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INTERVIEW

2022.07.21

【連載】アニソン制作の実情を語る!『くノ一ツバキの胸の内』EDテーマプロジェクト『くノ一ツバキの音合わせ』スペシャル座談会 第2回:音楽プロデューサー・山内真治×伊藤 翼×青木征洋(ViViX)×菊池亮太×氏原ワタル(DOES)

【連載】アニソン制作の実情を語る!『くノ一ツバキの胸の内』EDテーマプロジェクト『くノ一ツバキの音合わせ』スペシャル座談会 第2回:音楽プロデューサー・山内真治×伊藤 翼×青木征洋(ViViX)×菊池亮太×氏原ワタル(DOES)

計算のうえ構築されたこだわりの「仕掛け」

――それでは続いて第7話の菊池さんのアレンジについて伺っていきましょう。

伊藤 もうイントロからやられましたね。自分もクラシック畑の出身ではあるので、ピアノの曲は大好きでいつも聴いているんですけど、そのいつも聴いていたクラシックの要素がAメロ、Bメロとピアノでしっかり構築されている。僕にはこれができないんですよ。で、ピアノで全部押していくのかと思ったら、サビでしっかりほかの楽器もばーんと入ってきて、またちょっと面白いサウンドが作られていた印象でした。良い意味でジャンル不明というか、キャラクターに強くフォーカスしたサウンドだったのかな、と。どうなんでしょう?

菊池 キャラクターというか、ジャンルにこだわるよりも、オーダーに対してどう答えるかを重視して自分の中の引き出しから引っ張り出してきた結果、ああなったっていう感じかもしれないですね。そうしたら、結果的にクラシック要素が多くなった。

伊藤 なるほどなぁ……。

――ちなみにオーダーはどんなものだったんですか?

菊池 オーダーは、「ショパンみたいな感じでお願いします」です。だからショパンのフレーズをモロに入れようと思った(笑)。で、全部が全部ではないんですけど、せっかくなんでちょっとクイズっぽい感じにしたら楽しめるかなと思って、9個くらいショパンのフレーズを散りばめています。

――山内さんのクラシックをリファレンスにしたオーダーの2つ目だったんですね。前回のha-jさんのときも「チャイコフスキーで」というオーダーでしたけど。

山内 そうですね。でも、同じクラシックを元にしたオーダーでも、ha-jさんと菊池くんでは発想のポイントが違ったんです。菊池くんの場合は完全に、クラシックを超絶技巧で弾かせたら随一のプレイヤーというか、僕の中では勝手に「現代のリスト」だと思っているので。

伊藤 か、かっこいい!

山内 白戸さんから「菊池くんでいきたいんです」って言われたときに、何気に僕、菊池くんと付き合い長いんですけど、「おお、白戸佑輔の口から菊池亮太という名前が出てきた」と驚いたんですよ。そして「ピアノを弾き倒してもらってください」というオーダーというか、発注の元になるコンセプトが白戸さんから示されたんで、あ、もうこれは、良かった、みたいな。

伊藤 お付き合い長いんですね、菊池さんと山内さん。

山内 長いですね、実は。YouTuberになる前からだよね?

