初の東名阪ツアー初日“豊永利行ライブツアー「With my LIFE」 ~バースデーパーティ~”レポート

自身の新レーベル「T’s MUSIC」設立を記念したアコースティック・ワンマン「豊永利行アコースティックライブ2017★メルマガの皆さまへ。メリクリ★」から4ヵ月。2018年4月28日(土)、東京・江戸川区総合文化センターから始まったキャリア初の東名阪ツアー初日“豊永利行ライブツアー「With my LIFE」 ~バースデーパーティ~”は、“変わらない豊永”と“新しい豊永”を濃縮したあらたな音楽活動のスタートにふさわしいステージになった。

満員の客席に足を踏み入れ、最初に目に飛び込んできたのはドラムとキーボード、ベース&ギターアンプが並ぶイクイップメント。バンド・スタイルでのライブは2016年12月の“豊永利行 2nd LIVE-Singing CROWN. Dancing CLOWN.-”ぶりだと思い出し、ますますワクワクが高まってくる。豊永は以前から、自分のライブスタイルは“エンタテインメント・ショー”だと言い続けてきた。昨年末のライブのようなアコースティックスタイルは、音数が少ないぶん静かな構成になり、彼のシンガーとしての力量の高さを突出させるが、幅広いジャンルのソングライティングも魅力の豊永利行の音楽性は、やはりフルサウンドのバンド・スタイルでこそ一層輝くのだ。

開演時間の17時。ざわつく会場のスピーカーから、「本日は、利行のライブツアー“With myワイフ”にお越しいただき、誠にありがとうございます。え? ワイフじゃない? ライフ? (スーパーの)ライフはよく利用するよ、イチゴが安いね」とおじさんのとぼけた声が流れ、爆笑が巻き起こる。インディーズ時代から続く、豊永ライブでは恒例の“豊永父”という設定による本人の生ナレーションだ。かしこまったホールライブでも常にユーモアを忘れない、“変わらない豊永”のショーマンシップは健在だ。
続いてスクリーンに、“豊永屋”と称してシンガー・ソングライターとしての活動をスタートした2013年から今までの音楽活動の歩みが、その時々の貴重な写真と映像、オフショットを交えて映し出される。「LisOeuf♪vol.08」の『With LIFE』リリース・インタビューで本ツアーへの意気込みを聞いたとき、豊永は「自分の人生、皆さんの人生を振り返ることができるステージにしたい」と語っていた。きっとこのオープニングが、それの最初の答えなのだろう。オーディエンスの一人ひとりが、自分が豊永利行と出会った頃から今日までの思い出を、しっかりと噛みしめていたはずだ。
大きな拍手が送られ、バンドが「MUSIC OF THE ENTERTAINMENT」(MOE)のイントロを奏で出す。ステージ中央奥に描かれていたクラシカルな時計のビジュアルが左右に割れて、豊永が「皆さーん、With my LIFEへようこそ!」と言って颯爽と登場。モノトーンのマント風ジャケットを翻し、「みんな一緒に!」とマイクを客席に向ける。彼のブライトな歌声が伸びやかなメロディにのるだけで、幸せな空気が満ちあふれてくるのがわかる。豊永の音楽人生のスタートを飾った、シンボリックなアンセム「MOE」がオープニングを飾ることの意味が、ずしりと胸を打つ。

そこから場面は、一気に“今”の豊永へと時計の針を巻ききる。2曲目は、鋭いアコースティックギターのリフが印象的な「Don’t Give Up」。スッとふたりの男性ダンサー(矢野奨吾&森内翔大/SET)が歩み寄り、3人が軽快なステップでダンスを披露する。今でこそ声優としての有名な豊永だが、キャリアのスタートはミュージカル。豊永の達者なダンスとステージパフォーマンスを堪能できるのは、バンドライブならではのお楽しみだ。続くアーバンなシティポップ「とある午後の僕物語」も、アルバム『With LIFE』からのナンバー。エレキギターのクリーントーンに豊永の伸びやかなフェイクが絡み、大人びた雰囲気を醸し出す。

そんなアダルトな空気を、ユルいMCで一気に崩し去ってしまうのも豊永スタイルだ。「いや~! あっちぃ! なんでこんな衣装にしちゃったかなぁ。でも脱がねえよ!」と、アルバムタイトルの“人生”にかけて、旅人風の衣装を注文してしまったことをぼやきつつ、オープニングムービーに映されていた“豊永屋”時代のデビューライブを振り返り、客席とユーモラスな掛け合いを続ける。この日は、彼の34歳の誕生日。オーディエンスからの温かい拍手と「おめでとう!」の声に目を細める。
そして豊永ライブではもう恒例、スタッフから出される“喋ってないで、早く曲へ行け!”というカンペの指示をいじりながら、再び『With LIFE』からの2曲へ。軽やかなピアノから始まる「I’ll Be on Your Side」では爽やかなサウンドに合わせて彼の声はより明るさを増し、ミディアムバラードテイストの「青い花」では柔らかなファルセットを響かせながら、切々とした歌声で心を震わせる。楽曲ごとに声色を変え、豊かに歌の世界を彩っていく豊永の表現力の確かさに酔わされる。

