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INTERVIEW

2022.04.11

【特別企画】ピクチャードラマ「VOISCAPE」についてエグゼクティブプロデューサー・水島精二に話を聞く――! 最終回:「VOISCAPE」まだ、世界の果てじゃない #5・#6

【特別企画】ピクチャードラマ「VOISCAPE」についてエグゼクティブプロデューサー・水島精二に話を聞く――! 最終回:「VOISCAPE」まだ、世界の果てじゃない #5・#6

ボイスドラマはさらなる次元へ?カオティックな第6話

――そうした流れからの6話「イノシシなのは私だけじゃない」ですが、こちらもマラソン回と見せかけてかなりぶっ飛んだお話で。

水島 マラソンが苦しくて鼻提灯。で、どっか行くっていうね。

――文字ベースだけでも意味がわからないです(笑)。

水島 こちらもすごい台本が上がってきてどうしようかなと思いましたよ(笑)。鼻提灯の音とかものすごく悩みましたもん。

――“鼻提灯の音”というのもなかなかないですよね(笑)。

水島 「プウ~ン……」っていう音(笑)。あれもやたら探しましたからね。あれだけのストックを誇るArtlistで見つけられず、日本のSEなどからも色々探したけれど、やっぱりあまり良い音が見つからなくて。結果Artlistからの音を2つ混ぜたのかな?それに大野さんに「プウ~ン……」って言ってもらったものを重ねたりして。頭の中にはイメージがあって過去に聞いてるってことは効果さんが具現化してるわけで。その音に到達できなくて悔しかったですね。ここでも効果さんの凄さを思い知るという(笑)。あと音楽的には、「小さい頃のナウシカが歌っているような曲を」って話していた曲が良い感じで上がって、これは歌もちゃんと幼い子が歌ってほしいって要望していたら、弊社エンジニアの娘さんが行けるのでは?となり、お願いしてみたら歌ってもらえて、めちゃイメージ通りに仕上がったという。

――まさに「王蟲との交流」のような曲ですよね。それが流れる3人が猪になるパートもそうですが、それまでの展開もなかなかすごい内容で。

水島 中身が入れ替わって……みたいな話ですね。中身の入れ替わりはもう少し時間があればもっとクオリティを上げられたよなあ……と。僕が監督を務めたTVアニメ『夏色キセキ』でも同じようなことをしていて、あのときは本人たちに一度演じてもらった音声を入れ替わる人たちに持って帰ってもらい、それを聴いて練習してもらって後日収録したんですよ。だからイントネーションやニュアンスはちゃんと元の役なんだけど、声だけ別の子って表現が精度高くできて。だけど今回のコンテンツではそこまでの段取りはとれなくて。でもよく聴くと、それぞれが演じている人のクセをなんとか寄せようとしてくれているんですよ。

――中島さんが演じる栞というのもフレッシュですし、雰囲気が出ているなあと。

水島 そうですね、中島さんに上手いことやってもらって。

――ほかにも、初めから部族同士の抗争に駆り出されるという。

水島 あれは僕がオーダーしたものではなく、高垣(雄海)くんが書いてきたもので。「軍勢」とか書いてあるけどどうするんだ!ガヤ録らないでいけるかな?」みたいな(笑)。あそこは流石に絵描きチームも困っていたみたいで、僕にも相談がきました。でもこちらから伝えたオーダーに対して、絵が気の抜けた感じにアレンジされていて、その感じとモブの声のギャップがすごく良いバランスで素敵なんですよ。

――そこの抜けを設定のぶっ飛び方でフォローする部分もあって。

水島 そうですね、そこをとにかくしっかりやらないと、このコンテンツって届かないよなと思ったので。キャストたちもコントをやっているっていう意識はそこまでなかったと思う。そういうなかで最初は普通に台本を読んできたけど、ディレクターに「もっとやってもっとやって」と言われ続けるという。多分1話の完成形を聴くまで本人たちも「?」ってなっていたと思いますよ。