菊池 そうですね。8、9年前くらいから色々と。最初はたしかレコーディングの現場でお会いして。

山内 そうだね。LiSAの曲のレコーディングで会った。モニター越しに見たプレイがあまりに衝撃的だったんです。

菊池 それがきっかけで、のちのち作曲家としても面倒を見ていただくことになった、と。

――なるほど。では流れを戻して、青木さんはいかがでしたでしょうか。菊池さんのアレンジをお聴きになられて。

青木 いやもう「ピアノ羨ましいなぁ」というのが真っ先に出てくる感想です(笑)。僕もギターを始める前まで10年間くらいクラシックピアノをやり続けていて、心が折れてギターにいったので。ピアノが弾ける人に対するリスペクトと憧れと嫉妬が激しく渦巻きました(笑)。「すごいな、さすが菊池さんだな」と。ピアノだけのバージョンのアレンジもYouTubeに上がってたりするので、それを聴いても改めてすごいなと思ったんですけど、アニメで流れたものはピアノだけでずっといくのかなと思ったら、サビでクッッ!と盛り上がるアレンジじゃないですか。で、その盛り上がるところの助走。すーっと引いていって、クッッ! と盛り上がるこの段差の、高さが、めちゃくちゃちょうど良いなと思いました。あそこでいきなりガンッ!と上がってしまうと、きっと耳がびっくりするじゃないですか。ちょうど良く、でもはっきりと盛り上がったとわかるあのジャンプの高さの計算された感じが、優れた鍵盤奏者であるだけじゃなく、アレンジャーとして適切なところを見極められる目や腕を持ってるんだなと感じました。

氏原 スーパーピアノっていうのはもう、さることながら、イントロからの雰囲気。「ここまで変わるか」ってびっくりしましたね。そこまでの話数で一番、「ここまでアレンジで雰囲気が変わっちゃうんだ」と感じられる曲でした。ピアノをただガーッと弾くだけじゃなくて、その奥にあるイメージが、なかなか生み出しにくい音楽のエグいところまで届いている感じ。しかも皆さんおっしゃるように、サビでちょっとポップにして、ふっとまとめ上げる。そういう技法というか、雰囲気の作り方が素晴らしいなと思いました。

――では、そんな流れを受けて菊池さんご本人のこだわりをお聞きしたいです。

菊池 先ほどお褒めいただいた部分ではあるんですけど、意識した点としては、クラシックピアノってあまり「クラシック」と意識しすぎるとレンジが広くなりすぎて、サビにジャンプアップするときとかに、かなり極端な方向にいく可能性をはらんでいるんです。そうなってしまわないように、俯瞰で全体を見ることを心がけながら、作ってはいました。

菊池亮太

菊池亮太

――皆さんが指摘されていたところは、やはり計算でちゃんと構築されていた。

菊池 やっぱりピアノをメインで、ほぼ途中までそれだけで構築していくというのは、トリッキーな方法ではあったので……。自分は元々ピアノを弾くことをメインにやっている人間なので、本能的に「ピアノを弾く」行為に溺れそうになってしまう。そうならないように、アニメの世界観やキャラクターの設定だったりを見たうえで、崩さない範囲でピアノを弾くことを常に意識して全体のアレンジは作りました。で、そこからさらに意識した点としては、ただクラシックみたいな感じでやっても面白くないというか。それはそのままオーダーに応えるだけなので、どうなんだというか。何か仕掛けを入れたいと考えたときに、ショパンのフレーズを入れてしまおう、と。「くノ一ツバキの音合わせ」という企画の中で出す動画だとか、こういうインタビューだとかで、何かネタとして使えるかもしれないということも考えながら(笑)。

――そこまで考えて。

菊池 ちょっと試してみた感じですね。あと何を聴いてほしいかというと、もちろんピアノがガンガン耳に入ってくるアレンジだと思うんですけど、どういうふうにオブリガードを入れているかとか、音数多い割に歌を邪魔しないようにどうしたらできるのかっていうことをかなり想定して作ったアレンジでもあったので、そこまで踏み込んで聴いてもらえると、ピアニストではなく、アレンジャーとしての自分は嬉しいですね。

――1曲の中にプレイヤーとしての菊池さんと、アレンジャーとしての菊池さんの二面がある。

菊池 そうですね。注目していただく点をちょっと変えていただくだけで、聴こえ方が変わってくるかもしれないです。

「プレイヤー」「アレンジャー」、そして「バンドマン」だからこそのベストマッチ

――プレイヤーとしての一面がある方がアレンジャーをやるときって、先ほどの青木さんのお話もそうで、このあとの氏原さんのお話もきっとそうだと思うんですけど、やっぱり曲を作るときにせめぎ合いがあるものなんでしょうか。曲を完成させていくときにプレイヤーとしての自分と編曲者としての自分がコンフリクトしちゃう、みたいなことってあります?