流れる汗を拭きながら、「ここは自由に喋っていいMCだ!」と、嬉しそうにトークを続ける豊永。2ヵ月ほど前、初めて“ぎっくり首”(頸椎捻挫)にかかり、痛みで首を動かせない日常がいかに大変だったかを、奇妙な歩き方やシャワーを浴びる様子を交えて事細かに解説し、笑わせる。ここでまたまたカンペに先を急かされた豊永が、「僕のライブ、初めて来た人どのくらいいます?」とアンケートを採ると、1/3近くの人が手を挙げて、本人もびっくり。「ではここで説明させていただきますが、僕のライブは全部説明していくスタイル。このあと、2曲歌って僕はハケて、着替えてきます。その間、皆さんは何をするかというと、スクリーンにVTRが流れます、お楽しみに!」とぶっちゃけて、前半ラストを飾ったのは「希望の唄」と「1:1」。西部の荒野をひとり行く孤高の旅人をイメージして作ったという「希望の唄」は、オレンジのライティングがステージを夕陽に染めて雄大なドラマを紡ぎ、アッパーなロックナンバー「1:1」ではさらにワイルドな歌声で、“運命に抗い、あるがままの自分であれ”と力強く訴えた。

そして予告どおり始まったVTRは、豊永のセルフナレーションとシリアスなインタビュー風景で、シンガー・ソングライター=豊永利行の素顔に迫る某ドキュメンタリー番組風。そして「30歳を超えてもなお、挑戦し続ける彼が今、話したい相手は……」と語られ、オシャレなカフェで豊永とある人との対談がスタートする。その相手はなんと……親父ファッションに身を包んだ天然ボケの“豊永父”! 約10分間におよぶ一人二役の凝りに凝った映像合成コントに、最後まで笑いが止まらなかった。
面白VTRコーナーのあとは、美しいピアノの音色でオーディエンスはライブ空間へと引き戻される。キラキラと輝くカジュアルなブルゾンに着替えた豊永が、再び時計から登場。深々と頭を下げてハイチェアに腰かけ、アコースティックスタイルへと姿を変えたバンドを従えて「ひとつだけ」をしっとりと歌い出す。リズミカルなカホンのとアップライトベース、軽快なピアノとアコースティックギターの音が混ざり合い、春の香りを運んでくる。透き通ったアカペラで始まる「ココロノトビラ」は、柔らかく艶やかな豊永のファルセットに耳が洗われる。そして「ここから皆さんを、少しだけ不思議な空間へご案内します」と言って始まったのは、イケイケな原曲を、ジャジーにアレンジした「僕の☆☆(キラキラ)計画」。森内翔大が豊永のソウルフルな歌声にのせて、マイム性豊かにコンテンポラリーなダンスを舞う。飲みの席で女の子にフラれるユーモラスな楽曲が、なんともしっとりとしたアダルトな世界を作り上げていく。だから豊永の音楽は面白い。

アコースティックコーナーを終えた豊永は、例のVTRについて「撮影、大変だったんだよ!」とニコニコ顔で振り返り、バンドメンバーの吹野クワガタ(Key)、Kc.(Gt)、西塚真吾(Ba)、一之瀬久(Dr)とダンサー陣を、愉快なトークを交えて紹介。そして「次はカバーを歌おうかなと思っておりまして……。豊永屋時代にもちょこちょこやっていたんですが、自分が歌ったキャラソンをカバーしちゃうコーナーです!」とコールすると、割れんばかりの大歓声に包まれる。そして「東京はこの曲です!」と、曲が始まったのだが……これがもう、バンドも豊永も音程外しまくり! 「おいおい、おまえたち! 今までの腕前はどこにいった!!」と慌てて演奏を止めた豊永は、「わかる人はわかるでしょう、松岡春くんです。彼本人が音痴設定なので、これがやりたかったんです(笑)」と、『君と僕。2』劇中のカラオケボックスシーンを再現してニヤリ。「でもこれだとワンコーラスももたない、ちゃんと歌います!」と、「マシュマロ・デイズ」を当時の春のままのキュートな歌声で披露してくれた。

