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2023.05.10

梨沙が魅せた輝き――経験と仲間に磨かれていく唯一無二の宝石。【TVアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」第3芸能課観察記録04】

梨沙が魅せた輝き――経験と仲間に磨かれていく唯一無二の宝石。【TVアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」第3芸能課観察記録04】

TVアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」(以下、「U149」)の第5話「すごく高いのにずっと地下にあるもの、なに?」が放送された。本コラムでは「U149」の物語や音楽、アイドルたちの魅力を追いかけていく。

【特集】TVアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」が彩る夢のステージを紐解く!

【特集】TVアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」が彩る夢のステージを紐解く!

TEXT BY 中里キリ

身近な輝きに焦りを感じる等身大の心

今回のアバンタイトルは、レッスンを行ない、メイクで武装する的場梨沙の様子からスタート。レッスンルームで日が落ちても一心不乱にダンスレッスンを行なう梨沙以外に人影はなく、個人的な自主レッスンであるようだ。

そこにオーバーラップするのは、第4話で櫻井桃華がトライしたバンジージャンプの仕事に対する世の中の賞賛の反応を読み上げる仲間たちの声だ。“桃華ちゃんのバンジージャンプの動画、みんないっぱい見てくれているよ”“おー、すっげー再生数じゃん!”といった回想の声は明るいのに、そこに重ねられる劇伴音楽は繊細で少し重たい。前話の桃華の仕事に対する高評価や仲間の喜びを伝えると同時に、先頭を切って走り出した彼女に対して、まだ何もなしていない梨沙の焦りの心情やもどかしさが描かれていて効果的なシーンだ。

ほんの数秒インサートされる梨沙のメイク風景のメイク道具のディティールがものすごく細かいが、こういった小物のような細部から伝わるキャラクター性というものを「シンデレラガールズ」はとても大切にしているように思う。

続く第3芸能課の一コマもアバンと繋がった描写で、子供たちチームのキラキラな「一緒にあそぼう!」オーラに逆らえない千枝と、それをものともしない梨沙のマイペースさを見せたうえで、桃華の背中を視線で追う梨沙、そのうえで自撮りした今の自分をパパに見せるに値するものではないと判断する梨沙……というカメラの動きが本当に丁寧で、しっかりとした作りに嬉しくなる。そのあとの梨沙のパパ愛の発露のシーンの受け手が晴で、プロデューサーはちょっと離れたところでそれを聞いているという構図もバランスが良い。

そして何気ない雑談の中で登場したのが、単館上映映画「希望のプリズム(仮)」の主役オーディション話だ。いやいや顔を合わせたら開口一番に伝える話では、と思いつつも、プロデューサーがようやく大きなチャンスを取ってきてくれた。オーディションに志願した梨沙が“おしとやかで優しくみんなを助ける人気者”という主役の役柄を研究するシーンで、まさしくその役柄そのものの桃華を登場させて子供たちの面倒を見させるのが(片思い気味であるが)優しいライバル関係を感じさせる。

プロデューサーが徹夜で制作したオーディション対策ファイルを電車の中で熱心に読む梨沙。冒頭のレッスン後の帰宅シーンでは誰もいない夕暮れの車内での梨沙の孤独さが描かれていたのに対し、プロデューサーのファイルを読む梨沙の周りには多くの人がいる日常の景色が流れる。頼りなくても、自分のためを思う誰かが近くにいることが力になっていると感じられるシーンだ。

仲間を頼り、自分を変えていくしなやかさ

残念ながらオーディションは不合格となったが、梨沙には助演級の役で出演してみないかというオファーが!謝るどころかプロデューサーとしては飛び上がって喜ぶところではないだろうか。芸能界における自分の位置を把握しながらも、決して納得はしていない梨沙。主演には選ばれなかった彼女の悔しさが胸に迫るほどだ。だが不合格という結果があったからこそ、梨沙はプロデューサーを同じ列車で並んで夢を目指す存在、悩みを真っ直ぐにぶつける価値のある相手と認めたのではないかと思う。

ライバルである仲間を、プロデューサーを頼ってもいいと梨沙が心を開いたことは、何より大きな成長だ。その瞬間に流れるのが梨沙が歌う「BEYOND THE STARLIGHT」というのが最高で、妥協せずに誰より光ることを願う的場梨沙というアイドルにあつらえたような選曲だった。そこからは「希望のプリズム」の撮影現場が点描されるのだが(こういったライブステージ以外のお仕事風景が見られるのがアニメの良いところだと思う)、仲間の力を借りて、役柄に合わせて自分を変えることを受け入れるしなやかさを備えた梨沙の初出演が大成功に終わるのはもはや必然だった。

梨沙のかわいらしくも壮大な野望の披露を受けてのEDは「GEMSTONE」。原案コミック版「U149」から生まれた、梨沙の最初の、そして現時点では唯一のソロである大切な楽曲だ。ラスト、アクセサリーボックスの真ん中にプロデューサーからもらった髪留めが大切にしまわれている演出も含めて、宝石のような輝きを見せつける梨沙の魅力が詰まったエンディングだった。


●作品情報
TV アニメ「アイドルマスターシンデレラガールズ U149」

原作:バンダイナムコエンターテインメント
原案:「アイドルマスター シンデレラガールズ U149」 廾之(サイコミ連載)

【スタッフ】
監督:岡本学
副監督:高嶋宏之
シリーズ構成:村山沖
アニメーションキャラクターデザイン:井川典恵
コンセプトアート:大久保錦一
デザインワークス:
野田 猛 小田崎恵子 中村倫子 渡部尭皓 槙田路子
美術設定:曽野由大
高橋武之 金平和茂
美術監督:井上一宏
色彩設計:土居真紀子
3DCG:石川寛貢 榊正宗 神谷宣幸
撮影監督:関谷能弘
編集:三嶋章紀
音響監督:岡本学
音楽:宮崎誠 川田瑠夏 睦月周平
音楽制作:日本コロムビア
アニメーション制作:CygamesPictures

【キャスト】
橘ありす:佐藤亜美菜
櫻井桃華:照井春佳
赤城みりあ :黒沢ともよ
的場梨沙:集貝はな
結城晴:小市眞琴
佐々木千枝:今井麻夏
龍崎薫:春瀬なつみ
市原仁奈:久野美咲
古賀小春:小森結梨
プロデューサー:米内佑希

©Bandai Namco Entertainment Inc. /PROJECT U149

関連リンク

TV アニメ『アイドルマスター シンデレラガールズ U149』
公式HP
https://cinderella-u149-anime.idolmaster-official.jp/

公式Twitter
https://twitter.com/u149_anime

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