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2019.12.22

フルオーケストラとの競演!悠木 碧 1st オーケストラコンサート「レナトス」公演レポート

フルオーケストラとの競演!悠木 碧 1st オーケストラコンサート「レナトス」公演レポート

10月22日、声優アーティスト・悠木碧が2017年に現レーベルに所属して以来、はじめてのコンサートを開催した。この公演は「ライブ」ではなく、東京ニューシティ管弦楽団とともに送るフルオーケストラコンサートだ。リスタート後、最初の公演をオケコンという形態で池袋の東京芸術劇場という格式の場所で行なうのも声優アーティストとして破格だ。それこそが悠木碧らしさなのだろう。内容も彼女のオリジナリティと技術を存分に生かした質の高いものに仕上がった。そんな公演の昼の部の模様をお伝えする。

東京芸術劇場という独特な空気に包まれ、開演を待つ観客たちもやや緊張した面持ち。それを和らげるかのように、開演直前には悠木碧の芝居がかった影アナが流されたところで60人規模のフルオケが入場。調律を終え、中央のグランドピアノとチャイムが温かな音を奏で管弦楽隊がそれに続いたたところで悠木が薄紫色のドレスに身を包み、姿を表すと大きな拍手が湧き、そのまま最初の楽曲「ランブリン・ハンブリン」へ。彼女の可愛らしい彼女の高音にコーラスが寄り添い、それらを支える厚みのあるストリングスが優しく包む。繊細な声でありながらエモーショナルな歌声を響かせ、最後には両手を優雅に広げてオープニングを締めくくった。つづいて「Fairy in the hurdy-gurdy」は映画音楽的な広がりとリズムに、セリフ調の歌い方で乗っていき、迫力のある管楽器が音色を響かせた。そこから和風なメロディの「くれなゐ月見酒」へ。笛の音に弦楽、ピアノ主体で展開し、サビの直前、ピアニストが手を挙げると底からドラムとコーラスが加わり、祭りのような雰囲気で一気に盛り上げていく。2番からはストリングスやドラムが前面に出てきて、彼女の可愛らしい歌声と混じり合う。クールに声をレガートさせ民謡的な歌い方をたっぷりと聴かせてこの曲を終えた。

最初の3曲を終え大きな拍手を受けたところでリラックスしたようすの彼女はMCで、この公演に向けて気合を入れるために髪を切った話やグッズにまつわる笑い話を交えつつ、楽曲それぞれのアレンジに感想を述べていく。次の曲は「死線上の華」中央上のパイプオルガンが虹色に照らされ荘厳なフレーズのイントロを弾くと、声色をガラリと変え、会場の空気を変えるゴシカルな歌。ホラーチックなバスドラムと金管楽器がが雰囲気を盛り上げる中、手振りを交え息遣い荒く、高らかに歌い上げていく。客席のサイリュームも一気に赤く染め上げ、コーラスも全てがオペラティックに盛り上げていくと、中盤では緩めて声を落としたところでティンパニが叩き上げて、サビの大盛りあがりでは切り裂くように声を響かせる。緊迫感のある展開の中、フルオケを背負った堂々たる歌いぶりだった。彼女の声と舞台上の楽器すべてが一体となって圧を観客にぶつけるこの楽曲は前半のハイライトであり、惜しみない拍手が彼女に向けられる。緊迫感が残る中、ドラムスティックでリズムを刻んで始まった次の曲は、優しいストリングスとあどけなさのある声で舌っ足らずに歌う「ふわふわらびっと」。狙いすましたかのような声のギャップ。声優として幅広く活躍する彼女のことをご存知のファンであっても、目の前で同一人物が声を出しているのだと認識するのには時間がかかる。きっとオーケストラのメンバーもリハーサルで目を丸くしただろう。サウンドもゆったり、お姫様を見守るかのようなリズミカルなもので、最後は目覚めのあくびのアクションで締めくくった。次の「帰る場所があるということ」は、ストリングスが原曲のエモさをオーケストラの迫力でスケールアップさせていた。悠木はナチュラルに透き通った声で高らかに歌い上げる。間奏でのテクニカルな楽器の応酬を受けて、大サビではより力強く歌う舞台上の相互作用を感じさせる1曲だった。「永遠ラビリンス」は勢いよくリズミカルにバンドサウンドが展開し、可愛らしい声で歌う最もポップに盛り上げた1曲。間奏ギターソロにストリングスが合わさり実にエモーショナルな音がホールに響き渡り、Dメロの後には数秒間音を止めて静寂を作った後、いたずらっぽく小さく笑って全員が息を合わせて最後のパートを叩き込む演出で魅了した。

