リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

REPORT

2018.11.01

コンセプトも成長も、十二分に魅せきった“主演・監督作”に!“伊藤美来 4th Live Miku’s Adventures 2018 ~Live is Movie~”レポート

コンセプトも成長も、十二分に魅せきった“主演・監督作”に!“伊藤美来 4th Live Miku’s Adventures 2018 ~Live is Movie~”レポート

9月30日、東京国際フォーラム ホールCにて“伊藤美来 4th Live Miku’s Adventures 2018 ~Live is Movie~”が開催。最新シングル「恋はMovie」の世界観を活かし、彼女が監督する映画の世界に観客を招いていくというコンセプトで行われたこの日のライブは、すべての楽曲でいたるところに成長を感じさせる大充実のものとなった。

ライブタイトルと最新シングルの世界観は、開演前からステージ上に反映。ステージ中央には「恋はMovie」のMVでも登場したディレクターズチェアがセットされ、さらに2階ステージの側面には映画のフィルムのような装飾がなされる。そして定刻を迎えた場内に映画館の開演ブザーの音が響くと、ライブのOP映像が上映。「恋はMovie」のピアノバージョンをバックにしたMV撮影のオフショットに続いて、映画のようなカウントダウンがなされると、ヒールの音とともに伊藤が2階ステージに登場。彼女の「よーい、アクション!」の声に続いてスタートした「恋はMovie」から、“伊藤美来監督”の映画はスタート。ダンサーも従え、キュートでキャッチーなダンスを織り交ぜながらステージを展開していく。2コーラス目に入ってメインステージへと降りてくると、Bメロに入ってからはシートに腰掛けたりと“監督”らしい振る舞いも交えるなど、ストーリーを感じさせるミュージカル調のパフォーマンスを展開。こういった視覚の面に加えて、ボーカル面でもファルセットも含めて安定感を増しており、1曲目から一瞬たりとも聴き逃したくない出来だった。そのまま続いた「七色Cookie」は、ダンサーが降壇し伊藤ひとりのステージに。ここでもセンターでキュートにステップを踏みながら、歌声とパフォーマンスで場内を魅了。サビの頭で伊藤の手に合わせてくるくる回るペンライトの光が、それを証明しているかのようだった。

曲明けには、まずはさすがに触れざるを得ないこの日の天候の話題から。この日は関東地方に台風が接近中のおりの開催となったのだが、MCのなかで伊藤は「大人も私も、やるって決めてこのステージに立ってます!」と固い決意を述べ、「みんなも会いに来るって決めて来てくれたんですよね?ありがとう!」と喜びと感謝の言葉を続け、「この時間だけは精一杯全力で、楽しんで歌を届けたいと思います!」とまとめていた。
そしてそのまま次の映画に……と思いきや、それに合わせた衣装替えを、なんとステージ上で行うことに!映画の中の“メイキング”にあたる部分も挟んだところで、「泡とベルベーヌ」からライブを再開させる。頭サビを歌いきると、登場したダンサーふたりを従えながら3人でピュアでキュートなステージを、「恋はMovie」同様物語を見せつつ展開。ボーカルもいとおしさはそのままに、高音の続くDメロをまっすぐ飛ばしたりと安定感をもって響かせていく。また、続く切ない1曲「No Color」では、抜き気味のボーカルだからこそ出せる透明感や可憐さで聴き手の心をきゅっと掴んでキュンとさせ、中低音部ではしゃくり等を駆使して深みも。数少ない振付ポイントであるサビの手フリも、メリハリはバッチリだ。
すると今度は温かなナンバー「守りたいもののために」で、客席はオレンジ色に染まる。それを前に引き続きまっすぐに、それでいて大事に歌声を響かせていく伊藤。技術的には感情表現の深まりと歌声の安定感といった向上が感じられるのに、なぜこんなにイノセントなのだろう――その奇跡的なバランスに驚かされつつ、その歌声に心地よく浸らされる時間が続いていく。2サビ明けの柔らかなパフォーマンスにも一分の隙もなく、じっくり彼女の向上を味わえる1曲になったように感じられた。

