TVアニメ『メルヘン・メドヘン』のED主題歌となる1stシングル。気鋭のクリエイター・rionosが手がけたチルアウトな表題曲と朗らかなイメージソングに加え、幻想的な世界が広がるカップリング曲の全3曲収録。

2016年のデビューミニアルバム『RefRain』から1年ぶりのリリースとなる、上田麗奈のシングル「sleepland」。表題曲は自身もアーサー・ペンドラゴン役で出演しているTVアニメ『メルヘン・メドヘン』のED主題歌だ。この曲の作詞・作曲・編曲を手がけているのは、シンガーソング・ライター／作曲家であるrionos。『RefRain』では音響を交えた室内楽的アンビエント「海の駅」を提供、またリリース前に公開された3種の告知動画のBGMも担当しており、上田麗奈のアーティスト・イメージに大きな影響を与えている。

「sleepland」

読みかけのページからまどろみの国へと誘なう魅惑的な展開が広がる、電子音と生楽器と歌声の華麗なるマリアージュ。アンビエント的なエレクトロニカとストリングスやウッドベースなどの生楽器を織り交ぜた優雅なサウンドには、柔らかな灯火の光が眼下に満ちるような静謐な雰囲気がある。「海の駅」など『RefRain』収録曲よりも開放的なのは、アニメのイメージが反映されているのはもちろんのこと、rionosの作風が自身の楽曲「ハシタイロ」以降、少しずつ変化してきていることも関係しているのだろう。音が描く世界がこれまでよりもずっと外に向いて開いている。

上田麗奈のボーカルは以前にも増して表現が繊細で、夢の世界を緩やかに泳いでいく、ファンタスティックなイメージをサウンドともに織りなす。作品に寄り添いつつ、アーティストとしてのカラーを薄めずにどちらも両立させるその存在感は、早くも音楽活動の第2章といった新鮮な印象をもたらす。上田麗奈とrionos、両者の進化が感じられる一曲である。

ハイレゾは楽曲のイメージに呼応した音の響きがいっそう伝わってくる。音がスピーカーよりも周りの方から、またもっと奥の方から鳴っており、その音場の広さは、なめらかなストリングスの調べに乗りすべるように宙を進む、主人公の目に映る世界の広がりと同化するかのようだ。ふくよかなウッドベース、ドリーミーな雰囲気を演出する竪琴などのアコースティックの音色だけでなく、「海の駅」からの連続性を感じるエフェクトやビートなどの電子音からも、「生っぽい」と形容したくなるようなぬくもりが感じられ、有機的な音の連なりを感じる。こういった空間性や音の特性が、夢を描いたこの曲にぴったりで、そこから生まれるイメージをさらに深いものにしてくれる。ボーカルは透明感のあるその質感を曇りなく映し出し、倍音を多分に含んだ声の特徴を隈なく描写。その心地よさはもはやヒーリング・ミュージックそのものといった感じだ。

「誰もわたしを知らない世界へ」

2017年8月に開催されたコミックマーケット92にて公開された『メルヘン・メドヘン』アニメPVに使用されたイメージソングで、こちらもrionosが作詞・作曲・編曲を担当。夜の雰囲気を映したチルアウトな「sleepland」に対して、こちらは朝のイメージを描いた爽やかなポップス。これから始まる新しい「物語」へと導くように、またその素敵な予感を捉えるように、ピアノとストリングスが清々しくメロディーを奏でる。間奏にわずかに加えられた民族音楽的な弦の響きや笛の音も、その先で待っている「知らない世界」を垣間見せるようだ。フレーズの中に起伏に富んだ表情をみせるボーカルは喜びに溢れ、そのかわいらしさはちょっとキャラソンといった趣さえもある。跳ねと伸びが交差する活き活きとした抑揚を、ハイレゾの解像感が鮮やかに伝えてくれる。

「fairy taleの明けに」

壮大にドラマチックにサウンドを繰り広げる、「おとぎ話」をテーマにしたナンバー。作曲は『RefRain』では「車庫の少女」を手がけているshilo。編曲はCeuiの楽曲などでもおなじみの小高光太郎と、『ラブライブ！サンシャイン!!』のCYaRon！「近未来ハッピーエンド」やpetit milady「クジラの背中」などを手がける藤井亮太が共同で担当。ノンタイアップではあるものの、ファンタジー作品のED主題歌、あるいは挿入歌のようなイメージが強く、こういった幻想的な雰囲気をもつサウンドと上田麗奈の歌声は非常に相性がよい。躍動的なサウンドにたゆたう声はどこか儚く、そして、エモーショナルに情景を描き出す。多層的にコーラスを組み合わせた間奏のパートは特に神秘的で、ハイレゾでの聴きどころ。なお「fairy taleの明けに」は「sleepland」の【アーティスト盤】のみに収録されている。