青木 ありますね。

菊池 そうですね。

青木 曲が求めているものよりも自分のスキルレベルが著しく低かったりするときに一番困るんですよね。頭の中ではこういうフレーズが鳴ってるのに自分の手はそうは動かない、みたいな。プレイヤーだからこういうフレージングが物理的に可能なことは知ってるんだけど、自分ではできない、みたいなジレンマにぶち当たることがすごい多いです。

――逆にプレイヤーとしてはもうちょっとここはガーッ!と激しく弾いてしまいたい、みたいなのはないんですか?

青木 ああ、それもあるんですけど、それをやった結果を最終的に聴いたときに、そこがノイズになっちゃうことが経験上多いので、自分のパッションでいきたくなったときに「ここは本当にいっていいのか?」みたいなことは、若い頃に気をつけるようになりました。今はそこを見極めるまで、アクセルを踏まない癖はついてます。

――ほかの皆さんも今の感覚ってわかるお話ですか?

菊池 そうですね。まさに僕もプレイヤー出身の編曲者だったりするので、自分の本能的に楽器を弾く気持ち良さみたいなものって、意識しないと抗えない部分があったりするんですよ。なので、さっきも話したかもしれないんですけど、その本能的に弾いてしまった結果、曲のアレンジの流れでノイズになってしまう部分を、どういう角度から避けるかみたいなことは、アレンジをする際意識する点ではあるかもしれないですね。

伊藤 自分もプレイヤー出身ではあるんですけど、そんなにプレイヤーとしての仕事はしてなかったんですよね。プレイヤーとしての感覚とはまた違う話かもしれないんですけど、編曲の中のストリングスアレンジだけを請ける仕事も結構多いんです。そういうときに、結構自分もストリングスに入れ込んでしまうことがあって。思うがままに書き綴ると、ラインが増えまくってしまう(笑)。それこそ歌を食ってしまうくらい、メロディにガンガンぶつかってしまうラインを書いて、聴いてみると「うーん、ぶつかってるな。間引こう」みたいなことはよくあります。

――氏原さんはどうですか?知ったような口を効くようで気恥ずかしいのですが、バンドスタイルでのアレンジは、また今の皆さんのお話とは違うものなのかなと……。

氏原 僕はですね、バンドでもアレンジを全部僕がやるんです。スタジオでメンバーと一緒にやっても、あんまり上手くいかないことが多くて、昔からそうなんです。で、演奏のテクニックもそれほどないし、プレイヤーっていうよりも、なんだろう……バンドマン、表現者、みたいな意識のほうが強いんです。歌詞や声も含め、トータルでバンドっていう生き物を作り上げるだけなんですよね。で、何を思って、どういうふうに作っていくのか、それが世の中にどう響くのかくらいしかあまり考えない。下手くそだから、そのなかで工夫してやるだけなんですよね。なので、皆さんの話を聞いてるともう、嫉妬しかないですね。

伊藤 いや、でも今のお話を聞いてまさにというか、氏原さんの第8話のアレンジはパッションに圧倒されたんですよ。第1話から第8話までの曲を聴いたとき、一番歌が前にくる感じが強かった印象で。で、青木さんのギターヒーロー的なギターとはまた違って、バンドとしての一体感みたいなものがあって、聴いていてずっと心地良い。それでいてサビの歌の前にくる感じは、燃えましたよね。キャラクターとの相性もあって、すごく楽しく聴けました。かっこ良かったです、本当に。

青木 亥班のキャラクターとのマッチング度もものすごく高いんですよね。第8話までの中で一番、キャラクターの絵と曲の合致度がダイレクトにくるアレンジでした。多分それは、氏原さん自体のアレンジメントの良さと、そこに対してオーダーをするというか、このキャラクターには氏原さんが一番はまるアレンジをしてくれると判断したプロデューサーの考えがミラクルマッチしてるのを感じます。それこそポール・ギルバートとかガスリー・ゴーヴァンみたいなテクニカルの鬼、機械的に弾けるギタリストが弾いてしまうと、絶対この雰囲気は出ないと思うんですよ。ただただ縦の線が揃ったギターになっちゃう。そうじゃなくて、バンドの中のギタリストとして、ちょっと荒っぽくやる演奏もそうだし、音作りの感じもそう。そこが亥班のキャラクターのがさつさというか、力を持ってる感じと、若干バカっぽい感じにマッチしてて、これが原曲だったと言われても疑わないアレンジだなと思いました。

――山内さん、そこは最初から「ここはこの組み合わせで」と思い浮かんだ感じだったんですか?

