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INTERVIEW

2016.08.20

新居昭乃デビュー30周年記念アルバム『リトルピアノ・プラス』リリース記念インタビュー

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今年デビュー30周年を迎えた新居昭乃。それを記念したアルバム『リトルピアノ・プラス』が彼女の誕生日でもある8月21日にリリースされる。“今の新居昭乃”を詰め込んだという本作についてたっぷり語ってもらった。

今回は“集大成”というものではなく、“あれから30年経った今”の私を音楽にして残すようなイメージで取り組みました

――オリンピック・イヤーになると、新居さんの新作アルバムがリリースされる印象がありまして。

新居昭乃 はい、オリンピックに合わせて制作していますから。

――え、本当に?

新居 ふふふ、ウソです(笑)。

――ですよね(笑)。改めまして、『リトルピアノ・プラス』という30周年記念作品が誕生日にリリースされます。完成した率直な感想は?

新居 小さな頃から続けてきた私の音楽ですが、最初は誰に聴かせるためでもない、自分だけのものだったんです。それが大勢の人に聴いていただけるものになり、30年も続けることができたことを、とてもうれしく思っています。感謝の気持ちで一杯ですね。

――制作に向けて、どのような青写真を描きながら?

新居 まず「30周年のタイミングで何か記念碑的な作品を」という思いがありました。20周年でベスト盤は出しているので、今回は“集大成”というものではなく、“あれから30年経った今”の私を音楽にして残すような、そんなイメージで取り組んでいきました。「これが今の新居昭乃です!」と言ってもいいような作品というか。

――近作である『ソラノスフィア』(2009年)や『Red Planet』『Blue Planet』(2012年)は、まず大枠で形作られたコンセプトがあり、その世界観を俯瞰で見るような壮大なアルバム……という印象がありましたが、今作は真逆ともいうような、とてもプライベートな印象の作風で。

新居 『降るプラチナ』(2000年)から前作までは、〈聴いたことのない音楽〉を強く意識していた気がします。既視感を与えるような親しみやすさを持った音楽をポップスというのだとしたら、私はそういうものを捨てながら、拒否しながら〈聴いたことのない音楽〉を作ろうとしてきたんです。でも今回は、頭の中から出てきた音楽をそのままを形にしたんです。たとえ既視感があったとしても、出てきたそのままを音楽にする。「今の私って、こういう感じなんだな」と、自分でも感じられる楽曲ばかりです。

――アルバム・タイトルにもあるピアノは、本作のベーシックな楽器として存在していますね。

新居 すごく付き合いの長い楽器なんですよ。私は覚えていないんですけど、4~5歳の頃、親に初めてねだったものがピアノだったらしくて。8歳の頃に作曲することを覚えてからは、その日あった出来事を日記代わりに歌にして過ごしていたんです。何かがあるとすぐにピアノの前にいて、感情をすべてぶつけながら、ピアノと会話をしてきました。その延長線上に、今の私の音楽があるんです。ただ、デビューした直後は「もっとこういう曲を書いて!」と言われて作曲することが嫌になって、ピアノを見るだけで気持ち悪くなったこともあって。そういう時期も、ピアノはただじっと黙って、私のことを待っていてくれたんです。だから、ピアノは私にとって大親友。そういう存在です。『リトルピアノ』は自分の弾き語りライブツアーのタイトルでもあるのですが、その昔、小さな私が小さなピアノを弾いていた、そんな情景も含めたイメージですね。

――そんなピアノ1本のみで綴られた「リトルピアノ」からアルバムが始まり「Stay」へと流れていきますが、新居さんが“とどまる”ということをテーマに曲を書かれるのは、とても意外な気がしました。

