“キャラメル マシュマロ いちご飴”――Z世代に刺さる理由とは？ ガールズユニット・音莉飴と「女神のカフェテラス」OPテーマ『運命共同体！』を紐解く

『原神』のおかげで恋も“前進”？な「恋元素爆発」

カップリング曲「恋元素爆発」は、これまでの音莉飴らしさをさらに突き詰めた1曲。こちらは、世界中を席巻するオープンワールドRPG『原神』をテーマに、あかねとあかりが同ゲームへの“好き”を高じさせた結果、ファンソングを制作してTikTokに投稿してみたところ、イベントでのMV解禁という公式からのお墨付きをもらえたのだとか。TikTok、なんて夢が広がるツールなんでしょう。

そんな「恋元素爆発」は、作家陣の構成は「運命共同体！」と変わらずも、「陽キャJKに憧れる陰キャJKの歌」のような“Kawaii Future Pop”の仕上がりに。昨今のヒップホップブームにより、ラップ×オートチューンの高相性な方程式はZ世代の間にも浸透していますが、あかねとあかりのシンガーの声でありながらシンガー然を誇張しない歌声は、オートチューンの方から“ぜひともかけてくれ！”と申し出てしまうくらいの絶妙なダウナー感と、リスナーに対する親しみやすさを兼ね備えたもの。これもまた時代的にZ世代から愛される理由のひとつなのだと思います。

あわせて「原神」について歌うと同時に、楽曲の主人公に同ゲームをクラスメイトの女の子と一緒に協力プレイする男子を持ってきて、彼らの恋を“前進”させるという恋愛要素も忘れないのが大きなポイント。これについては後に詳しく話しますが、ネットゲームのプレイ中、好きな相手が楽しそうにはしゃぐ声や、思わず恋心を意識してしまうような秘密の話を聞いて、ディスプレイの前で音声をミュートして、ヘッドフォンが耳からズレ落ちそうになるほど悶えてしまったり、前日の寝不足と恋心の二乗で、ただぼーっと教室の窓の外を眺めるだけの置物になってしまったり……そんな学校生活に、誰もが憧れを抱くものだと思います。

音莉飴の音楽は、“青春を追い求める青春”や“憧れ”を描いている

ここからが、この記事で最も伝えたかった部分になります。この解釈がすべてではありませんが、音莉飴の音楽は、Z世代の俯瞰的な物の見方から生まれる“憧れ”を描いた音楽です。「陽キャJKに憧れる陰キャJKの歌」を振り返っても、主人公は「Apex」こと「Apex Legends」しか楽しみがなかった女の子。それでも、イベントで盛り上がる“陽キャJK”たちを横目に“先生たち可哀想”と、彼女たちに“うわ～”と目を細めることで、自身の“隠キャ”な生き方を正当化しながら、内心は“自分もそうなりたい”と羨む想い、言い換えれば“憧れ”を抱いていました。

彼女を“女の子”に変える洋服やメイク道具、コンタクトにも興味がなかったわけではありません。なりたくても、きっかけなしにはそうなれなかった。なにより、楽曲の締め括りに“これは女の子に憧れる僕の歌”という明確な楽曲の定義付けもなされているわけです。この“憧れ”についてのアンビバレントな心情描写が、現代の同時代的な感性に上手くマッチしたからこそ、「陽キャJKに憧れる陰キャJKの歌」はZ世代に広く愛される楽曲となったのでしょう。

@neriame_817_910 親友とオリジナル曲作った #CapCut #オリジナル #オリジナル曲 #いいね #運営さん大好き #バズりたい #JK #拡散希望 #ベルメイク #歌ってみた ♬ オリジナル楽曲 – あかね – 〚音莉飴〛 official

ちなみに余談ですが、単なる“flex”としてでなく、自身の努力によって“かわいい”を掴み取り、確かな自己肯定感をもってそのかわいさを誇るこの心理。「陽キャJKに憧れる陰キャJKの歌」のあとに誕生する「可愛くてごめん feat. ちゅーたん（CV：早見沙織）」と同様、BLACKPINKなどの登場によって、“ガールズクラッシュ”を経た時代の後押しがあると勝手ながら想像しています。

