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INTERVIEW

2021.01.04

豪華クリエイターが大集結!クリエイタートークセッション「アニソン派!vol.3」公式レポート!(Part.3)

豪華クリエイターが大集結!クリエイタートークセッション「アニソン派!vol.3」公式レポート!(Part.3)

2020年9月12日に開催されたクリエイタートークセッション「アニソン派!vol.3」。豪華クリエイターゲストが大勢集まった濃密すぎる本トークイベントの公式レポートPart.3がアニソン派!projectチームより到着!

クリエイタートークセッション「アニソン派!vol.3」公式レポート(Part.1)はこちら
クリエイタートークセッション「アニソン派!vol.3」公式レポート(Part.2)はこちら

【第2部「今アニソンに本当に良い曲は集まっているのか?業界解体新書“僕たちとコンペ”」】

第2部のメインテーマは「僕たちとコンペ」。発注に併せて楽曲を集めてふさわしいものを選んでいくというオーディションや受験の様な制作作業です。もちろんそれで素晴らしい楽曲が沢山世に送り出されている歴史や現状があるのですが、ある問題提起から深く掘り下げていきました。是非逃さずチェックしてください!

登壇者:田淵智也、田代智一、渡辺翔、eba、草野華余子、谷原亮(F.M.F)、栁舘周平、菅原拓(ミュージックレイン音楽プロデューサー)、白戸佑輔、伊藤翼

・出演クリエイターが振り返る「あの曲コンペでしたね」

田淵智也:田代さんの曲で言うと、『涼宮ハルヒの憂鬱』の「ハレ晴レユカイ」はコンペだったんですよね。そのときは作家として活動していくために、いろんなコンペに参加していたんですか?

田代智一:まさにそういう時期で、コンペを始めて2年めくらいでしたかね。ひたすらいろんな案件に出していましたがなかなか採用がもらえなかった時期でもあります。僕自身はもちろん駆け出しの作家でしたが、レーベルのランティスも声優さんたちも今ほどビッグネームになる前で、これをきっかけにみんな一緒に一段上に上がった感じはあると思います。良いタイミングで良い作品に採用されてラッキーでしたし、畑亜貴さんや神前暁さんと知り合うきっかけにもなりました。

田淵智也:ebaくんはコンペに参加して自分を見つけてもらったというのはある?

eba:そういう意味ではOLDCODEXのコンペに受かったのがきっかけで、それ以降よくお仕事ご一緒させていただいています。アニメの主題歌のコンペで作曲と編曲をして、そこで知っていただいて。

田淵智也:翔さんはそれこそ(LiSAの)「oath sign」だったり(ClariSの)「コネクト」だったりがありますけど。

渡辺 翔:そうですね。どの曲というのは言及しないですけど、出世作は実はコンペというのはありますね。

田淵智也:僕らの世代というのはコンペに育てられたところがあって。僕もLiSAちゃんに書いた「ROCK-mode」という曲はコンペだったんですよね。昔はコンペが登竜門みたいなところがありましたよね。ただ、僕は最近、アニソンを聴いていて、気がかりになることがあって。いいなと思える曲に出会う頻度がちょっと減っているんですよ。今は群雄割拠の時代になっていて、それこそサブスクの有名プレイリストに入れば個人クリエイターでも売れる時代になったときに、アニソンってワールドワイドにリンクしているところはありましたけど、聴いててなんとなくパッとしないなと。その根拠が何かというと、聴いていると「コンペで受かりそうな曲」なのではと思った面もありました。

田代智一:テンプレ感ということだね。

田淵智也:そうなんです。コンペの場合、参考曲というのがあるじゃないですか。「あっ、この曲の参考曲はあれなんだろうな」っていう、サムシングニューがないような曲が多く見受けられるようになって。アニソンをプレイリストにバーッと入れて聴いてると、「次の曲はきっとこんな感じなんだろうな」と思いながら再生してしまうところがあって。そんななか、“ずっと真夜中でいいのに”や米津玄師のアルバムを聴くと感じるワクワク感を考えた時に、アニソンは、そのワクワク感で負けてるんじゃないか?という気持ちがあるんですけど。

