珠玉の曲たちが生み出すスノードームのような幸せな空間。新曲も初披露した“やなぎなぎ ライブツアー2018「ナッテ」”東京公演レポート

アーティスト・やなぎなぎが2018年3月から行っていたツアー、“やなぎなぎ　ライブツアー2018「ナッテ」”の東京公演が4月21日（土）にZepp DiverCity Tokyoで行われた。3月4日（日）の仙台公演から始まり、9都市を巡ったツアーの国内最後の公演。新曲の初披露やサプライズゲストの登場もあり、ファイナルを飾るにふさわしいライブとなった。

今回のツアーは、今年1月に発売されたやなぎなぎの4thアルバム『ナッテ』を引っ提げて行われたもの。“私の好きな宝物を詰め込んだスノードーム”というコンセプトで作られたアルバムで、ライブでもスノードームを思わせる凝った演出が随所に見られた。

まず最初の曲は、アルバムでも1曲目に収録されている「snowglobe」だった。彼女が登場してもステージには半透明の紗幕が下りたまま。雪の結晶が紗幕に映し出され、円の中にいる彼女はスノードームの中に閉じ込められたように見える。スノードームの中にはギターや花など“宝物”が浮かび上がり、最後には紗幕いっぱいにそれが広がっていった。幻想的な歌声も相まって、まるで彼女のスノードームの中に会場全体が誘われるようなプロローグだ。

続けて歌った「時間は窓の向こう側」では紗幕にPVの映像が映し出された。静かな歌い出しからテンポが上がっていって情熱的なリズムを刻んでいく。曲が終わるとご挨拶の後、「紗幕が下りているので今のところ皆さんの顔がまったく見えてないんですけど、皆さんちゃんといますよね？」と言って笑顔を見せた。宝物を詰め込んだようなアルバムの曲から新たな魅力を見つけてほしいという思いから、「今日は宝探しのような気持ちでライブ楽しんでいってください」と語りかけて次の曲へ。

3曲目の「あなたはサキュレント」は一転して明るい曲で、かわいらしい振り付けも披露。ポップでカラフルな映像に加えて歌詞も映し出されていた。「スーパーヒーロー」ではデジタルな幾何学的な文様が映し出され、曲調と共に雰囲気がガラッと変わっていく。

続く5曲目「over and over」で紗幕が落とされ、ステージの全貌が露わに。これを待っていたように観客もスタンディングになって会場は緑色のペンライトの光に染まった。彼女もステージの左右に動き回り、観客を煽っていく。次の「here and there」はTVアニメ『キノの旅-the Beautiful World-the Animated Series』のOP。サビで手を左右に振ると観客も呼応してペンライトを振って、会場が一体となった盛り上がりを見せた。

次の曲の前にMCがあり、今回のアルバムでコラボをした“DJみそしるとMCごはん”（略して“おみそはん”）の話題に。3年前、偶然ラジオで聴いたおみそはんに魅了され、いつかコラボをしたいという思いが実現したのが「relaxin’soup feat. DJみそしるとMCごはん」だったという。「この曲をひとりじゃ歌えないので、ちょっとおみそはん呼んできたいと思います」と言って舞台袖に下がると、右手にライオンのパペットをつけて登場。今回のツアーではこのライオンがおみそはんの代わりとなって歌ってくれていたという。ちょっと肩透かしを食らった格好だったが、「今日はこの魂をおみそはんにお返ししたいと思います。本日のゲスト、DJみそしるとMCごはん！」と呼び込むと、今度は本物のおみそはんが登場した。ちなみに、DJみそしるとMCごはんは2人組っぽい名前だが1人である。

そしてふたりで披露した「relaxin’soup feat. DJみそしるとMCごはん」。やなぎなぎの優しい歌声に、おみそはんのラップが乗って、会場全体に幸せな空気が広がっていくようだった。曲の最後におみそはんにライオンを手渡すと、「ラーメン食べに行きましょう」と約束してゲストを送り出した。再びひとりに戻って歌った「海を込めて」は波間を漂うようなゆったりとした曲。そしてMCを挟んで、ここからはアルバム以外の曲を歌うということで「間遠い未来」を披露した。

次の曲は昨年、自身が音楽プロデュースを担当したTVアニメ『Just Because!』のEDテーマ「behind」をカバーした。原曲は作中の3人のヒロイン・夏目美緒（CV：礒部花凜）、森川葉月（CV:芳野由奈）、小宮恵那（CV:Lynn）が歌っており、やなぎなぎが作詞・作曲を担当していた。今回のライブはステージ中央に大きな球体があって、そこに映像が映し出されるという演出だったのだが、この曲では『Just Because!』のアニメ映像が流れていた。原曲では3人で歌っていたものをひとりで表現するというこの日限りの特別なカバーとなった。

