2020年1月18日開催!クリエイタートークセッション「アニソン派!vol.2」公式レポート Part.2

俺の“この曲がすごい!”サミット

前回好評だったこの企画。ゲスト作家様が自作の曲の中で特にお気に入りの1曲を選んで力説してもらいました。とにかくもっと注目されたい!皆さん絶対に聴いてください!

「CRIMSON LOVERS」
アーティスト:天海春香(CV:中村繪里子)、如月千早(CV:今井麻美)
作詞:只野菜摘
作曲・編曲:広川恵一 (MONACA)
Bass:田淵智也
Drums:金川卓矢
Guitar & Programming:広川恵一 (MONACA)
Mixing Engineer:前田和哉
「THE IDOLM@STER MASTER PRIMAL ROCKIN’ RED」M-2収録

田淵智也:これも「何やってんだ広川」曲ですね(笑)いまだかつて聴いたことのないような曲。

広川恵一:これは「攻めたロック曲」というオーダーをいただいたんですけど、この曲を提出したら、いろんな大人がざわついていたらしいんですよ(笑)。まず、うちの会社の制作進行の者にデモを出した段階で「えっ、この曲でいいんですか?」と、社内でも心配の声があったぐらいで(笑)。この曲は中村繪里子さんと今井麻美さんが歌われたんですけど、やっぱり歌うのが大変な曲なので、あとでちょっと怒られました(苦笑)。でも、この曲があったから、その先に作った曲が始まったのかなと思っていて。

広川恵一:僕はこの曲で初めて『アイドルマスター』シリーズに参加させていただいて、これ以降、「ヘンな曲」担当になりつつあります(笑)。ちょっとひねくれたオーダーばかりいただくんですよ。素直な曲も作れるんですけどね……。

「宣誓センセーション」
アーティスト:KiRaRe[式宮舞菜、月坂紗由、市杵島瑞葉、柊 かえ、本城香澄、長谷川みぃ(CV:牧野天音、鬼頭明里、田澤茉純、立花芽恵夢、岩橋由佳、空見ゆき)]
作詞:高瀬愛虹
作曲・編曲:伊藤 翼
Piano:岸田勇気
E.Guitar:城石真臣
Bass:二家本亮介
Drums:伊藤”ショボン”太ー
Backing Vocal:maimie
All Other Instruments and Programming:伊藤 翼
Mixing Engineer:中谷浩平 (VICTOR STUDIO)
シングル「宣誓センセーション」M-1収録

伊藤 翼:(『Re:ステージ!』の楽曲関しては)プロデューサーから「こういう曲を」とオーダーをいただくのではなくて、曲の方向性を自分に任されているんです。1stシングルから3rdシングルまでは、僕の当時のブーム的に転調の多い曲を作っていたんですけど、この4thシングルでは自分の好きなキャッチーさという部分に触れたくて、それを込めた曲になっています。このときはジャズにハマっていたので、自分のジャズ的な部分をガンガン入れていきました。

伊藤 翼:この曲は僕の中でも転換点になっていて、ここから歌ものに関してはキャッチー路線で書いたものが多くなった気がします。特に楽器隊の動きを聴いてほしいです。このベースラインがずっと動いているのがすごく好きなんですよ。ジャズはベースラインがずっと動いてるんです。

伊藤 翼:(ミュージシャンの演奏について)大枠としてはデモで指定しているんですけど、ほとんど自由に演奏してもらうことが多いです。

「閃きハートビート」
アーティスト:伊藤美来
作詞:林 英樹
作曲・編曲:佐藤純一 (fhána)
ホーンアレンジ:井上泰久 & 佐藤純一
Electric & Acoustic Guitar:木暮晋也
Bass:須藤 優
Drums:小松シゲル
Strings:真部 裕ストリングス
Trumpet:具志堅 創
Trombone:太田垣正信
Alto Saxophone:井上泰久
Piano, All Other Instruments & Programming:佐藤純一
Mixing Engineer:熊坂 敏 (prime sound studio form)
TVアニメ「上野さんは不器用」OPテーマ