――そうしたキャストたちの感触というものは、1話から6話まで順番に聞いていくと、より深みが増していくように感じられるんですよね。

水島 この間、鈴代さんに久しぶりにコメント録りに来てもらったときに、ちょこっとセリフを録ったんですよ。そしたら「なんかテンションが低いよ」と言ったら「あああ~
もっとか〜〜!」と頭抱えて唸ってました(笑)。で、最後までやりきって「疲れました……」って言って帰っていったんだけど、「まあでも、あの栞を作ったのもあなただからね」っていう気持ちで見送りました。「お疲れさま……」って(笑)。

――そして、6話のED曲「space voyage」ですが、ついにプログレ曲がきたぞと。

水島 そうですね。僕らしさのある曲を、という……でも実は、1話のバンドネタ回収です。

――たしかに1話にプログレというワードが登場していましたね。

水島 「プログレ」って言っておけばおじさんが喜ぶっていうところから、どこかでプログレをやろうと思っていて。でも5話の曲がもしかしたらプログレになったかもしれないんですよ。ただ5話の曲がドラマチックで、異世界でプログレだと当たり前じゃないですか。それでハッピーハードコアにして。それで「6話までがYouTubeで流れるやつだから、きれいに回収した感じになる……よし、プログレやろう」という(笑)。

――よし、プログレやろう(笑)。

水島 で、たまたま別件でレコーディングが一緒だった(佐藤)陽介に、「やる?」って聞いたら「やりたいです!」って言うから、彼は別にプログレが得意とかというわけではないんですけど、リファレンスの曲をたくさん投げてお願いして。ただ最初にももいろクローバーZやヒャダイン的な方向性の曲が届いたから「違う!もっと本格的なやつなんだ」って伝えて、もっとおおげさな、マジェランなどのプログレのバンドの曲を投げ直して。

――そこでマジェランを持ってくるとはかなりマニアックな(笑)。

水島 そう?1990年代ってドリーム・シアターとか、アカデミックな感じのバンドがいたけど、マジェランとかって古い時代のプログレじゃないですか。

――いわゆる1990年代のプログレハード/メタル勢のなかでも壮大なイメージがありますよね。

水島 アニソンの文脈でいうと「キグルミ惑星」みたいに展開する曲を作ったことはあるんだけど、みんなの耳に残っているのはヒャダインさんがオープニング・エンディングを担当したTVアニメ『モーレツ宇宙海賊』の主題歌とかみたいで。陽介の曲が完成して、歌詞を書いてもらうときに、「宇宙海賊が出てきて宇宙を旅するんですよ」みたいなことを言ったら、陽茉莉-himari-ちゃんが最初書いてきてくれたのが、もう完全にももクロみたいな感じで(笑)。

――褒め言葉ですが、おっさんが喜びそうなプログレというか。終盤の泣きのギターソロはまさにそれで素晴らしいですね。

水島 あれはHylen(宇佐美祐二)くんですよね。ギターが弾けてトラックメイカーもやっている人で。「かっこいいギターが入ったな~」って思っていたら「難しかったです」と言っていて、まあそりゃそうだよな、プログレの曲だからなあって(笑)。

――水島さんの文脈では「キグルミ惑星」の流れもありますが、相変わらずハイクオリティーなプログレ曲になりましたね。

水島 1話で流した曲もそうですけど、ちゃんとそのジャンルが好きな人が聴いたときに「おお、頑張ってんじゃん」というレベルにはどうしても持っていきたかったので、全曲そういう刺さり方を目指そうと思っていました。元のジャンルに対しての敬意はどうしても残したかったし、“なんちゃって”みたいなものが一番嫌いなので。やるならそのものズバリか、もしくはそこからちょっとポピュラリティを足したみたいな。もちろんそれを僕が作るわけじゃないので、作ってくれる人にパンパンと鞭を入れるのが役目(笑)。

次ページ:カオスのその先に、VOISCAPEが向かう“世界の果て”に待つものは……?

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