いた頃に
EC1 Brand New Love [WANDS 第5期ver.]
EC2 アイリメンバー U
EC3 世界が終るまでは… [WANDS 第5期ver.]
+ドキュメンタリー映像
※収録時間 約110分予定
※初回プレス分のみシングルとの連動特典応募シリアル封入

<WANDSメンバーPROFILE>
上原大史 —— 第5期ボーカリスト。
関西のインディーズバンドをはじめ、様々な音楽プロジェクトに参加。その歌声、パフォーマンスがWANDSのプロデューサー・長戸大幸の目に留まり、WANDS第5期のボーカルに抜擢。

柴崎浩 —— 第1期、第2期のギタリストを務め、WANDS黄金期に数々の名曲を量産。
相川七瀬、T.M.Revolutionのライブツアーへの参加、西川貴教らと結成したabingdon boys school等で活動し、現在は自身のライブ活動のほか、作曲家、編曲家、ギタリストとして活躍。

木村真也 —— 第2期、第3期のキーボーディストを務める。
曲提供にタッキー & 翼「REAL DX」をはじめ、バンド、アイドル、舞台、ゲーム音楽まで幅広く手掛ける作曲家、編曲家、プロデューサーとして活躍。

関連リンク

WANDS
公式サイト
https://wands-official.jp/

公式Twitter
https://twitter.com/WANDS_INFO

公式YouTube Channel
https://www.youtube.com/@wandsofficial1218

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