佐藤純一:通常アニメ主題歌のTVサイズは89秒なのですが、この曲は59秒なんです。というのも『上野さんは不器用』という15分アニメのOPテーマだったので。ただ、短いけど「サビ始まりでAメロBメロサビがあって、そこからもう一段階盛り上がりを入れてください」というお話をいただいて(笑)。でも頑張って詰め込んでみたら結構コンパクトにまとまったなと。逆に昔の曲、例えば筒美京平さんみたいな雰囲気が出て、いいなと思いましたね。

田淵智也:佐藤さんのセッションはいつも非常に豪華な印象があって。この曲にも、木暮晋也さんだったり、NONA REEVESの小松シゲルさんだったりが参加していますが、これは佐藤さんのチョイスなんでしょうか?

佐藤純一:僕の好きな人たちにお願いしています。

「HEAVEN’S RAVE」
アーティスト:AXiS[天神ネロ(CV:水瀬いのり)、比嘉アグリ(CV:渕上 舞)、蓬莱タキ(CV:川﨑芽衣子)、志摩サビナ(CV:前田玲奈)、鹿込オト(CV:黒瀬ゆうこ)、帝塚セネカ(CV:辻あゆみ)]
作詞・作曲・編曲:kz(livetune)
Mixing engineer:kz(livetune) ,藤巻兄将 (studio MSR)
Tokyo 7thシスターズ「EPISODE 4.0 AXiS」テーマソング

kz:「SEVENTH HEAVEN」は4つ打ちのEDMだったんですけど、今回は時代性もあって、ハイブリッドトラップあたりを含めつつ、そこからの進化系という形で書かせていただいて。サウンド面ではあまり悩まなかったんですけど、今回はどちらかと言うと歌詞で殺したかったんですよ。

kz:ラップは絶対に入れたくて。AXiSというユニット自体が、どちらかと言うと人間のクズの集団みたいな感じなんですよ(笑)。エピソードを読むと、この子たちにもちゃんと考えがあったことはわかるんですけど。なのでその狂暴性みたいなものを出すのであれば、ラップだろうと。

kz:歌詞については、『ナナシス(Tokyo 7th シスターズ)』はアイドルコンテンツですけど、AXiSはそもそもアイドルを全否定するユニットなので“つまらない偶像崇拝はもうやめにしない?”っていう。その何もかもぶっ壊そうっていう歌詞を書いた瞬間に、この曲は完成したなと思いました。

田淵智也:僕は歌詞を書くにあたって耳あたりを優先するところがあるけど、kzさんはどちらかと言うと文章(文脈)を見ているタイプですよね?

kz:そうですね。でも僕は基本的にキャラクター性にスポットを当てないで、そのキャラクターがいる風景画みたいなスポットの当て方をするんですよ。なのでキャラクターの心情に寄せることは今まであまりなかったんですけど、ここ1~2年ぐらいは心情の変化があって、キャラクターの部分や歌詞、文章で殺していったほうがいいなと思って。その変化が結構出たのが、この曲だと思います

田淵智也:「Virtual to LIVE」に関しても“どうしようもなく今を生きてる”っていう歌詞があって。

kz:そうですね。あれとこの曲が、俺の中での最近の二大よくできた歌詞です。

田淵智也:この曲はAメロ、Bメロ、ラップ、サビがちゃんとあるのに、その後に爆踊りができるイントロがついてきて。てんこ盛り感がすごいなと思って。

kz:ダンスミュージックっていうコンテクストに落とし込んだとき、サビはどうしてもブレイクしがちなんですよね。それで本当のサビ自体をドロップに落とし込むケースがよくあるんですけど、この曲に関しては、サビはサビとしてちゃんと聴かせたいというのがあって。

佐藤純一:僕はkzさんはすごくエモーションの人だと思いますね。作家って、曲を作って、それをアーティストに託して、そのアーティストが人の心を動かすじゃないですか。でもkzさんは、kzさん自身の中に何かざわついたものがある気がして、kzさんの曲を聴くと、僕の心もざわつくんです。それは今の歌詞の話とか、「音楽で殺したい」という表現にも出てると思いましたね。

イベント後半はより深い話へ突入。アニソンシーンの知られざる魅力や違和感などなど…一般来場者レポート禁止の濃すぎる話をかいつまんでお届けします!

