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INTERVIEW

2020.08.26

南條愛乃、ファンの声に応えた初のアコースティックアレンジアルバム『Acoustic for you.』リリースインタビュー

9月2日に発売される南條愛乃のニューアルバム『Acoustic for you.』。全12曲の既存曲をアコースティックアレンジにして収録したアルバムなのだが、曲の新たな魅力を発見できたり、何よりぬくもりが感じられる作品になっている。歌のレコーディングは、オリジナルフルアルバムを録るのと変わらないくらいの労力を必要としたそうで、制作の裏話などを聞いた。

やってみるとライブとレコーディングは別物すぎました

――最近はステイホーム期間もありましたが、エンタメ業界について、どのようなことを考えていましたか?

南條愛乃 やっぱりいろいろ考えました……ライブも今までは当たり前にあるものだったけど、みんなが健康でないとできないものだし、エンタメって生きるために必ずしも必要なものではなく、嗜好品のようなものじゃないですか。でも、心の健康的にはなくてはならないものでもあるし。ただ、そこまで楽しめる状況の人ばかりではないかもしれないと思うと、発信の仕方も難しいなと思いました。

――僕は、ただ家にいるときは動画サイトや配信ライブに助けられたところがあるので、エンタメも大事だなと思いました。

南條 そうですよね……。何もなかったらと思うと息が詰まるし、こんな状況だからと暗い表情をしていなければいけないかと言われたらそうではないですからね。やっぱりエンタメも欠かすことができないものだと、私も思います。

――そういう意味で、『Acoustic for you.』を出してくれることは嬉しかったです。

南條 ありがとうございます。

――どのような経緯で、このアコースティックアルバムを出すことになったのですか?

南條 実はオリジナルフルアルバムを作るつもりですでに動き始めていたんですけど、それを丹精込めて作っても、今年はライブでお届けできないかもしれないと考えると、新しい曲たちが宙ぶらりんの存在になってしまいそうだと思ったんです。それでレーベルとも打ち合わせをして、昨年からアコースティックツアーをやっていた流れもあったし、今年は毎年やっているバースデーアコースティックライブも出来なさそうだし、ファンの方から「アコースティックアルバムを出してほしい」という声も届いていたので、今回はアコースティックアレンジアルバムにしましょうという流れになりました。

――状況を見ての決断でもあったんですね。

南條 今は何をするにしても、状況を見ながらですし、何が起こるかわからないからすごく難しいです。

――もしライブができる状況になっても、アコースティックならば、座りながらじっくり聴くことができるし、いいアイデアですよね。

南條 声も出さなくていいし、距離も空けられそうですし(笑)。あとは、皆さんに会える機会がなかなかないからこそ、アコースティックな楽器とボーカルというシンプルな構成で、よりナマモノに近い今回のような作品が良いのかなと思いました。

――ぬくもりを感じますからね。そしてジャケット写真がすごく綺麗でしたね。こちらもぬくもりを感じる色合いで。

南條 アルバムで使っている楽器と電飾、そこに温かみのある木目が見えていたり、というキーワード出しをして、そこから詰めて作っていったんですけど、まさに私がイメージで伝えていた通りのものというか、それ以上のものを作っていただけました。

――南條さんのアーティスト写真も大人っぽいですよね。

南條 メイクがいつもと違っていて、意思強めなんですよ。今回の『Acoustic for you.』というタイトルには、会うことができないからこそ、一人ひとりに、「あなたに」、音楽をお届けできたらいいなという意味も込めているんです。だからいつものようにオープンに届けるというイメージではなくもっと親密に、一人ひとりに向き合うという意味で、人物的には、凛とした感じで真摯にそこに居る、というイメージでした。真っ直ぐあなたに届けるよという意思のある写真になったと思います。

――既存の曲をアコースティックアレンジにしたアルバムですが、そうは言っても作るのは大変だったのではないかなと思いました。

南條 そうなんですよ! 言い方は悪いですけど、舐めてかかっていたところがあるんです(笑)。ライブでもさんざんやってきている曲たちだし、演奏もツアーで一緒に廻っているバンドメンバーだから楽勝だぜ!って(笑)。これまでみんなでやってきたものがCDに収まるんだという、嬉しくも少し軽い気持ちもあったんですけど、やってみるとライブとレコーディングは別物すぎて、かなり苦戦した曲もありました。ただ、バンドの方々はつるっと演って帰っていかれましたけどね(笑)。ボーカル録りは新規の曲を録るのと同じくらいのカロリー量で、ライブで楽しく歌うのとは全然違いましたね……。

――アレンジはどのようにしていったのですか?