田代智一:いいか悪いかは別として、ある程度発達したジャンルというのは、そこだけで食えるというのがあって。アメリカとかでもラッパーが仲間をどんどん連れ立っていく感じで、ひとつのジャンルの層を作る傾向はありますよね。そこに所属するみんなが食えるような形で、みんな似たようなものになっていくというのは、一つのカルチャーの在り方としてあるのかなという気はします。

田淵智也:それは要約すると成熟しきったから頭打ちになったということ?

田代智一:そのカルチャーを好む人が集まれば当然そのカルチャーにおける「それっぽいもの」が再生産されるし、ある意味リスペクトを込めて「それっぽいもの」をあえて作っていることもあると思う。どんなジャンルでも、良くも悪くもそういう傾向はあるんじゃないかな。

田淵智也:なるほど。それとコンペで選ばれそうな曲を選ぶ側もどうなんだろう?という気持ちがあるんですよ。新しい曲がほしいディレクターであれば、そうはならないじゃないですか。「この曲はテンプレだからはじく」っていう。そこでなぜワクワクしないのかという仮説を3つ用意しました。その1「コンペ発注側の意欲停滞」。その2「参加作家側の意欲停滞」。その3「若手作家の活動シーンの推移」。
「コンペ発注側の意欲停滞」というのは、発注書には「こういう楽曲がほしい」という熱意が書かれているはずなんですけど、その熱意があまり感じられなかったり例えば募集のタイミングで締め切りがすごい短いとかがあったりするんじゃないかと。これは僕の持論ですけど、期間が短いとディレクションのジャッジにブレが生じるんですよ。発売に向けて動かないといけないから、フルサイズが届いたときに「もっとこうしてください」っていうディレクションをする時間がないんですよ。そうなると、第一稿だけで全部が進んでいくようなことになりかねない。
そして「参加作家側の意欲停滞」。アニソンに限らず、コンペに参加して受かったら名前が売れるという夢物語が、昔はあったじゃないですか。ただ、これはキャラソンも含めて曲の数が増えたことも理由の一つだと思うんですけど、コンペに受かったとしても、印税的な意味ではそんなに(お金が)入らないところがあって。アニソンのコンペで受かってタイアップ曲になったとしても、めちゃくちゃもうかるのかと言えばどうなんだろうと。

田代智一:そもそも昔でも、そんなにヒットしていないものは(お金も)それほど入らなかったけどね。でも、たしかに曲数があまりにも増え過ぎているというのはある。話が少し逸れるけど、NetflixとかHuluとか映像のチャンネルが多すぎて、全部を観る時間はないというところにも通じるかもしれない。聴きたい音楽はたくさんあるけど、全部を買っても、全部を聴けない。本で言う積ん読みたいな感じで、もう聴ききれないというのはあるかもしれない。

田淵智也:「若手作家の活動シーンの推移」というのは、最近サブスクデビューというのがすぐできるんですよ。アニソン作家になるよりも先にアーティストとして名前が出たほうが、その後がやりやすいというのがあるのかなと。ebaくんはcadodeを始めるときにそういう企みがあった?

eba:始めるときはそういうことは考えてなかったけど、後付けでそうだなと思ってます。そもそも(作家よりも)アーティストのほうが、現場でワガママを言っても許されそうな雰囲気があると思うので(笑)。なるべく自由にやりたかったりできるだけ好きなように作りたい人はそっちの方がやりやすいと思います。なので若手作家は(アーティスト活動を)やったほうがいいですよ。

