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INTERVIEW

2021.08.27

劇場版『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ Licht 名前の無い少女』主題歌「Just the truth」をリリース!栗林みな実インタビュー

2021年8月27日より全国上映される劇場版『Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ Licht 名前の無い少女』。『プリズマ☆イリヤ』シリーズでは4年ぶりとなるアニメ作品だが、その主題歌をTVシリーズ第2期でOPテーマを歌った栗林みな実が担当、彼女の作品観がうかがえる楽曲となった。アニソンに命を賭ける、アニソンシンガー1stジェネレーションである栗林みな実が描く『プリズマ☆イリヤ』とは? アーティストとしての実力がいかんなく発揮されているカップリング曲にも迫りつつ、20周年を迎える栗林みな実が39枚目となるシングルでどこに行き着いたのかもお届けする。

――7年ぶりに『プリズマ☆イリヤ』の主題歌を担当しますね。

栗林みな実 焼肉屋さんで今回の主題歌のお話を聞いたときはすごく喜びました(笑)。ただ、『プリズマ☆イリヤ』に関わるのはすごく久しぶりでしたから、資料としてシナリオと絵コンテをいただいて、そちらにひと通り目をとおしていたんですけど、TVシリーズや劇場版を全部見て、気持ちを『プリズマ☆イリヤ』モードに切り替えてから作業に入りました。

――あらためて見直してみて、どういった作品だと感じましたか?

栗林 ギャグ要素が少ないですよね。(『プリズマ☆イリヤ ツヴァイ!』OPテーマの)「moving soul」のときもそこは感じていて、シリアスな楽曲にはなったんですけど。だから、この作品での自分の役割はそういうところなんだということも感じましたね。ChouChoちゃんが歌った楽曲とか、これまでの音楽を振り返っても、私はシリアスな音楽をやるのが正しいんだろうと思っていました。「moving soul」は緊張感のある、TVアニメの主題歌らしい力強い打ち込み系の曲でしたけど、その緊張感というところは今回の劇場版でもすごく合うだろう、と。なので、その雰囲気は頭に置きながら歌詞を書いていきました。あとはやっぱり、かわいくてキラキラして、というところが『プリズマ☆イリヤ』の特徴ではありますよね。

――歌詞を作るうえで、作中のどういったところがポイントになりましたか?

栗林 真実と嘘、という部分がすごく印象に残ったんですよ。なのでそこを中心に歌詞を組み立てていきたいとは思いました。でも実は、アニメサイドに楽曲の雰囲気をチェックしてもらうために最初にワンコーラスだけ作ったんですけど、曲を提出するときは必ず歌も入れたいと思っているので歌詞もつけていたんです。ただ、私の中でその歌詞はあくまでも仮のものという感覚だったのですが、「その歌詞は2番にして、1番では作品全体を描いてほしい」というお話をいただきました。私としては「2番にしていいんだ?」くらいの気持ちで(笑)。なので、先に2番が出来て、そこから1番を広げていったという流れでした。

――仮の歌詞のつもりだった2番部分は作品のどういったところをテーマに?

栗林 ベアトリスが持つ記憶の話が出てくるところがあるんですけど、そこのインパクトが強かったんですよね。私は感情移入できたというか。人の気持ちってそんなに簡単に変わるものじゃないとか、ずっと過去に囚われてしまっているとか、そういった部分が描かれていたんです。だから、そこから物語を作ろう、歌詞として残したい、と思いました。メロディはそこがポイントになった気がしますね。

――2番がベアトリスを主題にしていることはアニメサイドには伝えたんですか?

栗林 伝えてないです。でも、そこがわかっていて、だから2番にしてくださいと言われたのかな、とは思います。

――「moving soul」でも「記憶」がキーワードになっていたと伺った覚えがあります。

栗林 覚えています。実は今回、歌詞を書いたあとに「moving soul」の歌詞を読み返したんですよ。あんまり似ていたら良くないと思って(笑)。実際、「光」という単語などはどうしても両方に出てきますし、やっぱり自分の中でもすごく大切なキーワードになっていました。そこは作品に対する共通の想いであって、同じ作品に向けて書かれているということは感じましたね。だから、直すことはしなかったんですけど。ただ、読み返すことで昔のことをすごく思い出しましたし、作品に対して曲を作るというのはこういうことなのかとも思いました。同じところを見い出すというか。

――そういった2番を踏まえて、1番は全体を描いていったわけですね。

栗林 そう、2番からは深い部分に入っていくような、そんな構成ですね。作品全体や、素直さといったイリヤの長所をわかりやすく伝えようと考えました。でも、フルサイズで流してもらえるので楽曲全体で考えられたところはすごく良かったです。

――ああ、なるほど。TVシリーズの主題歌だとオープニングにしろエンディングにしろ、聴いてもらえるのは90秒部分ですからね。

栗林 だから、1番に凝縮しなくて済むんですよね。4分という長さで一つ、と考えられるのでやりたいようにできますし、それはすごく楽しい作業でした。

――「moving soul」の頃、栗林さんは主題歌を作る際は「90秒に命かけてます」ということを仰っていました。

栗林 あははは(笑)。言ってました、言ってました。だから、それとはすごく違いますよね。でも、劇場版の主題歌を作るのは今回が初めてだったんですけど、それが『プリズマ☆イリヤ」だったというのは本当に光栄だと思います。

――一方の楽曲制作に関してはどのような意図が込められていますか?

