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2017.12.05

待望の1stワンマンライブ“三月のパンタシア ワンマンライブ~きみとわたしの物語~”レポート

待望の1stワンマンライブ“三月のパンタシア ワンマンライブ~きみとわたしの物語~”レポート

ボーカリストのみあを中心とする音楽ユニット、三月のパンタシアの初単独公演“三月のパンタシア ワンマンライブ~きみとわたしの物語~”が、11月25日に東京・shibuya duo MUSIC EXCHANGEにて開催された。

〈三月〉という終わりと始まりの季節をユニット名に冠し、そこから想起されるような青春の物語を楽曲ごとに紡いできた彼女たち。今回のライブでは、そこにさまざまな演出を盛り込むことによって、三パシ特有の繊細な世界観をより実感あるものとして表現してみせていた。

三月のパンタシアにとって初のワンマンライブということもあり、チケット完売で満員御礼となったこの日の公演。これまでライブイベント“MUSIC THEATER 2017”への出演やニコニコ生放送でのスタジオライブ映像の配信などがあったとはいえ、やはり彼女たちの楽曲を生でたっぷり味わう機会を待ち望んでいたファンが多かったのだろう。会場前にはまだ開演までに時間があるにも関わらずたくさんの人が押し寄せていたし、中も人いきれで熱気がこもるほどの盛況ぶりだ。

やがて、佐々木望(ギター)、河原太朗(ベース)、橋谷田真(ドラムス)、ツタナオヒコ(キーボード)というサポートバンドの面々が登場し、期待の拍手が巻き起こる中、1stアルバム『あのときの歌が聴こえる』の1曲目に配されていた「いつかのきみへ」のSEと共にライブはスタート。この曲はアルバムでも序曲的な役割を果たしているインストの小品だが、ここではみあの〈青〉をテーマとした散文の朗読を重ねることで、この日のライブ全体の物語を示唆するような演出に。

朗読は「私の周りにはこんなにも青があふれてる。終わりと始まりをつなぐ、これはきみとわたしの物語。あのときの歌が聴こえる」と締め括られ、舞台後方からゆっくりと姿を現したみあがまず歌い始めたのは「day break」。2015年8月にYouTubeにて公開された、三月のパンタシアにとっての始まりの楽曲だ。ステージには左右両サイドと後方に透過型のパネルが設置され、そこに同曲のリリックビデオが投影される。バンドの躍動感ある演奏に合わせて伸びやかな声を響かせるみあ。照明の具合でその表情は客席から見えにくいが、音源以上にふくよかで温かみを感じさせる歌声が確かな輪郭を伴って耳に届く。最初は彼女の姿に見入っていた観客も、1番のサビが終わると同時に大きな歓声を上げ、思い思いのスタイルで楽曲の世界感に身を委ねていく。

そこから間髪入れずシングル曲「フェアリーテイル」の印象的なピアノフレーズが奏でられると、客席からは一際大きな声が上がる。「こんばんは、三月のパンタシアです。今日は最後まで楽しんでいってね!」と語ったみあは、その後、ライブ本編ではMCを挿むことなく、みずからの歌声で楽曲世界を表現していくことに専念。どことなく妖精っぽさも感じられるフワフワした衣装で「フェアリーテイル」を優しく歌い上げ、そこから疾走感あふれるサウンドでエモーショナルに駆け抜けた「青に水底」、歌詞の<ペテルギウスの光は>の箇所で赤い星のようにスイッチした照明演出も印象的だった「イタイ」へと続けていく。

ここでみあは一旦退場し、ふたたび「いつかのきみへ」のSEと共に朗読が始まる。〈きみ〉に上手く気持ちを伝えられない〈わたし〉の物語がみあの穏やかな声で感情豊かに紡がれ、「茜色の空の下、ふたつにわかれたきみとわたし」という最後の一節につなげる形で歌われたのは『Re:CREATORS』のEDテーマでもあった「ルビコン」。オレンジ色のライトがまさに茜色の空そのままの光景を現出させ、濃い色のワンピースに着替えたみあは、それぞれの未来に旅立った後も消えることのない絆の歌を紡いでいく。サウンドに埋没することなく一語一語が丁寧に響く彼女の歌声は、歌詞の物語性に重きを置いた三月のパンタシアの歌世界を表現するのに最適なものと言えるだろう。