草野華余子:私は最初にアーティスト活動をしていて、後から作家になったタイプで、作家をやることで自分の活動を引き上げてもらったところがあるけど、田淵さんもUNISON SQUARE GARDENという名刺があるし、「アーティストだからこういうことを言うよね」というのがあると思っていて。昔、作家の人たちと飲みに行ったときに、二人(渡辺 翔とeba)が「アーティストとしての居場所があるのは羨ましい」と言っていたのを覚えているんですよね。翔くんが今度sajou no hanaを始めるということもちょうど話していたから。

渡辺 翔:(sajou no hanaを始めたのは)やっぱり楽しいことを追求したいし、表現できる場所がほしいというのがあって。ただ、決め打ちの仕事、sajou no hana、CYNHNをやっていたら、確実にコンペに参加する時間はなくなるだろうなと思っていました。昔はコンペで100曲近く書いた年もあったんですけど。これは大体の作家さんがそうだと思うんですけど、徐々に(コンペに参加する数が)減っていって、最終的に居場所を変えるという話になりますよね。

ということでここから今回のテーマの深掘り。様々な視点のゲストにお話しを伺いました。ネガティブな切り口に見えてとても未来のヒントになる話が目白押しです!

・制作会社F.M.F谷原亮さんに聞いてみた「キャリアを積んだ作家はやがてコンペから巣立つ」

谷原 亮:先ほどお話されていたお話と同様で、ある程度キャリアを積んでいくと決め打ちの仕事が増えてくるので、どうしてもそちらを優先せざるを得ないというのがあって。弊社としては(所属クリエイターに)コンペをひたすら頑張るように持ちかけるようなことはないです。もちろん会社的には参加してほしいですけど、決め打ち仕事のほうが(作家の)モチベーションは間違いなく出ますし、(コンペに参加するかどうかは)基本作家さんの自由なので。

田淵智也:「キャリアを積んだ作家はやがてコンペから巣立つ」という現状をネガティブに捉えていますか? コンペに参加し続けるのであれば、決め打ちを取ってくるほうが、会社的にはいい?

谷原 亮:その意味では、会社としてはコンペに参加してもらいたいという事実もありますけど、例えばコンペに参加しなくても自分で仕事を生んで行けるほうが汎用性が高いわけですから、弊社としては、そういう活動は基本的にどうぞというスタイルなんですね。こちらで全部管理するというのではなく、自分で生んだ仕事は自分でやっていただいて結構ですよ、という。

田淵智也:業界でこんな会社ほかに知らないんですけど、例えば僕がebaくんと仕事をしたくて個別にメールした場合、F.M.Fはebaくんからマージンを取らないんですよ。

eba:でもその代わり、事務所からきた仕事は仮にギャラが安くても基本的にやります。

谷原 亮:ただ、それを強要しているわけではなくて、うちの社長はユートピアを求めているところがあるので(笑)。決まり事を作って切り分けていくよりも、もっと長い目で見ようというのが(社風として)あります。

・新世代作家・栁舘周平さんに聞いてみた「欲しいのはコンペ採用ではない。権力だ!」

栁舘周平:コンペはケースバイケースだと思いますし、単純にOPやEDが決まったところで、それが自分のプラットフォームに還元されるわけでは必ずしもないというのが印象であって、それは刹那的な快楽で留まるところがあると思うんです。僕はまだ実績があるわけではないので、ただ文句を言っているだけなんですけど、ただ、周りを見ていてもそういう空気はあるかもと思っていて。

田淵智也:今だとアニソン作家になりたい人たちは、コンペに参加、ではなく別の潮流があるということ?

栁舘周平:例えばボカロPだとか、いわゆる作家や裏方という立場ではなくて、自分で先にプラットフォームを持ったうえで、最終的に裏方に回るほうがスムースで、いい曲を作るための選択肢も増えると思うんですよ。これは諸先輩方にぶん殴られそうな発言なんですけど、作家として売れていく未来があったとしても、なかなか権力として繋がっていかない。極端な話どれだけ頑張ったところで、やっぱり米津玄師さんには勝てないっていう。

田代智一:アーティストに比べると裏方にはあまり権力がない感じを受けると。

田淵智也:ということは栁舘くんはアニソンシーンに対する興味というより、より広い目線なのかもね。米津玄師には勝てないというのであれば、米津玄師みたいにアーティストデビューをしたい欲求はある?

