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INTERVIEW

2022.09.07

【インタビュー】進化を遂げたGeroの新境地! 多数のクリエイターを迎えたニューアルバム『Parade』の制作過程に迫る!

【インタビュー】進化を遂げたGeroの新境地! 多数のクリエイターを迎えたニューアルバム『Parade』の制作過程に迫る!

歌い手・Gero、大変身!ネットカルチャーの最先端と接触した傑作『TOKYO HAZE』から2年、驚くべき進化を遂げたニューアルバム『Parade』がリリースされた。今年に入って多くの話題を集めた「ヴィータ」をはじめ、現在のシーンのトレンドと呼応した本作は、Geroらしく、しかしその根本を見つめ直して生み出された新境地ともいえる一作となった。新しくもかっこいい、ズバリいって最高傑作である『Parade』が生まれる過程をGeroにたっぷり語ってもらった。

自分の嫌なクセを削ぎ落とすボーカルに

――いよいよリリースとなったニューアルバム『Parade』ですが、素晴らしいですね!

Gero ありがとうございます!

――2020年にリリースされた『TOKYO HAZE』も、近年のボカロPを中心とした今の時代にアジャストした一作でしたが、そこから本作までも制作の仕方に変化はありましたか?

Gero かなり違うかなと思っていて。『TOKYO HAZE』は僕が変化し始めた第1弾というアルバムで、今回がその先という感じなんですよね。そういう意味では『TOKYO HAZE』の続編というか、2枚組みたいな感覚で作っていたんですけど、曲自体もジャンル的に今までと違う、いわゆるバンドっぽい曲が少なくなってきましたし、歌い方やニュアンスも違ってきている、これまでの作品とはまったく違いますし、いい意味で進化できているアルバムかなと思いますね。

――まさに、Geroさんのシンガーとしての一般的なイメージは、ハードロックやヘビーメタルを基調とした激しい歌唱という印象がありますが、そことはまったく違うニュアンスがあるというか。

Gero 具体的に言うと、一番は自分自身の嫌なクセを削ぎ落としていったんですよね。僕って結構クセのあるボーカリストで、好きな人は好きだけど苦手な人は苦手っていう認識は自分でもあって。それはそれでアリだろうなって思っていたんですよね。でも、今回は良いクセは残しつつ嫌なクセは削っていこうと思って。そこはボーカルとして大きな変化ですね。

――自身のアクをすくっていくような作業があったわけですね。

Gero ありましたありました。ハードロックやメタルの曲だとそのクセは合うんですけど、今僕がやりたいことにはあまり合わないのかなっていうのを感じていて。「この曲だとこの歌いまわしは合わないのかな」とか、結構模索しながらレコーディングしていきました。

――そうした結果が、今回のデジタルなアプローチ中心の楽曲になっていったというわけですね。

Gero 僕も全体的には、もうちょっと激しくなるのかなと予想していたんですよ。「ヴィータ」を作って発表したときにはもう何曲かクリエイターさんにお願いしていて、その段階では「ヴィータ」の方向性が多いのかなって。でも、蓋を開けてみたら落ち着いた曲が多くて、そこはちょっと僕も予想していなかったんですけど、最終的にはまとまったアルバムになりました。でも最初はやっぱり「ヴィータ」を軸に考えていましたね。「ヴィータ」は僕も大好きな曲だったので、これを軸にバランスを考えて作家さんや曲を考えて作っていきました。

――今年2月に「ヴィータ」を発表して以降、「ほっといて。」「火曜日はチューデイ」と続けてリリースしていきましたが、そうした動画投稿とアルバム制作の並行した作業はいかがでしたか?

