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INTERVIEW

2022.05.31

【連載】テクノロイド 徹底解剖! ~MUSIC LABO~ 第3回目:『うたの☆プリンスさまっ♪』を生み出した「Elements Garden」のアニメ音楽シーンにおける変遷と新たに創造された『テクノロイド』の誕生

【連載】テクノロイド 徹底解剖! ~MUSIC LABO~ 第3回目:『うたの☆プリンスさまっ♪』を生み出した「Elements Garden」のアニメ音楽シーンにおける変遷と新たに創造された『テクノロイド』の誕生

上松範康×RUCCA×Elements Gardenが贈る、新世代メディアミックスプロジェクト「テクノロイド」。上松といえば、大人気コンテンツ『うたの☆プリンスさまっ♪』シリーズや『戦姫絶唱シンフォギア』シリーズ、最近では『ヴィジュアルプリズン』の生みの親でもある気鋭のクリエイター。そしてKAT-TUNや嵐、King&Princeの楽曲をはじめ、下野紘や蒼井翔太らの曲の作詞でも知られるRUCCA、さらに上松率いるElements Gardenとでタッグを組んで生み出した新たなコンテンツは、切なくも美しい、アンドロイドたちの物語を描くものに。

今年1月にAPPゲームがリリースされ、ゲーム画面からタイトルが示すようにテクノミュージックが流れ出す。近未来サウンドともいえる楽曲にアンドロイドたちの歌が重なり、心惹かれるユーザー続出中の『テクノロイド』はアニメ化も発表されている。そんな「テクノロイド」を、リスアニ!は徹底解剖!第3回目は、本作の音楽面を支える「Elements Garden」と「テクノロイド」の関係について紐解いていく。

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【連載】テクノロイド 徹底解剖! ~MUSIC LABO~


アニメシーンに一石を投じる新たなコンテンツの登場

近未来のアンドロイドたちが繰り広げるライブバトルを描く「テクノロイド」を考案、進行、制作するのは音楽制作ブランド「Elements Garden」。『うたの☆プリンスさまっ♪』、『戦姫絶唱シンフォギア』シリーズの原作でも知られる上松範康率いるクリエイター集団による制作チームである。

Elements Gardenの始まりは、2004年のこと。前身である音楽制作プロジェクトから共に活動してきた上松、藤田淳平、藤間 仁、菊田大介らで本格始動。翌年、Elements Garden結成以前から制作を担当してきた佐藤ひろ美(現・株式会社S代表取締役、株式会社アリア・エンターテイメント取締役副社長)のアルバム『Angelica』ですべての楽曲の制作を、同年には水樹奈々のシングル「ETERNAL BLAZE」の制作を担い、「Elements Garden」は鮮烈にスタートを切る。この水樹のシングルは絶大な人気を誇るアニメ『魔法少女リリカルなのはA’s』のオープニングを飾り、さらに同作の挿入歌にして同じく水樹が歌う「BRAVE PHOENIX」も手がけたことでアニメシーンに彗星の如く現れたことになる。以降、水樹をはじめ、茅原実里といった声優アーティストの楽曲制作はもちろん、KinKi Kidsへの楽曲提供など、音楽制作ブランドとして着実にアニメソング、さらには音楽シーンにその名を浸透させていったElements Garden。最新鋭のエレクトロとロックとの融合でのサウンド感と、エッジの効いた感性は、散りばめられた音によって一聴して「エレガっぽい」とリスナーに言わしめるほどに。突出した個性を持って音楽シーンへと自身のサウンドを浸透させていったイメージを、さらに大きく広げたのは2010年だっただろう。『うたの☆プリンスさまっ♪』の誕生である。

2010年に株式会社ブロッコリーからPSP®(PlayStation®Portable)用に発売された女性向け恋愛アドベンチャーゲーム(以下、乙女ゲーム)である『うたの☆プリンスさまっ♪』。プレイヤーはアイドルのHAYATOに憧れて作曲家を志す主人公・七海春歌としてアーティストを育成する芸能専門学校「早乙女学園」に入学し、個性豊かなアイドル候補生たちと出会い、互いの関係を育んでいく。ゲームの各章で楽曲に合わせて、譜面上に表示されるボタンを押していく音楽ゲームがあり、攻略対象である相手の歌声に触れながら物語を進めていくという画期的な内容だった。その後制作されたアニメでは、攻略対象のアイドルたちがアイドルグループ「ST☆RISH」を結成。アイドルを演じるキャストも「ST☆RISH」として歌にダンスにと、その豊かな表現力を見せていくことになる。当時は2次元アイドルコンテンツからの派生で、リアルライブでの展開をしていたのは女性グループが主であり、女性向けで男性声優がアイドルグループとして歌唱をすることはほとんどなかった時期。シーンに一石を投じる新たなコンテンツとなった『うたの☆プリンスさまっ♪』。しかも音楽制作のみならず企画、原作まで上松とElements Gardenが一挙に担う形態は、これまでのコンテンツ制作にはない、斬新なものだった。

2022年の現在こそ、クリエイター集団が1つの会社として台頭し、様々なコンテンツの主軸を担うことも増えたけれど、その先駆者こそがElements Gardenだったと言えよう。その後のElements Gardenは2012年に『戦姫絶唱シンフォギア』、2018年に『GHOST CONCERT』、そして記憶に新しい2021年の『ヴィジュアルプリズン』、と企画の原案、原作、音楽制作の柱となって展開していく。『うたの☆プリンスさまっ♪』で時代に左右されない、普遍的かつアイドルらしいポップソングを、ST☆RISH、QUARTET NIGHT、HE★VENSという3グループのカラー、さらにアイドルそれぞれの個性と共に描き切るElements Garden。『うたの☆プリンスさまっ♪』は人気を博し、ライブ会場の規模も年々大きくなっていくなか、女性向け二次元アイドルとして続々と新たなコンテンツが生まれ、アニメ、ゲームのシーンの中でも大きな存在となり、さらに毎年新たなグループや音楽コンテンツが生まれていく状況に。そんな“先駆者”Elements Gardenが2022年になり、新たに仕掛けるのが『テクノロイド』だ。

『テクノロイド』はその名の通り、テクノミュージックをベースとして、主人公ユニットであるKNoCCを含む6ユニット分のジャンル、個性とを構築して制作されている。エレクトロやシンセベースのサウンドを得意としてきたElements Gardenだが、テクノミュージックやユーロビートとは一線を画したサウンドメイクで独自の路線を突き進んできた印象がある。そんななか、時代は回り、かつて日本の音楽シーンを席捲していた“テクノミュージック”が再び世間を賑わせている今。Elements Gardenのクリエイターが青春時代に世を騒がせたテクノミュージックと機材もビートも音の種類も各段に豊穣した“2022年”という現代の音楽とを融合させ、表現力豊かなキャストの歌唱との三位一体の音楽を作る。Elements Gardenの発足から18年を経てもなお、新しいこと、やったことのないことにチャレンジしたうえでゼロベースから物を作っていこうという、飽くなきチャレンジャー精神を感じずにはいられない。

次ページ:“先駆者”Elements Gardenが示す「エンターテイメント」と未来への展望

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