そろそろ話そう【アレンジャーとは何か?特集】

「アレンジャーって何をする職業なんですか?」という質問に対して「まあ…ピンキリですね!」としか答えようがないシチュエーションが多いんです。じゃあそのピンキリとは何か?要は楽曲によって、人によって全然違うんです。じゃあ一人一人の作業ルールを深掘りしてみようとkzさん、伊藤翼さんにお話しいただきました。ここで話せたのはあくまで一例。無限のパターンがあるこの職業、是非もっと注目してください!

田淵智也:アレンジャーにはいろんな軸がありますけど、今回は【一人完結⇔別プレイヤー完結】【他人の曲を主に⇔自分の曲を主に】というふたつの軸に分けて話すと面白いんじゃないかと。僕が思う伊藤翼さんは【他人の曲を主に×別プレイヤー完結】、Kzさんは【自分の曲を主に×一人完結】だと思います。

小松未可子「Catch me if you JAZZ」
・田代×田淵によるデモ音源と伊藤翼アレンジ版(完成版)の聴き比べ

田淵智也:(デモと完成版では)イントロが全部違っているという(笑)。これは僕らがリクエストしたわけではなくて。これはどういう狙いでアレンジしたのか教えてもらえますか?

伊藤 翼:この曲はコード進行にジャズの種のようなものを感じていたんです。で、さっきお話した「宣誓センセーション」とちょうど同時期に作業していたので、ジャズのジャンルを入れられるだけ入れてしまおうと。なので1番は最初ファンクで始まって、Bメロに入るとラテン系のリズムにいって、そこからまたファンクに戻ったり、間奏でオークランドなファンクや4beatジャズを入れたりしていて。そういうジャンルのビートをいっぱい入れた曲にしてやろうという。

kz:曲のタイトルは先にあった?

伊藤 翼:なかったですね。

田淵智也:でもこの曲は元々、リファレンス的に「お洒落なジャズをやろう」というのがあって。いろんな方に「いい曲」と言っていただくことが多いですけど、翼くんの功績が非常に大きくて。これを機に、翼くんとはたくさんの仕事をさせてもらっています。

伊藤 翼:僕はこれがQ-MHzさんとの初めての仕事だったんですね。なので、力んじゃったところがあって。これは力みイキったアレンジです(笑)。

田淵智也:翼くんのアレンジ作業で面白いなと思ったのが、まずメロだけを聴いてコードをつけてみるということを聞きました。

伊藤 翼:自分の手癖とかもあると思うんですけど、まずその人のデモを聴かないで、自分でメロに対してコードを当ててみるんです。そのあとにデモを聴いて答え合わせみたいなことをしてみる。そのときに元のデモのコード進行のほうがエモいなと思ったら、そっちを採用する、みたいな。なので一旦フラットな頭でいちからコードを付けていくんです。でも、その作業をやることによって、メロが自分の体に入ってくる。僕は一度体にメロを入れないと、自由に発想ができないタイプの人間なので。

AXiS「HEAVEN’S RAVE」
・kzによるデモ音源の試聴(kz仮歌バージョン)

田淵智也:(完成版とアレンジが)一緒じゃん!(笑)。

kz:いや、ちょっと違うんですよ。Bメロとサビの間にフィルがない。

田淵智也:知らないよ!(笑)。

田淵智也:kzさんは音作りも含めて作曲という意識がありますか?

kz:俺はそもそもアレンジっていう作業が存在しないので。だってひとりだから、アレンジもくそもないんですよ。TDとマスタリングとアレンジと作曲までの範囲は全部同時進行なので。マスタリングとTDは(最終的に)エンジニアにお任せはしますけど。