新居 仰る通りですね(笑)。思えば今までの私は“転がるように”生きてきたなぁって、思うんです。一ヵ所にとどまらないように、浮き草のように。「ゆく川の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず」(『方丈記』)という生き方が好きでした。音楽も、自分の中では常に新しいものを探したいし、過去にも執着したくなかった。「人もいつかは去っていくものだ」と思っていた時期もありました。それは逆に言うと、私に執着心があるからこそ憧れてしまう生き方でもあったのでしょうね。でも今は、自分の周りを見渡すと掛け替えのない友人や仲間がいる。彼ら・彼女らは私にとって、唯一と言っていいくらいの財産です。そして「音楽をやりたい」と思えばやらせてもらえる宝物のような環境もある。そういったものを「とどめておきたい」「手放したくない」と思う自分がいて、その気持ちを無理に隠そうとせず、そのまま歌にしたくて。時間がかかったけど、30年経ってやっと自分の気持ちに素直になれました(笑)。この「Stay」という曲は、記念碑的楽曲ですね。

――悠木 碧さんに提供した楽曲「サンクチュアリ・アリス」のセルフ・カバーも収録されていますが、ご自身で歌われてみていかがでしたか?

新居 この曲は、作ったときから「私が歌いたい!」と思ってしまったくらいお気に入りの曲だったんですよ(笑)。なので、お願いしてセルフ・カバーさせていただきました。

――新居さんが歌われると、より語り部的な立ち位置が際立つ歌詞だなと感じました。

新居 そうですね。悠木さんは声優さんなので、主人公になりきって演じるように歌われていたのがとても素敵でした。私は俯瞰的な目線で、物語を伝える語り部として歌わせていただいています。

――ベースに新居さんのファンとしても知られるミトさん、そしてハープにtico moonの吉野友加さんも参加されていて。

新居 ミトさんて、面白い方だったんですね。レコーディング中に「僕、本当にうれしいですっ!今、泣きそうです!」なんて仰って下さって(一同笑)。保刈久明君(新居昭乃作品には欠かせないギタリスト/アレンジャー)君がやなぎなぎさんのアルバム制作に参加したときにミトさんと出会ったそうなんですけど、ミトさんの方から「ファンなんです」と声をかけてもらったそうで。それが、保刈君的にものすごくうれしかったみたいなんですよ(笑)。これも、続けてきたからこその出会いですよね。吉野さんとも本当に良い出会いで、私の音楽に新しい息吹を吹き込んで下さいました。『降るプラチナ』はいまだに人気の高いアルバムなのですが、そこからプレイヤーもエンジニアも制作環境も、現在と変わらない仲間が揃ったんです。出会いによって良い化学反応が起きたものって、長く愛されるようなものになるんですよね。「冬の庭園」で増井朗人さん(Codex Barbès / DUBFORCE)がとても人間的で味のあるトロンボーンを入れてくださったのですが、増井さんの演奏は自分にとっても、とても新鮮で、これも新しい化学反応でした。

――「オーロラ」という曲は新居さんの歌声の多重録音のみで構成された、まるで一人クワイヤといった楽曲で圧倒されました。

新居 この曲は、私の友だちがこの前「南極観測船しらせ」に乗って南極に行ったんですけど、南極から送られてきたオーロラの写真を見て作った曲なんです。南極の写真を見ていると、遥か遠くに思いをはせる気持ちが湧いてきて、自然と生まれたのがこの「オーロラ」だったんです。氷のカテドラルをイメージさせるような、そういう曲になっていると思います。

――「羽よ背中に」は10月公開の『ゼーガペイン ADP』の主題歌ですが、10年ぶりに『ゼーガペイン』の主題歌を制作された感想は?

新居 10年前の「キミヘ ムカウ ヒカリ」のときは、制作前の『ゼーガペイン』の少ない情報を元に、自分のイマジネーションを膨らませて作っていったのですが、さすがに今の私は『ゼーガペイン』のことをよく知っているので、逆に難しさをすごく感じました。やはりあの世界観からは外れてはいけない、という意識が強く働きますからね。曲自体は、これもほとんど生まれたままの形です。「一人称は僕で、男子高校生のイメージで」という要望をもらい、「キャリア30年の新居昭乃にそれが書けるのか?歌えるのか?」という自問自答や葛藤を乗り越え(笑)、作り上げていきました。ミュージシャンのみなさんも「演奏は高校生のような青い気持ちで!」とディレクションされていて、渡辺 等さんをはじめみんな大ベテランですが、キャリアに捉われない、自由すぎる演奏を繰り広げてくれました。これはぜひ聴いてもらいたいですね。

――「Lost Area」は『機動戦士ガンダム 外伝 ミッシングリンク』の主題歌ですが、どのようなイメージを受け取って書かれたのでしょうか?

新居 まず、何か風景が欲しいと思ったんです。主題歌の場合は特に、その風景を拠り所に音楽を探していくのですが、「すみません!宇宙しかありません!」と言われちゃいまして(一同笑)。だから、「宇宙しかない」「地球が遠い」や、「戦い」「途轍もない孤独」をテーマに作っていきました。手が届きそうだけど、ものすごく遠い地球の景色と、戦わなくてはならない心情。そして「なぜ戦うの?」という思いも込められていると思いますね。

――アルバムの最後に収録されている「金色の目 premiere version」は、1984年のヤマハ「ポプコン」で入賞された「金色の目」(1stアルバム『懐かしい未来』収録)のセルフカバーですね。

新居 「金色の目」は、中学生の頃に作った曲が原型になっているんです。そのあと、友人の結婚式で披露するために作った仕上げていった曲なので、人に聴いてもらうために作った最初の曲、という意味でも私の原点です。今回の「金色の目 premiere version」の方が、中学生の頃に作った原型に近いですね。なので、premiere=プルミエール=初演という副題をつけています。改めてこの曲を歌うのは、すごく難しかったですね(苦笑)。やはり昔の自分の歌と、比較してしまいますから。今回のレコーディングでも、仲間たちは「良いね」と言ってくれたのですが、なかなか自分の中でOKが出せなくて。何度も繰り返し録音して、今の形になりました。今回のアルバム制作は、いろいろな形で自分を見つめ直し、今の自分について考えるきっかけを与えてくれましたね。

――30周年記念作品をリリースした後の新居さんは、どんなことを目標に活動されていくのでしょうか?

新居 この歳になるまで続けることができたのは、私にとっては奇跡的としか言いようのないことで。1日1日を大切に、音楽に真面目に、これからも続けていきたいと思っています……でも苦行みたいなストイックなことではなくて、私の音楽活動の半分くらいは遊びみたいなところもあるんです。だから、「より真剣に音楽と遊んでいこう」ということかな?このアルバム制作のおかげで音楽的にすごく自由になれたんです。もっともっと自由な音楽を目指して、ピアノと、仲間たちと歩んでいこうと思います。

Interview&Text By冨田明宏


●リリース情報
30th Anniversary Album
『リトルピアノ・プラス』新居昭乃
8月21日発売
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品番:VTCL-60430
価格:¥2,900+税

<CD>
01. リトルピアノ
02. Stay
03. Neverland
04. サンクチュアリ・アリス
05. Fairy Song
06. オーロラ
07. 羽よ背中に(アニメ『ゼーガペイン ADP』主題歌)
08. 一切へ
09. 冬の庭園
10. 蒼玉節
11. Unknown Vision(TVアニメ『まおゆう魔王勇者』EDテーマ)
12. Lost Area(ゲーム「機動戦士ガンダム 外伝 ミッシングリンク」主題歌)
13. 金色の目 premiere version

●イベント情報
招待イベント“「喫茶アキノワール」へようこそ”
9月19日(祝・月)18:30 都内某所
内容:ミニライブ&トーク
アルバム「リトルピアノ・プラス」を対象店舗にてお買い上げの方に、先着で専用応募はがきを差し上げます。応募抽選で50名様をご招待
応募締切:9月5日(月)必着
会場は当選者様にお知らせします

インストアイベント
9月14日(水)19:30
タワーレコード梅田NU茶屋町店
ミニライブ&ジャケットサイン会
※詳細はタワーレコードHPをご確認ください

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