歌い終わった伊藤は、イヤモニを外してファンの声を聴いてぱあっとうれしそうな表情をのぞかせる。また、初の試みというダンサーについて「人見知りなので最初緊張してたけど、みんなすごく優しくて。心強いです」と言及。このステージを一緒に盛り上げる仲間として信頼感を口にしていた。

その“初の試み”になぞらえ、「人はみなチャレンジをしながら生きていくと思うんですが、そんな皆さんに向けて、少しでも力になったら……」と語り、続いての映画は彼女も初めて作詞に挑戦した、自分をさらけ出して作った「あお信号」からスタートする。青に輝く客席を目にする彼女の表情は、優しさとうれしさに満ちあふれたものに。2サビでは2階ステージの中央で場内を見回しながらファンの想いも受け止めながら歌声を響かせ、昨年は感情がこぼれてしまった落ちサビも、今年は崩れることなくしっかり自らの想いを届けきることに成功。最後にステージ中央のスタンドにマイクを挿してラストフレーズを歌い切ると、そのまま「あの日の夢」を続ける。この曲は、パフォーマンスもほぼなくボーカル一本勝負。優しくも強い想いをしっかりと詰め込んだボーカルは確かな歌力の輝きが感じられるもので、その磨き上げぶりからは、この日にかける並々ならぬ意気込みが十二分に感じられた。また、続く「Moonlight」もスタンドマイクのよく似合う、スローでムーディーなバラード。階段上ステージで男女役のダンサーの掛け合いも展開され、より楽曲の物語が視覚的にも濃密に構築されていくなか、ここでも伊藤の歌力が生きる。Bメロなど少し声を張り目に出す部分でもたわまず、しんとした空間にボーカルをしっかりと響かせていき、彼女の歌声の世界にどっぷりと浸かれる幸せな時間を作り上げてくれた。

歌い切ったところで伊藤は、ここ3曲を思わず感情移入してしまうような力のある曲揃いと振り返ると、「でも、まだまだ感情移入できる映画は続きます」との言葉から、またも切ないミドルナンバー「ルージュバック」へ。この曲ではステップや振付も合わせつつ、サウンドにマッチしたオトナなボーカルを披露。特に、ぐっと耳を惹きつける想いの詰まった落ちサビは、この日のなかでも随一の聴きどころだったように思う。加えて前述の振付も、指先の所作のひとつにいたるまでオトナさを感じさせる、今だから出せる魅力満載のものだったように思う。

後奏中に伊藤は降壇。かわって登場したダンサー4人によるダンスタイムを経て、「Shocking Blue」のイントロとともに、2階ステージに衣装チェンジした伊藤が颯爽と登場。安定感高まったボーカルは、この曲ではサウンドに噛み合い強さとかっこよさを現出させるものに。パフォーマンスの中に観客とのコミュニケーションもうまく交えつつ、1サビ後には堂々すぎるほどに堂々とポーズを決める伊藤。彼女の楽曲の没入度合いを感じさせる一コマだ。また、ラストのロングトーンもただ伸ばしきるだけではなく全力のシャウトへと繋げてみせた伊藤。ここまで感情をパフォーマンスにぶち込んだのも、やはりこの日が初めてだったような気がする。