山内 そうですね。というか、白戸さんもうちの西田D(圭稀/アニプレックス・音楽ディレクター)も、「亥班は氏原さんでしょう」と、せーの!で決まった感じでした。何の示し合わせもなく。で、上がってきたやつを聴いて、「これです、これ。ばっちりです」みたいな(笑)。

伊藤 一番やろうと思ってできないアレンジだと思いましたね。

山内 「プレイヤー」とか、「アレンジャー」とはまたちょっと違った、「バンドマン」のパッションというか、血がそのまま注ぎ込まれている感じね。全員の感想が、「かっこいい」って言葉に集約されるイメージ。声優さんもそのへんのことを意気に感じて歌ってくれた気がしました。第8話の物語の内容が伏線回収が上手くいった、亥班がある種の主役の回であったのも良くて、あの流れでエンディングに氏原さんのアレンジがハマってくると、もう、かっこいいを超えて、「好きです!」と言いたくなる感じになりました(笑)。最高でした。

菊池 いやもう、本当に「かっこいいなぁ」という言葉に尽きますよね。個人的な話をしますと、僕は『銀魂』のアニメがドンピシャな世代で、そこでDOESの曲を初めて聴いたときにめちゃくちゃ感動して、自分自身がバンドをやる原動力になったんです。バンドの初期衝動がテレビ越しに伝わってくるようなアレンジだった。今回のアレンジを聴いても、やっぱり初期衝動が蘇るような感じというか、これがテレビから流れてくるっていうのも本当にベストマッチだった。これを目にしたキッズが「あのバンドを目指したい」「自分はバンドをやりたい」って思うような、血の通ったロックサウンド。本当にその、テクニカルなギタリストとはまた違った良さというか。バンドを組んで、スタジオに入って、で、「こういうロックがやりたいんだ!」って思いながら楽器を鳴らしたときに辿り着ける到達点を見せてもらえた感じ。僕もバンドやってるんですけど、本当に羨ましくなってしまいました。絶対自分にはできないことができているアレンジです。

氏原 いやもう、仕方なくバンドにいっただけなので。できないことが多すぎて。

氏原ワタル(DOES)

氏原ワタル(DOES)

――実際の制作過程はどんな形だったんですか?

氏原 いきなり白戸くんからLINEがきて。「やってくれませんか?こういう企画があるんだけど」って。まあ俺に振るってことはそういうことやろうみたいな感じで、求めてるのがビシッとわかったんです。『銀魂』とかの曲のあの感じを求められているんだろう、と。で、担当するのも亥班ですって言われたから、「あ、やっぱりそうなんだな」と。猪突猛進っていう言葉がまず浮かんで、荒くれて真っ直ぐにしか進まんみたいな、あの感じが求められているのね、って。だからギターも2本ドーン!と入れて、ドラムも打ち込みで、そこまで疾走させないくらいのお洒落な感じというか、オルタナティブロックの良いところを突くような雰囲気にしてね。で、良い意味で、聴いてくれる人にわかりやすく、アニメのキャラクターにもマッチするような感じになって、遠くに届くといいなと思ってました。

――狙いにドンピシャでした。

氏原 でもまあその……アニメを観させていただいて、亥班が動いてるのを初めて観たら、あんなにバカとはちょっと思わなかったですね(笑)。バカさがこう、僕の曲でちょっと戻せてるかな?みたいな感じにできたのは、良かったです。あの子たちはただバカなだけじゃないんだよ、みたいなところを出せたかなと。やっぱりなんというか、普通の方々とかも、器用な人って少ないと思うんです。だからこそ、こんな僕みたいな不器用でも、真っ直ぐ進んでりゃ良いゴールにつけることもあるんだぜ、みたいな。そういうメッセージも、ちゃんと織り込めたかなって思います。

次ページ:アレンジの可能性と、新しい繋がり

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