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INTERVIEW

2020.12.20

「にじさんじ」所属の人気VTuber・樋口楓が待望のアーティストデビュー!17歳の彼女の“今”を多彩なクリエイター陣が表現した1stアルバム『AIM』リリースインタビュー

「にじさんじ」所属の人気VTuber・樋口楓が待望のアーティストデビュー!17歳の彼女の“今”を多彩なクリエイター陣が表現した1stアルバム『AIM』リリースインタビュー

バーチャルライバーグループ「にじさんじ」に所属する人気VTuberの樋口楓が、1stアルバム『AIM』を完成させた。光増ハジメ(First Call)を音楽プロデューサーに迎え、みきとP、ナナヲアカリ、ZAQ、結城アイラ、ぽん(ORESAMA)、EFFYら豪華クリエイターが参加した本作。アニメや音楽をこよなく愛する彼女のこだわりが詰め込まれた、17歳の彼女の“今”を様々な角度から表現した1枚になっている。VTuberとして彼女が伝えたいメッセージ、成し遂げたいこと、その想いを受け取ってほしい。

アーティスト・樋口楓としての活動、1stアルバム『AIM』に込めた意味

――今年3月にシングル「MARBLE」でメジャーデビューされてから、アーティスト活動を行ううえで意識の変化はありましたか?

樋口楓 バーチャルライバー (以下、VTuber)としての意識は変わってないですけど、アーティストとしては、それまであまり接点のなかったプロの方に音楽を作ってもらうことが増えたので、音楽面のこだわりや作詞の際の言葉の表現方法、技術面でいろんな経験を積ませてもらっています。トラックダウンのやり方とか、学びもたくさんありましたし、レコーディングでもディレクションしてもらうことで、樋口楓の良さをより出してもらえたのかなと思います。

――それこそ今みたいにアーティストとして取材を受けたり、ラジオなどのメディアやライブに出演する機会も増えたと思いますが、そういった経験のなかで印象に残っていることを挙げるとすれば?

樋口 “Lantis & Purple One Star New Generation LIVE 2020”では、ランティスやPurple One Starのレーベルメイトの方々と一緒にライブをさせていただいたんですけど、皆さん私と同じ新人とは思えないぐらいすごくて。ステージ慣れされていて、「あ、これが芸能界か」と思いました(笑)。

――でも、樋口さんもこれまでにワンマンライブ“Kaede Higuchi 1st Live “KANA-DERO””をZepp Osaka Baysideで開催したり、ライブイベント“Virtual to LIVE in 両国国技館 2019”に出演して両国国技館のステージを経験していますよね。

樋口 今まではVTuberの土台でしか自分自身を見つめたことがなかったので、自分の演出やパフォーマンスに疑いはなかったんですけど、“New Generation LIVE”で皆さんのパフォーマンスと並んだら、やっぱり全然違って見えましたし、私の印象としては、モニターがそこに置いてあって樋口楓が動いているだけのライブに見える部分もあって。ファンの方がすごく温かくて、「でろーん(樋口のあだ名)がそこにいるみたいだった」と言っていただけたのは嬉しかったですけど、そこは真摯に受け止めて今後の演出を考えていかなくてはいけないなと思いました。

――それはVTuberならではの悩みですね。

樋口 私はリアルに近づきたい思いがあってアーティスト活動をしているので、そこはランティスさんからデビューしたからこそ、考えないといけないなと思っています。

――そんななか、ついに樋口さんの1stアルバム『AIM』がリリースされます。まずは作品全体のコンセプト、タイトルの『AIM』に込めた意味について教えてください。

樋口 “AIM”には目標に照準を定めて成長活動をしていくという意味合いを込めています。私は今17歳の高校2年生なんですけど、その目標を定める先というのが、VTuberを始める頃の過去の私だったり、未来の私だったりして。17歳の私が今感じている、過去のことや未来のことを歌うコンセプトの作品になっています。

――ということは基本、自分自身の中から出てきた感情を歌にされているということでしょうか?

