リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

INTERVIEW

2022.07.27

【インタビュー】誰もが胸の中に持つ“懐かしい夏”が、ここにある――青山吉能「あやめ色の夏に」リリースインタビュー

【インタビュー】誰もが胸の中に持つ“懐かしい夏”が、ここにある――青山吉能「あやめ色の夏に」リリースインタビュー

直前で楽曲変更!? 大きな影響を与えられた出来事とは

――そこから「あやめ色の夏に」に変わったのは、なぜですか?

青山 プリプロの数日後、たまたま町内会の掲示板みたいなものに貼ってあった「近くでお祭りがある」というお知らせを見まして。それはちっちゃい神社のちっちゃいお祭りなんですけど、屋台も並ぶようなものと聞いて「東京にも、そういうお祭りがあるんだ!」って嬉しくなっちゃって。家の近くだったので当日行ってみたら……「普段、どこにこんなに人が住んでるんだろう?」って思うぐらい、人がギュッと集まってたんです。

――もう、驚くくらい。

青山 はい。しかももう、ほぼ子供で。子供って大人になるとなかなか会わないから、大勢の子供がいるのにいたく感動しまして。そこで、私が高1の花火大会で感じた雰囲気を思い出すようなやり取りをしている子たちを見かけたんですよ。

――どんな子たちだったんですか?

青山 友達グループ同士で行った男の子たちと女の子たちがたまたま会ったみたいで、女の子は真ん中の子がちょっと後ろに下がってもじもじしてるし、男の子のほうが「お前いけよ」「いやお前が」みたいに譲り合ってて。「え?恋の花火も上がっちゃう!?」みたいなもどかしい雰囲気が、そこにあったんですよ。しかもまわりを見たら提灯がぼんやり光ってて、美味しい焼きそばの匂いもして、「ぃらっしゃいやせー!」っていう威勢のいいお兄さんたちの声も聞こえて……もうすべてがよかったんです!そうこうしているうちにいい具合に日も暮れきて、人の顔もちょっと薄暗くなっていって……その子たちを見ながら、ビールをもうバッコバコ飲みました。

――酒の肴に(笑)。

青山 お祭り全体の雰囲気も思わず写真に撮っちゃうぐらい素晴らしい“夏”にあふれるものだったので、「これを歌で表現したい!」という想いが湧いてきたんです。でもその気持ちとプリプロ済みの曲がどうしてもマッチしなくて、どうしようかと悩んでいたら……頭の中にあの懐かしい夏を呼び起こすようなイントロが流れ始めて。「私はこの曲を歌いたいのかもしれない」と思って、即プロデューサーに連絡してこの曲にしていただきました。

――なるほど、急ピッチになった理由はそこにあったんですね。

青山 ほんっとに皆さん「はぁ?」って思われたでしょうけど、本当にありがたいことに私の気持ちを最優先に動いてくださったんですよ。「Page」のときも別の曲に決まっていたところから、私がビビッときて「どうしても矢吹さんのこの曲が……」と言って変えていただいたので、自分でも「三度目はないぞ」という気持ちではいるんですけど……でも、運命的ですよね。あの掲示板を見なければお祭りに行かなかったし、あの中学生たちが生まれて出会ってなければあの光景にも触れられなかったわけだから。すごい奇跡ですよね。

――今回は作編曲された永塚健登さんが、歌詞も手掛けられています。

青山 なので、私があのとき感じた気持ちをわーっと文字にしてまず永塚さんに送って歌詞にしていただきまして。私の記憶や、いろんな夏の作品から受けたインスピレーションをもとにした「こんな夏、過ごしたかったな」みたいな気持ちを込めて、歌っていきました。

――そうなると、歌のアプローチも「Page」とはまた変わりますよね。

青山 全く変わりました。今回は私がお祭りで見た光景がきっかけというのもあって、その光景を見ている自分と、その先にいる高1のときの自分というふたつの世界を行ったり来たりするような感覚がありまして。

