TVアニメ『どろろ』第2クールEDテーマでアニメタイアップに初挑戦!Eveインタビュー

ネットの深淵から生まれ出た若き才能・ Eve。「歌ってみた」やボカロ・シーンで支持を集めたのち、自身のソングライティングを開花させた『文化』『おとぎ』という2枚のアルバムを経て、この度アニメ『どろろ』の新EDテーマ「闇夜」をドロップした。歌詞やサウンドだけでなく、アートワークやアニメーションMVと視覚も含めて聴く者のイマジネーションを刺激する異能は、アニメ音楽という世界で何を叫んだのか。彼の歩みを振り返りながら、その真相を伺う。

――今回の新曲「闇夜」はTVアニメ『どろろ』の第2クールEDテーマとなりましたが、こうしたアニメ作品とのタイアップは初めてとなりますね。

Eve そうですね。こういう地上波アニメーションは初です。

――改めて、TVアニメとのコラボを果たした感想はいかがですか?

Eve まず僕は、ずっとインターネットを中心に活動していて、2年前ぐらいに『文化』というアルバムを出しました。当時はカバー曲を歌ってネットに投稿して楽しくやらせていただいたんですけど、あるとき自分のなかで、だんだんと自分の曲に自分の声を乗せてやりたいなって感情が芽生えてきたんです。そこから自分のオリジナル曲を入れた『文化』というアルバムを作りました。

――それが2年前、2017年のことですね。

Eve それで今年の2月に『おとぎ』というアルバムをリリースして。『おとぎ』も全曲オリジナル曲で、メジャーからのリリースということでいろいろな方に聴いていただける機会になりました。そのあとの東名阪のツアーで、今まで自分がやりたかった「自分の曲だけでライブを成立させたい」という想いを成し遂げることができ、さらに今回「闇夜」をリリースすることができてすごくうれしかったですし、不安というよりはまた新しいことに挑戦できるなと感じています。

――キャリアとしては今から約10年前のことでしたが、最初の音楽の原体験はBUMP OF CHICKENだったそうですね。

Eve 小学校や中学校のときはスポーツが好きで、外で遊ぶのが好きだったんですよ。野球と水泳とテニスしかやっていなかったです。今では引きこもってばかりなんですけど(笑)。

――当時はスポーツ少年だったんですね。

Eve こんがり焼けていて(笑)。そのときから漫画やアニメは好きでした。当時観に行った『ワンピース』の主題歌(「sailing day」)をBUMP OF CHICKENが歌われていて、「いい曲だな〜」って思いながら聴いていたんですけど、それから2年くらい経って自分の好きでやっていた「テイルズ オブ ジ アビス」というゲームの主題歌が、BUMP OF CHICKENの「カルマ」で、そこですごくこのバンドに興味を持ったのを覚えてます、初めてCDを買いました。

――図らずとも音楽の原体験はアニソンだったんですね。

Eve アニメとか映画は好きですね、あとはテレビっ子でした。テレビから流れてくる音楽を聴いてそこから好きになるみたいな、聴いていたのは完全に邦楽でした。それから親がミスチルや槇原敬之さんを好きで、小さい頃に車でかかっていたのを聴いて「いい曲だな」って。そうした生活に溶け込んでいる音楽を聴いていました。

――そこからボーカロイドなど、インターネット・シーンの音楽に傾倒していくんですね。

Eve そうですね。中学生まで運動ばかりでそういうシーンに疎いだけでなくパソコンすらろくに触ったこともなかったです。中学のときに部活を引退したあと、同級生の家に遊びに行ったときに、「この曲知ってる?」と友達から聴かせてもらったのがボカロの曲でした。最初にかけてくれたのはsupercellの「メルト」のカバー曲だったのですが、それがとても良くて。自分のまったく知らない世界なのにすごい曲があって、歌う人もみんな上手いし特徴的で、キラキラして見えたんです。

――supercellやlivetuneなど、いわゆるボカロ第一世代がシーンに衝撃を与えた頃ですね。

Eve 「ニコニコ動画」が始まってまだ間もない頃ですね。

――それを十代の多感な時期に影響を受けたと。

Eve 中学生ぐらいですね。そのときすぐ同級生にニコニコ動画の観方を教わり登録もしてもらいました、あとはスカイプも設定してもらったり……それも感動しましたね、無料で通話ができるのって(笑)。すごくびっくりすることが多くて。

――スポーツ少年からすると驚くことばかりだったでしょうね。

Eve 最初は「おもしろフラッシュ倉庫」のようなサイトなのかなと思っていたんですが(笑)、「メルト」を聴いて衝撃を受けて。僕の知らない音楽が沢山溢れていてすげえって。当時好きだった方たちは、今はメジャーで活躍されていて、改めて怪物たちばかりだったんだなと思います。

――そこからEveさんも楽曲を投稿する側に回るわけですね。当初カバー中心だったのが自身でソングライティングしていく欲求が出てきたと言っていましたが、自分が作りたい、歌いたい音楽というものは当時から明確にあったんですか?