栁舘周平:僕は今、完全にそっちに向いています。今の名前では(作品を)出すつもりはないですけど。

田淵智也:じゃあアニソンシーンに希望があるとすれば?

栁舘周平:自分と同世代で言うと、トラックメイカーの人たちが頭角を現している印象があって。『電音部』というコンテンツで、トラックメイク的な曲作りの最先端の人たちが業界に殴り込んでいる感じがあって。作家の人たちが音の良さで勝負するような戦いはちょっと難しいのかなと思ったときに、コライトみたいなやり方が合うのかなとは思います。トラックメイカーと作家のメロディセンスを合わせるみたいな。

・夏川椎菜プロデューサー・菅原拓さんに聞いてみた「発注に命をかけろ」

田淵智也:今回は、コンペで選ぶ側の人がどういう思いでコンペをやっているのかを聞きたくて。先に確認しますが、アニソン派!vol.1でクリエイター陣から絶賛された夏川椎菜さんの1stアルバム『ログライン』の収録曲は大体がコンペで採用したんですよね?

菅原 拓:そうです。自分は(夏川の)デビュー当時は少し手伝ったぐらいで、途中からバトンタッチして担当になったのですが、TrySailの他の二人(雨宮 天、麻倉もも)はソロ活動の方向性が想像しやすいところがあるなか、彼女に関しては、みんなどうしたらいいのかわからないところがあって。ただ、僕は自分の好きなもの、得意なものがハマるんじゃないかなという気がしまして。
(発注書のこだわりについて)まずアーティストに対する僕の愛情を持ち込みます。で、「こんなアーティストにしたいと思っています。つきましてはこんな曲がほしいです」という、発注書とは別の長い文章を書いて、メールで送ります。コンペなので単純に夏川椎菜に理解がない作家さんもいるわけじゃないですか。そういう人に向けて「まずは一回聴いてみてください!」と言いたいんですね。『ログライン』の楽曲はほぼ、そういう感じで集めました。

田淵智也:その収録曲の中でもこのイベントでもおすすめ楽曲に選ばせていただいた「ファーストプロット」はagehaspringsの田中秀典さんが書かれてますけど、これもコンペなんですか?

菅原 拓:コンペです。これはコンペの功罪のいいほうだと思うんですけど、僕が田中さんと知り合ったのは、高橋 瞳の担当をしていた時期のコンペがきっかけで結構長い付き合いなんですね。それは彼がagehaspringsに入る前のことでもあって、コンペで知り合った作家さん・アレンジャーさんと今でも仕事をしているパターンは結構あります。

田淵智也:作家事務所経由で発注書を出す人と、田中さんみたいに直接連絡する人との境目はどこにあるんですか?

菅原 拓:それは基本どちらもパターンもやります。作家事務所さんにお願いして、僕の知らない作家さんにも曲を書いてもらうパターンと、自分がハマるだろうなと思う作家さんにお願いするパターン。「パレイド」のシングルコンペのときに出会った、すごくいい曲だけど使わなかった曲が2曲ぐらいあって。そのうちの1曲が、HAMA-kgnの書いた「ステテクレバー」という曲になります。

田淵智也:夏川さんのインタビューを読んでいて思うのは、楽曲制作への並々ならぬ意欲があるんじゃないかということで。そもそも夏川さんは楽曲制作にがっつり関わっているんですか?

