――ホラーっぽい曲、というところで作られたのが「Hide & Seek」ということでした。ホラーっぽいというのはどういうイメージだったんですか?
高野 ホラーな世界に誘うための導入曲、というイメージですね。ホラーアニメの主題歌のような音楽を目指していました。
――ホラーな世界を音楽で表現したいと思ったきっかけは何かあったんですか?
高野 私、ビリーアイリッシュさんの曲に衝撃を受けたんですよ。最初に聴いたとき、すごく怖いのについ聴いてしまうというか、心がザワザワさせられてしまいました。街にはたくさんの素敵な曲が溢れていますけど、怖いと思わされる楽曲なんてなかなかないですよね。そのパワーに惹かれたんですよね。誰かの心を動かす強さがあるということは、その誰かの躍進力というか生命力になれる曲だとも感じたんです。だから、みんなの心をザワザワさせてみたくなりました。あえて人を不快にさせる音を入れてほしいともお願いしていて。でも、(作詞・作曲・編曲の)鈴木(裕明)さんに、よくわからないけれども怖いと思わせる曲を作りたいんです、というお話をしたら、最初に上がってきた曲はすごく素敵でかっこいいロックで。そこから鈴木さんと、「かっこいいで終わらせたくないんです、この曲は」「もっと怖く」というラリーを3回くらいして、色々詰め込んだのが完成した曲です。Dメロでかくれんぼをする子供が出てくるんですけど。
――“ドチラニシヨウカ”のところですね。ライブでも後ろを向いて「もういいかい?」を表現していました。
高野 はい。ここは歌詞の第3稿くらいで入ったところで。初めて聴いたとき、とても異様で怖くて、でもホラーというテーマが完結できた感覚があって、「これですよ、鈴木さん」って伝えました。
――「夜更かして、午前2時」は日常系ロックというテーマから作られた曲ですが、高野さんが考える日常系ロックというのは?
高野 最近のトレンドにすごく上がっている楽曲、日常の気持ちを吐露するように羅列していく歌詞でありながらおしゃれ、というイメージですね。あの言葉並びは他のジャンルにはないと思って提案させていただきました。私自身は、日常ロック系って多分人生で一番聴かない音楽ジャンルではあるんですけど、
――なのに提案したのはどうしてですか?みんながよく聴くジャンルの音楽を提供したい、という思いからでしょうか?
高野 そうです!(笑)。やっぱり、自分がどういう音楽を歌ったらいいかわからないという気持ちがあったので、アルバムにはたくさんの可能性を詰め込みたいとは考えていました。その可能性の一つとして、「私が歌うべき曲は何だろう?」「みんなが聴きたい曲は何だろう?」という方向性で攻めたとき、日常系ロックという選択肢が浮かびました。
――あまり聴かない音楽ジャンルということですが、歌ってみていかがでしたか?
高野 だから、自分に落とし込むのはすごく大変でした。「どうしたらあんなにおしゃれで伸びやかな楽曲になるんだろう?」って。でも、サブスクのトレンドなどを聴きまくって勉強した結果、「リアリティのある気持ちを爆発させた音楽」、みたいなところに辿り着けたんです。そのつもりで自分の気持ちを歌ってみたら、最終的にはすごく気持ちよく歌うことができましたね。
――「Oh my future」は王道アニメポップというテーマから生まれた楽曲というお話でした。
高野 はい。歌うときも、アニメのオープニングで流れたらとってもかっこいいだろうな、と思っていました。でも実は、少し背伸びをしているというか、歌い上げるという点での課題がわかった楽曲でもあったんですよね。なので、来年、再来年と歌い続けていくことで、もっとかっこよく歌える自分になれたら、とは思っていますし、成長を見せていける楽曲になるとも思っています。
――アルバム制作の中で発見できた部分ですね。
高野 そうですね。アルバム制作を通じて、自分の軸にあるのは王道ポップスであり、そこが目標として見えてきた気がします。
――実際にアニメ『精霊幻想記』のOPテーマだった「New story」とはどのような違いがありますか?
高野 「New story」は、何も持っていない自分が少しずつ彩りのある世界に飛び込んでいく、という楽曲だったので、まさに今の私を重ねることができました。一人でのアーティスト活動ですけれど、色々な方に支えられていることやファンの方々の温かさに気づき、そこから前向きになっていく私……。そんな、なんだか生々しい私の部分を描くことができた楽曲でしたけど、「Oh my future」は「みんなを素敵な世界に連れていくぞ」というロックな私のイメージだったので。なので、素の私を好きになってほしい気持ちと、みんなを巻き込めるような存在になりたいという意気込みの違いがあるかもしれないですね。
――「カリソメアワー」に関しては、その元となったのは「和ロックな楽曲」という提案でした。
高野 はい。この曲は初めて聴いたとき、一目惚れならぬ一聴き惚れをしたんですよ。メロディラインが好きすぎて、絶対歌いたいと思いました。Bメロから始まるところもおしゃれですし、サビの「“もしも”なんて云わないでさ」という歌詞とメロディラインも耳に残る曲ですね。和ロックとしてお願いしたのにこんなにキャッチーなんて、これで和太鼓とかみんなが心踊るような装飾が入ったら最強の曲になってしまう、と思いました。
――ここまで紹介いただいた楽曲のほぼすべてを1stライブではリリースよりも一足早くお披露目もしました。ライブで歌ってみた感想というのはいかがでしたか?