音源にもある会話劇のようなパートも身振り付きで再現された「七千三百とおもちゃのユメ」、情熱的な身のこなしで刹那的な感情を切り取って見せた「花に夕景」に続いては、幾千もの星が瞬く夜のパートへ。銀河を駆けるような映像が幻想的な景色を生み出した「星の涙」、引き続き星空の映像を用いながら、ピアノとアコギを中心としたアレンジでしっとりと聴かせた「キミといた夏」と進めていく。特に後者ではみあの一際感情のこもった歌声が力強くも切なさを深めており、終盤の高音パートにはまるで夜空に溶けていくような儚さが浮かんでいた。

続く「ないた赤鬼、わらう青空」もエモロック調の原曲とは趣きを変えたアコースティックな演奏で、鍵盤の音色とパーカッションがどこか暖かな彩りを加えていく。みあの生々しい息遣いも含め、ライブならではの魅力が引き出された名アレンジだったように思う。ここでみあは再び退場し、再度の朗読タイムがスタート。七千三百の夢を見ても変わることのない〈きみ〉と〈わたし〉の距離に、お互いに交わることのない並行世界を夢想して悲しむ主人公。それでもいつか、こぼした涙が花を咲かせ、〈きみ〉に届くであろうことを信じる気持ちが表現されていく。

そして黄色いライトが希望の道を指し示すように煌々と照らされ、純白の衣装にチェンジしたみあが姿を現して「ブラックボードイレイザー」を歌い始める。黒板消しをタイトルに冠したことからも想像できる通り、教室を舞台に片思いの切ない恋を描いたこの楽曲。ラスサビではみあの切々としたボーカルが舞い上がるように弧を描き、青春のノスタルジックな景色を浮かび上がらせていた。さらに同曲のアンサーソングとして制作された「シークレットハート」では客席から手拍子が自然と沸き起こり、1番のサビ終わりではみあも嬉しそうな笑みをこぼす。秘めた恋心の歌を情感たっぷりに歌い上げながらも、身をくゆらせながら気持ち良さそうにステージに立つ彼女は、心からライブを楽しんでいる様子。ファンはもちろんのことながら、彼女にとっても念願のワンマンだったことは、その姿を見れば明白だ。

そこから続けて披露されたのは「リマインドカラー ~茜色の記憶~」。モニターには夕焼け空に海鳥が飛ぶ映像が映し出され、みあの感傷的な歌声が会場中を満たしていく。〈あなた〉への思いが堰を切ったかのごとく溢れ出し、どうしようもないままにぶつけていくような歌唱表現が、聴く者の胸に切なく迫ってくる。真っ直ぐな歌声が魅力の彼女らしい名唱だ。そして「これが最後の曲です、今日は本当にありがとうございました」との言葉に次いで歌われたのは、メジャーデビュー曲でもある「はじまりの速度」。3人の少女が世界を希望で塗り替えていくようなMVと同様、ステージ上で凛々しく立ち回るみあの姿にオーディエンスも熱狂で応える。ラスト、力強く歌いきった彼女は、右手で合図を送ってバンドの演奏を締め括り、深々とお辞儀をして静かに立ち去った。

会場からの〈三パシ〉コールを受けて再びステージに登場したみあとバンドメンバーは、シングル曲「群青世界」からアンコールを開始。こちらもピアノとアコギをメインにしたアコースティックなアレンジになっており、より深みのある群青色に衣替えしたシックな歌世界が実に新鮮だ。2番からはパーカッションも加わってグルーヴィーになり、ラスサビの入りで溜めの沈黙をたっぷりと取る演出も見事。いつも以上に穏やかで包容力を感じさせる「群青世界」を聴くことができて、この日ライブ会場に来ることのできたファンは間違いなく幸せ者と言えるだろう。