樋口 そうですね。自分で夜寝る前とかに出てきた言葉をメモ書きして、それをクリエイターさんにお渡しする感じでした。今回は全曲、私のリクエストで楽曲を作ってもらっています。

「22歳の樋口楓」配信から生まれたリード曲「アンサーソング」

――アルバムのリードトラック「アンサーソング」は、メジャーデビュー曲「MARBLE」の流れに連なるギターロックチューン。これはどんなイメージで作った曲ですか?

樋口 今年のゴールデンウィークに「VTuberをやっていなかった22歳の樋口楓」というテーマの配信を行ったんです。その樋口楓は特に夢を叶えることもなく、就職先も決まらず、バイトをしつつ、卒論を書きながら毎日を過ごしていて。その何をやってもうまくいかない5年後の樋口楓が、現世の私たちの時代と繋がって、私を応援してくださっている今のリスナーさんとコミュニケーションを取ることで、ちょっとだけ前を向くことができた…という配信をモチーフに作ったのが、この「アンサーソング」なんです。だから歌詞は決して前向きではないですけど、それでも樋口楓というか、この状況から半歩でも進めたらいいなという曲になっています。

――自分はその背景を知らずにこの楽曲を聴いたのですが、歌詞には平凡な日常への苛立ちや焦燥感、日々に充足感を求める気持ちが描かれているように感じました。

樋口 そうですね。その気持ちは埋まらないって感じですけど。

――歌詞は作詞家の平朋崇さんが書かれているわけですが、受け取ったときに「22歳の樋口楓」の気持ちとシンクロしましたか?

樋口 そうですね。書き直してもらったところもありますけど、“ポケットの中叩いて粉々になったビスケットです 魔法なんて何処にも無いじゃん”というフレーズは最初からあって。これは“ポケットをたたくとビスケットはふたつ”という歌詞の童謡(「ふしぎなポケット」)からきていて、(22歳の)樋口楓は魔法にすがることすらできない。現実を見たくないのに見せられているという表現がすごくシンクロしていると思います。

――エッジの効いたギターサウンドに関しても、樋口さんのリクエストが反映されているのですか?

樋口 この曲は元々メジャー1stシングルの原案として、プロデューサーの光増(ハジメ)さんが最初に書いてくださった曲だったんです。ただ、決して自己紹介曲ではないなと思って、新しく「MARBLE」を書いてもらったんですけど、この曲のバンドのテイストは好きだったので、ストックしておいてもらったんですよ。で、今回のアルバムを作る機会に、デモの爽やかで高校生が好きそうなサウンドを活かしてもらいつつ、光増さんに引き続き作曲・編曲をしてもらいました。

――中盤の“トゥ・トゥ・トゥ・トゥ・ル”や“アー・ライ・ラ・ライ”と歌う箇所がユニークですね。

樋口 それも私から「擬音みたいな言葉を混ぜてください」とリクエストしていて。言葉にならない気持ちを“トゥル”と“ライ”で混ぜてもらった感じで。私は擬音の内容までは思いつかなかったので、そこは作詞の平さんに全部お任せしたんですけど、ぴったりだなって思いました。

――“true(=真実)”と“lie(=嘘)”ということですものね。樋口さんの二面性みたいなものがさりげなく表現されていて、お洒落だなあと思いました。

樋口 作詞家さんってすごいですよね。私自身があまりプラス思考な人間ではないので、マイナスな面がありつつ、前を向いて行こうっていうのが感じられるところだと思います。

――このアルバムを聴いた限り、樋口さんは割とポジティブな人なのかなと思っていたのですが。

樋口 たまにポジティブかも。雨ときどき曇りくらい。

――それ、晴れがないじゃないですか(笑)。

樋口 そうそう、曇りでたまに日差しがさすみたいな感じです(笑)。

――「アンサーソング」のMVは、3Dアバターの樋口さんが実写の空間にいる映像に仕上がっていて、樋口さんが現実世界で生活しているような作品になっています。

樋口 皆さんの生きている次元に樋口楓の日常があることを表現したかったのが、今回の第一のテーマとしてありました。あとはよくあるバンドっぽいMVみたいなものを作りたくて。二次元の体の私が、違和感を残しつつ、でも(三次元の世界に)馴染んでいる感じにしたくて、(映像制作会社の)白組さんにお願いをしたら、しっかりと意図を汲み取ってくださりました。例えば屋上から落ちるシーンも、そこは私が二次元じゃないとできないことだし。