先ほどの“憧れ”の話に関連して、昨今の若者はスマートフォンやSNSの普及により、自分ではない誰かの成功や失敗などの経験談、言い換えれば他人の生活に容易にアクセスし、カリスマ的な存在とも、インスタライブなどの生配信を中心に、身近な距離感でコンタクトを取れるようになりました。そうした場でよく耳にするのが、“高校時代が懐かしい”や“高校生の頃に青春しておけばよかった”という声です。

もちろん一概には言い切れませんが、これにより高校生は、高校生活を通して“青春すること”や、そうしたシチュエーションに俯瞰的な視点から最大価値を置くことが多くなったように思えます。例えるならば、“恋に恋焦がれる”のと同じ状況。特定の物事に打ち込む本来的な意味での“青春”以上に、意図して高校生らしい青春を追い求めることこそ青春である。筆者は勝手に“人生2周目JK”と呼称しているのですが、“JKブランド”として自身の有限的なポジションを第三者視点に近いところから価値づけをしているのも、数年前とは異なる特徴といえます。

青春を追い求める青春……そうした“become”や“will be”の姿勢を、音莉飴の歌う歌詞はしっかりと反映しています。「運命共同体！」から引用すれば、“夜まで騒いじゃったり”“朝までおしゃべりしたり”。女子高生たちの一人称である“ウチら”をしっかりと拾った“ウチら運命共同体！”のフレーズなんて、LINEグループの名前になっていても違和感はありません。「恋元素爆発」で描かれるクラスメイトとのゲームの時間や胸に秘めたる想い、「陽キャJKに憧れる陰キャJKの歌」の“女の子”になるまでのストーリーも同様。今の女子高生、ひいてはZ世代が意図して追い求めるような青春の光景が、音莉飴の音楽には広がっています。

@neriame_817_910 こんな展開ある？ない#CapCut #あかね #アオハル #歌ってみた #オリジナル #オリジナルソング #オリ曲 #フリトラ #バズりたい #ベルメイク #恋 #乙女 #イケボ #運営さん大好き #作詞作曲 #ケロケロ ♬ アオハル – Akane

こうした歌詞を、他ならないZ世代のクリエイターである音莉飴が作り上げている事実がまず貴重ですし、前述のような“青春の光景”を、意図的か感覚的かはわからずとも、しっかりと歌詞の中で掬い上げている点に、ファンもまたジブンゴトとして共感を抱かざるを得ないのでしょう。だからこそ、音莉飴は時代に求められる存在として、今回のメジャーデビューにまで至ったのではないでしょうか。

と同時に「運命共同体！」から感じられた通り、ユニットとしての新たな表現を模索している部分もありそうな予感。いずれにせよ、今後さらなる存在感を放っていくことに間違いはありません。音莉飴をチェックする以外の選択肢なんて、もう見つかりませんよね？

●リリース情報
音莉飴メジャーデビューシングル
「運命共同体！」
2023年5月24日（水）発売

■mora
通常／配信リンクはこちら
ハイレゾ／配信リンクはこちら

【通常盤（CD）】
定価：￥1,200（税込）
品番：AICL-4377

【期間生産限定盤（CD＋BD）】
定価：￥1,750（税込）
品番：AICL-4378～9

＜CD収録内容＞
01. 運命共同体！（※4/8 先行配信予定）
02. 恋元素爆発（※4/15 先行配信予定）
03. 陽キャJK憧れる陰キャJKの歌 (Single Version)

＜初回仕様限定＞
アナザージャケット封入

＜BD収録内容＞※期間生産限定盤のみ
01. TVアニメ「女神のカフェテラス」ノンクレジットOP映像

■音莉飴プロフィール
あかね・あかりが作詞・作曲・編曲を行う青森出身の二人組ユニット。Z世代ならではのキラーフレーズが散りばめられた一度聴いたら忘れられない歌詞と、J-POP・HipHop・Kawaii Popなどから影響を受けた独自のサウンドが注目されている。「陽キャJKに憧れる陰キャJKの歌」がTikTokで大流行し、YouTubeでは1000万再生を突破。「アオハル」「食べたい。」｢ふわ恋｣など新曲をリリースするたびにSNSで話題を呼んでいる。