リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

REPORT

2019.11.17

これからもみっくと歩みたいと、自然と思わせてくれた一夜。 “伊藤美来 5th Live Miku’s Adventures 2019~PopSkip Life~”レポート

これからもみっくと歩みたいと、自然と思わせてくれた一夜。 “伊藤美来 5th Live Miku’s Adventures 2019~PopSkip Life~”レポート

“伊藤美来 5th Live Miku’s Adventures 2019~PopSkip Life~”が10月5日、オリンパスホール八王子にて開催。毎年恒例となった感のある、声優・伊藤美来が開催する秋のワンマンライブ。5回目となった今回は、最新アルバム『PopSkip』をタイトルに用いて開催。表現者として、さらに魅力を増した姿をこの日も見せてくれた。

キュートさに加えてオトナ感も! ますますふくらむみっくの魅力

開演前には、会場の雰囲気にマッチするクラシカルなオーケストラがBGMとして流れてムードを作ると、開演時間を迎えたところで照明が消え、場内には「閃きハートビート」をマッシュアップしたEDMが。それが終わると、「閃きハートビート」の頭サビを伊藤が歌ったところで、ステージの幕が開きライブがスタート。今年彼女が得たあらたなキラーチューンに、キュートな歌声と軽やかなステップを乗せてファンを魅了していく。なかでもこの曲のキモは、手や腕の振付。ときにキレをもって、ときにしなやかな動きで自らの歌声を彩っていく。加えて、メロディラインに特にトリッキーさが増す大サビもしっかりと乗りこなし、ラストのポーズをキュートに決めれば、ガラリと雰囲気を変えてスタイリッシュなナンバー「Shocking Blue」へ。イントロから今度は凛々しく観客を煽ると、歌声やダンスに力強さを込めていく。2サビ明けにはコールの大きさを受けて、ニヤリと満足気な表情もみせれば、大サビではさらにパフォーマンスに突っぱねるような荒さが上乗せ。リリースから2年以上経った今ならではのスタイリッシュさを見せつけた。

曲が終わると、素の伊藤に戻ってのMCゾーンへ。タイトルに冠した最新アルバムのタイトルについて「ポップスを作っていく」と「一歩、大きく前に進む」といった意味がかけられている、と改めて解説しつつ、自ら新社会人の年にあたることもあって設定した「新しい環境に入ったみんなを応援する」という裏テーマも明かす。そんな、新しい環境のドキドキにつきものなのは、出会い――というわけで、「ここからはドキドキするナンバーを披露するゾーン!」と予告して、「Pistachio」からライブ再開。このミドルテンポのデジタルチューンからはダンサーを従えつつ、キュートさを歌声・表情の両方に乗せていく。特に落ちサビでは、マイクを両手持ちにしながら、歌声自体も絞ることから生まれる愛らしさが凄まじい破壊力を発揮していた。続く恋するミドルバラード「No Color」は、Bメロの切なさがこれまでのライブ以上に深くなっている点が胸を掴むポイント。その他の部分も含め、歌声への感情の乗せ方で観客を引き込む力をさらに増した、シンガーとしての成長を感じさせる1曲となった。かと思えば、続く「七色Cookie」ではその歌声や振付はキュートさ全開のものに。さらに、間奏中にはうれしそうにファンに手を振り、2番の直前にはステージ中央で上方も向いて2階・3階席のファンも忘れず意識。想いを届けようと、ぴょんぴょん跳ねながら手を振っていた。
さらに、「君に話したいこと」のイントロでは、伊藤の煽りによって場内にクラップが響き渡る。決して速い曲ではないし、その中に要素を隙間なく詰め込んだわけではないけれども、ダンサーとの掛け合いや連動も含めた一つひとつの動きの質が、とにかく高い。そのうえでサビ最後の「Best friend」のフレーズで、人差し指を立ててファンと視線を交わしながら左右にふるふる振るさまも、またかわいらしいものだった。
歌唱後、ここまで4曲を「女子力高いゾーン」と総括すると、給水中に何かに気づいて不意に笑う伊藤。それは水などが置いてあるスペースに、スタッフが彼女に黙ってピスタチオをそっと置いていたのにここで気づいたから。そんなスタッフの細部へのこだわりもまた、ファンを驚かせていた。