――まあ、生身の人間が実際に落ちたら危ないですからね(笑)。

樋口 あと、同級生たちが帰り際に私を見つけて写真を撮るシーンも、私が面倒くさがりであんまり友達がいないから苦笑いする感じを上手く表現してくださったりして。めちゃくちゃ私の意図を汲み取ってMVを作ってくださいました。

――MVの冒頭とラストにセリフが入りますけど、これは?

樋口 あれは「22歳の樋口楓」の配信で実際にしゃべっていた言葉です。最初のが「22歳の樋口楓」と今が繋がったときのセリフで、最後がリスナーさんのおかげでちょっと前向きになれたから頑張るよっていうセリフですね。きっと配信を観ていた人は気づいてくれていると思います。MVの中にも「22歳の樋口楓」が登場していて、今の私と目が合ったりはしないのですが、ちょっと不思議な交わりもあります。

――ちなみに机で寝てるシーンがありましたが、あれが樋口さんのあだ名の由来になった「でろーん」とした寝方ですか?

樋口 そうですそうです、あれが「でろーん」です。

アニメ好き・野球好きな一面が反映された、ユニークな楽曲たち

――アルバムからの新曲「FRONTIER」のMVについても伺わせてください。こちらはTVアニメのオープニングアニメ感がある、ちょっとしたパロディみたいな映像になっています。

樋口 アニメっぽいMVを作りたい思いがずっとあったのですが、そういう映像を作っているシバタカヲル(サヨナラの最終回)さんという方に、面識はなかったんですけどお願いしてみたら、「いいですよ」と言ってくださって。で、その方にまず、VTuberとは何なのか?みたいなことをお話させていただいたら、見事VTuberの沼にハマられたんです(笑)。

――良かったですね。

樋口 私の人となりに関しても3時間くらいお話しして、VTuberを始める前はどんな人だったのか、VTuberを始めて思っていることを話しているうちに、自分と重なる部分があったみたいで、私の気持ちをすごく汲み取ってくださって、1週間ぐらいで絵コンテを上げてくださったんです。しかもアニメって大体1クール12話だから、12話分のプロップとかも全部書いてくださって。

――めっちゃ作り込まれているじゃないですか!

樋口 そうなんです。そこからアニメのオープニングっぽくするために、実際にアニメ制作に関わられているランティスさんの意見も参考にしつつ、1話1話のダイジェストっぽいシーンも盛り込んでくださって。私は最初、普通に樋口楓が動いてる感じのアニメーションになるのかなと思っていたんですけど、裏テーマがきっちりあるし、考察し甲斐があるMVになりました。

――楽曲自体も、新しいフロンティアを目指す決意の強さや、オープニングらしい熱さを感じさせる内容です。

樋口 この曲のテーマ自体が“樋口楓自身の応援曲”で、樋口楓の身近にいる方々、半径10mぐらいの人に向けて、その人たちから樋口楓が与えられて強くなっていくという曲なんです。MVの中にいろんな樋口楓が出てくるんですけど、そのそれぞれから要素をもらって今の樋口楓がいるんだよ、というのを表現しています。

――ブラスサウンドをフィーチャーした野球の応援歌っぽい楽曲「Victory West!」は、樋口さんが自ら作詞をされています。樋口さんは広島カープの大ファンとしても知られていますが、これはどんなテーマで制作した楽曲ですか?