Gero 楽曲は一人一人にお願いして、(所属レーベルの)NBCユニバーサルさんと曲のラフをチェックしていって、いついつにこの曲を投稿する、じゃあイラストレイターさんは誰にお願いする、じゃあ動画制作はこの人に……ってやっていくんですけど、そのスケジュールを全部自分で確認しながら進めていったんです。もしかすると録音だけしていると思われていたかもしれないですけど……めっちゃ忙しかったんですよ(笑)。

――全体を管理するのは大変ですよね。

Gero 打ち合わせとレコーディングの毎日でしたね。ちょっと話が戻るんですけど、『TOKYO HAZE』を作っているときはコロナ禍で色んなことが変わってきて、それに合わせて自分も変化していく途中だったんですよね。もちろん今までの自分っぽい曲もあったんですけど、今回のアルバムより『TOKYO HAZE』のほうが迷いながらやっていたんですよ。今までロックしかやってこなかったので、「こういう曲はどういうニュアンスをつけて歌えばいいのか」「どういうアプローチでやればいいのか」って頭を抱えながらレコーディングしていて。でも、前回に比べて今回はスムーズにできました。やっぱり、人間やればできる(笑)。

――『TOKYO HAZE』での経験が『Parade』の制作に活きたと。

Gero ほかにも、この前「ド屑」(オリジナル:なきそ)っていうボソボソと歌う曲をカバーしたんですけど、ボソボソ歌う曲なんか歌ってきたことなかったんですよね。でも『TOKYO HAZE』をやったあとだったから新しいニュアンスや表現ができて。それも、今回のアルバム曲「■(再生停止)」とかに活きていますね。

――あと……本作は全10曲で約30分なんですよね。

Gero そうです、短い(笑)。

――『TOKYO HAZE』が約40分でした、それを更新するコンパクトさは今っぽいかなと。

Gero 僕、短いアルバムって結構好きなんですよね。20年前くらいからCDを集め始めたんですけど、当時は短いアルバムは珍しくて、メタルとか8分の曲とかあるじゃないですか(笑)。でも短いアルバムって聴きやすくて好きで。今回特に狙って30分にしたわけじゃないですけど、これはこれで新しい境地なのかなって。

――1曲が2分のもあって、これは構成の妙なのかなと。例えば構成もAメロ、Bメロ、サビから2番でAメロ、Bメロ、落ちサビ、サビで終わるというものもあって。そうした構成は事前にオーダーのときに伝えているんですか?

Gero 半分くらいは「こういう構成で」って伝えました。「ほっといて。」とか「シャカセポ」とかがそうかな。僕はあまりオーソドックスな構成が好きじゃないとか、例えば2番のAメロも変化があってほしいし、1サビ終わったら2Aいかずに2B、そしてサビみたいな、今の流行りというのは自分でもお気に入りで。

楽曲ごとに変わっていくボーカルアプローチ

――ではそんな『Parade』の楽曲について伺っていきます。1曲目の「Stupid Fellows」は、FAKE TYPE.によるエレクトロスウィング的なサウンドですね。

Gero エレクトロスウィングは歌ったことなかったんですけど、曲調は好きで。特にシャッフルビートが好きで、FAKE TYPE.さんも3年くらい前から「Mister Jewel Box」とかでハネていて自分も聴いていたので。ただすごく難しいじゃないですか、こういう曲って。FAKE TYPE.さんの早口ってしっかりやるとドン引きするくらい難しくて。

――冒頭からテクニカルなボーカルアプローチになりましたが、レコーディングはいかがでしたか?

Gero もう、めちゃくちゃ楽しかったですね。打ち合わせ段階で「ラップはどれくらい難しくしますか?」って聞かれたんですけど、「ラップもあるけど歌っぽいところもしっかりあって、これくらいできるかなGeroは、っていうのをやってみてください。無理だったらお返しします」って(笑)。

――難しかったら差し戻すと(笑)。

Gero 返還させていただきますって(笑)。でもすごくいいバランスで「ギリ歌えるな」っていうのが上がってきて、臨み甲斐のあるワクワクするような曲が届いて。FAKE TYPE.さんは仮歌で納品していただいたので、ご本人のカラーも残しながらGeroらしさも出せたかなって。

――このアルバムの幕開けには驚かれる方も多いんじゃないかなと。

Gero 今までは絶対激しい曲だったんですけど、今回はわざと外しました。いつも通り行こうかなって思ったんですけど、あえて。

――そしてそこから先行配信された「ヴィータ」へと続きます。とにかく今年はこの曲に大きな注目が集まりました。

Gero そうですね、ありがたいです。

――以前も「リスアニ!」本誌連載で話していましたが、とにかく膨大なテイクを録るというレコーディングだったそうで。

Gero アルバム全体を通して、この曲が一番大変でした。そもそもメインボーカルがあって、ハモリ自体が4声あって、それをダブルで録って、コーラスも4~5人くらいいてそれもダブルで……ってやったので、とにかく録る本数が半端なかったというのと、(柊)キライさんの本気のリテイク。

――本気のリテイク!

