ほのぼのとした日常シーンから勇ましい戦闘シーンまで52曲、ヴァラティたっぷりに詰め込んだTVアニメ『艦これ』のサウンドトラック。

大人気の艦隊育成シミュレーションゲーム『艦隊これくしょん -艦これ-』のTVアニメ版は、2015年1月より放送が開始され、OPテーマとなったAKINO from bless4「海色（みいろ）」、EDテーマの西沢幸奏「吹雪」のシングルはともに大ヒットとなった。

音楽はゲーム・アニメ音楽の作曲家、亀岡夏海が担当。亀岡夏海は、『テイルズオブレジェンディア』や『戦場のヴァルキュリア』などゲーム音楽のオーケストレーションを手がけており、また光田康典と共に『イナズマイレブン』シリーズの音楽も担当している。

TVアニメで使用された劇伴を収録した今作が『「艦隊これくしょん -艦これ-」オリジナルサウンドトラック　“艦響”』。CDでは2枚組の及ぶ全52曲のヴォリュームたっぷりの内容だ。アルバムの構成としてはふたつに分かれており、M-1「海」からM-20「決意」までは、鎮守府での艦娘たちの穏やかな日常を描き、M-21「実戦」からラストまでは、彼女たちの戦闘シーンをイメージさせるものが中心となっている。

澄み渡るサウンドが展開される「海」で幕を開け、清々しい「夜明け」「朝の艦隊」へと続き、ちょっとにぎやかなでほのぼのとした日々を綴る。
朗らかな「着任」「先輩」「水雷魂」「訓練」
和める「ルームメイト」「大切な友達」「入渠ドック」
コミカルな「夜戦って好き？」「艦隊のセンター」「っぽい？」
など、生楽器のアンサンブルが流麗に奏でられている。リズミカルで軽やかなサウンドが心地好く、非常にのんびりとリラックスした気持ちにさせてくれる。

そして曲は「第一航空戦隊」「実戦」と旋律は高らかに奏でられ、
勇ましく「出撃準備」「出撃」へと展開。
躍動的な「反攻作戦開始！」「突入」
不協和音から始まり、コーラスが不穏さを伝える「深海棲艦」
高速に展開する個性的なアレンジが光る「攻撃隊発進！」
ストリングスとブラスがせめぎ合う「砲撃戦」
仰々しいパイプオルガンがイメージを増幅する「敵戦力艦隊」
低音部のアクセントのつけ方が印象的な「戦線崩壊」
仲間との別れを悼む「悲しみの海」「喪失」「鎮魂」から、物語は反撃へと転じ、「両舷全速」から「連合艦隊の出撃」を経てクライマックスを迎え、「勝利」を掲げ「鎮守府」に帰港する。

ハイレゾでは果てなく続く水平線の彼方まで響き渡るような壮大なスケールが感じられる。CDと比べるとフルートやオーボエなど木管楽器の音色は柔らさを帯び、ホルンやトランペットなど金管楽器の高らかな響きは華やかに、また弦楽奏は重厚さと深みをいっそう増している。雄大な楽曲における丁寧な音作りや繊細なタッチが感じ取られ、サウンドがもたらす世界観が鮮やかに伝わってくる。特に中盤からの戦闘シーンにおけるダイナミックな表現にはひたすらに圧倒される。オーケストラとしての迫力はもちろんのこと、ただただ押していくものではなく様々な手法やアレンジが繰り広げられており、亀岡夏海が得意とするオーケストレーションが遺憾なく発揮された楽曲に仕上がっている。

大体1分30秒から2分ほどの長さだが、どの曲も起承転結といった展開が盛り込まれたひとつの曲として完成している。それもあるパターンの変容といったものではなく、ヴァラティに富んだ楽曲ばかりで飽きることがない。これらの曲をシャッフル機能などで再生するのもまた面白いだろう。

楽曲の豊かさやクオリティの高さで評判を呼んでいるこアルバム。『ガールズ＆パンツァー』や『エヴァンゲリオン』のサウンドトラックが好きなリスナー、また普段はサウンドトラックに馴染みがない人にも非常に親しみやすい内容となっている。