樋口 今年の夏に、私が所属する事務所のにじさんじで「にじさんじ甲子園」という企画があって、「パワプロ(eBASEBALLパワフルプロ野球2020)」というゲームを使って、にじさんじ所属メンバーをキャラクターに仕立てて野球の試合で競い合ったんですが、そのときのことをモチーフに作詞しました。

――なるほど。

樋口 私が監督として率いたVR関西圏立高校は決勝戦で負けてしまって、すごく悔しかったぶん、めちゃくちゃ楽しかったんですよ。胸の中にすごく熱いものがあった直後に、ZAQさんからこの曲が送られてきて、ブラスやトランペットの要素が入ってたこともあって、私は野球の応援歌っぽいなと勝手に感じたんです。なのでランティスのスタッフの方に「にじさんじ甲子園」をテーマに作詞していいかを聞いたら、OKをいただいたので、そこから4時間ぐらいで歌詞を書き終えました。そのときは「にじさんじ甲子園」のことしか考えていないぐらい集中していたので、すぐに書くことができて。

――自分の中で会心だと思うフレーズは?

樋口 野球は9人で1チームなので、歌詞の中に1から9までの数字を入れていたり、「電光石火」や「逆境」といったゲームの中に登場するキーワードを歌詞の中に盛り込んでいます。「にじさんじ甲子園」は19万人ぐらいの同時接続があってめちゃくちゃ盛り上がった企画なので、この曲を聴いた後に動画も観てもらえると楽しいと思います!

みきとPやナナヲアカリが楽曲提供!対照的なサウンドの2曲

――今回のアルバムには他にも豪華作家陣が参加しています。みきとPさん提供の「Q」は、「ロキ」を彷彿させるみきとさんらしいロックンロール。

樋口 今回は、私が普段から「歌ってみた」でお世話になっている方々に楽曲を書いてもらいたい思いがあって。みきとPさんには「SNSで感じるもどかしさ」をテーマに楽曲を書いていただきました。例えば、インターネットで活動するうえで、昔はもっと自由にできていたのに、だんだん悪意に取られたりすることが増えてきたので、ちょっと住みづらくなったよねっていうお互いの思いだとか、本当につぶやきたいことをつぶやけていない私は誰だろう、自分の思いは一体何だっけ?という感情を表現してくださって。そういう苛立ちや葛藤がテーマだったので、ロックな曲をお願いしました。

――樋口さんの歌声もワイルドでかっこいいです。冒頭の「ワオ!」というシャウトも様になっていて。

樋口 みきとPさんの仮歌もかっこいい感じだったので、かっこよさ全振りで荒々しく歌いました。まさかシャウトを入れるとは思ってなかったんですけど、みきとPさんがディレクションにいらっしゃったときに何回か録って、「これでいこう」と言ってくださって。ちょっと恥ずかしかったですけど、入れておいて良かったです!

――その一方で、ナナヲアカリさんが書き下ろした「アブノマールガール」は、甘酸っぱい歌い口のロックナンバーに。

樋口 私はナナヲさんが書く歌詞に、女の子っぽい繊細な雰囲気と、キラキラしている女の子のイメージの二面性をすごく感じていて。この曲のテーマはみきとPさんの曲とも被るんですけど、ナナヲさんもインターネットで活躍されているインフルエンサーの女性ということで、まずは話し合いながら、お互いの共通点みたいなものを探していったんです。で、私がもしVTuberの活動をしていなかったら、放課後に友達と遊びに行ったりとか、別の生活があったんだろうなっていう話になって。周りの女の子が遊んでいるのを見ているうちに「本当にこの活動していてよかったのかな?」と思ったり。

――そういうふうに思うこともあるんですね。

樋口 あります。羨ましいなって思うときもありますし、どうしてもこっち(VTuber)の世界だと仕事友達とかになっちゃうので、クラスの友達がもっと欲しいなって思うときもあって。そういう素の自分でいたい気持ちだったり、私はみんなとちょっと違うかもしれないけど、至って普通の女の子なんだよっていうことを表現したかったんです。そこにナナヲさんも感じる部分があったみたいで、「アブノーマルな女の子」という意味で「アブノマールガール」にしていただきました。

――歌詞に“特別じゃない 透ける身体 触れられなくても此処にいるの”とありますけど、樋口さんがVTuberであることの二面性も、しっかりと落とし込まれていますね。

樋口 普通の芸能活動だったらまた違うかもしれないですけど、VTuberっていう存在は、友達からしても触れにくいですからね。この触れにくさがなくなれば、もっと当たり前のカルチャーになればいいなと思うんですけど、なかなか難しいから、そういう生きづらさも感じたりしてますね。

