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2018.11.12

KOTOKOが見せた涙の理由は……? サプライズゲストも登場した“KOTOKO LIVE TOUR 2018「tears cyclone-廻-」”東京公演レポート

KOTOKOが見せた涙の理由は……? サプライズゲストも登場した“KOTOKO LIVE TOUR 2018「tears cyclone-廻-」”東京公演レポート

“KOTOKO LIVE TOUR 2018「tears cyclone-廻-」”のファイナルとなる東京公演が2018年9月30日(日)に東京・渋谷TSUTAYA O-EASTにて行われた。KOTOKOが、I’veの高瀬一矢とタッグを組んで4年半ぶりにリリースした7thアルバム『tears cyclone -廻-』の楽曲を中心に24曲を披露。MCでは今回のアルバムについてファンに語り、思わず涙を見せる場面もあった。また、ダブルアンコールで意外な飛び入りゲストも登場。さらに次回のアルバムについても発表され、新曲も初披露された。

KOTOKOは音楽制作集団I’veのボーカリストとして活動。2004年にアルバム『羽-hane-』をリリースし、メジャーデビューを果たした。2011年にはI’veから独立し、ソロのアーティストとして活動を続けている。今回発売された7thアルバム『tears cyclone -廻-』はI’veの高瀬一矢との全曲コラボレーションによるもので、KOTOKOにとっては“原点廻帰”の一枚となった。そしてこのアルバムを引っ提げて行われた今回のツアーは、KOTOKOと高瀬一矢の世界を存分に味わえるというコンセプトで行われた。7月21日の京都公演に始まって全国13都市を巡る長いツアーもこの東京公演が最後となる。

黒と銀色のマントを身にまとって登場したKOTOKO。まずはアルバムの1曲目に収録された「nonfiction~悪魔が棲む惑星~」からライブはスタートした。2曲目は2004年のTVアニメ『神無月の巫女』挿入歌「Suppuration-core-」と一気に時代がさかのぼるが、2曲ともKOTOKOと高瀬一矢の世界が前面に出た曲で早くも盛り上がりを見せた。最初の挨拶では、「今回の音のコンセプトは“KOTOKO×高瀬一矢”のデジタルサウンドです。今日はそのデジタルサウンドの波に思いっきり浸って、そして最後はみんなで笑顔でゴールテープが切れるように頑張って私も盛り上げますので、今日は最後までよろしくお願いします!」とファイナル公演の意気込みを語り、次の曲へ。

「回転木馬」ではシルクハットとステッキを使ったダンスを披露。「雲雀」でアルバム収録曲が続いた後、「Collective」ではイントロで大きな歓声が起こった。2005年に発売されたI’veのアルバムに収録された曲で、ライブでの人気も非常に高い。この曲はKOTOKOの中でも特にダークな歌詞で知られており、序盤ではダークな世界観の曲が続く構成となった。

「今回の『tears cyclone-廻-』のメインテーマは“涙”です」とアルバムについて語り始める彼女。1曲目の“悪魔が棲む惑星”という言葉からもわかるように、「人間って悪魔なんじゃないか」という思いが出発点になったという。それは誰の心の中にも棲む負の感情。KOTOKOは自分にも嫉妬や人をうらやむ感情があると語ったあと、「次の曲にははかなげで切ない恋をしているんだろうなという女性が出てきます。果たしてその女性の心は涙を流す天使なんでしょうか。それとも牙を隠した悪魔なんでしょうか」という言葉に続けて「夏恋」を歌った。そんなことを言われれば、何気なく聴いているとピュアに思える曲に“牙”を探さずにはいられなくなるわけで、何かと深読みしたくなってしまう。

この日の東京は台風が直撃し、ライブの開催も危ぶまれる天候だった。この夏から秋にかけては災害が多く、日本各地で被害が続出。KOTOKO自身も拠点である北海道で、9月6日の北海道胆振東部地震に遭っている。しかもその日は岡山公演の前々日で、無事に岡山まで行けるのか危惧される事態となった。その後の15日の大阪公演も、まだ台風21号の被害の痕跡が残る時期に行われている。そんなさまざまな困難の中で行われたツアーだったが、KOTOKOは「ツアーが始まった時は岡山、愛媛、広島の豪雨災害のあったみなさん、その後の台風の大阪、関西のみなさんを元気づけに行くんだと思って出かけたんですけど、結局岡山、愛媛、大阪では地震でちょっと落ち込んでしまった私をみんながすごく元気づけてくれました」と大変な状況でもライブで盛り上がってくれた各地のファンに感謝した。10曲目の「effacer」はそんなファンへの感謝を込めて歌われたのだった。

続く「ミュゲの花束を、君へ」はKOTOKOのオリジナルソングとしては初めてのウェディングソング。観客からは「ラララ」という合唱が起き、前列のほうでは何人もの人々が肩を組んで歌う姿も見られた。この肩組みは今回のツアーの仙台公演で自然発生的に広まったものらしく、「それがすっごく幸せな光景に見えたんですよ。今後この曲をライブで歌う機会もあると思います。そのときにはぜひ肩を組んで『ラララ』を歌ってほしいなと思っています」とKOTOKO自身もお気に入りの様子で、今後はライブの定番となるかもしれない。ちなみに、最近はKOTOKOのライブで知り合ったファン同士で結婚される方が多いそうで、通称“KOTO婚”と呼ばれているそうだ。