Gero 僕が言ったんですよ。「本当にいいものにしたいので、ちょっとでも気になることがあったら言ってください、全部録り直します」って。そしたらめちゃくちゃ来て、ありがたいことなんですけど、泣くっていう(笑)。

――それだけにクールなボーカルも含めて素晴らしい仕上がりになりましたね。

Gero これも3年前の自分だったらもっとクセをつけて歌っていたと思います。これでもクセはありますけど、あえてちょっとクールめに歌うことで、曲もクセがあるのでそことぶつかり合わないようにしました。歌い終わって心から良かったと思える曲です(笑)。「これ、本当に終わるのか……?」と思っていたので、それが評価されて良かったです。

――続いては¿?shimonによる「ミュータント」です。こちら中盤にラップが入っていますが……。

Gero ラップのところは¿?shimonさんです。「ミュータント」は色々あって、最初は入れる予定じゃなかったんですよ。当初アルバムは9曲で決まってたんですけど、あと1ヵ月くらい余裕があるなってというときに、¿?shimonさんがボカロで「ストレンジ」という曲を発表していて、「何このかっこいい曲は?」ってなって、次の日スタッフさんに連絡して、それですぐにオファーしてもらってその日のうちにタイトルから決めたのかな?

――タイトルから決めたんですか?

Gero そうですね。¿?shimonさんって変わった人で、タイトルから先に決めたいってなって、それで「ミュータント」ってどうでしょう?って。僕「X-MEN」好きだし(笑)。曲の中に結構ラップっぽいパートが入っていたので、「ラップ歌ってくれませんか?」ってお願いしたら、「お、楽しそうですね!」って言ってくれて歌ってくれました。

――驚かれる方も多いかと思いますが、非常にかっこいいですよね。そしてこちらも先行で配信された「ほっといて。」ですが、改めてここでのボーカルのイケメンぶりが最高だなと。

Gero はははは、本当ですか?(笑)。

――非常にクールでスタイリッシュな歌唱がキマっているなと。レコーディングはいかがでしたか?

Gero めちゃくちゃ難しかったです。聞いているぶんには楽しくて、シンプルな構成でサラッと聴けるんですけど、歌っている側としてはこのテンポでこの上げ下げが激しいシャッフルって!と、思わず笑っちゃいました(笑)。

――意外とというか、テクニカルなところを求められた楽曲だったと。

Gero 本当に難しい楽曲で、明るくて楽しい楽曲なんですけど、泣きながら歌っていました(笑)。アルバム全体としても楽曲に求められるものが多くて難しかったんですけどね。

――そしてお馴染みHoneyWorksとの「火曜日はチューデイ」。「金曜日のおはよう」「水曜日の約束」に続く人気シリーズの最新曲ですね。

Gero 曜日シリーズってこれまでもありましたけど、そのなかでも一番おとなしめかな?って。キスを題材にしているのでムーディーでもあって。でも、元々このシリーズは特殊で、「告白実行委員会」の濱中 翠くんとして歌っているので、キャラソンみたいな扱いなんですよね。そこで僕のスイッチが変わる感じで。そこはいつもと違うマインドで歌って、温かい気持ちになってくれたらなって思っています。

――たしかにそういうチャーミングな歌唱が印象に残りますよね。

Gero あとHoneyWorksの曲って、ボーカルのピッチをとるときにフェードをかけてピッチを取る方法が合わない曲で、カクカク歌うのが合うんですよね。

――目標とする音に最初から合わせなくちゃいけないという。

Gero そっちのほうが難しいので、意外とHoneyWorksの曲って大変なんですよ。

次ページ:時代に調和しながら、やりたいことをやる

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