――でも、そんな樋口さんが“ちょっとだけ普通になって 君のもとへと”と歌うところは、樋口さんのファン的にはハートを撃ち抜かれるのではないかなと思って。

樋口 あはは(笑)。まあ、同じ次元に立っているんだよっていうことを表現しているんですけど、私は普段女の子の一面を出さないので、そう思ってくれる人もいるかもしれないですね。多分私が作詞をしたらもっと荒々しくなっていたと思うので、そこはナナヲさんの良さが出たところだと思います。

「たこ焼きロック」から心温まるバラードまで、どこまでも広がる歌世界!

――リスアニ!読者に向けておすすめしたい曲はありますか?

樋口 うーん……「たこ焼きロック」で!

――そうきましたか(笑)。食べたいものをとにかく連呼する、アルバムの中でも一番ユーモラスな楽曲です。

樋口 これは樋口楓の二次創作から生まれた、カエデちゃんという2頭身の子をモチーフにした曲なんです。精神年齢が3歳児ぐらいの女の子なので、思ったことをズバズバ言っちゃうんですよね。周りのみんなと体型を比べて気にしてしまう年頃の17歳の今をテーマにしたアルバムの中で、私の一部であるカエデちゃんがどストレートに食べたいものを全部食べようと歌うところが、忘れていた無邪気な心を思い出させてくれるし、そういう気持ちをテーマにした曲になっています。

――しかも関西弁で歌っているので、樋口さんらしさもちゃんと表現されてますね。

樋口 この曲を書いてくださったみのさんはリアルのYouTuberをされている方なのですが、「レコーディングのときは樋口さんの普段の喋り口調で歌ってほしい」ということで、私がその場で普段の口調で歌ったものを歌詞の文面に起こしてもらった感じですね。

――光増さんが作曲、PandaBoYさんが編曲したファンキーなダンスポップ「現代社会、ヒロインは!」もすごくいいですね。

樋口 私はダンスミュージックっぽい曲も好きなので、そういう曲を歌いたいなと思っているなかで、安藤紗々さんが甘辛い感じのかわいいけどしっかり芯の通った歌詞を書かれる方なのでお願いしました。VTuber界隈のことを“100年先を想えるなんてやさしいこの世界”と書いてくださって。私は2年後潰れてるだろうなと思って活動していた人間なんですけど(笑)、そういう私にはないプラスの女の子らしい表現でめちゃくちゃかわいらしく書いてくださって嬉しかったです。

――個人的には少し切ない曲調のミディアムナンバー「mìmì」も印象に残りました。VTuberの活動を通して得られる次元を超えたリスナーとの繋がりのようなものが感じられて。

樋口 レーベルメイトのぽん(ORESAMA)さんに歌詞を書いていただけて嬉しかったです。樋口楓の温かい一面、二次元と三次元のどっちも大切にしているところを見出してもらって。いつも荒々しい雰囲気の樋口楓だけど、実はこういう温かく包み込んでくれる一面もあるんだよ、っていうテーマで曲を書いてくださいました。

――実際の樋口さんも、そういった温かさや包容力みたいなものを持ち合わせている?

樋口 自分で言うのもあれですけど、結構情に厚い人間だからあると思います。仲良くなった人には犬みたいに懐くタイプなので(笑)。

VTuber、アニメ、二次元、三次元――あらゆるカルチャーを繋ぐ存在へ

――ほかにも高速エレクトロニコア「ステレオアイデンティティ」からスカコア調の「TOBI-DERO!」まで、様々なタイプの楽曲を収録したバラエティ豊かな作品になりました。今回のアルバムでご自身のどんな一面を表現することができましたか?