南條 まずプリプロで、全曲バンドさんだけで当たっていただいた音源を聴いて、そこに私のアレンジイメージを伝えていきながらレコーディングをしました。バンドのオケ録りでは、私も雰囲気を合わせるために一緒に歌いました。その時も、イメージが違うときは話し合うんですけど、結構バンド側からこの音を入れたいとか、ギターを重ねたいとか、「スキップトラベル」で指パッチンを入れたいとか(笑)、提案がすごく出てきたんですよ。アコースティックライブでは、実際にバンドがその場で出せる音しか出していないけど、バンドさんたちの頭の中では、こういう理想があったのかなぁ? って思いました。

――ライブでやっているアレンジがベースにありつつ、さらにアレンジを足し引きしていく感じだったのですね。アコースティックライブとガラッとイメージが変わった曲はありますか?

南條 「リトル・メモリー」は、ガラッとアレンジを変えていますね。そもそもオリジナルが、おもちゃ箱みたいなかわいいアレンジで歌詞がセンチメンタルなので、そのギャップを楽しんでほしい曲だったんですけど、そのおセンチ部分をさらに増幅しようと言ったら、ギター1本でやってみたらどうかという提案がバンドからあったんです。

――ギター弾き語りになっていますからね。

南條 しっとり具合が大人な感じでいいかもと思いながら詰めていったんですよ。だから歌詞の世界観にグッと寄っている雰囲気になっていると思います。それと「サヨナラの惑星」も雰囲気が違いますね。ライブだと、ピアノを弾いてくださる佐々木聡作さんと一緒にできるので、お互いの呼吸を感じながら歌えるんですけど、収録だと別々に録るので、テンションを合わせるのに苦戦しました。聡作さんがすごく壮大で美しい伴奏を用意してくれていたから、ライブと同じように歌うと喧嘩しちゃうと思ったんです。でもそのおかげでライブともまた違う、いい力具合の「サヨナラの惑星」が生まれたと思います。

――演奏によってボーカルも変わるから、大変ですね。

南條 最初はライブで歌っているから、いつも通りに歌えばいいと思っていたんですけどね……。それが最初に崩れたのが「スキップトラベル」だったんです。去年いちばん歌っているくらいの曲だから、軽快な気持ちで歌おうと思っていたら、全然しっくりこなくて(笑)。この曲は、一歩踏み出したいという理想を歌っている曲なんですけど、ライブでは軽快に楽しく歌う一曲になっていたんです。だけどレコーディングではなぜか全然楽しい軽快な気持ちで歌えなくて。なんかすごく悲しい気持ちが先行してたんですよね。なので試しにその悲しい気持ちのまま歌ってみたらしっくりきて。曲本来の感情に立ち返った感じなんですけど、「ああ今は軽快っていうより、このテンション感が気分なのね、スキップトラベルさんは」って感じでした。悲しく歌ってはいけないと葛藤しているときがいちばん苦しかったです。聴いてわかるかどうかはわからないですけど、今まででいちばん哀愁漂うスキップトラベルになりました。

――それは少し意外でした。ボーカルの変化で言うと、「君が笑む夕暮れ」はデビュー曲なので、自身の成長も感じたのではないですか?

南條 この曲も結構苦戦したんですよ。しかもシングルレコーディング当時も苦戦しているんです(笑)。ライブでよく歌うし、今ならあのときみたいな感じにはならない! と思って歌い始めたら、自分のなかの理想の歌声から程遠くて! ただ、いつもアルバムのディレクションをしてくれている土井潤一さんが、「すごく素敵だけど」とおっしゃってくれたので、土井さんを信じようと思いながら歌いました。でも、この曲はめちゃめちゃ難しい曲だなといまだに思います。

――すごくボーカルが豊かになっていて、良いなと思いました。

南條 だったら良かった。この曲も「スキップトラベル」と同じで、「うまくアウトプットできない~~」と、焦りながら歌っていたので(笑)。

このアルバムを聴きながら、ライブやうちのチームに思いを馳せてほしい

――アコースティックアレンジで、新たな魅力を感じた曲というと、どの曲ですか?

南條 「OTO」ですかね。ベースリフがかっこいいし、間奏のバンドの演奏もかっこ良かったので、そこに自分のボーカルが入るのが申し訳ないな、みたいな気持ちになってしまって(笑)、(ボーカルを録るときは)ちょっとお邪魔しますよ……みたいな感じでした。それと「and I」も良かったです。この曲は、ちょうど今の自分の等身大で歌えるんです。主人公の年齢感は曲によっていろいろ違っているんですけど、「and I」は肩の力を抜いて、いつ何歳の人が歌っても成立するような曲なので、歌っていても気持ち良かったです。

――先ほどおっしゃった、一人ひとりに届けるという部分で、歌詞の内容的にも共通する最新曲の「and I」が入ったのは良かったですね。

南條 そうですね。曲順を決めるときも、この曲をどこに持っていこうかと思ったんです。「スキップトラベル」で終わるか、「and I」で終わるかの2パターンだったんですけど、ひとりひとりに届けたいという、アルバムのコンセプト的には「and I」だなと思って、この曲で終わることにしました。