ここからゲーム『NORN9 ノルン+ノネット ACT TUNE』のOP「play of color」、南條愛乃とのコラボで歌ったTVアニメ『ベルセルク』第2期ED「一切は物語」、TVアニメ『時間の支配者』ED「時間は窓の向こう側」とタイアップの曲が続いた。

そしてここで一息ついて“なぎバンド”のメンバーを紹介。ツアー中、バンドメンバーやマネージャーたちとトランプの大富豪をずっとやっていたそうで、その順位に従ってひとりずつツアーの思い出を語った。やなぎなぎはラーメンが好きで、ツアー中は各地のラーメンを食べて「relaxin’soup feat. DJみそしるとMCごはん」のアウトロで“食レポ”をしていたのだが、福岡でご当地のカップラーメンを4種類食べ比べをして、最後に4種のスープを混ぜてみたところめちゃめちゃおいしい究極のスープができあがった、といった思い出話で盛り上がっていた。

次は「ここであらたに歌いたい曲がございまして……」と言って、TVアニメ『覇穹封神演義』新EDテーマとなる「無形のアウトライン」を初披露。作曲が石川智晶ということで、イントロから石川智晶の世界が全開の楽曲だった。この曲は18thシングルとして5月30日に発売される予定だ。

ここからアルバムの曲に戻って、今度は『キノの旅』のEDテーマ「砂糖球の月」、そして「目覚めの岸辺」と続いた。アルバムのエンディング的な雰囲気のある曲「夜明けの光をあつめながら」が歌われ、ライブも終わりに近づいてきた。

最後に、今回のツアーのモチーフとなっているスノードームの意味が語られた。「みなさんと宝物を共有できるのがスノードーム」「そんな私の宝物たちが、これから先みなさんの中でどんどん育って、生活の中に溶け込んでずっとずっと一緒にいられる曲たちに成長していくといいなと願っています」と、この日の曲たちとの出会いがいつまでも心に残ることを願っていた。そんな思いを詰め込んだ最後の曲「natte」では観客が着席して、穏やかな空気でライブ本編は幕を閉じた。

すかさず起こったアンコールに応えて、やなぎなぎとバンドメンバーが再登場。アンコール最初の曲「春擬き」は、「皆さん一緒に歌ってくれますか？」との呼びかけに応えて観客の大合唱も起きた。

そしてここでうれしいお知らせが。11月14～18日の5日間、やなぎなぎのコンセプチュアルライブ“color palette”が開催されることが決定！これはライブツアーとは違った色をテーマに行われているライブで、次回は“ブラック”がテーマとなるとのこと。しかも5日間全て同じ会場、日ごとに異なる編成で行われるそうで、どんなライブになるのか楽しみなところだ。

アンコール2曲目の「rooter’s song」はコール＆レスポンスがある曲。彼女も自らショルダーキーボードを演奏して観客と共に盛り上がった。そして次の曲は、ryoが作曲した「メルト」の10周年を記念して作られた「メルト 10th ANNIVERSARY MIX」。初音ミクの楽曲の中でも代表格ともいえる知名度の高い曲で、本人も「私の活動の中でもすごく大切な出会いになった1曲」と思い入れの強さを語っていた。

アンコールの最後は、おなじみのデビュー曲「ビードロ模様」。ジャンプしながらクラップをして観客と一体となって盛り上がり、ハッピーな気持ちでツアーを締めくくったのだった。

こうしてファンの心にたくさんの宝物を残して終わったツアーだが、ここからはアジアツアーがスタートする。“yanaginagi live tour 2018 natte in Asia”と題して、5月から上海、台北、香港で開催。やなぎなぎが作る幸せな空間が、国境を越えて広がっていく。

Text By 金子光晴

“やなぎなぎ　ライブツアー2018「ナッテ」”東京公演
2018年4月21日（土）Zepp DiverCity Tokyo

＜セットリスト＞
M-1　snowglobe
M-2　時間は窓の向こう側
M-3　あなたはサキュレント
M-4　スーパーヒーロー
M-5　over and over
M-6　here and there
M-7　relaxin’soup feat. DJみそしるとMCごはん
M-8　海を込めて
M-9　間遠い未来
M-10　behind
M-11　play of color
M-12　一切は物語
M-13　瞑目の彼方
M-14　無形のアウトライン
M-15　砂糖玉の月
M-16　目覚めの岸辺
M-17　夜明けの光をあつめながら
M-18　natte