MCを挟み、続いては2020年1月15日にリリースされる「Unbreakable」(TVアニメ『インフィニット・デンドログラム』OP主題歌)をいち早く、この日特別のオーケストラバージョンで聴かせる。客席を煽りハツラツとした声で曲名を名乗ると冒頭からアニソンらしいメロディアスなサビで、オーディエンスもライブ会場のように声と手を挙げて盛り上がる声がこだまする。ベースとなるロックサウンドに対して彼女は高らかに雄々しく張りのある声で歌い、それにストリングスが加わり格調を高くする。終盤ではホーン隊とともに情感たっぷりに歌い上げた。拍手と歓声は最後のドラミングのときから沸き起こり、非常に良いリアクションを受けたこの楽曲、オリジナル版では一体どのようなサウンドが鳴っているのか、今から楽しみだ。爆音のドラミングで始まるとともにオーディエンスが高く拳を突き上げた「Counterattack of a wimp」。悠木もステージ上から煽り、ロックとブラスが融合し、そこにストリングスが乗りエモさが高まると、それが彼女に伝染しサビではシャウトとコールアンドレスポンスを高らかに決めると、間奏ではこの日一番の盛り上がりで、最後は力強く右手を突き上げた。そこから一転、落ち着いて語り部のように「Logicania distance」を歌い始める。オーケストラの楽器は歌が進むにしたがって増していき、彼女の声もそれと同調するかのように力強くなっていく。サビでは完全に映画音楽のコーラスのよう。演技的な声の多彩さは先程見せたが、ここでは歌声としての彼女の引き出しの豊かさを見せた格好だ。繰り返されるサビのメロディに陶酔感のある空間が作り上げられ、迫力あるアウトロをバックに彼女は手を前にかざして下手に下がった。

暗がりの中、アンコールを求める拍手がゆっくりと響き、再び登場した彼女は本編最後の曲からのモードのまま引き続き「ビロードの幕」をオペラティックに歌い上げる。小柄の彼女の一体どこからこの高らかな歌が出てくるのか不思議でならない。雄々しいアレンジもこの曲の世界観を非常に強固なものにしていった。舞台上から手拍子を煽り、底抜けに明るい声で「Carve a Life」と紹介し、手拍子を受け「盛り上がって」とリクエストして賑やかに盛り上げた。そしてファンお待ちかねの、オーケストラとのコラボが最も予測不可能な楽曲にして、スタジオ盤の時点でライブでの実現には最難関と言われた楽曲、「バナナチョモランマの乱(無修正版)」へと進む。「バカになる準備できてる?」と笑いを呼ぶと、会場のバナナ型の黄色いペンライトを受け、はっちゃけた声で芝居を次々に繰り出し思い切りぶつける。オケの側もティンパニやシンバルが答え、低音の弦が迫力を出して異色なこの曲をさらにカオスなものへと誘い、「チョモランマ」のコールは客席からも合唱が起き、オーラスにはドラが登場し彼女自身がそれを思い切り叩き、コンサートの最後を楽しく賑やかに締めくくった。最後はメンバー紹介とともにこのコンサートのあらましを述べる。それは悠木が竹達彩奈と組んで活動をしているユニットpetit miladyが昨年10月にオーケストラコンサートを行なったところ、手応えを得て相談したところ実現したという。「オーケストラだからこそ、これだけの人たちが壇上にいて一人ひとりの気持ちをひとつに束ねてぶつけたらスゴいエネルギーになるんです。私自身も掻き立てられ、発散しているのにものが作りたくなる意欲が湧くスゴいパワーを貰いました。またこういう機会があったら」と話し、深々と一礼し退場。その後、カーテンコールに登場し、上手から下手、2階席にも手を振り公演を終えた。最初のコンサートから大掛かりなものでファンを満足させるオリジナリティあふれる彼女の音楽活動。クリエイティブにおいても大きな手応えを得ていたことは間違いない。今後どのような表現で和達たちの前に現れるか、その時期も含めて楽しみな公演だった。

Text By 日詰明嘉

悠木碧 1st オーケストラコンサート「レナトス」
10月22日(火・祝)東京芸術劇場
<セットリスト>
1. ランブリン・ハンブリン
2. Fairy in the hurdy-gurdy
3. くれなゐ月見酒
4. 死線上の華
5. ふわふわらびっと
6. 帰る場所があるということ
7. 永遠ラビリンス
8. Unbreakable
9. Counterattack of a wimp
10. Logicania distance

ENCORE
11. ビロードの幕
12. Carve a Life
13. バナナチョモランマの乱(無修正版)

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