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2018.05.09

嘘のない彼女の「大丈夫」が、胸に響いた初ライブ。 “相坂優歌ファーストライブ 「屋上の真ん中 で君の心は青く香るまま」”レポート

嘘のない彼女の「大丈夫」が、胸に響いた初ライブ。 “相坂優歌ファーストライブ 「屋上の真ん中 で君の心は青く香るまま」”レポート

4月5日、Zepp DiverCity(Tokyo)にて“相坂優歌ファーストライブ 「屋上の真ん中 で君の心は青く香るまま」”が開催。定評のある歌唱力への高い期待にも応えつつ、嘘偽りのない言葉や歌声に乗せた想いをファンの心に流れ込ませ、持ち帰らせるようなライブを繰り広げた。

OPSEのなか登場した相坂が、1曲目に歌い始めたのは「セルリアンスカッシュ」。いきなりアクセル全開の自身最速ナンバーで、会場のボルテージも一発で急上昇。最序盤の歌声からは少々緊張もうかがえたが、それもほんの僅かな間だけ。力強さだけでなくBメロでは歌声の抜きも見せて表現の豊かさを見せつけたかと思えば、最後サビの最高音部は地声で思いっきり歌い上げる。さらに一礼ののちに歌い始めたのは、デビュー曲「透明な夜空」。客席を埋め尽くすブルーのペンライトが作り出した夜空を前に、相坂のパフォーマンスにはどんどん力強さが加わる。振付は歌詞に沿った魅せ方の補足程度のもので、とにかくボーカルの力で勝負している印象。よく賞賛の意味で「喉からCD音源」と言われるが、そこに生ならではの圧を付加できているのが、彼女のライブでの強みなのだ。

そして続けたのが、1stアルバムのMV曲「瞬間最大me」。冒頭3曲で、観客の心を捉えきってしまおうという意志のある構成だ。この曲では客席が歌詞に合わせてピンクに染まれば、相坂のボーカルワークもガラリと変貌。Aメロではウィスパー混じりの歌声をみせる。その一方でサビは、詰まったメロディも乗りこなしつつぐっと力のこもった歌声に。彼女の元々の武器と、アルバムで身につけた武器との両方を見せられる曲で、まずは今の力をきっちりと提示した。

曲明け、にわかに照れ笑いを浮かべながらMCを始めた相坂は、平日夜にもかかわらず足を運んでくれたファンへの感謝を述べ、ここまで3曲を振り返る。そんななか、話題が「瞬間最大me」を手掛けた大森靖子へおよぶと、観客を座らせた相坂はおもむろにギターを提げ、彼女の前にはスタンドマイクが。そして「平日の夜に呼び出しちゃったんで、何か私もチャレンジしないと」との意気込みに続いて、その大森の楽曲「ハンドメイドホーム」のカバーに弾き語りで挑戦。またもウィスパー気味のボーカルで歌い始める相坂は、この曲では温かく穏やかなボーカルを響かせる。1サビ明けからはコードを弾きながらの歌唱となり、さらに落ちサビでの演奏はほぼ相坂のギターの音色のみに。こうしてこの前向きな挑戦を成功させた。そしてギターを下ろすと、今度はスローなナンバー「今はここに」へ。音源よりもわずかに強さが立つボーカルは、彼女の中での想いの大きさが表れていたのか、それともこの日に向けて強くなった彼女自身の表れか。たおやかに情感豊かに世界を作り、一礼とともに曲を締めくくった。

すると今度は、「今はここに」が挿入歌に起用された『コードギアス 反逆のルルーシュII 叛道』のOPテーマを担当するALI PROJECTからの提供曲「翡翠蝶の棲む処」を披露。独特の妖しげなサウンドに包まれながらエメラルドグリーンの世界に立つ相坂は、アリプロ提供曲ならではの難しい譜割りのこの曲を堂々と、歌詞を最大限解釈し噛み砕いたうえで歌唱。2サビ明けの間奏では音にたゆたいつつ、各小節の3拍目に合わせてリズムをグンととるなど曲にどっぷり没入して歌い切っていった。さらに続けたのは、そのアリプロの「聖少女領域」のカバー。かつて衝撃を受け練習しまくったというこの曲を、Bメロ後半の力の込め方等らしさを感じる歌声で歌唱。サビ終盤高音へと駆け上がっていく部分の歌い上げも、本家よりも少し力強い。また、真紅に染まった照明効果からは楽曲と主題歌となっている『ローゼンメイデン』へのリスペクトが感じられ、客席でも真紅の世界を形作ってくれた観客へも、曲明けに礼を述べていた。