伊藤 翼:僕の場合は、奏者に楽器を弾いてもらうので、奏者が自由に弾いてくれたフレーズで(楽曲のアレンジが)結構変わることがあるんですね。それを考えると、(デモに)自分のフレーズを入れても、それが採用されずに変わっていくことが多いので、自分のデモはあまりガチガチに決めず、ラフにしているところはあるかもしれないです。

kz:この間、『ナナシス(Tokyo 7th シスターズ)』で「光」という、水瀬(いのり)さんが歌うソロ曲を作ったんですけど、それはパーカッション以外打ち込みもシンセも使わずに、ほとんど生のバンドで録ったんですよ。その場合、翼くんが言うように(デモと)音が変わるじゃないですか。だからまあまあラフにデモを作ったんですけど、慣れないので、めちゃくちゃ不安でしたね。

アレンジャー吠える!

第一線で活躍するアレンジクリエイターのお二人。現在のアニソンシーンで感じる違和感をお話しいただきました!

・音に時代性がないアレンジはよくない!

kz:これは「Share the light」ときの話と同じなんですけど、ダブステップで使われるワブルもこの10年ぐらいでスタイルが変化していて、セラム(SERUM)っていうシンセが登場してから、またサウンドが変わったりもしているんです。ただ、いまだに、ダンスミュージック要素を押し出した最近の曲で、10年ぐらい前のワブルを使っているものがたまにあるんですよ。

kz:シンセの話で言うと、さっきの「オウムアムアに幸運を」みたいに、意図的に80年代のシンセっぽい音をやっているのであれば、意図が明確に伝わるから「なるほど!」と思うんですけど、フォーカスを当てようとしているところと全然ズレてることをやっている曲を聴くと、そのジャンルに特化した人にひと言聞けばいいのに、とは思う(笑)。それこそフューチャーベースであれば、さっき話したAireとか、そのジャンルに特化したトラックメイカーはたくさんいるので。

・打ち込みで済ませてアレンジ料据え置きは悲しい!

田淵智也:これは僕から聞いてみたいということで挙げたんですが(笑)よく、予算が少ないのでドラムやストリングスを打ち込みで済ませましょう、ということがありますけど、打ち込みで作ったものを製品として出せるレベルにするには、kzさんみたいにキックの音からめちゃくちゃこだわって細部まで調整したり、翼くんみたいにストリングスの打ち込みで、どうやったら人間が弾いてるっぽく聴こえるかを細かく調整する作業があって。

伊藤 翼:問題点は、自分でストリングスの譜面を書いて(生で)録りに行くよりも、打ち込みの方が時間がかかるんですよ。結構労力がかかるし、しかも、それをどれだけ詰めても、ストリングスの場合は生を超えられないことがよくあります。

kz:僕は生でドラムを録った経験が、『ナナシス』の「WORLD’S END」と「光」の2回しかなくて。逆に僕は「ドラムを生で録る」という発想がないんですよ。基本は自分で完結させようとするので。

田淵智也:でも最近はドラムを生で録る曲が増えてきてません? 一時期は打ち込みのほうが圧倒的に多かったけど。

kz:完全にバンドに傾倒してる。

伊藤 翼:それにバンド感がない曲でも、ドラムを生で録ることが増えてきた気はします。

田淵智也:これは僕の憶測ですけど、制作の方の仕切りが上手になってきてドラムを何曲か一日でまとめて録れちゃうみたいなやり方が増えたことと、それを叩けるプレイヤーが出てきたことが、理由にあるのかなと。

kz:パワードラムは打ち込みでOKだと思うんですけど、最近のジャンルって複雑だし、ファンクやジャズとかいろんな要素が入ったものを打ち込みでやると、どうしてもしょぼくなることが多いので、生ドラムじゃないと楽曲として成立しないものが増えているんだと思う。

伊藤 翼:打ち込みだとグルーヴが規則的にはなってしまったりしますよね。特にファンクやジャズはランダムなリズム感がほしいジャンルではあるので、それはたしかにそうかもしれませんね。

コーナー最後に、対極にいるアレンジクリエイターのお二人にお互いに質問をぶつけてもらいました!