Eve 自分のイメージしているものはつねに明確に見えています。もちろんそこにはいろいろな人たちと何か面白ことができないかな、と考えながらのことで、それは絶対にもひとりではできなかったことです。ひとりだと想像の範疇に収まることも、いろいろ人を巻き込むことで予想だにしなかった面白い出来事や作品が生まれるなと、ここ2年活動してきて特に感じています。

――またEveさんの作品は楽曲のみならずアートワークやMVといった面でも話題になっていますが、それもあって音を聴いて映像的な広がりを想起させる印象があります。

Eve 僕自身映画を観るのが好きで、映画館も好きなのでよく行くのですが、面白かった作品を観ると、「自分ならこういう主題歌をつけたいな」と思って、そこからギターで曲を作り始めたりしています。あとは日常で生活をしていて、とても気になった言葉や頭から離れないフレーズに出会ったとき、そのキーワードから曲を作り始めたり、イラストからイメージを膨らませていくことも多いですね。多分、視覚的なものが好きなんですよね。ニコニコ動画という所で音楽を聴いてきて育ったのもあるのか、常にそこには音楽と映像がセットなんですよね。だからこそ自分が何か作品を出していきたいとなった時に、音楽と同じくらいの熱量で映像も拘ってやりたいなという気持ちは強いのかもしれません。視覚的なものを観てから音楽にどう落とし込もうとか繋げていこうと考えるのはずっと好きですね。

――ちなみに、楽曲制作については時間をかけるほうですか?

Eve たぶん長いほうですね。というのも、例えば『おとぎ』に収録されている「僕らまだアンダーグラウンド」は、実は、去年の春ぐらいに形が出来ていました。ただMVのアニメーションは制作に時間がかかるので、そこから映像の制作サイドとキャッチボールを重ねて、半年以上かけて作りました。その間にレコーディングをやって音源を差し替えていくのですが、MVは歌詞が重要になるので、そうなると、歌詞も含めて発表の半年前ぐらいにはある程度出来ていないといけないんです。

――なるほど、それってTVアニメの楽曲制作に近い制作スパンですね。

Eve たしかにそうですね。「闇夜」は今回初めての試みで、もちろんわからないことは多かったのですが、感覚としては近いです。

――それでは今回の新曲「闇夜」についても同じようなスパンで作られていったんですね。

Eve そうですね。今年に入ってすぐぐらいに『どろろ』のEDテーマのお話をいただいたのですが、まず1コーラス作り、それをアレンジのNumaさんと詰めていきました。そもそも彼とは去年の暮れぐらいからスタジオに入っていたのですが、『おとぎ』で作ったようなギターが前に出るものとは違う、『どろろ』のエンディングに合うようなものにしようと方向性を決めて、そこから詰めていきました。

――『どろろ』という作品から得るイマジネーションは大きかったですか?

Eve まず脚本などの資料をいただいて読ませていただきました。手塚治虫先品も好きでしたし、『どろろ』は原作が途中で終わってしまったので、アニメではどういう形で終わるんだろう、と視聴者目線で楽しみにしていました。そのあとアニメを観させていただくなかで、『どろろ』の世界観に寄り添う楽曲ができたらいいなと思いながら作りました。また、制作サイドからの要望は強くあったわけではなかったので、自由にやらせていただけたなという印象があります。そこはとてもありがたかったです。

――「闇夜」を聴いた印象は、1クールから続く百鬼丸とどろろを取り巻くあの世界そのもののやるせなさ、そして彼らの行き場のない感情というものを総括するような歌詞であり、サウンドだと感じました。

Eve 僕も資料を読ませていただいて、百鬼丸のことが好きになっていきました。百鬼丸の、四肢も声も何もかもない状態から自分の生まれた体を取り戻していくなかで、自分の親兄弟も含めたいろいろな人との出会いがあり、ドラマがあるところに感動して。そこに自ずと感情移入してしまった部分は楽曲に反映されているのかなと思います。

