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2014.08.13

ALI PROJECT『COLLECTION SIMPLE PLUS<通常盤>』レビュー

ALI PROJECT『COLLECTION SIMPLE PLUS<通常盤>』レビュー

1996年から2006年にビクターエンタテイメントよりリリースした楽曲を収録したベストアルバム。TVアニメ『ノワール』OPテーマ「コッペリアの柩(Noir Ver.)」、TVアニメ『AVENGER』OPテーマ「月蝕グランギニョル」など全13曲収録。

独特の徹底した美学にて唯一無二の世界を構築するALI PROJECT。片倉三起也が創り上げるアヴァンでプログレ、クラシカルでポップなサウンドと、宵闇のベールをまとい歌い上る宝野アリカの麗しい言葉の連なりが、聴く者を幻惑の祭壇へ、虚無の彼方へと誘なう。ALI PROJECTが1996年から2006年にビクターエンタテイメントよりリリースした楽曲を収録したベストアルバム『COLLECTION SIMPLE PLUS』。彼らの音楽的特徴が大きく変化した時期を追っており、その違いを聴き比べるのも興味深い。

「コッペリアの柩(Noir Ver.)」

2001年のTVアニメ『ノワール』のOPテーマ。ALI PROJECTのサウンドが「黒アリ」へと向かい、マニアックな存在であった彼らの名を広く知らしめたナンバーだ。文学的な語調とデジタルサウンド、そして室内楽が融合した彼らの音楽は、ゼロ年代のゴシック新潮流を切り開いていくこととなる。このシングルのカップリングとなった「apre le noir」もこのベストに収録されている。

ハイレゾでは音が粒立って聴こえ、シンセベースやリズムボックスなどの膨らんだ質感にも、それは顕著に感じられる。奥行きが深い空間に音が配置されているためより立体的なサウンドとして伝わり、闇を切り裂くナイフかマズルフラッシュのようなSEの配置も効果的に、左右からさまざまな音が飛び出してくる音作りが聴き手を翻弄する。うねるように印象的な旋律を華麗に奏でるヴァイオリンの音色も鮮やか。

そして、ヴォーカルの存在感がいっそう際立つ。サビ前の「我ら造りたまいし神」は宝野アリカの声が二重写しになり、主人公ふたりの乙女の運命が重なる暗示めいた表現であることがよくわかる。繊細なニュアンスが声の抑揚と輪郭の描写により的確に表わされている。

「月蝕グランギニョル」

『ノワール』と同じく真下耕一が監督したTVアニメ『AVENGER』のOPテーマ。この『AVENGER』では、ALI PROJECTはEDテーマ「未來のイヴ」、最終回のED曲「地獄の季節」(共にこのベスト盤に収録)、また音楽も手がけている(ALI PROJECTが関わる作品は、『AVENGER』にしろ『ノアール』や『コードギアス反逆のルルーシュ』にしろ復讐劇が多い)。曲名の「グランギニョル」とは、20世紀初頭にフランスで人気を博した異端の大衆演劇「グラン・ギニョール」から取られており、なるほど、『夜想』などを読みながら聴くのもいいかもしれない。

イントロからすぐさまサビメロディが奏でられ、たたみかけるように歌唱からスタートするALI PROJECTらしい曲構成。ハイレゾでは、めくるめく展開の連続で驚かされるサウンドが耳に迫りくるようで実にスリリングだ。低域のキレも良く重厚な音が駿馬の如く駆け抜ける、ALI PROJECT流のダイナミズム。躍動するリズムに歌声は妖しく踊り、時には鋭くまた高らかに、サビの途中からヴォーカルの重心が低くなっていくさまも聴き取れる。

「亡國覚醒カタルシス[orchestral crowd ver.]」

原曲は真下耕一監督のTVアニメ『.hack//Roots』のEDテーマ。CDではDVD付きの初回限定盤よりも1曲多く、通常盤のみに収録されたこの楽曲は、その名の通りフルオーケストラによる演奏によるヴァージョンでこのベスト盤の目玉とも言える。ALI PROJECTの楽曲が壮大なシンフォニーとして奏でられるこの迫力。ハイレゾでは弦楽奏や管楽器に打楽器、男性コーラスの厚みが溢れ返らんばかりに折り重なる。そのオーケストラを従えた宝野アリカの歌声は朗々とホールに響き渡り、歌劇の歌姫のように堂々とした風格。荘厳な雰囲気も相まって「白」や「黒」を超えた「黄金」を連想させる仕上がりとなっている。

 

キラキラとした明るいポップサウンドの上でキュートな歌声が舞う、TVアニメ『CLAMP学園探偵団』のOPテーマ「ピアニィ・ピンク」やドラマ『Wish』の表題曲「Wish」、メロウなアレンジが素晴らしい「Anniversary of Angel」などダークゴシックなイメージも強いALI PROJECTだが、今作の前半に収められている所謂「白アリ」の楽曲もまた魅力的だ。また「夢のあとに APRES UN REVE」「月夜のピエレット」「天使に寄す」での室内楽のタッチは、のちに片倉三起也が手がけた『マリア様がみてる』の音楽にも継承されている。

ALI PROJECTという音の匣の快楽に身を委ね、その絶対君主たるアリカ様の歌声に耳を跪くのがファンとしての心得。ではあるが、作品数も多い中で聴かずじまいになっていた人こそおすすめしたい好選曲なベストアルバム。流麗な旋律にバロック的な装飾美を加えたALI PROJECTの変化を辿るにはもってこいの作品だ。

VICL-61999ALI PROJECT
COLLECTION SIMPLE PLUS<通常盤>

FlyingDog
2014.08.13

FLAC・WAV 96kHz/24bit

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e-onkyo music
groovers
mora

収録曲

   作詞:宝野アリカ 作曲・編曲:片倉三起也

 1.Wish

 2.夢のあとに APRES UN REVE

 3.ピアニィ・ピンク

 4.月夜のピエレット

 5.Anniversary of Angel

 6.天使に寄す

 7.コッペリアの柩(Noir Ver.)

 8.apre le noir

 9.赤と黒[original ver.]

10.月蝕グランギニョル

11.未來のイヴ

12.地獄の季節

13.亡國覚醒カタルシス[orchestral crowd ver.]

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