ここで「アンコールありがとうございます」と語り、この日最初のMCを行ったみあ。「すごい景色です。本当にみんなの顔がひとりひとりよく見えて、一生忘れない景色なんだろうなって思ってます。こんなに素敵な夜をすごせているのも、ずっと聴き続けてくれて、今日いろんなところからライブに来てくれたみんながいるからです。いつも本当にありがとう」と心からの感謝の気持ちを伝える。さらに「とっても素敵な新曲ができました!」と報告し、その新曲「風の声を聴きながら」を初披露することに。「とっても清涼感があって、爽やかな曲になりました」との言葉通り、ポップで風通しの良いアレンジが耳に心地良く馴染むミディアムで、〈あせらず自分のペースで進もう〉ということを歌った歌詞も広く万人の心にフィットしそう。この曲は2018年1月スタートのTVアニメ『スロウスタート』のEDテーマに起用され、3月7日にはニューシングルとしてリリースされることも決まっている。

そして「次で本当に最後の曲です」と名残惜しそうに伝えるみあ。会場からは残念がる声が上がるも、すぐさま「ありがとー!」と感謝の声が飛ぶ。初ワンマンライブのラストを飾ったのは、もちろんアルバム『あのときの歌が聴こえる』の最後に置かれた曲でもある「あのときの歌」だ。ライブの最初や朗読パートでSEとして使用された「いつかのきみへ」と同じメロディーをモチーフにしており、初ワンマンという物語のエピローグに相応しい楽曲と言えるだろう。<終わりと始まり その隙間にあるものを ただ、僕らは宝箱の中にしまう>という歌詞は、この日のライブという思い出を象徴しているかのようにも思える。最後に深く、長くお辞儀をしたみあは、大歓声と万雷の拍手に包まれるなかステージを去った。

ライブ後には、2018年6月23日に東京・渋谷O-EASTにてセカンド・ワンマンライブが行われることも告知され、早くも来年に向けてさまざまな動きが顕在化している三月のパンタシア。彼女たちの紡ぐ終わりと始まりの物語には、まだまだ未知の可能性が秘められているはずだ。そこには楽曲の世界を生み出すパンタシア(=空想)の力だけでなく、それをたしかな実像と共に生で表現する、みあの存在感あるステージという新たな魅力が加わったのだから。

Text By 北野創

“三月のパンタシア ワンマンライブ~きみとわたしの物語~”
11月25日(土)東京・shibuya duo MUSIC EXCHANGE

【セットリスト】
SE. いつかのきみへ
1. day break
2. フェアリーテイル
3. 青に水底
4. イタイ
5. ルビコン
6. 七千三百とおもちゃのユメ
7. 花に夕景
8. 星の涙
9. キミといた夏
10. ないた赤鬼、わらう青空
11. ブラックボードイレイザー
12. シークレットハート
13. リマインドカラー ~茜色の記憶~
14. はじまりの速度
EN1. 群青世界
EN2. 風の声を聴きながら
EN3. あのときの歌


●ライブ情報
ワンマンライブ開催決定
2018年6月23日(土)
TSUTAYA O-EAST
開場16:30 / 開演17:30
前売¥4,320(税込+ドリンク代別/オールスタンディング)

チケット一般発売及び公演お問い合わせは後日発表致します。

●リリース情報
5th Single
「風の声を聴きながら」
3月7日発売

【初回生産限定盤(CD+DVD)】
価格:¥1,600+税
品番:VVCL-1167~1168

【通常盤(CD)】
価格:¥1,200+税
品番:VVCL-1069

【期間生産限定盤(CD+BD)】
価格:¥1,600+税
品番:VVCL-1170~1171
※TVアニメ「スロウスタート」描き下ろしイラスト・デジパック仕様

<CD>
「風の声を聴きながら」 ※TVアニメ「スロウスタート」EDテーマ
含む、全4曲予定

<DVD>
・初回生産限定盤 「風の声を聴きながら」 -Music Video-
・期間生産限定盤 TVアニメ「スロウスタート」ノンクレジットEDムービー

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