――俯瞰している部分と、その景色の中のひとりになっている部分の両方がある。

青山 はい。だから「Page」とは全く違いましたし、最初はプロデューサーとも見方がなかなか一致しなかったんですよ。私は元々キャラクターソングとして「誰かの人生で、歌をうたう」ことばかりをしてきていたし、今回は在りし日の夏を歌いたかったので、青山吉能ではないけど青山吉能である“青山吉能α”とでも言うような存在が必要だったんです。でもプロデューサーは元々声優やアニメの曲を全くやってこなかったので、“違う人で歌う”という感覚がわからない。だからお互い意見を出し合ったり目指す方向をお話しながら……でもお互い譲らないところは譲らず、戦いながら上を目指していったような感じでした。

――ただ逆に、その両方の見方があったからこそ、曲中での目線の切り替えが作り込めたのかもしれませんね。

青山 そうですね。だから今回はどちらかというと、自分の意思があるというよりも“青山吉能α”の意思や人生を描いたような曲になっているので、だからこそ皆さんそれぞれが似たような記憶を呼び起こされたり、より共感ものになっているんじゃないかなと思っています。そこにたどり着くために、私が知らなかった部分についてはうまいことプロデューサーに引き出してもらったので、本当に「音楽って、共同制作なんだなぁ」とも感じましたね。

――楽曲とマッチするいい塩梅での淡々とした歌声もこの曲ならではのポイントですし、より聴く側の共感を深めるように思います。

青山 それは、すごく狙ったポイントでした。私は「声も楽器のひとつだ」と思っているので、だから「歌いたいように歌う」曲も「楽器の一部として存在する」曲もあって。今回は、どちらかといえば後者寄りの気持ちで歌ったんです。でも逆に、今までは感情オーバーヒート型のキャラクターとして想いのままに歌わせていただくことも多かったので、“訥々と”という感じを出すのがめっちゃ難しくて!

――俯瞰して歌わなければいけないところで、どうしても感情が乗りすぎてしまったり?

青山 はい。自分で言うのもなんですけど、今までは感情を乗せて歌うことを結構得意にしていたので、今回は特に「抑えているつもりだけど抑えきれていない」がほんっとうに多かったんですよ。

――でも淡々としすぎると、それはそれで棒っぽくなってしまいますからね。

青山 しかも、逆に曲にも合わなくなっちゃうんです。でも訥々とは歌いたかったから、自分の歌っている感覚と実際に出ているものの違いを理解するために、歌ったら一旦聴いて確認して「ここをこうしましょう」と決めて、もう1回歌って聴いて……ということを繰り返して、時間をかけてレコーディングしていきました。なので今回は、表現者としても1個大きな壁に立ち向かった曲にはなったと感じています。それを乗り越えられたかどうかはまだわかりませんけど、もっと上を目指したいですね。まだまだ、鍛錬の途中だと思っているので。

――そうやって丁寧にレコーディングされたとなると、ライブではどんな形になるのかも気になります。

青山 たしかに。この曲、ライブで歌ったらどうなっちゃうんでしょうね?「Page」みたいな曲は感情が乗れば乗るほどライブならではの良さが出るんでしょうけど、この曲って感情が乗ることによる良い作用があまりなさそうなんですよ。ほら、流れ星も1個がスッと流れるから美しく見えるわけで、いっぺんに100個も流れたら全然風情がないじゃないですか?だからこの曲は、テンションが上がったなかでも一筋の流れ星だけを流す、みたいな特訓が必要になってくるんだと思います。

――そこが、鍛錬したいポイントなんですね。

青山 そうですね。でもまだまだ伸びしろがあると思えて頑張れるのも、嬉しいことですね。

――リリースを前に楽曲も公開され始めて、ファンの方からの反響も届き始めているのでは?

青山 そうですね。ラジオで初解禁になったときも、ありがたいことに反応がすごく良くて。「よし、青山吉能、音楽に妥協なし!了解!」みたいにつぶやいて、安心してくれていた方もいらっしゃったとスタッフさんから伺いました(笑)。もちろん最初から妥協せずにやってはいますけど、自分からそれを言っちゃうのって超ダサいじゃないですか?でもそうじゃなくて、音楽を聴いただけでそう感じていただけることってやっぱりかっこいいなと思うので、その想いが通じて嬉しかったです。

次ページ:自分の感覚を信じすぎなかったからこそ、理想の光景に近づけたMV

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP