リスアニ!WEB – アニメ・アニメ音楽のポータルサイト

REVIEW&COLUMN

2018.01.24

渕上 舞『Fly High Myway!』レビュー

渕上 舞『Fly High Myway!』レビュー

渕上 舞がアーティストとして待望のソロデビュー! 先行でハイレゾ配信された表題曲を含む全12曲のデビューアルバムが完成。大好きな「鳥」をテーマに盛り込んだ今作では、自身も6曲の作詞を担当。

『ガールズ&パンツァー』シリーズの主人公・西住みほ役、『暗殺教室』の潮田 渚役、『THE IDOLM@STER CINDERELLA GIRLS』北条加蓮役など、多くの人気アニメに出演している声優・渕上  舞。声優活動10周年を迎える今年、アーティストとしてソロデビューを果たした。1月24日にリリースされたデビューアルバム『Fly High Myway!』は全12曲を収録。そのうち6曲の作詞を渕上自身が手がけており、自らが思い描くイメージを率直な言葉で綴っている。今作では鳥をモチーフにして楽曲を制作しており、無類の鳥好きとして知られる彼女らしいアルバムとなった。

●今作についての話を詳しく聞いた渕上 舞のインタビューはこちら

1曲目の「おはようの合図」から12曲目の「おやすみのワルツ」まで、一日の流れを追うように曲が並ぶ。朝の始まりを告げる「おはようの合図」は、ストリングスが優雅に旋律を紡ぐ小曲。そして、途切れることなく組曲のような構成で2曲目に繋がる。「Fly High Myway!」は、澤野弘之とともに劇伴を手がけ、また佐咲紗花などに楽曲を提供している気鋭のクリエイター・KOHTA YAMAMOTOの作曲によるリード曲。颯爽としたストリングスに導かれる、イントロのコーラスやリズムも小気味よく、アップテンポのサウンドに乗ってボーカルが清々しく響き渡る。渕上 舞が手がけた歌詞には、ソロデビューの心境とその決意も示しており、翼を広げ空高く舞い上がるイメージへその想いを託している。活き活きとした歌声がもたらす開放感が心地よく、あらたなスタートを踏み出した彼女にふさわしい一曲となった。

3曲目の「A Crow」は、fhánaのギタリスト・yuxuki wagaによる提供曲で、重々しい雰囲気が漂う激しいロックが展開。陰りを帯びたギターの音色が荒々しくかき鳴らされ、ボーカルは鋭く、苛立ちとやりきれなさが交錯する想いの行方をあぶりだす。これまであまり見せてこなかった「ささくれた感情」を表現しているのが新鮮。「Fly High Myway!」から一転、対照的な楽曲を持ってくる曲順が大胆だ。

浮遊感のあるEDMサウンドが広がる「Migratory」では、“不安 塗りつぶして”歩き出そうとするとする「A Crow」を引き継ぐように、その先を目指しながら進み続ける強い意志を「渡り鳥」に重ねて描いている。特に中盤の歌詞はソロ・アーティストとして歩み始めた渕上にも当てはまるもので、作詞を手がけた結城アイラの優しい眼差しを感じる。

ガラリと雰囲気を変えて、CMJKがサウンドを手がける5曲目「トロピカルガール」は、賑やかなサンバのリズムが鳴り響く。南米の熱帯雨林に生息するオニオオハシをモチーフして曲が作られており、色鮮やかな大きなくちばしをもち、パパイヤなどの果実を好むこの鳥のイメージが、陽気な歌詞と華やかなサウンドに落とし込まれている。退屈な日常生活から飛び出して、“羽を伸ばして調子に乗っちゃって”と明るい歌声がもう弾けまくり。コーラスも合唱必至、ライブでひときわ盛り上がること間違いなしのナンバー。

お祭りさわぎの「トロピカルガール」の熱をちょっと冷ますかのように続いて流れるのが「君と雨に歌うソネット」。作曲・編曲は「Migratory」と同じく中土智博が担当。イントロで聴こえる雨音のSEはもちろんのこと、メロディーやリズムにも雨のイメージを盛り込んでおり、こういった細やかなアレンジも聴きどころ。「Beautiful Sunday」は、どことなく懐かしさが漂うポップス・ナンバー。気分がやわらぐメロディー・ラインはたしかに休日っぽい感じ。清涼感のあるコーラスと柔らかなボーカルからもリラックスした様子が伝わってくる。「Cute♡Appeal」は、ファニーなサウンドに乗せて、渕上 舞を等身大の姿で捉えた一曲。マイペースで自然体、“「明日から頑張る」”なんて本人の口癖も交えた歌詞もおおらかで、伸び伸びとした歌声が微笑ましい。これら6曲目から8曲目までのんびりとした雰囲気となっており、また楽曲の世界観がどんどんパーソナルな方向に向かっているのが面白い。