高野 最初は、CD音源を届けなければいけないというプレッシャーに押し潰されそうだったんですよ。でも、昼公演でファンの皆さんのお顔を見て、ステージ上から皆さんに心強さを感じたことで、緊張感がほどけた気がします。なので、夜公演ではCD音源という型から外れて楽しむことができたと思います。やっぱり、私が生きているうちは生きている音を届けたいので(笑)。生であることを大切にライブ作りをしていきたい、と思うきっかけになるライブでしたね。
――夜公演を見ていたら、ファンへのレスやコールにとても熱心で、みんなと一緒に楽しもうという気持ちを強く感じました。そのあたりは意識されていたんですか?
高野 カラオケの話ではないですけど、自分から歌を口ずさむタイプではなかったので、人前で歌うときのテンションがわからない、というところから始めたライブ作りだったんですよ。カラオケでも両手でマイクを持って仁王立ちだったので。だから、「音楽にノっている姿を人に見せる精神状態って?」と考えもしたんですけど(笑)、考えすぎてしまうのが自分のいけないところではあるので。目の前で楽しんでくれているファンの方々を大切に、その尊い空気を壊さないように、という気持ちに切り替えました。みんなの気持ちに身を任せるというか、気持ちはモッシュですよね。「うぉーっ!」ってなっているところにダイブするような(笑)。
――それはぜひ(笑)。コロナが収まったあかつきには。
高野 そうですね(笑)。でも、そのくらいの気持ちで臨めた夜公演だったから、みんなの表情やノリと一体感を持つことの大切さに気づけたと思います。
――ライブでは、開催直前ギリギリまで自ら振付をつけたいと提案したという話もされていました。
高野 声優活動の中でいろいろなユニットに参加しましたけど、実は振付のない曲をやったことがないんですよね。曲に任せて体を動かすイメージができない人でもあるので、道筋を作ってほしいという意味合いもありました。
――危なく、スタンドマイクの前で仁王立ちみたいな歌手が生まれるところでしたね。
高野 本当にそうなんですよ。それをなんとかスタッフさんが解きほぐしてくれて、ようやくステージに立てる姿にしてくれました。
――逆にこれから高野さんの友人は、ノリノリで動く高野さんをカラオケで見られるかもしれませんね。
高野 もしかしたら。ぎこちないとは思いますけど。
――次のライブでどうなっているか楽しみですね。
高野 私もです(笑)。
――声優以外の活動としてはグラビアなどでも活躍を見せる高野さんですが、1stライブと1stアルバムを経た今、自身の中で歌手活動はどのような位置にありますか?
高野 おこがましいかもしれないんですけど、私の武器の一つではあると思っています。武器にしていきたい、という気持ちももちろんあってのことですけど。私という一人の人間が皆さんに対して届けられるものって、やっぱりすごく少なくて。例えば、声にしても作品なくしては私の声は入れられないですし。グラビア撮影もありがたいことですけれども、混乱させてしまうようなお仕事かもしれないと考える瞬間もあるんです。でも、それぞれと真剣に向き合うことで、最終的に、魅力的な姿に見えていければ、という思いもありますし、歌に関しても、それが誰かの楽しい時間であるならば、それは私が声優をやると決めた理由の一つと繋がるので。そういう意味でも私の武器の一つにしていきたいと思っています。
――声優を目指すと決めた理由というのは?
高野 小さい頃に私が母親に本を読んだら、上手だと褒めてくれて、次はどう読むんだろうと楽しみにしてくれたんです。その期待がすごく嬉しくて。そこから、本を読んで表現する人になりたいと思ったのが声優を目指したきっかけでした。なので、声優アーティストという活動についても、人に求められる喜び、届けられる喜びをしっかりと噛み締めながら続けていきたいと思っています。喜んでもらえるってすごくありがたいことですし、そのために続けられていると思います。本を読んでいた頃の私に、「将来、たくさんの人を楽しませているよ」と胸を張って言えるように活動していきたいですね。
INTERVIEW & TEXT BY 清水耕司(セブンデイズウォー)
●リリース情報
高野麻里佳 1stアルバム
『ひとつ』
2月23日発売
【初回限定盤(CD+Blu-ray)】

品番:COZX-1866-7
価格:¥4,400 (税込)
【通常盤(CD Only)】

品番:COCX-41715
価格:¥3,300 (税込)
<CD>
1.「ひとつ」(リード曲)
作詞:鶴﨑輝一 作曲:白玉雅己 編曲:佐藤清喜
2.「Ready to Go!」
作詞・作曲・編曲:山崎真吾
3.「Sweet Voice」
作詞・作曲・編曲:設楽哲也
4.「Oh my future」
作詞:深青結希 作曲・編曲:若林充
5.「カリソメアワー」
作詞:東乃カノ 作曲・編曲:木村孝明
6.「New story」
作詞:hisakuni 作曲・編曲:アッシュ井上
7. 「Hide & Seek」
作詞・作曲・編曲:鈴木裕明
8.・「夜更かして、午前2時」
作詞:ARAKI 作曲・編曲:今村左悶今村淳平
9.「Flavored hug」
作詞・作曲・編曲:hisakuni
10.「夢みたい、でも夢じゃない」
作詞・作曲・編曲:鶴﨑輝一
<Blu-ray>
「ひとつ」ミュージックビデオ+メイキング映像
「夢みたい、でも夢じゃない」「New story」ミュージックビデオ
高野麻里佳 音楽情報サイト
https://columbia.jp/kohnomarika/
SHARE