菅原 拓:もちろん。まず本人に聴かせても大丈夫かな?という段階までは僕がやります。例えばコンペで集めた100曲から30曲まで絞って、その30曲を聴いてもらう。そこで「これが好き」とか「この曲はもっとこうなったら好きになれそう」という意見を本人に聞きます。

田淵智也:インタビューを読んでると夏川さんは最初、音楽がそんなに好きではなかったという話ですが。

菅原 拓:僕が本格的に担当することになったとき、最初にいろいろ聞いたんです。「普段はどんな音楽を聴いてるの?」とか「どんなふうになりたいの?」という話をよくしていて。当時は「これは違う」は言えるけど、「これがいい」というのはなかなか言えなかったんです。

田淵智也:菅原さんはどれだけ熱意を込めても給料は変わらないじゃないですか? そのことによって心が折れていくディレクターも多いと思うんですけど、給料が変わらないのに熱意を込めてやるというのは、菅原さんの音楽仕事の流儀として何でやるんですか?

菅原 拓:これは僕がアーティスト活動をしていたときの思い入れの話になってくるんですけど、例えば夏川なら夏川の気持ち、ちょっと違うなと思っているけどそれを上手く説明できない気持ちとか。逆に言うと作家さんもそうですよね。自分の書いた曲を変なふうに扱われたら嫌じゃないですか。そういう人を何人も見てきたので、俺はそうはなりたくない!という気持ちが強いですね。

田淵智也:「発注に命をかけろ」というのであれば、どういう発注書を書くのがいいと思いますか?

菅原 拓:言葉を尽くして説明するしかないですよね。持ってる熱量と言うのは自然と伝わるものだと思うので。

田代智一:元アーティストということで、表方の気持ちと裏方の気持ちの両方をわかっている人ならではのディレクションというのはあると思います。裏方しか経験していない人だとここまでの配慮はなかなかできないかもしれませんね。

・一流作曲家・白戸佑輔さん&伊藤翼さんに聞いてみた「コンペとはパチスロである」

伊藤 翼「掛け金が多い方が当たる!」

伊藤 翼:僕がここで言う掛け金というのは、仮歌さんにお願いしたり、ギターやベースを誰かに頼んだりするときの謝礼のことですね。仮歌代についてはは実質コンペに参加するときの基本料金みたいなものになっていたり。仮歌さんのニュアンスにはコンペに通るか通らないかを左右するぐらいの重要さがあると思っています。

白戸佑輔:自分のすごく好きなコンテンツ、『魔法使いの嫁』のコンペの発注がきたんですけど、僕はそれをすごくやりたくて、めちゃくちゃいい曲ができたと思ったので、パーカッションを7種類ぐらい、ストリングスとドラムも生で録って、それをワンコーラスで提出しました。そのときは(コンペの採用が)決まったときにまた(レコーディングを)お願いする約束をして、安くしてもらったんですけど、結構な掛け金でしたね。

伊藤 翼:僕もそういう曲があって。僕が初めてアニメの主題歌をやらせていただいたときの話なんですけど、『ストライク・ザ・ブラッド』というアニメのEDテーマになった井口裕香さんの「Strike my soul」をコンペに出したとき、その頃はロック系アレンジがまだ自分でできなかったこともあり、もうアレンジャーの方にお金を払って、曲を仕上げてもらったらどうか?と考えました。そこですでにコンペで結果を出していたZENTAさんというギタリストの作家の方に「すみません!勉強のためにアレンジをお願いできないでしょうか?」とお願いしたデモが、見事にコンペに通ったこともありました。

白戸佑輔「確変ってうれしい」

白戸佑輔:少しオカルト的な話なんですけど、ついてる時期というのがあるんですよ。コンペに通りやすいし、私生活でも運がいいっていう。僕は欅坂46の2ndシングル「世界には愛しかない」のとき、採用されたのかどうかわからないなか、(シングル曲が解禁する)ラジオの時間を調べて、ドキドキしながら待ってたんですよ。そしたらイントロが僕のデモと全然違うものが流れてきて、「全然違うわ、ダメか……」と思ったら、Aメロが来たら俺の書いたメロディだったんですよ。マジで言葉が出なくて、ウォーってなりましたね。ラストアイドルのときも、TV番組を観てたら、なんか聴いたことのある曲が流れてくるなと思ったら、俺の書いた曲で。「この曲、オレオレオレ!」ってなって。