伊藤翼からkzへの質問
・音数問題の話:最近の洋楽は音数が少ないので、アニソンもその流れに乗って音数を減らすべきなのか?また、減らしていくと何が起こるのか?

kz:絶対減らさない方がいいと思います。例えば、さっき佐藤さんが挙げていた、miletさんの曲(「Drown」)は音数を減らしていいと思うんですよ。あの曲は音数が少ないですけど、その分、ボーカルがバカ上手いので成立している。ああいう曲は歌でグルーヴを作っているけど、それは歌手の中でもさらにトップ層の人しか表現できないと思うんですよ。アメリカにはそういう歌を歌える人がたくさんいますけど、日本でそれを成立させようとすると、かなり難しいと思う。あと、それが果たしていちばんいいことかと言われたら、別にそんなことはないので。だって(海外の)マネをしたって全然面白くないじゃないですか。逆にアメリカでアニソンみたいな曲は生まれないので、なら我々はそっちに落ち着いていったほうが全然楽しくないですか?っていう。

伊藤 翼:たしかに海外でアニソンっぽい曲が生まれていないのは、そこにどんな理由があるのかなって思いますね。

kz:でもK-POPは最近は入りかけていますよね。それこそ秀和くんがよく使うコードみたいなものが入ってるK-POPアイドルの曲が、たまにあるんですよ。

kzから伊藤翼への質問
・伊藤くんみたいに基本的な音楽理論を説明できる作家から見て、いわゆる楽曲派・コードや楽曲解析をしてくるリスナーはどう見える?

伊藤 翼:僕も理論は好きなので、理論的に分析をしたくなる気持ちはわかります。ただ、そういう分析を見て、よく思うのは、理論が前にきているなということ。「この曲はこの理論が使われているからすごい!」というような分析をよく見ますけど、理論をつかったのがすごいのではなくてそれをした人のセンスの良さを褒めてほしい(笑)。自分では正直、何をやってるのかわからないまま、いいなあと思って書いたものを、後々説明しようとしたらこういう理論だった、ということは理論好きな自分でもよくあることです。

未来はこうなれ!アニソン予想図

様変わりし続けるアニソンシーン、これからどうなるの?そしてどうなっていったら面白くなるの?沢山の現場で活躍する佐藤純一さん、広川恵一さんに未来へのヒントを聞いてみました。これから育つ若手も必聴の内容!

アニソンアーティストがセルフサバイブする未来が見たい

佐藤純一:アニソンの売り上げや認知度は、アニメ作品がどれだけヒットするかに左右されすぎるんですね。アニメ作品と一蓮托生というか、運命共同体すぎる。コンテンツに付随する音楽であることが最大の魅力であり、同時にボトルネックでもあって、例えば、普通のJ-POPアーティストであれば、何かヒット曲が出ると、そこでアーティストのファンが増えて、次に出す曲もそれに引っ張られて(売り上げが)上がるものですけど、アニソンファンというのは、基本作品のファンなので、なかなかアーティストのファンとして付かないんです。だからなにかヒット曲が出たとしても、それはアニメ作品の力に依る部分が大きくて、次のタイアップが弱いと、あまり売れないんですよ。だからアニソンアーティストの場合、その活動が点でしかなくて、その点と点が線になって繋がっていきにくい、積みあがっていかないんですね。

佐藤純一: 2010年前後までは、アニソン業界はすごく活気があったと思うんですよ。要はなにかしらアニメのタイアップがあれば順当に売れますっていう。今はそうでもなくなってきていて。そもそも今は2010年前後に比べて、ポップカルチャーのなかで、アニメ自体があまりエッジーじゃなくなってきている状況があると思うんです。

佐藤純一:これはアーティストだけに限ったことではなく、レコード会社もそうだと思うんですけど、これから会社でアーティストを売り出そうというときに、単純にタイアップをつけて、リリースして、そのリリイベをやったりアニソンフェスに出演するということを繰り返しているだけでは、もうジリ貧なので、それぞれがやり方を考えなくてはいけないと思うんです。