栗林 曲に関しては、「淡々とした曲に」というオーダーがありました。なので、高い声であまり歌わないメロディに、それから音数も細かく刻まないようにしようと思いました。あとは、フルサイズで聴いてもらえるということもあって、サビを長くしないようにしています。

――長くしない?

栗林 いつもよりは短いサビになっていると思います。要は、とにかくシンプルなメロディですね。ただ、(編曲者の)大久保(薫)さんがすっごく素敵なコーラスを考えてくださったので、主メロのレンジがそんなに広くなくても、全体で聴いたときに物足りない感じはまったくなかったです。

――コーラスが高音域を担ってくれているので。

栗林 そうですね。最初にアレンジされたものをいただいたときから感動しましたし、曲が仕上がっていくのが本当に楽しみでした。

――淡々とした曲を作るというのは栗林さんとしては難しかったですか?

栗林 難しかったです。アルバム曲ならそこまでキャッチーである必要はないと思いますけど、淡々としているということはこれくらいのテンポ感になるわけで、その中でインパクトを求めようとすることはすごく難しいイメージがありました。ただ、そこでも大久保さんの力が本当に大きくて、すごくキャッチーでインパクトがあるものにしていただけたので。大久保さんにアレンジを、というのは私のリクエストだったんですけど、本当にお願いして良かったと思いました。

――栗林さんなりに、淡々とした曲をキャッチーにするための工夫はありましたか?

栗林 サビの出だしの英語部分はコーラスになっているんですけど、二人で歌っているような感じになっているし、わかりやすいメロディにできたとは思っています。できたとき、これなら覚えてもらえるというメロディに行き着いたような、そんな感覚がありました。正直、そこができるまでは完成形をイメージできなかったんですよ。Aメロなんかは、暗闇から始まって……というイメージで結構すぐできたんですけど。短くてもインパクトのあるサビにする、というところで一番時間がかかりましたね。

――あらためて完成させた楽曲を聴いてみた今の気持ちは?

栗林 今回のシングルは、ちょうど20周年を迎えたあとに発売されるんですよ。なので、やりたいことを全部やりたいと思って向き合いましたし、実際、自分ができることはすべて注ぎ込めた実感があります。そういったものを『プリズマ☆イリヤ』で形にできたことはすごく嬉しいですね。

――栗林さんがやりたかったことというのは?

栗林 今の自分が持つ歌の技術を全部、この1枚に残せたと思っているんですよ。今回コーラスが本当に難しくて。練習して、臨んで、録れたときにはとにかくホッとしました。あんまりコーラスをCDに落としこめたことがないんですよね。こんなにコーラスを入れた曲って初めてだと思います。それに作詞作曲という面でも、主題歌でこういう方向性、こういうテンポ感の曲は初めてでしたし、すごく新鮮でしたね。アニソンらしいアニソンって私も大好きで、作っていても歌っていても楽しいし大好きなんですけど、それとは違う方向性の楽曲を今までお世話になった人たちと完成させられたというところでもやり遂げた感はあります。久しぶりにアレンジを大久保さんにやっていただけたとか、ずっとバイオリンを弾いていただいている大先生室屋(光一郎)さんとご一緒できたとか。

――「moving soul」のときも難しい楽曲で、練習を重ねたという話でした。偶然とはいえ、『プリズマ☆イリヤ』では挑戦する機会が与えられますね。

栗林 そうでした。あのときも、メロディから何から歌の全部が難しかったですね。でも、「挑戦」という気持ちになるのはやっぱり、メロディを誰かに作っていただいたときですね。今回のコーラスも大久保さんが作ったところですし、「moving soul」のときも桑原 聖さんに作っていただきましたし、しかも当時のプロデューサーがそういう曲にしたいという考えがあって。例えば、私がレコーディングで高いキーの曲を簡単そうに歌うとつまらなそうだったんですよ(笑)。多分、一所懸命に歌っている表現がほしかったとは思うんですけど、でも私は苦しそうに声を出す歌い方ってあんまりやりたくないんですよ。それならキーを低くすればいいと思うので。

――あえてキーを上げて、高音域で絞り出すような表現を求めるアーティストやディレクターもいますよね。ただたしかに、栗林さんは通るようにきれいな歌声が特徴だと思います。

栗林 そう、きれいに聴こえる高さで歌いたいんですね。だから当時は高い歌が結構多くて、「ちゃんと音をとれないと」という緊張感が毎回ありました。「moving soul」のときも挑む感じでやった記憶があります。今回も、自分が作ったメロディ部分はできるだけ歌いやすいように、と思っていましたけど、コーラスは録ったことがないような音符の並びで本当に挑戦でした。

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