13曲目には「ハヤテのごとく!」(TVアニメ『ハヤテのごとく!』OPテーマ)、「being」(TVアニメ『灼眼のシャナ』後期OPテーマ)、「BLAZE」(TVアニメ『テレビアニメ『灼眼のシャナII』後期OPテーマ)とアニメソングをメドレーで歌った。次の「dusty days」では「自分のために生きてくれー!」と絶叫。熱い曲が続き、観客も大いにヒートアップした。

ここでKOTOKOは今回のアルバムについて語った。7年前にI’veから独立して、“I’veのKOTOKO”ではなく“アーティスト・KOTOKO”として自分を表現したアルバムを2作発表した彼女。それからオリジナルアルバムを出すことができない日々が続いた。そして古巣であるNBCユニバーサルに戻り、育ての親ともいえるI’veの高瀬一矢とタッグを組んで今回のアルバムを出すことになったのだが、そこに至るまでにはかなり葛藤があったという。「今の私はこれなんだって、突っ張ってた自分が全部なしになってしまうんじゃないか。アルバム出せないから、“原点廻帰”というところに日和ったんじゃないか。そんなふうに思われちゃうんじゃないかと思ったら、悔しくて、すごく悩みました」と率直な言葉で心境を語った。そんな苦悩の日々を思い出したのか、涙を流して後ろを向いた彼女をファンは温かい拍手で励ます。「でも、こうやって新しいアルバムを作って、こうやってみんなが聴いてくれて……。みんなの笑顔が見れるのが幸せです。誰に何と思われようと、私はこうやって新しい曲ができて、みんなの前で歌えて、みんなに会えて、『高瀬さんの曲がいいね。すごく合うね』って言ってくれてすごくうれしかったです」とアルバムを出した喜びもまた大きなものだったという。「自分の歌が“みんなが自分らしさを思い出せる場所”になれたら」という彼女は、「このツアーは今日で終わりだけど、ここがみんなの場所だからね!」とこれからもファンの居場所であり続けることを誓った。そして、そんな彼女とファンとの“約束の曲”として歌ったのが「SA*KU*RA 白書」だった。ラストはアルバム最後の収録曲である「廻-Ro-tation」を歌い、感動的なライブ本編は終わりの時を迎えた。

アンコールはまず日替わり曲の「close to me…」から始まり、「ε ~Epsilon~」、「Re-sublimity」で最高潮の盛り上がりを見せた。すると鳴りやまぬダブルアンコールの声に応えて、KOTOKOとバンドメンバーが登場。まずは「sign-KOTOKO Ver.Remix-」を歌った。原曲は歌手活動を卒業したRayが歌っており、詩を提供したKOTOKOのセルフカバーとなっている。

ここでサプライズゲストとしてステージに姿を現したのが、「sign-KOTOKO Ver.Remix-」のRemixを担当した中沢伴行!大喜びの観客たちによる“中沢”コールで迎えられた。彼がここに登場したのは、もちろん理由があった。アルバム『tears cyclone』は2部作であることが予告されていたが、第1部の高瀬一矢に続き、第2部は中沢伴行とのタッグで制作されることが発表されたのだ。アルバムのタイトルは『tears cyclone-醒-』で、“覚醒”がテーマとなるという。中沢もI’veに所属し、KOTOKOと共にI’veで育った作曲家・編曲家だが、現在は独立してあらたな道を進んでいる。KOTOKOが「I’veに育てられたふたりがI’veを飛び出して新しいことをしちゃうぞ!私たちの覚醒ぶりを見ていただこう!……というすごい大風呂敷を広げちゃったわけですけど(笑)」というと、中沢も「もう広げるしかない(笑)」と冗談交じりにアルバムへの意気込みを語った。しかしファンのリアクションを見ても“KOTOKO×中沢伴行”の期待値はかなり高く、まさにファン待望のアルバムになりそうだ。

さらに中沢もキーボードで参加してアルバムに収録される新曲、「不機嫌な人魚(マーメイド)」を初披露。“KOTOKO×中沢伴行”らしさが詰め込まれたデジタルサウンドの曲で、観客も初見とは思えない盛り上がりを見せてライブを締めくくった。来年はメジャーデビュー15周年を迎えるKOTOKO。年明けの“リスアニ!LIVE 2019”にも出演が決定している。武道館でどんなパフォーマンスを見せるかも期待したいところだ。

Text By 金子光晴

“KOTOKO LIVE TOUR 2018「tears cyclone-廻-」”
2018年9月30日(日)東京・渋谷TSUTAYA O-EAST

<セットリスト>
M-1.nonfiction~悪魔が棲む惑星~
M-2.Suppuration-core-
M-3.回転木馬
M-4.雲雀
M-5.Collective
M-6.Onyx
M-7.夏恋
M-8.I pray to stop my cry
M-9.sencitive
M-10.effacer
M-11.ミュゲの花束を、君へ
M-12.a-gain
M-13.ハヤテのごとく!~being~BLAZE (メドレー)
M-14.dusty days
M-15.SA*KU*RA 白書
M-16.LOVE A RIDDLE
M-17.夏草の線路
M-18.Sign of Suspicion
M-19.廻-Ro-tation

《アンコール》
EN-1.close to me…
EN-2.ε ~Epsilon~
EN-3.Re-sublimity

《ダブルアンコール》
WEN-1.sign-KOTOKO Ver.Remix-
WEN-2.不機嫌な人魚


●イベント情報
リスアニ!LIVE 2019
2019年1月25日(金)~27日(日)日本武道館
※KOTOKOは27日(日)に出演

詳細は特設サイトをチェック!

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