伊藤 翼:そこでドーパミンがドバーって出ますよね。さっきの栁舘くんみたいに、コンペに参加する気があまりない人たちも多くなってきたと思うんですけど、僕らがコンペをガンガンやっていた頃は、アニメの主題歌をやりたいと思ったときに、コンペしか手段がなかったんですよ。いわばパチスロしか見えなかった状態で、ある意味、視野が狭くなっていたっていう(笑)。

田淵智也:でも欅坂とかAKBグループのコンペだと競争率が絶対に高いじゃないですか。そうなるとめっちゃ設定が厳しいパチスロみたいなことになると思うんだけど。

伊藤 翼:そうですね。ここでまたスロットの話をさせていただくと(笑)、スロットには設定が1から6までありまして、設定が6だと出やすい、設定が1だと出にくくて、台によって設定が違うんですね。スロットでは出やすい台を選ぶことが大事で、それをコンペに置き換えると……。

白戸佑輔:(欅坂やAKBグループのコンペは)出しにくいです。ただ、僕や翼くんはもうパチンコ自体が好きみたいな状態になっているので、別にお金目当てとかじゃなく、楽しいからやっているというところがあるんですよね(笑)。

伊藤 翼:いい感じの距離感を保ちながらコンペに参加することが大事なのかなと思っていて。例えばパチンコの話で言うと、「待ち合わせの時間まで30分あるから、パチンコ屋に入っていくらか出てきたらもうけもん」みたいなあまり重くないノリで参加するようにしている感じですかね。

田淵智也:でもお二人とも決め打ちの仕事が増えてきているので、コンペに参加する時間が減っているというのは実情としてある?

伊藤 翼:それはしょうがない部分で。ただ自分の体験談で言うと、コンペは良い距離感で、メインにしすぎないのが大事なんじゃないかなと。ある意味、手段の一つでしかないので。別に仕事はアニソンだけではないし、自分でYouTubeをやってもいいし、今は本当に選択肢があるんですよね。なので、コンペは選択肢の一つとして存在していてよくて、いかに自分が熱意を出せるか?というところで参加するかを決めればいいと思います。

白戸佑輔:自分的には、昔、(先ほど登壇した)菅原さんがアドバイスしてくれたことがあって。そのときに言われたのが「いい曲を書けばいいじゃん」ということで。俺はそのとき、意味がよくわからなくて、「そりゃそうじゃん」って思ったんだけど、結局噛み砕くと、自分本位にならず、発注を見て気持ちいいものを狙って書け、ということだと思っていて。それを外して仕掛け技ばかり意識して書こうとすると、発注側からすると「いい曲ではない」となると思うんです。

伊藤 翼:仮にそれで通ったとしても、さっき田淵さんが言っていた「コンペっぽい曲」になると思うんですね。

田淵智也:決め打ちよりもコンペのほうが良かったということはありますか?

伊藤 翼:コンペはお題箱の側面があるんです。例えば絵描きの方がツイッターで描いてほしいお題を募集して絵を描くことがありますけど、コンペはお題がもらえるので、今まで挑戦したことのないジャンルの楽曲を作るきっかけになったりするんです。そこで自分の音楽の幅が広がった面はあります。

白戸佑輔:基本、決め打ちはすごくありがたくて、やりたいことをやれるんですけど、責任感というのがあるんですよ。自分が今コンペで楽なのは、自分本位で好きなものを書いていることで。アンビエントっぽいものも書くし、絶対(クライアントに)受けないだろうなと思うものもとりあえず書いて、刺さったら嬉しいなと思いながら提出すると、結局それが刺さったりするんです。そういうのが決まったときは、コンペをやっていて良かったなと思いますね。決め打ちの場合は、そういうことができないので。(クライアントが)求めるものをちゃんと投げたいし。