「このMCパートは、なんと15分間もあるんですよ! ほら、まだ8分も残ってる!」と、ゆったりとトークを進めていく豊永。「今日のお客さん、若くない?」と言って、来場者の年代&地区別チェックも敢行。50代の方や海外からのお客さんの姿に、豊永も嬉しそうな笑顔を見せる。このMCが本編最後のトークということで、これも豊永ライブの恒例行事となっている「アンコールの求め方指導」(=あと2曲歌って引っ込んだら、豊永と同じ今日が誕生日の人が音頭を取って、2分後に“T’s MUSIC!”とコールする)もスタート。「毎回言ってるけど、そもそもアンコールありきのセトリっておかしいじゃん? だから僕のライブは言います、アンコールあるって(笑)」とぶっちゃけて、カバーアルバム『T’s』からコブクロの「YELL」を熱唱。本編ラストは、『With LIFE』のラストナンバーでもあった「TEMPE ×∞」を、オレオレ詐欺の犯人と母親に扮した矢野&森内とのコミカルなダンスで盛り上げた。

ツアーTシャツに着替えて登場し、披露された東京限定のアンコールナンバーは『デュラララ!!』ファンにもおなじみの「Reason…」と「Day you laugh」。クール&ワイルドな豊永のボーカルとパーカッシブなサウンドが、彼が踏むリズミカルなステップに拍車をかける。そしてダンサーのふたりを改めて豊永が紹介している間、観客だけに見えるように、スクリーンに「バースデーサプライズをします!」の文字が! カウントダウンが始まり、「なに? なに?」と驚く豊永。お客さんからのお祝いメッセージが寄せ書きされた2枚の大きなクロスと、「With LIFE」のジャケット写真が描かれたバースデーケーキ、そして全員による「ハッピーバースデー」の歌がプレゼントされた。
誕生日サプライズに続いて、7月29日に舞浜アンフィシアターで開催されるライブに向けて新グッズ(なんと下着のパンツ!)が鋭意製作中であることを報告し、いよいよライブも終盤へ。「初ツアー、気合いを入れて作らせてもらいました。いつも言うんですが、僕のライブは気軽なく遊びにおいでと言える、協調性を必要としない空間。それぞれの楽しみ方、“個”を大事にしたい」と語り、「人生は時間に限りがあります。その人生を、僕のライブで少しだけ止めたり、お借りして、一緒に楽しめたらと思いました。そんな平和な時間にしてくださって、ありがとうございます」と感謝の言葉を述べる豊永に、大きな拍手が贈られる。改めてバンドメンバーを紹介し、最後に全員で想いをひとつにした曲は、アルバムのタイトルソングであり「MOE」のセルフアンサーソングとして作られた「With LIFE」。

「素敵な楽しいチームに恵まれて、僕は幸せ者でございました。ここからまた、皆さんの時を進めたいと思います。また時が止まる、夢のような時間を作りたいと思います。そのとき、またお会いしましょう!」
全編を歌い終わり、そんな言葉を残して時計の中へと吸い込まれるように去っていった豊永。彼の音楽人生をなぞるように、「MOE」から始まり「With LIFE」で幕を閉じたこのステージこそが、これからも音楽と共にみんなと歩いていこうという、豊永自身の内なる決意の表明のように思えた。

Text By 阿部美香
Photo By 菊池さとる

豊永利行ライブツアー「With my LIFE」 ~バースデーパーティ~
2018年4月28日 東京・江戸川区総合文化センター
<セットリスト>
1. Music of the Entertainment
2. Don’t Give Up
3. とある午後の僕物語
4. I’ll be on Your Side
5. 青い花
6. 希望の唄
7. 1:1
8. ひとつだけ(アコースティック)
9. ココロノトビラ(アコースティック)
10. 僕の☆☆計画(アコースティック)
11. アニメ『君と僕』「マシュマロデイズ」
12. YELL(コブクロ)
13. TEMPE×∞
EN1. Reason…
EN2. Day you Laugh
EN3. With LIFE


●インフォメーション
豊永利行初の公式ファンクラブをオープン!
豊永利行初のオフィシャルファンクラブ「豊永利行 楽(FUN)倶楽部」がオープンした。ファンクラブサイトでは、「ボイスレター」「おみくじ」「ポイントコンテンツ」など遊べるコーナーが設置してあるほか、イヤーブックの発行や公演チケットの先行販売、ファンクラブ限定イベントの開催も予定している。5月31日までに入会すると、オリジナル・ポストカードがもらえるキャンペーンも実施中。

豊永利行 楽(FUN)倶楽部

関連リンク

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人