【スペシャルインタビュー】黒須克彦に聞く、「Smile Group presents アニメ音楽のこと!マッチング・オーディション 2021 supported by リスアニ!」について

シンガーからクリエイターなど、アニメにまつわる才能を幅広く求めるオーディション「Smile Group presents アニメ音楽のこと!マッチング・オーディション2021 supported by リスアニ!」。その審査員に話を伺う連続インタビュー、最終回はクリエイターとして数々のアーティストの楽曲を手がける人気作家の一方で、多くのアーティストのライブをベーシストとしてサポートする黒須克彦が登場。ヒットメイカーでありプレイヤーである彼が考える、相手に伝わる音楽制作、そして音楽プレイについて話を聞いた。

クリエイティブというアウトプットのためのインプット

――現在開催中の「Smile Group presents アニメ音楽のこと!マッチング・オーディション2021」で黒須さんは審査員として参加されていますが、その前に黒須さんのプロになるまでのキャリアをお伺いします。元々黒須さんはクリエイターとして活動する前はバンドをやられていたんですよね。

黒須克彦 そうですね。元々ずっとバンドをやっていまして、いくつかバンドを経たのち、2004~2005年くらいから現在のようなスタンスでクリエイターとしての活動を始めました。

――現在のようなクリエイター活動を始めるきっかけはなんだったのでしょうか?

黒須 きっかけは、その当時いくつかバンドをやっていたのですが、そのときに知り合ったとある出版社の方がいらっしゃいまして。その方と知り合ったときのバンドは解散したのですが、そのときから曲は書いていたので、その方がそのことを覚えていてくださっていたんですよね。それで久々に連絡をくださって、それが今でいうコンペのお話だったのですが「参加してみない?」というお誘いをいただいて、参加させていただいたのが最初ですね。

――以降も膨大なコンペ、あるいは指名という形で楽曲依頼を受けられているわけですが、やはり曲を作るうえではアーティストのことを考えながらの制作になるわけですか?

黒須 そうですね。例えばとあるアーティストさんのコンペで事前情報がそのお名前だけだったら、それまでどういう活動をされてきたのかだったりどういう曲を歌っているのかというのを自分で調べて、声質や音域のヒントにしていますね。

――そうした楽曲制作というアウトプットのためのインプットというのも普段からされているのでしょうか?

黒須 僕の場合は楽曲制作のほかにもライブ演奏などのサポート業もやらせていただくので、色んなジャンルの曲を演奏する機会が多いんですよね。その楽曲を実際にリハーサルに向けて聴き込んで準備をするときもそうですし、実際のスタジオでのリハーサルのときに「ここはどうなってるんだろう?」とかトラックを細かく聴き込むこともあります。そこで「あ、この曲はこういうふうになっているんだ」という分析をしたりしますね。

――なるほど。黒須さんは“リスアニ!LIVE”でリスアニ!バンドのベーシスト兼バンマスとして参加されていますが、毎年多くのアニソンに触れる機会があるわけですよね。

黒須 そうですね。それは自分にとってすごくプラスになっていると思っています。クリエイターとして日々新しいものにアンテナを張ってはいますが、ライブで演奏するタイミングで色々なジャンルの音楽に触れることができるのは大きいです。それこそ“リスアニ!LIVE”のように毎年開催されるものは、その年の旬みたいなものでもありますし、その期間にヒットしたものや話題になったものであれば、その空気感も含めて「こういうのが受けているんだ」ということを知ることができるので。

“判断するのは自分ではない”ということ

――さて、そんな黒須さんが審査員として参加される「Smile Group presents アニメ音楽のこと!マッチング・オーディション2021」ですが、まずこのオーディション開催を聞いた感想はいかがでしたか?

黒須 ぶっちゃけ、自分は人を審査できる立場にはないと思っているんですけど(笑)。でも、甲(克裕。スマイルデイズ代表)さんやリスアニ!さんには普段からお世話になっていますし、お声がけいただいたのは光栄でありつつ、何か力になれればというのが正直な感想でしたね。

――ちなみにこれまで、黒須さんはオーディションに応募した経験はありますか?

黒須 スタジオに行って目の前に審査員の方がいて、「ベースを弾いてみて」みたいな経験はないんですよ。唯一それに近いのが、2004年前後だったと思うのですが、自分のデモを色々な作家事務所に送るという……。

――クリエイター業を始めるにあたっての、いわゆる営業というやつですね。

黒須 そうです。作家事務所などのホームページなどで作曲家募集というのがあったので、結構たくさん送りましたね。

――そこから返事があるものもあれば……。

黒須 もちろんなかったところもあります(笑)。

――先ほどコンペのお話がありましたが、現在もコンペに参加されるなかで採用される一方で落ちるケースもあるんですか?

黒須 もちろんです。落ちていることのほうが多いくらいですから。

――黒須さんほどのキャリアの方でしたら指名だけで活動できるのでは、という印象があるのですが、そこでコンペをやられる理由はなんでしょう。

黒須 やっぱり驕らずにいられる、常に地に足をつけられているといいますか。コンペに通らないということはその曲に魅力がなかったということなので、「もっと頑張らなきゃいけないな」と初心に帰ることができるんですよね。

――ちなみに落ちたほうが多いとおっしゃっていましたが、コンペの結果が出たあとの分析などはされますか?

黒須 そのコンペで採用された楽曲が数ヵ月後に世に出たときに、自分から探して聴くことはあまりしないですが、ふと耳にしたときに、「あ、あのときの曲だ……」ってなるわけじゃないですか。そこで分析するほどではないですが、「あの案件はこういうところが求められていたんだ」とは思いますね。

――それを次に活かすこともある?

黒須 例えばですが、同じアーティストさんのコンペが来たときのヒントになりますよね。どういう形で選定されているかわからないですが、コンペのときにこういうタイプの曲が選ばれたということは、こういう方向性を今このアーティストは進んでいるだな、というのがわかるので。

――なるほど。では黒須さんが楽曲制作で気をつけていることを教えていただけますか。

黒須 念頭に置いているのは、“判断するのは自分ではない”ということですね。まずコンペの段階で、提出したものを聴かれるのはディレクターさんやプロデューサーさん、レーベルの方、またはアーティストさんであって、そこでジャッジが下されるんですよね。結局どういうものが求められているのかは案件によっては違いますが、その求められている方向性などの判断をするのは自分ではないということ。ただ、自分的にはそれだけでは面白くないと思うので、そのなかで自分らしさみたいなものや自分が満足できるポイントをどこに置くか、というところのバランスが大事なんだと思います。

――クライアントが求めるものを理解して、そこに自分らしさを込める。

黒須 そうですね。自己満足になりすぎても伝わらないような気もしますし、とはいえ擦り寄りすぎても自分の中で満足感があまり得られないので。いずれにせよ判断するのは自分ではないし、仮にもしその曲が世に出た場合、届ける相手は聞き手なので、そのリスナーがアーティストからどんなものが出てきたら満足するのかというところは頭に置いています。

――クライアントが何を求めているのかを汲み取る感覚も持っているべきだと。

黒須 例えば指名で事前に打ち合わせをしていれば話は別ですが、コンペだとそういうわけにはいかないので、発注書からヒントを探しながらその先にある温度感みたいなものを見つけなくてはいけないなと思いますね。

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