MCも一段落したところで、「ここからは立て続けに……」との言葉から4曲を披露。まず「Anti Geometry」のイントロが流れた瞬間、客席からは不意の高まりを感じさせる声が上がる。青の世界に白のレーザーが差し込み、トランシーなナンバーに似合うサイバーな世界観が視覚的にも提示される。相坂自身はというと、曲の頭から気持ちを入れると右肩上がりに楽曲に没入。ステージを動きながら楽曲に、ときに切なくときに儚い想いを乗せていく。そしてピアノの音色がそのまま「Impulse」へと世界を繋ぐと、“カップリング三部作”を立て続けに披露。Bメロで沸き起こったジャンプとコールが、会場のボルテージの上がりぶりを物語っていた。相坂はその目がギラついて見えるほど曲に入り込みつつ、押し一辺倒ではなくさらに広い振り幅で楽曲への想いを表現していく。そして「Dependence」のイントロではこの日初めて声を出して観客を煽ると、サビのラストで精一杯力を振り絞ったりとその観客に全力で想いをぶつけ、「Look back」へ。サウンド重めなこの曲に合わせつつも、冷感と研ぎ澄まされた鋭さのある氷の矢のようなボーカルでこの曲を歌いきり、一旦ステージを降りていった。

バンドのインストタイムを経て、「Insomnia」のイントロ流れるなか相坂が再登場。歌声にちょっとだけガーリーさを強めに出しつつ、歌詞に合わせて客席を指差す様子にはまさしくこの曲のヒロインのような小悪魔さが。加えて落ちサビでは客席上のミラーボールに黄色いライトが辺り、眠れぬ夜の月のように見せる演出が実に効果的だった。
この「Insomnia」を手掛けた山本メーコ・宅見将典のタッグについてのトークから、話題はそのタッグがキャラソンを手掛け、自身もミュース役として出演しEDテーマやキャラソンを歌唱した『甘城ブリリアントパーク』へ。Key.鴇沢 直によるアドリブでの「エクストラ・マジック・アワー」(※鴇沢が作編曲を担当)のさわりの演奏に会場が高まると、そのままEDテーマ「エレメンタリオで会いましょう!」から『甘ブリ』ゾーンに突入だ。この曲は振付も軽く交えつつ、少々甘めなボーカルでの披露。サビや後奏での照明効果が、フロアは青、ステージ上のLEDが緑・黄・赤になっていた点にも、愛を感じる。また、もう1曲のユニット曲「+ユニバース」では、観客からのコールが返るなか、爽快なロックチューンに乗せて気持ちよさそうに歌っていった。
そしていよいよ迎えた、ミュースのソロ曲「シャイン」。自らの歩みでミュースをこのステージに連れてきて、ともすれば本当のはじまりにあたるかもしれないこの曲を歌える喜びは、いかほどだろうか。やはりこの曲もちょっとだけ歌声は甘めで、1サビ明けの煽りも若干柔らかくかわいめなのもミュースらしい。その一方で、Dメロは自身を取り巻く人々への感謝とリンクしたのか、そこにだけ今の相坂の想いが少しだけ乗り、“ふたり”での歌唱になっていたように思う。
歌い終わってどこかホッとしたような笑顔をのぞかせた相坂は、そのまま「Prime Point」を歌唱。今度は初のTVアニメ出演作でのキャラソン「おはモニ*ハロりん♪」を手掛けた俊龍提供の、いわば声優としてのはじまりに繋がるナンバーだ。桜色に照らされたステージと青く染まるフロアとが良好なコントラストとなり初春の情景を作り出すなかでの相坂の歌声は爽やかで、まさに春風そのものだった。ちなみに曲明けには、トークの流れから、観客からの嘆願の歓声を受けて「おはモニ*ハロりん♪」もほんの1フレーズだけ口ずさみ、この曲を歌ったキャラ・野田コトネもしっかり晴れの舞台へと上げていた。

そしてラストナンバーを前に、この空間を味わうかのようにじっくりとMCを続ける相坂。その中で「歌でしか言えないこともあるし、そういった想いを全部受け取ってほしくて歌っています」と語ると、ラストナンバーとしてその「なんで、いつも言えないのかなぁ?」という気持ちをクリープハイプの尾崎世界観が綴ってくれた「ひかり、ひかり」を歌い始める。白のペンライトの光を前に、ときに荒めの感情を吐き出すように歌う相坂。これまで美しく歌い上げることの多かった彼女にとってのターニングポイントとなったこの曲は、リスペクトしてきた相手からの最高のプレゼントとなっていたことを、再確認させてくれる生披露となった。その大切な曲に今の気持ちを精一杯乗せていたからだろうか。筆者の気のせいかもしれないが、2コーラス目の序盤、相坂がちょっとだけこみ上げるものをこらえていたように見えた。そしてこの曲をラストに置くことで生まれた「終わりだけれども続いていく」感のなか、ジャンプエンドで本編を締めくくった。

