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INTERVIEW

2021.08.27

【インタビュー】VTuber業界が盛り上がってくれたら――。にじさんじ所属VTuber・樋口楓「新たな挑戦になった」という最新シングル「Baddest」に込めた想いと制作過程を聞く。

【インタビュー】VTuber業界が盛り上がってくれたら――。にじさんじ所属VTuber・樋口楓「新たな挑戦になった」という最新シングル「Baddest」に込めた想いと制作過程を聞く。

デスボイスも加えて表現したキャラクターたちの“葛藤”。表題曲「Baddest」の制作秘話

――では、「Baddest」の制作過程について詳しく聞かせてください。今回デモを最初に聴いたときの感想はどうでしたか?

樋口 最初に思ったのは、「わっ、アニソンサウンドだ!」ということでした(笑)。私の場合、アニメのタイアップ曲はこれが初めてで、これまでのオリジナル曲は、あくまで「私が求める音楽」「私が好きな音楽」「私が思うロック」を光増さんに作っていただいたものでした。でも、今回はアニメや原作の背景を踏まえて作られている曲なので、最初は自分でもどうオーダーしたらいいのかわからなかったんです。そのなかで、ここはDメロにしたほうがいいんじゃないかとか、ここは短くしたほうがいいんじゃないかということを、ランティスさんや光増さんと相談しながら進めていきました。

――タイアップ曲ながら、樋口さんも楽曲の内容に積極的に関わっていたんですね。

樋口 あと、今回は初めての試みとしてデスボイスも入っています。たしかにじさんじのスタッフさんが、「デスボイスがいいんじゃない?」というアイデアを出してくれて、「じゃあ、そういうダークな曲を作ってみましょうか」ということになりました。

――楽曲ではこれまでにない試みだったと思いますが、「ぽんぽこ24」(※VTuber・甲賀流忍者ぽんぽことピーナッツくんが数々の企画を24時間ノンストップで繰り広げる配信)に出演した際に、樋口さんが少しだけデスボイスの真似をするような瞬間はありましたよね。

樋口 ああー、ありました!

――「汚い声が出たら即退場」という企画で。

樋口 そうだ。なので、今回は汚い声ではなく(笑)、かっこよく歌わせていただきました。デスボイスの部分は、葛藤や自分の中の思いというものをぶつけて声を出してみて、とランティスのスタッフさんに言ってもらって進めていきました。『俺100』のキャラクターたちも、現実の中で色々な葛藤があってあの場所に選ばれていると思ったので、自分の思うことを心のままにデスボイスに乗せてみたのが、今回収録されている声になりました。最初は「喉を壊さないかな」「ここで上手くいったとしても、ライブでできなかったらどうしよう?」と思っていました。でも、実際にやってみたら、意外とすんなりできたんです。普段の配信で汚い声を出している甲斐もあって、喉に耐性がついていたのかな、と(笑)。サンプリングで光増さんが用意してくださった音源もあったんですけど、レコーディングした結果、私のデスボイスが採用されました「アー!」と「オー!」と「ヴォー!」の3回録音して、最終的に「アー!」が採用されています。

――ほかにこの曲で工夫したことはありますか?

樋口 アニメのOP曲って、色んな方に聴いてもらう曲になると思いますし、今までは自分の好きなタイミングで聴いてもらう曲しか作ったことがなかったので、「TVをつけたら流れているときに耳に残る音楽にするためには、どうしたらいいんだろう?」と試行錯誤しながら録っていきました。でも、途中で「そんなに深く考えなくてもいいよ」と言ってもらったんです。「そういうふうに向き合うと堅い音楽になっちゃうから、樋口さんらしく、今までの経験を歌ってみたらいいよ」とアドバイスをもらったりしました。

――TVアニメのOP曲を担当することは、また新しい経験になったんですね。

樋口 そうですね。一歩先に進んだときにぶつかる見えない壁に、知らず知らずのうちにぶつかっていたような感覚だったかもしれないです。光増さんからも、「かっこよく歌えたんじゃない?」「意外とこっち路線もいいじゃん!」とプラスな意見をもらえました。

――MVでは樋口さんが銃を持って戦っていますが、その銃が「Apex Legends」での樋口さんのお気に入り武器「Lスター」風のものになっているのも印象的でした。

樋口 「Baddest」はアニメのOPテーマでありつつも、樋口楓の曲でもあるので「樋口楓っぽいMVにしたい」と思っていたんです。『俺100』はバトルもある作品なので、「MVでもバトルをしてみよう」ということで、完全3Dの世界で戦うMVを作らせていただきました。その際、新しく知ってくださった方だけでなくて、ずっと応援してきてくださった方にも「おっ!」と思っていたので、銃を使うなら私の好きな形がいいな、と。

――そのうえで、樋口さん自身の葛藤なども表現されている雰囲気です。

樋口 MVに出てくる二人の登場人物は「最高樋口」「最低樋口」という役分けがされていて、「最低樋口」はお面でなかなかさらけ出せない闇の部分を表現していて。その2人が戦う様子を描いたMVになっていますね。

――日々活動をしていると、「最低樋口」とまではいかなくても、自分の中のネガティブな感情と葛藤することはありますか?

樋口 うーん、なくはない、という感じです(笑)。特に3年目を越えてからは、もう結構達観してしまっているので、葛藤することは少なくなっているんです。でも、周りの人というか、にじさんじの仲間が引退していくことが続いた時期もあったので、そのときは気持ちがズーンとなったりもしました。やっぱり私自身もVTuberのオタクだったりするので、ファンの方たちが悲しんでいる様子を見たりしても、一緒にやるせなくなるというか。でも、最近は昔よりも、色んなことを客観的に見れることが多くなったのかな、とは思います。

――そもそも樋口さんがデビューした2018年頃は、VTuber業界自体が今のように発達していなかったと思うので、本当にカオスのようなイメージだったと思います。VTuberの皆さんも視聴者も、全員何が起こっているのかよくわかっていない、という印象で。

樋口 デビューして1~2年は、ずっとサーフィンをしているというか、ずっとビッグウェーブに乗っているという感覚で、サーフボードから落ちないようにするだけで精いっぱいでした。落ちないために「もっと大きな波を探しに行こう!どこや!?」ってずっと探していたというか。しかも、その3年の間に、私だけじゃなくて、VTuberをやっていない、三次元で暮らしている友達もすごく成長していて。私が思いもつかないような夢を追いかけて勉強していたりするんです。そういう姿を見ると、「気づけばまったく別のことをしてるじゃん」「もし私があっち側の人間だったら、もしお友達がVTuberとしてデビューしていたら、どうなっていただろう」と勝手に比べてしまって、勝手にモヤモヤしたりもしていました。そういう葛藤はあったのかもしれないです。でも、そういうときは……根本的な解決にはなってないかもしれないですけど、寝て忘れることが多いですね。

――とても良いスタイルですね(笑)。

樋口 (笑)。あとは、好きなVTuberさんの配信を観たり、声優さんの生放送を観たり……オタ活をして気持ちをリセットしています。声優さんの生放送を観て、「めちゃくちゃキラキラしてんなぁ。昔、私もそこに座りたかったよなぁ」とか、そういうフレッシュな気持ちを思い出して「配信しよ」と思うことが多いです。ライブ映像も繰り返し観ています。

次ページ:OPテーマを通して感じた「自分とアニメがリンクする瞬間」

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