さて、ライブは続いて「みなさんの背中を、少しでも押せたらな(伊藤談)」と語ってから「灯り」へ。この曲では、ステージの最上段へと上ってスタンドマイクを用いてしっとりと優しく歌唱。曲中、セットとして組まれた街が、照明効果によって夕暮れから星空へと移りゆくなか響かせるピュアな歌声の優しさが、心に沁みる。その背景は、続く「あの日の夢」では完全に星空に。そのなかで響く、Bメロからサビにかけて感情がぐわっと盛り上がる歌声や、そのまっすぐさ・素直さがまた、胸を震わせる。さらに落ちサビでの、儚く細い入りから、決意の芽生えとともに芯が徐々に生まれて大サビに突入するという一連の流れは、ぐっと惹き込まれる、ライブならではの聴きどころだったように思う。そして曲順もあってより胸に何かをこみ上げさせるような流れとなったのが、「守りたいもののために」。この曲も、音源以上に伊藤の歌声の魅力とのマッチングがさらに良好になっていた1曲。地声が強さを、ファルセットが優しさと弱さを、それぞれ楽曲とうまく調和する絶妙なバランスで表現。微笑みとともに、最後は優しくファルセットで歌いきったのだった。

ここで伊藤は一旦降壇。ダンサー4人が登場してのダンスタイムやオフショットムービーの上映を挟み、再びムードがポップになったところで、ドレッシーな衣装にチェンジした伊藤が、街のパネルの間からひょっこり顔を出しつつ再登場。最新アルバムのリード曲「PEARL」から、後半戦がスタートする。この曲も地声・ファルセットの両方が美しく響いてこそのナンバーであり、それぞれの魅力をもって最大限に楽曲の魅力を活かしていたのだが、ここでとりわけ映えたのが、ファルセットの持つ透明感。優しくしっとりと歌いゆき、特にサビのファルセットを歌う姿には、可憐さまでもが出ていたように思う。
そしてそのまま続いた「ルージュバック」は、元々の楽曲の方向性もあってボーカルは少々大人びたものに。特に落ちサビでは歌声に乗る情念の濃さが際立っており、この曲をより強く印象づけるポイントとなっていた。さらに、手の振付も含めて要所要所に感情を込めていくと、「土曜のルール」ではしなやかさを重視したダンスをダンサーとともに展開。伊藤のボーカル持ち前の特徴でもある声の揺れも活かして、歌声・パフォーマンスの両面からオトナさをさらに強めに打ち出した1曲としていた。

この場への想いでみっく自らが生んだ、異例のライブ展開

曲明けには、伊藤自らこのゾーンを「大人の女性ゾーン」と振り返り、「持てるMAXの大人っぽさや色気を全部出していきました」と解説。そして改めて「大学卒業できましたー!」と生報告すると、卒業パーティーをイメージして作られた曲「TickTack Invitation」を披露する。この曲は歌声・ダンスともにキュート寄りの、ハッピーなナンバー。特に2サビ明けの間奏で、ダンサーと顔を見合わせながら揃えた楽しげなダンスでは、その要素がフィーチャーされていた。さらに、落ちサビでミラーボールの光とファンのクラップに包まれて歌う姿にも、どことなくパーティー感が。最後にこの曲の冒頭から手にしていたタオルを放り上げると、「恋はMovie」へ。実はこの日この曲でポイントになったのは、歌い出し「Hey!」の1フレーズだったように、筆者は思う。なぜなら、そのフレーズでしっかり音を当てながら、一音の中にキュートさやワクワクをぎゅっと詰め込むことに成功し、曲の世界に観客すべてを引き込むことに成功していたから。そのうえで、ダンスのさらなる軽快さや、2サビ明けに階段からぴょいっとメインステージに飛び降りるおてんばさも、よりかわいらしく映ったように感じられたのだった。

さて、ライブもいよいよ終盤。今の想いを、伊藤が語り始める。まずは、台風の煽りを受けてしまった昨年のワンマンが念頭にあってか、「たくさんの方にちゃんと観ていただけることが幸せ」と感謝の想いを口にすると、「新生活とか続けていることって大変だし嫌なこともあるけど、そういうことが自分を強くするんだな……と、アルバムを作りながら学んでいけたような気がします」と述懐。そして「みんなの背中を、押せましたか?」との言葉には、この日一番の拍手が返っていた。