樋口 私自身がマイナス思考の持ち主なぶん、表現していても自尊心や自己肯定感が低い人間だと言われることが多かったんですけど、もちろんこの業界に未来があると思ったからこそ、ランティスさんとご一緒して音楽活動を行っているので、そういった内に秘めた樋口楓の気持ちをいろんなクリエイターさんに感じ取って書いていただいた作品になりました。VTuberの良さだったり、私の本当の想いがいっぱい詰まったアルバムになったので、皆さんにもぜひそれを感じ取ってほしいです。

――これはアルバム全体を通しての感想なのですが、樋口さんは新しい世界に飛び込みたい気持ちや、平凡で終わりたくない気持ちが強いのかなと感じました。

樋口 そうですね。VTuberという新しい分野の業界、カルチャーをもっと皆さんに知っていただきたい思いもありますし、それをどんどん広めていきたいので。やっぱり誰も踏んだことのない道を歩くのは、怖かったり、ためらいもあると思うんですけど、もっと未開の地を開拓していきたいですし、ここで終われないなと思っているので。

――では、樋口さんは今後のアーティスト活動でどんなことをやっていきたいですか?

樋口 もっとリアルの方々と同じステージに立って、VTuberってこんなこともできるということを知ってもらいたいなと思います。私は自分のことを「2.9次元」と言っているんですけど、リアル寄りの感性を持った樋口楓を通じて、VTuberの文化や業界に抵抗がある方にも、その魅力を知ってほしいですし、私たちも声優さんとはまた違ったジャンルで、それぞれにバックグラウンドがあって活動しているので、それを各々のVTuberに感じてもらえたらなって思います。

――なるほど。アニメ好きやVTuberファン、いろんな文化を繋ぐ架け橋みたいな存在になりたいと。

樋口 それを目標にランティスさんに入らせていただいたので。2次元しか好きじゃない人、3次元しか好きじゃない人、その中間にいる私たちが、壁みたいなものを少しずつ壊していけたらなって思います。

――樋口さんはアニメやアニソン好きとしても知られていますが、ランティスさんに所属しているからには、いずれはアニメタイアップ曲も歌ってみたい?

樋口 歌ってみたいです! VTuberがアニメの主題歌を歌うとどんな雰囲気になるのかは想像がつかないですけど、「FRONTIER」もアニメ仕立てのMVにしたので、そういう憧れはあります。

――なんだったら「FRONTIER」の世界観をそのままTVアニメにするのも面白そうですけどね。深夜の5分アニメとかで。

樋口 あはは(笑)。子供に影響が良くない、結構病みがちなアニメになっちゃうかも。でも面白そうなので、もしやってたらぜひ皆さん観てください(笑)。

INTERVIEW & TEXT BY 北野 創(リスアニ!)


●リリース情報
『AIM』
発売中

【完全生産限定盤(CD+BD)】

価格:¥6,000+税
品番:LACA-35845

【初回限定盤(CD+BD)】

価格:¥4,200+税
品番:LACA-35846

【通常盤(CD)】

価格:¥3,000+税
品番:LACA-15846

<CD>
01. アンサーソング
作詞:平朋崇(FirstCall) 作曲・編曲:光増ハジメ(FirstCall)
02. ステレオアイデンティティ
作詞:宮嶋淳子 作曲:光増ハジメ(FirstCall) 編曲:DJ WILDPARTY、彦田元気
03. Be Myself
作詞:結城アイラ 作曲・編曲:山本玲史
04. FRONTIER
作詞:平朋崇(FirstCall) 作曲・編曲:光増ハジメ(FirstCall)
05. Q
作詞・作曲・編曲:みきとP
06. アブノーマルガール
作詞・作曲:ナナヲアカリ 編曲:加藤祐介
07. TOBI-DERO!
作詞:金子麻友美 作曲:光増ハジメ(FirstCall) 編曲:EFFY(FirstCall)
08. たこ焼きロック
作詞・作曲・編曲:みの
09. mìmì
作詞:ぽん(ORESAMA) 作曲・編曲:伊藤賢
10. 現代社会、ヒロインは!
作詞:安藤紗々 作曲:光増ハジメ(FirstCall) 編曲:PandaBoY
11. Victory West!
作詞:樋口楓 作曲:ZAQ 編曲:EFFY(FirstCall)
12. MARBLE
作詞:平朋崇(FirstCall) 作曲・編曲:光増ハジメ(FirstCall)

<Blu-ray>
01. アンサーソング -Music Video-
02. FRONTIER -Music Video-
03. MARBLE -Music Video-

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