田代智一:たしかに決め打ちだと逆に保守的になるというのはあるかもしれない。「〇〇さん節でお願いします」と頼まれて、結局自分の手癖をリピートしてしまって、自分を消耗品にしてしまうというか。決め打ちは期待に応えないといけないから、それを嫌ってコンペに参加するというのは、有名作家さんでも聞く話ですね。

伊藤 翼:関係値の話だと、プロデューサーの顔が見えているコンペだったら参加しようかなと思いますよね。プロデューサーとの関係性で直接お話が来たコンペというのは、参加せざるを得ないような感じもありますし、出来るだけいい曲をあげたいなとも思いますし。そういう関係作りは大切だと思いますよ。ただコンペは通らない場合のほうが多いんですよ。打率が3割というレベルの人もなかなかいないと思うんですよ。

田淵智也:ここまでご覧になっていて、草野華余子さんいかがですか?

草野華余子:私毎月3~4曲コンペに参加してるくらいコンペ好きなんですよ。元々J-POPを書きたかったというのもありますし、SMPという事務所に所属しているんですけど、AKBグループだったり、ジャニーズさんだったり、いろんなところに曲を出せるのが面白いなと思っていて。あと、私は負け戦で勝つのがすごく好きなので、常に殴り掛かるぞ!っていう(笑)。今こういう事を言ったのも、やっぱりいい発注のコンペと、愛のないコンペがあるという意味で言うと、一概に全てのコンペがいい・悪いという線引きではないということは、今から作家を目指してる方には言いたいなと思って。私も最初はLiSAちゃんのコンペから作家活動を始めたので、いいディレクターさんに出会えて、曲の書き方を覚えられたので。やっぱり音楽とはいえ、出会いが大事だと思うので、コンペがひどいものだとは思わずにいてもらえたらと思います。

田淵智也:僕はとにかく、アニソンに、これからもいい曲が生まれ続けてほしいんですね。それを作るためには必ず熱意が必要だと思うんです。で、僕が最初に挙げた仮設で言うと、どこかで誰かがサボっているんじゃないか?という気持ちがあったので、そこはどの立場の人も「チャンスなんだから全力でやろうよ」という熱意が必要だなと思っていて。

田代智一:貴重な話をたくさん聞けました。やっぱりみんな音楽が好きなんだろうな。このチケットを買ってみてくれてる人もそうだと思うので、その好きという気持ちと、好きなものに時間を割けるという素敵な時間の過ごし方を大切にしていきたいですね。そういう時間を今晩、一緒に過ごせたのは良かったんじゃないかなと思います。またこういう機会が持てればいいなと思います。ありがとうございました。

田淵智也:今回、社会的な状況を踏まえ、客を入れるわけにはいかないと言われて、やらないという選択肢もあったんだけど、思ってることがあるのであれば言っといたほうがよくない?というのがあって。赤字でもいいから面白いことをやろうと決断しました。お客さんを入れないことで、ユニットのライブが実現できたし、とにかくどんな時代になっても面白いことはいくらでも考えられるぞ!ということが、今回のイベントを通して伝わってくれればと思います。それはアニソンに関してもそうだと思っていて。アニソンには本当にいい曲がまだ全然出てくるはずです。ただ油断しないでほしいのは、他のジャンルからもめちゃくちゃいい曲がたくさん出てきているので、業界全体でもっとがんばらなきゃいけないよなということを伝えたいなと思っています。今日参加してくれた仲間やアーティストの人たちは、本当にいい音楽を届けたくて、こういう仕事をしているんだと思いますので、是非皆さまもこれからも音楽を愛していっていただければと思います。

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