会場がアンコールに包まれるなか、バンドメンバーが戻ると、突然相坂のナレーションが流れる。それは大森靖子の「絶対絶望絶好調」の冒頭のセリフ。直後のMCで「『瞬間最大me』でも表現したかった、かわいいだけじゃない女の子の図を凝縮した曲」と説明したこの楽曲を、サビではスピーカーに足をかけたりと奔放にカバーする。観客を乗らせながら相坂自身が超絶この曲を楽しんでいるという光景も、また素敵なものではないだろうか。
そして再び相坂はギターを提げてスタンドマイクを前に、今度はクリープハイプに魅せられるきっかけとなった曲「大丈夫」を弾き語りでカバー。少し肩の力を抜いたボーカルで、カバーながらもまた新しい可能性を提示してみせる。彼女がこの曲でもらったエネルギーを、今度は彼女がファンへと寄り添う力にしていたこの瞬間。直前に語った「皆さんに、クリープハイプからいただいたものをパワーとして伝えていく」との言葉を、早くも有言実行してみせた。

歌い終わってのMCでも、「“大丈夫”って言葉は本当に偉大だなと思います」と切り出した相坂。そこから、彼女からあふれ出てくる言葉は、もう止まらない。「大丈夫」に出会ったときの想いや、悲しい・つらい気持ちを抱えることは普通のことなのに、正直に言うと悪く言われることへの不可解さ……そして「言葉は強い力を持ってるから、何気ないひと言でも傷つくし」と素直に吐露する相坂。だがそれに続けて「『大丈夫って言ってくれる人がいるんだ』って思えるだけで、『いっか』と思っています」と率直に語り、「『大丈夫だよ』って言ってくれる人が、ここにひとり、います!みんなにも!」と宣言。想いあふれた相坂は、オフマイクで「大丈夫だよー!」とシャウト。機械を通してではない肉声で、ファンへと寄り添う。そして「人に優しくいてください。私の歌を聴いてくださる皆さんは。普段、あんまり言わないですけど、本当に皆さんを愛しています」と胸にしまっていた想いを全部ぶちまけたところで、最後に再度「透明な夜空」で場内に気持ちのいい青空を広げる。
あのMCのあとでこの1-Aメロは、「ねぇ 君がただ居るだけで わたしはうれしいの知ってた?」の言葉は反則だし、偶然にも“大丈夫”の言葉から始まるサビの歌詞もよりファンへのメッセージのように響く。そう、この曲の持つ意味合いは、2時間前とはまったく違うものになっていたのだ。そんなこの曲で相坂は、アンコールならではの充実感のある笑顔で会場中にぱあっとその歌声を広げ、最後に大きく身体をいっぱいに広げてジャンプエンド!その快心のジャンプは、今の想いもやれることも、すべてを出し切ったことを感じさせるものだった。最後に「またきっと、会えますよね?そのときまで、明日からもなんとか生きていきましょう!」とエールを送り、会場中にくまなく手を振って相坂はステージを降りたのだった。

カッコよさもかわいいさも、最後には自らの感情の高ぶりも、歌に乗せて届けてくれた相坂優歌。そんな彼女はきっと、“希望”なのだと思う。アルバムのコンセプト同様、素直が故に生き辛い人にとって、心が真っ暗になったときの差し込む光になりうる存在だと、このライブの中でのパフォーマンスと言葉で感じさせられたのだ。特に近作で、ある種いびつな姿を見せたことで、はっきりとその像が確立された“アーティスト・相坂優歌”。彼女はこれからも、私たちと本当の意味で一緒に歩んでくれることだろう。この日、“大丈夫”と言葉をかけてくれたように。

Text By 須永兼次

“相坂優歌ファーストライブ 「屋上の真ん中 で君の心は青く香るまま」”
2018.04.05@Zepp DiverCity(Tokyo)
【SET LIST】
M1.セルリアンスカッシュ
M2.透明な夜空
M3.瞬間最大me
M4.ハンドメイドホーム
M5.今はここに
M6.翡翠蝶の棲む処
M7.聖少女領域
M8.Anti Geometry
M9.Impulse
M10.Dependence
M11.Look back
<Band Inst>
M12.Insomnia
M13.エレメンタリオで会いましょう!
M14.+ユニバース
M15.シャイン
M16.Prime Point
M17.ひかり、ひかり

EN1.絶対絶望絶好調
EN2.大丈夫
EN3.透明な夜空

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