最後に「これからも、PopSkipなLifeにしていけたら嬉しいです。みんなありがとー!」とシャウトすると、「all yours」からラストスパートに突入。「私を、いい意味で(背中を押すために)使ってほしい」とも語ったMCに続けてという流れもまたぐっとくるものだし、そのメッセージこそ、アルバムのラストやライブの終盤にこの曲を置くことで伝えたかったものなのかもしれない。それを物語るように、1階席の奥や2階・3階席にも向けて歌唱しながら彼女は、視線を送り続けていた。
そして曲明け、スポットライトに当たった伊藤がアカペラで歌い出したのは、「ワタシイロ」。ライブのEDテーマのように、今度は自分の現在地を示す楽曲を歌唱する。色とりどりの“ワタシイロ”が彩る客席へも引き続き視線を送りながら歌う彼女は、この曲を自分の中だけでとどめず、同時に目の前で聴いてくれる人たちへ寄り添えるまで成長した――「準備は?(伊藤)」「OK!(観客)」といったDメロでのやり取りを経て突入した大サビを、笑顔と微笑みで歌いきった姿が、そんな印象を与えたのだった。

歌唱後、ダンサーとの一礼やファンの近くへ行っての挨拶を行い、伊藤は降壇。するとステージ上にスクリーンが登場し、ライブロゴが映される。そこに向かってファンからアンコールの声が上がると、突如上映されたのは来年放送予定のTVアニメ『プランダラ』のPV。そしてその最後に“特報”として、同作のOPテーマを伊藤が歌唱することが発表に! その曲名が「Plunderer」と表示されるなか伊藤がステージに再登場し、早くも初披露へと移る。
サウンド的には「Shocking Blue」以来のシリアスなものだが、力強さに加えて爽快感も感じられる点がこの曲の特徴。そこに凛とした表情でシリアスな歌声を乗せていく伊藤だが、開けるような雰囲気を持つサビでは、その表情・歌声には少々晴れやかさも交じる。最後までスタイリッシュさももって披露しきったこの曲、またあらたな彼女のかっこよさを感じられる1曲になりそうだ。

「2020年もしっかりと歩いていきます。一緒に歩いていってください!」とメッセージを送り、今度こそライブは幕……と思いきや。「帰る流れなんですけど、本当に帰りたくないんですけど」と口にする伊藤。さらに「みんな、今日は私の歌を聴きに来てくれたんだよね?」と続けると、客席からは割れんばかりの歓声が。それを味方につけて「だってさ」とスタッフに目配せすると、急遽Wアンコールとしてもう1曲歌唱が決定! 「やったぁー!」とわちゃわちゃ喜ぶ伊藤。この流れは、本当にこの場の感情が生んだもの。記者向けに当日配布されたセットリストも、「Plunderer」で終わっていたのだ。
そして改めて、ライブタイトルにも冠したアルバムのリード曲「PEARL」を歌唱。終始後ろへ前へ、上へ下へと客席中を見回しながら、手を振りつつ微笑んでの歌唱に。終わりゆくライブを惜しみつつも、大事な思い出をともに紡ぎゆくような特別な時間を過ごすと、最後には笑顔でピース。そこには5thライブをやりきり、楽しみ尽くせた喜びであふれていた。

従来の彼女へのパブリック・イメージである、愛らしさやかわいらしさといったものにとどまらず、オトナさや堂に入った感も随所で見せてくれたこの日のライブ。しかもそこには、デビューの頃から変わらない初々しさが消えずに残っているのも、また不思議かつ稀有なことだ。アンコールでのMCで「駆け抜ける」などと言わず「歩く」と口にしたのもまた、彼女らしいポイント。いたずらに速さを求めるわけではなく、着実に前進していく彼女を、これからも「追いかける」のではなく「ともにありたい」――あの場にいたすべての人がそう思ったであろうライブを完成させ、伊藤美来はまた一歩、大きく前へと歩を進めた。

Text By 須永兼次

伊藤美来 5th Live Miku’s Adventures 2019~PopSkip Life~
2019.10.05@オリンパスホール八王子
【SET LIST】
M1.閃きハートビート
M2.Shocking Blue
M3.Pistachio
M4.No Color
M5.七色Cookie
M6.君に話したいこと
M7.灯り
M8.あの日の夢
M9.守りたいもののために
M10.PEARL
M11.ルージュバック
M12.土曜のルール
M13.TickTack Invitation
M14.恋はMovie
M15.all yours
M16.ワタシイロ
EN1.Plunderer(新曲)
W-EN.PEARL

関連リンク

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP