山田高弘がプロデューサーとして参加。ポップなサウンドに楠田亜衣奈の甘い歌声がはずむ全10曲のフルアルバム。

『ラブライブ！』の東條希役でもおなじみ、声優の楠田亜衣奈。μ’sのメンバーとしても活躍する中、2015年10月にミニアルバム『First Sweet Wave』にてソロシンガーとしてデビュー。翌年の5月にリリースされたのが10曲入りのフルアルバム『Next Brilliant Wave』。前作と同じく『ラブライブ！』に楽曲参加している山田高弘がプロデュースを務め、ArmySlick、市川淳、齋藤真也、鈴木Daichi秀行、田代智一、GARNiDELiAのtokuらが参加。また作詞を全曲、こだまさおりが手がけている。ミニアルバム発表後のイベントやライヴでのファンとの交流を通じて得た経験が反映されているという今作は、『First Sweet Wave』以上に “くっすん” らしさがあふれるサウンドに仕上がっている。

「POWER FOR LIFE」

μ’s「僕らのLIVE 君とのLIFE」「Snow halation」など『ラブライブ！』の楽曲を手がける山田高弘の作曲・編曲によるアルバムのリードトラック。キラキラとポップに弾けるサウンドをバンド・アレンジでまとめあげた山田高弘らしい、ロックな展開も光るナンバーだ。
シンセのリズムが前に飛び出してくる解像感や、100sの山口寛雄によるベースのグルーヴが持ち上がってくる分離感などから、楽曲のスピードやメリハリが増した印象を受けるハイレゾ版。山田高弘のギターも軽快なキレの良さで、キャッチーなメロディをはずませる。ダイナミックさを高めつつも、曲の持ち味であるポップ感とヴォーカルを引き立てる程よいバランスにまとまっているのは、『ラブライブ！』のハイレゾ版とも共通するところ。

ヴォーカルの輪郭はややふっくらと描写され、ちょっと鼻にかかったような楠田亜衣奈らしい甘い声の特徴をよく捉えている。ファンと共に成長しながら進む毎日を表わす“あたたかい輝きと歩こう”の歌声が活き活きとして明るい。

「群青シネマ」

センチメンタルな情景を綴る歌詞に、こだまさおりのセンスが際立つ一曲。作曲と編曲は柴咲コウの楽曲を数多く手がけている作曲家、市川淳。『未確認で進行形』『レンタルマギカ』などの劇伴や宮野真守、牧野由依らに楽曲提供を行なっている。また喜多村英梨のシングル「紋（しるし）」にて、彼女の “和ロック” 路線に火をつけたことも印象深い。『First Sweet Wave』のラストナンバー「夢のつぼみ」では舞うようなピアノの音色が心に残る、名アレンジを披露。今作でも、いつもとはちょっと違う楠田亜衣奈の姿をサウンドで描き出している。
こちらも打ち込みのビートが立体的にぐっと前に出てきて、やや重ためにでも弾力性に富んでいる。シンセの音色も鮮やかながら、ポップさを強調した他の曲とは異なったテイストのメロウなサウンドが心地好い。切ない思い出だけど、懐かしく“優しい記憶” を映す歌声はあたたかい。甘みを残しつつもすっきりとした、等身大の楠田亜衣奈が表われているような声が、柔らかく耳に響く。

前作のタイトル曲のアレンジを務めた鈴木Daichi秀行によるキラキラ感満載な「Infinite Memories」、楠田亜衣奈のフェイヴァリットであるE-girlsの楽曲を多く手がけるArmySlickのトランシーなポップチューン「恋愛対象Countdown」、楠田亜衣奈のツアーにも参加している高橋諒の演奏によるメタルナンバー「Nameless mind」など、作曲：山田高弘＋アレンジャーのコンビネーションが今回も面白く、サウンドはヴァラエティさを増している。楠田亜衣奈の歌声も地声を生かしたものから、キャラクターっぽいものまで表情も豊か。彼女の音楽性がさらに広がった作品となっている。