佐藤純一:(fhánaでもそれを感じる?という質問に対して)感じますね。ただ、僕らの場合は、アニメ作品に頼らなくてもいい、アーティスト活動を行っていて。そうやって自分自身のコアなファンを獲得していかないといけないと思うんです。

佐藤純一:ただ、これが声優アーティストさんなら大丈夫なんですよ。そういった方たちは声優というベースがあって、その声優としての人気がアーティストとしての人気にも繋がっていく。だけど、アニソンアーティストというのは微妙な存在で。いわゆる「アニメの主題歌を歌っていて、アニソン畑のレーベルからリリースをしていて、アニソン畑で活動している人たち」がアニソンアーティストと呼ばれますけど、それを続けているだけでは、今後厳しくなっていくんじゃないかなと。

田淵智也:要はアニソン以外のところにもアピールしよう、ということですよね?

佐藤純一:それもあるし、例えばライブ活動もそうですね。それと、アニメのタイアップがなくても楽曲をリリースする、ということですね。

田淵智也:ラジオやります、フェスに出ます、SNSを活用します、活動拠点を海外にします、他にもいろいろなやり方があると思うんですけど、fhánaがセルフサバイブするために佐藤さんが狙っているところは?

佐藤純一:(fhánaは)海外でライブをしたり、ロック系のフェスにも出させていただいていて、会場にもお客さんがちゃんと入るんですね。アニソンファンとロックファンは食い合わせが悪いという話もありますけど、「アニソン=ダサい」というイメージを持っている人が多いからそうなるわけではなくて、実はそれはそもそも曲自体の問題なんじゃないかと思っていて。そもそもアニソンじゃないJ-POPアーティストにしてもJ-ROCKアーティストにしても、その中でみんな好みが分かれるわけじゃないですか。結局音楽がユニバーサルであれば、響くところには響くんじゃないかと思いますね。

田淵智也:僕がLiSAちゃんと会った頃に見ていて思ったのは、(タイアップの)アニメが売れたのもそうですが、彼女はSNSの使い方がすごく上手だったと思うんですね。あの子は、とにかくお客さんの前に出なくてはいけないからということで、どれだけ忙しくても毎日ブログを書いていて。

佐藤純一:アニメきっかけで入ったとしても、ちゃんと本人のファンになってくれるということですよね。

田淵智也:そう。じゃあ固定ファンをどうやって作るのか。LiSAであればちゃんとブログを書き続けた、ライブで言葉を伝え続けた。オーイシマサヨシさんであれば、MCもやって、自分のキャラクターを認知させるっていうのも、セルフサバイブの例ですよね。それがfhánaであればフェスに出たり、ライブ活動もちゃんとやるということで。

田淵智也:僕と田代さんの共通の知人で、奥井亜紀さんという方がいるんですけど、その方が歌った『魔法陣グルグル』のEDテーマ(「Wind Climbing ~風にあそばれて~」)は名アニソンとして名を馳せていますけど、あの頃はレコード会社が「アニメのタイアップなら獲れる」ということで、シングルで出す予定の曲を持ちまわって引っかかったタイアップのテーマソングになることが他にも多かったみたいです。だから奥井亜紀さん本人は「アニメをやりたい!」って言って入ってきた人ではないんですよね。水樹奈々さんも元々演歌歌手を目指していたけど、アニメの世界で認められて、そこで誰よりも頑張って。そういうマンパワーを含めて遠心力があるから、アニメファンの中でも固定ファンを作れる。

佐藤純一:それこそLiSAさんも元々アニソンがやりたくて音楽をやっていたわけではないですしね。本人のハングリー精神とか覚悟とか、要は本物かどうかという話ですよね。本人がどういうパーソナリティで音楽をやっているか、という部分もあるし、アニソン・アニメ業界に左右される部分もあるし。アニソンの外のメジャーなフィールドに出ていこうとしたとき、ファンの人たちは、アニソンもロックもJ-POPもそこまで区別しない人がだいぶ多くなっていているけど、結局TVだとかメディア側や、芸能界の偉い人たちが「アニメねえ……」っていう感じで、下に見ている部分もまだまだあるから。そういうところを上手く乗り越えていかなくてはいけない。