――アニメ版の百鬼丸の無垢さというのはEveさんの音楽とも親和性が高いのかなと感じます。

Eve そうですね。僕としては『どろろ』に寄り添うような形で作らせていただいたのですが、自分が今まで書いてきたことと正反対ではなく、むしろ非常に近いものに感じています。すごく楽しく作らせていただきました。MVに関してはMahさんとWabokuさんという今まで僕の作品を手がけてくれていた2人に関わっていただいて、Mahさんの描く人物の表情だったり、独特な身振り手振り、炎が印象的なものとして出てくるんですが、そういった炎のエフェクトや花火が散っていくような儚い演出などはWabokuさんが中心となって、2人の得意分野というか、良さがしっかり出ていることでさらに作品としてまとまってくれて本当に感動しました。どろろとはまた違う世界観として見ていただけたら幸いです。

――そのEveさんの音楽に“近い”というのは非常によくわかるというか。それこそ『おとぎ』の、まどろみから始まって夢から覚めて終わるような作品のあとに、まるでその先の現実の悲惨さを突きつけるようにも聴こえて。

Eve なるほど。例えばどろろも百鬼丸も純粋な子たちで、百鬼丸なんか物語を通して自分の中に人間の血が通っていきますが、いろいろな人間と出会って、どうしようもない現実を知ってしまう瞬間があって、そのときに百鬼丸の心情も変わってしまう。そういうものが描かれているんです。その些細な心の変化がグッときて、そこに焦点を当てたいなと感じました。これはもちろん『どろろ』の世界ではあるのですが、時代を超えて現代に生きるみなさんにもそんな瞬間があると思うんです。それを歌にして、聴く人たちの生活や立場に照らし合わせて、そこから何かを感じてくれたらうれしいなと思います。この曲に限らず、今までの曲もそうなのですが、それぞれの解釈や感想があっていいと思うんです。これを聴いて「元気になった、励まされた」という人や、「悲しい歌だ」と思う人もいると思うし、聴く方それぞれにとっての「闇夜」になればいいと思っています。

――なるほど。またアレンジですが、Eveさんがおっしゃったようにこれまでのバンド・サウンド的なものから発展して、トリップ・ホップ的な奥行きのあるものに仕上がっています。

Eve そこはかなり気をつけました。Numaさんとふたりで話し合って『どろろ』に寄り添う形をめざしたときに、もう少し暗くといいますか、落として落として、きちんと聴いてもらうようにするにはどうすればいいか、いつも入れないような楽器をいくつか取り入れてみたり、打ち込みからの生ドラム生ベースに変わっていく流れなんか百鬼丸の心情にも当てはまるんじゃないかなと感じています。全体的な音色としてはすごく新しいものになったと感じています。今後ツアーやアルバムを出していくと思いますが、今回「闇夜」という曲が出来たことによって、『おとぎ』の頃とはまったく違うもが出来上がるのではないかと思います。

――そうしたサウンド面でのアプローチの変化は、Eveさんのボーカル面にどんな影響がありましたか?

Eve 機械的な歌い方を前半は意識しました、そこから終わりに向かっていくにつれて徐々に少し柔らかく、人間らしくといいますか。あとは最初にTVサイズをレコーディングしたときは、スタジオを真っ暗にしました(笑)。

――ブースも闇夜に!(笑)。

Eve 昔は、自分のボーカルは家で録音していたんです。『おとぎ』も数曲は自宅で録っています。その前の『文化』も基本、家のマイクで録ったものがほとんどでしたし。『おとぎ』からレコーディング・スタジオに入るようになり、それも僕のなかでは新しいことでした。スタッフさんの人数も多いですし(笑)。そいういう部分が少しずつ慣れてきて、今は本当の意味でリラックスできるようになってきた段階かもしれないですね。楽しいですけどね。

――さて、Eveさんの音楽としてもあらたなフェーズに入ったわけですが、アニメとのコラボも含めて、今後どんな音楽を作っていきたいですか?

Eve やっぱり自分は、人と何か一緒に考えたりすることが好きな人間なんだと、この1、2年で感じていたので、今後もいろいろな人と面白いことを考えながらやっていきたいなと思います。あとはいつになるかわからないですが、ライブや次のアルバムに向けて新しいことを新しい人たちとやっていくことで、おのずとそこには繋がっていくと思います。具体的に今何か言えるわけではないですが、『おとぎ』にはなかったようなことが今回の「闇夜」では出来たと思うので、今後もそういういろいろな機会や新しい試みに飛び込んでいけたら楽しいだろうなあと思っています。

Interview & Text By 澄川龍一


●配信情報
TVアニメ『どろろ』第2クールEDテーマ
「闇夜」
配信中

作詞・作曲:Eve
編曲:Numa
ジャケットイラスト:Mah

●作品情報
TVアニメ『どろろ』
放送中
TOKYO MX 毎週月曜22:00~
BS11 毎週月曜24:30~

配信サービス:Amazon Prime Videoにて独占配信

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