戸松遥初のベストアルバムが2タイトル同時リリース。しっとりと歌い上げるナンバーを中心とした星降る夜の『-starlight-』。

2008年9月3日、シングル「naissance」でソロ・アーティストとしてデビューを飾った声優の戸松遥。ガールズユニット・スフィアの活動と並行しながら、これまでにシングルを16枚、アルバムを3枚発表してきた彼女。60曲近くある楽曲からファン投票で選ばれた曲によって構成された2枚のベストアルバム『戸松遥 BEST SELECTION -sunshine-』と『戸松遥 BEST SELECTION -starlight-』。明るいアップテンポな曲を集めた『-sunshine-』と、しっとりと歌い上げるナンバーを中心とした『-starlight-』。それぞれの投票結果をカウントダウン形式のように逆に並べ、さらに新曲を加えた構成となっており、『太陽』と『星』、ふたつの戸松遥の歌が楽しめるベストアルバムとなっている。

「ユメセカイ」

2012年7月25日リリース。TVアニメ『ソードアート・オンライン』《アインクラッド》編のEDテーマとなった9thシングル。作曲は、onetrapの南田健吾。YUKIやJUJU、関ジャニ∞らに楽曲提供を行なっており、また『アイカツ！』作品への参加も多い。編曲は、「ユメセカイ」とはガラリと色を変えたこのシングルのポップなカップリング曲「Issai Gassai」を手がけた古川貴浩。「ヒカリギフト」や「courage」「Q&A リサイタル！」を始め、今回の2種類のベストアルバムにも彼が携わった楽曲が多く収録されている。

シングルのタイトル曲としては初となるバラード・ナンバー。その歌詞は、『ソードアート・オンライン』で戸松遥が演じるヒロイン・アスカの胸の内を伝える。またそれは、戸松遥のアーティストとしての意識の変化、音楽に対する深い決意といったものも感じられる。

『ソードアート・オンライン』の世界観とも通ずる楽曲の雄大さを感じさせるハイレゾ。奥行きを広げた空間にゆったりと流れていくサウンドが、ヴォーカルを包みこむように配置されている。音像はくっきりと、引き締まったリズム隊にはしなやかな力強さを感じられる。ピアノやキーボード、ストリングスの響きには、華やかさよりも優しさが満ちる。空気は温かみを帯びており、声が定位良く柔らかにサウンドに浮かび、落ち着いた雰囲気が口元にも漂う。ヴォーカルはすっきりと高域を捉え、“果てない世界” を映す澄んだ眼差しをイメージさせる美しさ。自身の声が重なるサビ部分では、凛々しさがすっと前に出てくる。その揺るぎない歌声には、想い、その希望を、誓いに変えるような心の強さが静かに溢れている。

シンプルなサウンドに清涼感のある声が響く「Tomorrow」、mountsugerのモリヒデオミによる童話的メルヘンチックな世界が広がる「マリラレルラ」、爽やかなギターポップがはじける「Circle」、戸松遥が作曲を手がけたフォーキーなポップス「七色みちしるべ」、ナチュラルなポップスで彩ったデビュー曲「naissance」、モータウン調のリズムに松田聖子風な80年代アイドル歌謡のエッセンスを含ませた「Baby Baby Love」など、バラードのみでなく彼女らしいヴァラエティに富んだ選曲。
“明るい！” “The 夏！”といったイメージも強い戸松遥だが、Kalafinaのwakanaがコーラスで参加している、祝詞のような荘厳な美が横たわる「産巣日の時」の透明感あふれる歌声や、“胸に穴が空いた” 気持ちを曲名になぞらえたセンチメンタルなナンバー「ドーナツ」での寂しげな歌のニュアンス、心温まるウインターソング「ヒカリギフト」の繊細でたおやかな表現など、聴けば聴くほど、元気なサウンドでは影を潜めている彼女の “静” の部分がゆっくりと浮かび上がってくる。柔らかく自然体に流れる心地好い新曲「bookmark」の大人の清楚な雰囲気も麗しく、『戸松遥 BEST SELECTION -sunshine-』と併せて聴くことで、その魅力がいっそう深まる。