田淵智也:アニメのタイアップ曲で成功した人の場合、メディアでは「あのアニソンで有名な〇〇」というふうに書かれることが多くて。何となくレッテルや呪いみたいなものがありますよね。

佐藤純一:それも考えようだと思うんですね。アニソンアーティストがセルフサバイブするといっても、必ずしも「アニソンの色をなくす」という話ではないと思うんですよ。それはJ-POPでもJ-ROCKでも、似たようなアーティストがたくさんいるなかで、いかに独自性や色を出すかが大事になってくるわけですよね。そんななか、むしろアニメの音楽をやっていることが独自性や匂い付けになって、有利に働く部分もあると思うんです。だけど極端にアニメに偏ってしまうと、タイアップ力頼りになってしまう。だからきっかけはアニメだとしても、そこから外に出て、ライブの良さや曲の良さでアピールできればよくて。いろんな方向がありますね。

佐藤純一:あと、TVや既存の大きなメディアに出て行かなくてはいけない、みたいな雰囲気もありますけど、それだけがセルフサバイブの方向ではないと思うんですね。例えばYouTubeだけに絞って固定ファンを作ってサバイブするとか。今なら狭く深く固定ファンを獲得していく方向性もありますよね。こういう話をすると、ひとつの議論に全部の原因があるような話になりますけど、それぞれが個別のケ―スで原因もいろいろあるし、解決策についても、色々な方向性が考えられるし、アーティスト本人のモチベーションがどこにあるかによっても、やり方は変わってきますしね。やりたいことと違っていたらポテンシャルをフルに発揮するのは難しいですし。だからそれぞれのやり方にあったサバイブをしていく時代になったらいいな、というのが、僕の望む未来です。

歌もドラムも容易にエディットしない未来

田淵智也:エディットというのは、歌のピッチを修正する技術の話で。正直、技術も革新して、どんな歌も上手に聴かせられるような技術ができて、そのおかげでアニソンも発展した経緯があると思うんですけど、それは要は「上手く聴かせられる」技術なわけじゃないですか。それを「エディットしない未来」というのはどういうこと?

広川恵一:僕は声優さんの歌を録ることが多いんですけど、声優さんというのは役者さんなんですね。で、キャラクターソングの場合、歌も半分演技で、役として声を入れることにプライドをもっていらっしゃるので、(キャラの)ニュアンスを入れると音程的にズレることがあるんです。それは演技だと思うんですけど、そこが歌的には間違ったものと判断されると、せっかくいい演技だったとしても、(ピッチを修正することで)無くなってしまうんですね。

田淵智也:それを「いい演技が録れた」と思ったのに直すのはなぜ?

広川恵一:それは「正しく歌うことがいい」とされる風潮がわりとあるのかなと思っていて。

佐藤純一:僕も同じことを思っていて。僕は自分で歌をエディットし直したりもするんですけど。

広川恵一:僕もそうですね。

田淵智也:本来はミックスエンジニアという音をミックスする専門の人がピッチを直しますけど、それは作家本人が直したほうが良いということですか?

佐藤純一:「歌を直す」というのは、直す人にも歌心がないと、本当はいい歌に直せないはずなんですよ。それと、そもそも歌が下手な人の場合は直すけど、上手い人の場合は直さない方がいい、その境界を細かくジャッジをするのにも手間暇がかかるわけですね。

佐藤純一:本当は歌を録ってくれたエンジニアが、最後までミックスしてエディットしてくれるのがいちばんいいんですけど、歌のエディットをする別のエンジニアがいたりするんですね。それはコストとかスケジュールの問題だと思うんですが、全部の歌についてどれぐらい細かくエディットするかをジャッジするヒマがないから、上手い歌も、下手な歌も、同じようにテンプレ的に直してしまう。そういうのが原因のひとつだと思いますね。

田淵智也:エディットしすぎないことで良くなる部分というのは、例えば何ですか?