――曲順で言うと、1曲目の「believe in myself」も印象的でした。

南條 特に意図をもって「believe in myself」からにしようと決めていたわけではなく、私の中で、この曲のアコースティックバージョンの立ち位置が、知らないうちに高くなっていたんですよね(笑)。

――上京して、これから頑張るという気持ちを歌っている曲ですが、改めて南條さんが歌っているのを聴くと、特に若い世代がすごく勇気づけられるのかなと思いました。

南條 曲を出した当時も、自分が感じたことを振り返りながら、夢に向かって頑張っている同士に届けばいいなという感じで歌詞を書いていたんです。改めて、この曲の歌詞を見ながらじっくり歌うと、当時のことも思い出すし、リアルタイムの感情ではないけど、こういう事もあったなって、ちょっとグッときてしまったりするんですよね。だから若い世代はもちろん、年齢関係なく、何かに向かって頑張っている人たちに聴いてもらえればなと改めて思いました。

――この曲の「-acoustic arrange making MV-」という映像特典も入るそうですね。

南條 バンドさんがいてレコーディングする機会というのもあまりないので、いつもライブを見に来てくれて、バンドも応援してるよと言ってくれる方が見て、嬉しいものになっていると思います。こんな感じでスタジオに入ってるんだよっていう雰囲気が伝わればと思います。

――そのほかに、『南條愛乃 Birthday Acoustic Live 2019』のライブ映像も初回限定盤には付きますし、良いアルバムが届けられそうですね。

南條 いろんなことが大変だった2020年にぴったりというか。これを聴いて癒やされてほしいですね。そしてこれを聴きながら、ライブだったり、バンドメンバー含めてうちのチームに思いを馳せてくれたら嬉しいです。

――ぬくもりと安心感があるアルバムですしね。

南條 そうですね! やっぱり新規の曲って、なんというか、曲調はどうあれ殴りにいく感じがあるじゃないですか(笑)。こんなのできたけど、どうだい!みたいな。でもそれとは違う、既存曲のリアレンジなので、見知った人のイメチェン姿みたいな感じで楽しんでもらえるんじゃないかなって。こんな顔もできたんだね! みたいな(笑)。

――それでいて映像作品やブックレットもあるから、手元に置いておきたくなりますし。

南條 結局手元に残るものって物なんですよね。去年大掃除をしていたら、学生の頃に応援していたアーティストのライブDVDが出てきたんです。懐かしいと思って掃除中に見ちゃうじゃないですか。配信とかだと、見ようと思った時に見る感じだけど、うわぁ懐かしいっていう偶然性があって見る感じだったから、どちらも良いなと思いました。手軽にきれいな映像が見られるのもいいし、思い出込みで取っておける物品もいいしっていう。いつも手元に置いておくアイテムとして、見応えのある楽しみ方もしていただきたいなと思っているので、こうやっていつも紙のものをこだわって作らせてもらっているのも、嬉しいです。

INTERVIEW & TEXT BY 塚越淳一


●リリース情報
アコースティックアレンジアルバム
『Acoustic for you.』
9月2日発売

【初回限定盤(CD+特典Blu-ray+フォトブック)】

品番:GNCA-1586
価格:¥5,500+税

【初回限定盤(CD+特典DVD+フォトブック)】

品番:GNCA-1587
価格:¥5,500+税

【通常盤(CD)】

品番:GNCA-1588
価格:¥3,000+税

<CD>
01. believe in myself
02. 黄昏のスタアライト
03. 今日もいい天気だよ
04. サクラタイマー
05. リトル・メモリー
06. 一切は物語
07. OTO
08. サヨナラの惑星
09. 君が笑む夕暮れ
10. 0-未来-
11. スキップトラベル
12. and I

<Blu-ray/DVD>
・believe in myself -acoustic arrange making MV-
・南條愛乃 Birthday Acoustic Live 2019 < TOKYO DOME CITY HALL >2019.7.7(sun)

●番組情報
アルバム発売記念特番
 番組タイトル:animelo mix presents「南條さん、ニコ生する!!!」
出演者:南條愛乃
放送日時:2020年9月6日(日)
20:30~ 映像パート
21:00~ 本人出演パート (予定)

番組ページはこちら

●配信情報
NBC ユニバーサルによるライブ映像配信企画
「NBCUniversal ANIME&MUSIC presents“LIVE at Home”」
配信内容:南條愛乃  「Yoshino Nanjo Live Tour 2017<・R・i・n・g・>」
配信期間:8 月26 日(水)20:00~9 月9 日(水)23 :59

配信はこちら

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