9曲目の「ラララ~君へ贈る歌~」は、別れをテーマにしたバラード・ナンバー。そっとしめやかに奏でるピアノの旋律が切なく情景を照らし出す。この曲も作詞を渕上が手がけ、亡き愛鳥・チェルシーへ捧げるように想いを綴っている。素直な気持ちがそのままに表れた歌詞には、悲しみに浸ったままではなく、大切な思い出と一緒に前へと進む姿が描かれており、澄んだ歌声が優しく心に響く。

「フラミンゴディスコ」は、元ふぇのたすのヤマモトショウによるパーティー・チューン。シモンズっぽい電子ドラムをふんだんに使用した、ちょっと懐かしいディスコ・サウンドに仕上がっていて、もしミュージックビデオを作ったならば、リズムに合わせて、みんな同じ振り付けで踊っている映像とかになりそう(お店の看板にはフラミンゴのイラストのネオンが)。最後の“踊らせて”の語尾の抑揚がたまらなくキュート!

クラブ系のサウンドがさらに続く。11曲目の「アイTACTICS」は、トラックメイカー・柘植敏道が手がけたエレクトロニック・サウンドが爽やかで刺激的。ボーカルは清涼感がありつつ、やや甘えたニュアンスを含んだ「フラミンゴディスコ」に比べて艶っぽさが増しており、“ちょっと思わせぶりな台詞で 惑わせたいの”なんて言葉をさらっとリズムに乗せる、余裕の表情も披露。アヴァンチュールな恋を楽しむ、大人の雰囲気が漂う。

アルバムのラストを飾る「おやすみのワルツ」は、「おはようの合図」と同じく川本 新の作曲・編曲による楽曲。一日を締めくくる夜の空気を描くように、ストリングスは優美に奏でられ、聴く者を森の奥へと静かに招く。フクロウの鳴き声とベールのかかったピアノの音色から始まるイントロが幻想的で、穏やかな表情をみせるボーカルからはそのまま夢の世界へと誘なうような安らぎが感じられる。

ハイレゾでは、リード曲「Fly High Myway!」はストリングスのキレも良く、飛翔するイメージを生み出すサウンドに力が漲る。「Migratory」では弾力感のあるビートがボーカルを押し上げるかのよう。「トロピカルガール」は飛び出すような音の勢いが感じられ、曲のノリもいっそう高まる。「アイTACTICS」は分離感が強く、細やかに刻まれる高速スネアの粒だった音が心地よい。メリハリのあるこれらのサウンドに対して、ポップス系のナンバー「Beautiful Sunday」「Cute♡Appeal」は低域がふくよかで、温かみのある音色がまろやかになじんでいる。また「おやすみのワルツ」は音場が広く、弦楽器の音色に深みが感じられる。

ボーカルはくっきりとした輪郭で、「A Crow」でも音の激しさに埋もれることなく、強い存在感を示す。突き抜ける爽快感をもたらす「Fly High Myway!」、晴れ晴れとした「トロピカルガール」など、歌声は鮮やかな表情をみせ、「ラララ~君へ贈る歌~」ではしなやかな声の伸びが美しい。解像感も高く、「アイTACTICS」の英詞パートや“耳元で歌う吐息”といったセクシーなニュアンスをイヤホン、ヘッドホンならば、もっとすぐそばで感じることができる。

アーティストとしての自己紹介から自身のパーソナルな一面まで、様々なスタイルの楽曲によって、渕上 舞のあらたな魅力を引き出した今作。「朝から夜まで一日を描く」というテーマに沿って、アルバム全体の流れも楽しみたい。

渕上 舞
Fly High Myway!

Lantis
2018.01.24

FLAC・WAV 96kHz/24bit、WAV 96kHz/32bit
ハイレゾの購入はこちら

e-onkyo music
groovers
mora

 収録曲

 1.おはようの合図
   作詞:渕上 舞 作曲・編曲:川本 新

 2.Fly High Myway!
   作詞:渕上 舞 作曲・編曲:KOHTA YAMAMOTO

 3.A Crow
   作詞:渕上 舞 作曲・編曲:yuxuki waga(fhána)

 4.Migratory
   作詞:結城アイラ 作曲・編曲:中土智博

 5.トロピカルガール
   作詞・作曲・編曲:CMJK

 6.君と雨に歌うソネット
   作詞:結城アイラ 作曲・編曲:中土智博

 7.Beautiful Sunday
   作詞・作曲:shilo 編曲:清水哲平

 8.Cute♡Appeal
   作詞:渕上 舞 作曲:藤本記子 編曲:福富雅之

 9.ラララ~君へ贈る歌~
   作詞:渕上 舞 作曲:shilo 編曲:渡部チェル

10.フラミンゴディスコ
   作詞・作曲・編曲:ヤマモトショウ

11.アイTACTICS
   作詞:結城アイラ 作曲・編曲:柘植敏道

12.おやすみのワルツ
   作詞:渕上 舞 作曲・編曲:川本 新

SHARE

RANKING
ランキング

もっと見る

PAGE TOP