広川恵一:歌は歌詞があって、それを伝えるものじゃないですか。その伝える手段として、メロディを正しく歌うというのはもちろん大切ですけど、それって極論を言ってしまうとボーカロイドでもできるわけじゃないですか。これはドラムにも言えることで、今はシンセを使ったドラムの打ち込みも存在しますけど、あれも音自体は生の音なんですね。機械でボタンを押すとその生音が再生される仕組みがあって、それはボーカルに置き換えても起こることだと思うんですね。

田淵智也:誰がどの声なのかわからない、っていうのがアニソンでもアイドルでも少なくないと思うんですけど、それはサイボーグ的な「エディットをめっちゃしてます!」みたいな音楽が世に溢れかえっているからなんですか?

広川恵一:わからないですけど、そういう音楽はこういうふうに直すものだ、という正解みたいなものがどこかしらにあって、みんなそれに向けて揃えられているのかもしれないですね。だから、せっかく「このキャラクターはこういう喋り方をするから、歌はこういう感じかな?」って歌ったとしても、編集の段階で揃えられていってるのかもしれない。

田淵智也:ただ、声優さんの場合は忙しくて時間が取れなかったりするので、タイムリミットが迫ってくると「これはもう直しちゃおう!」ということも実際あったりしますよね。

田代智一:それはスケジュールをちゃんと空けてくれない大人の人にも原因があると思いますけど(笑)。本人が忙しいのは仕方ないので。ただ、いい歌を録るのに、こっちは4時間ほしいと言っても、「すみません、2時間しかないので」っていう。2時間と4時間ではやれることが全然変わってくるので。

佐藤純一:そこはアニソンの成り立ちとして、音楽が主でアニメが従ではなくて、まずアニメが主で音楽が従なので、アニメ側や声優さんの仕事の都合に音楽側が合わせなければいけないのはしょうがないところもあると思うんですね。

締めの挨拶

kz:こういう機会はなかなかないし、いくつでもあった方がいいと思うので、これからも続けばいいなと思います。ありがとうござました。

伊藤 翼:今まで自分が前に立ってしゃべる機会がなかったので、声をかけてくださった田淵さんや、集まってくれた皆さんには感謝しています。(「アニソン派!」が)どんどん大きくなっていけばいいなと思います。

佐藤純一:音楽を楽しむポイントや取っ掛かりは、アーティストが好きとか作品が好きとか歌詞が好きとか、人それぞれ色々ある。 その中で、楽曲そのものや、クリエイターに興味を持ってくれている人たちが沢山集まって、真摯に話しを聞いてくれて、クリエイターとしてとてもうれしかったです。ありがとうございました。

広川恵一:業界の愚痴っぽいことも言っていたかもしれないですけど、みんなアニメが好きで(音楽を)作っているし、お客さんが楽しんでもらえることを目指して作っているので、これからも楽しんでもらえるとうれしいです。

田代智一:佐藤さんのおっしゃった「音楽を楽しむポイントや取っ掛かりは色々あっていい」という言葉に共感しました。アニメで見て楽しむ人、聴いて楽しむ人、楽曲を理論的に分析する人、クレジットをチェックする人など、いろんな楽しみ方ができるのがアニソンであり音楽ですよね。そういう楽しみ方のバリエーションの一つとして、このイベントのように楽曲制作の裏側を知る機会があっても良いと思います。今後の活動にも期待していただけたらと思います。今日はありがとうございました。

田淵智也:1回目をやったときに達成感があったんですよ。作家の人たちがこれだけ音楽のことを考えて作っているということが、音楽が溢れすぎていることによって伝わらないのは良くないことだなと思っていて。やっぱり作家の人は自分たちの作った音楽が愛されることによってやる気が出るんですよ。だからたまには偉そうにしてもいいんじゃないかということで、お付き合いいただければと思って始めたイベントです。今回も非常に楽しく終われそうです。また、Vol.3があれば、お会いできればと思います。本日はありがとうございました!

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