さて、ここまで多彩なナンバー10曲を披露してきた伊藤だが、ここからラストスパートへ。その知らせに残念がる声を上げるファンに向けて、「『えー?』って言ってるけど、すごい笑顔ですよ?」とちょっとだけいたずらっぽく煽ると、その笑顔に似合う明るいムービーを「ミラクル」からスタートさせる。この曲ではダンサー4人も勢揃い。そのうちのふたりが腕で作るハートマークから顔を出し、続けて飛び出してきたり、5人で連動したやり取りを組み込んだりと今までひとりでは出来なかったステージングを展開。これもブロックは違えど、またひとつ彼女の挑戦でもあったはずだ。そして今度はひとりでの「Morning Coffee」を、ハッピーな表情で再び元気いっぱいに披露していく伊藤。歌声にもきらめきを伴わせて場内へと響き渡らせていく。間奏での煽りもダンス中も、どの瞬間を切り取っても楽しそうだし幸せそう。そんな伊藤に向けて観客は、歓声を上げ続ける。
それをひとしきり受け止めたところで、アカペラから始めたのは「ワタシイロ」。どよめきに続けて次第に大きくなったファンのクラップに支えられ、ライブはいよいよ終盤へと向かっていく。そして気づけば客席には、ファンそれぞれの“ワタシイロ”がこの日も灯る。それを目にしながら伊藤は、ただ大事に歌うだけでなくポジティブさもしっかり出して、聴き手みんなにこの歌を届けていく。Dメロでは「みんなワタシイロ」のフレーズで客席に指をちょいちょい指してコミュニケーションをとると、大サビ直前の「準備は?(伊藤)」「OK!(観客)」の掛け合いもバッチリ。この曲が、生まれてから1年間でファンと伊藤とをより強固に結ぶ存在となったことを、はっきりと示すワンシーンだった。

ラストナンバーを前に、改めてこの日のライブを伊藤は「1stから『いつかは自分の曲だけでライブをしたい』と夢見ていたんですが、やっとかないました!まだまだ半人前ですけど、やっとアーティストとしての自覚も出てきたし、成長も感じられながら4thにもってこれたのがうれしかったです」と振り返る。続けて、素敵な楽曲を提供してくれる作家陣やスタッフや荒天のなか集ってくれたファンへも感謝を告げると、さらに悪天候のため来られなかったであろうファンに向けての想いを「もし知り合いがいたら『みっくは逃げないよ』って、『いつまででも隣にいるから一緒に歩こうね』って言ってたよって、伝えてください!」と託し、深い一礼。そしてそのみんなのための曲「all yours」で、Movieはいよいよフィナーレを迎える。ポップでアッパーなナンバーに合わせたクラップが、イントロから場内に響き渡るなか、伊藤はメインステージをゆっくり歩いたりお立ち台に登ったりしながらこの曲を披露。会場中に丁寧に手を振り視線を合わせて、“全部あなたのもの”な、私とみんなの曲を精一杯届ける。サビで上に転調するこの曲も、安定感は最後まで維持。Movieの中のスターとして、無事ひとつの映画を演じきった。

歌い終わったところで「みんなの愛がすごく大きいよぉ。うれしいねぇ」と素に戻る伊藤は、そのまま2階・3階も含めて会場全体と視線を丁寧に合わせ、改めて感謝。そして最後に2階ステージの中央で「みんなー!愛してるよー!」とオフマイクで愛を叫び、まさに「all yours」な感情のなか、「監督:伊藤美来」とエンドロールで表示されたライブを締めくくる。そのエンドロールの最後には、伊藤が「じゃあねー」のひと言とともにカチンコを鳴らし、ライブという名のMovieはここに完成したのだった。

ダンサーを導入してのパフォーマンスの幅の広がりやボーカルワークなど、様々な面で成長を見せてくれたこの日のステージ。さらにラストMCから「all yours」への流れでは、カリスマ性すらも感じさせられた。それでいて本文中でも述べたような変わらないイノセントさを持つ伊藤美来というアーティストは、間違いなくオンリーワンの存在となったと言えるだろう。そんな彼女が作り込まれた世界観を持ち、覚悟を背負って向き合ったこの日のライブは、まさしく“完璧”の二文字で言い表せるものだった。

Text By 須永兼次

“伊藤美来 4th Live Miku’s Adventures 2018 ~Live is Movie~
2018.09.30@東京国際フォーラム ホールC
【SET LIST】
M1.恋はMovie
M2.七色Cookie
M3.泡とベルベーヌ
M4.No Color
M5.守りたいもののために
M6.あお信号
M7.あの日の夢
M8.Moonlight
M9.ルージュバック
M10.Shocking Blue
M11.ミラクル
M12.Morning Coffee
M13.ワタシイロ
M14.all yours

関連リンク

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP