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INTERVIEW

2018.09.19

海外でのアニメイベントを逆輸入!“International FAN Festival 2018”開催記念スタッフインタビュー

海外でのアニメイベントを逆輸入!“International FAN Festival 2018”開催記念スタッフインタビュー

カナダで定期的に開催されているアニメ・フェスティバル“ANIME REVOLUTION”。そのスタッフが手がけるアニメ・イベント、“International FAN Festival 2018” が来たる10月に日本・大阪にて開催される。

海外で行われている日本のアニメ・カルチャーに関するイベントを、あえて本家であるここ日本にて開催するその狙いとは、そして逆輸入型イベントの魅力とはなんであろうか。このイベントの主催であるCan Ngo氏と、このイベントを以前より支援する音響監督、高寺たけし氏のふたりに話を聞いたスペシャル・インタビュー。

――今日はカナダ最大級のアニメ・コンベンション“ANIME REVOLUTION” (以下アニレボ)から生まれた“International FAN Festival 2018”(以下IFF)が大阪で開催されるということで、お話を伺います。まずアニメの音響監督である高寺さんが“アニレボ”に関わるようになったきっかけは?

高寺たけし 僕が“アニレボ”に関わったのは2015年からです。何年か前に日本とアメリカで制作した作品の音響監督を務めたときに、ロサンゼルスにあるバングズーム!エンタテインメント(アメリカでアフレコなどを行う音響制作会社。日本のアニメ作品の英語版を手がけることが多い)で仕事をしたんです。そこの社長とCanが知り合いで、「話を聞いてもらえないか」と相談されたのが最初のきっかけですね。僕は割と海外旅行も好きで、海外での仕事をもっとやってみたいと思っていたので「ぜひ協力させてください!」という話になったんです。

高寺たけし

――Canさんが7年前に“アニレボ”をはじめたきっかけは?

Can Ngo 最初は自分勝手な理由だったんです。カナダのバンクーバーで元々行われていたアニメ・コンベンションに僕はお客として参加していたのですが、そのイベントが潰れてしまった。そのイベントはバンクーバーで唯一のアニメ・コンベンションだったし、このまま終わらせてしまうのはもったいないと思ったんです。それと同時にイベントを見ていて「僕にもできるのではないか?」という気持ちが芽生えたのがはじまりでした。

Can Ngo

――「自分がやらなくては!」という使命を感じたんですね。

Can そういうことですね。僕もかなりのオタクなので(笑)

――Canさんがオタクになったきっかけは何だったのですか?

Can 子どものころ僕は孤児院で育ったのですが、その当時はまだインターネットもそこまで普及していなくて、知り合いからもらったり借りたりしたCDやDVDが僕にとってエンターテイメントのすべてだったんです。その中に、日本のアニメ作品である『らんま1/2』や『るろうに剣心』もあって、夢中になり、何度も何度も繰り返し観ていました。

――そんなCanさんが立ち上げた“アニレボ”ですが、今はどれくらいの規模で行われている、どんなイベントなのでしょうか?

Can 今ではバンクーバーで約2万2千人が集まるイベントになりました。北米のアニメ・コンベンションの9割以上がそうなのですが、“アニレボ”も基本的にはボランティア・スタッフで運営しています。これは日本以外のアニメ・コンベンションの特徴かもしれませんが、ボランティア・スタッフで運営しているので、アニメやゲームが好きな仲間たちによる大きなコミュニティが生まれるんです。そして日本では考えられないようなユニークな企画も行っています。やはり“好き”から生まれる熱意や愛情が、ダイレクトにイベントに反映されるのが面白いところではないかと思っています。

高寺 僕は“アニレボ”に参加するまで海外のアニメ・コンベンションに行ったことがなかったのですが、日本で行われる企業イベントとは明らかに主旨が違っていて面白いなと感じました。世界最大規模のアニメ・コンベンションに成長したロサンゼルスの“ANIME EXPO”も元々はファン・ミーティングだったと聞いていますが、それぞれ出発点はファン同士の繋がりなんですよ。だからこそ愛や情熱を感じるし、どこか手作りにも似た温かさがある。商品やコンテンツのプロモーションのために行われる企業イベントとは、考え方が根本的に違うんです。僕は日本の声優さんたちをブッキングして“アニレボ”に招致する仕事をしていますが、彼ら彼女らをアテンドしてくれるボランティア・スタッフたちは日本のアニメや声優に対する大きなリスペクトがあるので、ものすごくていねいに、熱意を持って対応してくれる。だからこそ僕も安心して声優のブッキングが行えるんです。

――僕も何度か海外のアニメ・コンベンションに参加したことがありますが、現地のスタッフは本当にていねいに対応してくれるし、様々なことに気遣ってくれますよね。

高寺 僕が招致した声優の皆さんも、「楽しかった! また来たいです」と言ってくれるんです。カナダのアニメファンの皆さんも会えると思っていなかった声優と会えることに大きな喜びを感じてくれている。双方が温かな気持ちで包まれるムードこそ“アニレボ”や海外のアニメ・コンベンションの良さだと思っていますね。

――そんな“アニレボ”から生まれたアニメ・コンベンション“IFF”を、敢えて日本で逆輸入的に開催する意図はなんなのでしょうか?

Can 理由はいくつかあるのですが、まず僕が日本を愛しているということ。子どもの頃から日本のアニメを観てきたので、日本に対する興味も尽きませんからね。そして次の理由は、日本で行われているアニメ・イベントにも参加したときに、僕たちのイベントよりも「固い」という印象を持ったからです。もちろんビジネスとして行われているものなので、正確かつスムーズに行われているのですが、少し寂しくも感じてしまって。そんなとき、僕の友人から「日本で“アニレボ”のような海外式のアニメ・イベントをやってみたら?」という話が出たんです。

――高寺さんはその話を聞いたとき、どのような印象を持たれましたか?

高寺 正直に申し上げて、これを実現させるのは大変だろうなと思いました。海外だからこそ許されていたムードもあると思いますし、日本だとエージェントも神経質になりやすいですからね。ただその一方で、「だからこそやってみたい」とも思いました。日本のアニメ・イベントは基本的にオーガナイズされたステージをファンに観てもらう、という印象が強い気がしています。逆に、海外のコンベンションのようにファンと演者との距離が近くて、ちゃんとコミュニケーションができるようなイベントはきっと新鮮だと思うんです。声優たちと会話ができる、サインがもらえる、そして写真も撮れる。この文化をカナダから日本に逆輸入するという、かつてない面白さも魅力的に感じました。この考え方に賛同していただくためには、やはり“アニレボ”をはじめ海外のアニメ・コンベンションに参加経験のある、理解のある演者の皆さんの協力が必要だと思ったんです。

――実際に実現させるとなると、クリアすべき課題も多そうですね。

高寺 越えるべきハードルや壁はいくつもあります。ただ、我々は日本人だからこそ「それは無理だよ」と決めつけてしまいがちなことを、Canたちとだったらやれる、と思いました。そして実際にラインナップを見ていただければわかりますが、あれだけの皆さんにご協力いただけることになりました。もちろん100%海外と同じようにはやれないので、日本のルールに合わせたやり方を取らせてもらいますが、可能な限り海外のアニメ・コンベンションの楽しさやワクワク感、そして雰囲気は壊さないようにしています。

――“IFF”を大阪で行うことで、どんな未来に期待していますか?

Can 僕が望むのは、やはりもっとファン同士の繋がっていく未来です。海外のアニメ・コンベンションでは同じアニメファンが一ヶ所に集まるから、知らない者同士でも次々と自然な形でファン・コミュニティができていくんです。ステージを観て、グッズを買って家に帰るだけの楽しみ方ではなくて、アニメを通じたファン同士のもっとオープンなコミュニケーションを僕は日本に持ってきたいと思っています。

――高寺さんはいかがですか?

高寺 僕は今回の開催地である大阪を「日本の大阪」ではなく、「大阪という東アジアの大都市」という考え方で捉えて欲しいと思っているんです。実際に街を歩いてみればわかりますが、今日本は世界中から観光などで集まってきた外国人で溢れかえっていますよね。いわば巨大な国際都市なんです。だから“IFF”の公式ホームページは多言語に対応していますし、今大阪にいるさまざま外国人と、アジア人である日本人が、アニメというひとつの共通言語のもとに集まるようなイベントになればいいなと思っています。そして今回の“IFF”を皮切りに、こういうイベントがもっと日本に定着するといいな、と思っています。

イベントは10月6日(土)、7日(日)の2日間、グランキューブ大阪にて開催される。ぜひこの機会に足を運んではいかがだろうか。

Interview & Text by 冨田明宏
Photography By 小賀康子

【プロフィール】

Can Ngo
33歳、カナダ・バンクーバー出身
IFF事務局代表。
“ファン目線”をモットーにしたカナダ最大級のアニメ・イベント、アニレボの創設者。海外ならではのアニメ・イベントを日本でも開催するため、IFFを企画する。

高寺たけし

48歳、東京都出身。
マジックカプセルで制作を担当した後、テクノサウンドを経て、現在はHALF H・P STUDIOに所属。音響監督として、『弱虫ペダル』シリーズや『ゆるキャン△』、『境界のRINNE』などを手掛ける。


●イベント情報
International Fan Festival 2018

2018年10月6日(土)10:00 – 20:00
2018年10月7日(日)10:00 – 18:00
会場:グランキューブ大阪(大阪府立国際会議場)

主催・企画:AMCGN International Fan Festival Ltd.
協力:Zepp Live Inc.
制作・運営:YUMEBANCHI Co.,Ltd.
プログラム:フォトセッション / サイン会 / Q&Aトークショー / ライブレコーディング

入場券
・10/6、10/7 各日1日券:¥1,000
・10/6、10/7 2日通し券:¥1,800

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