「リスアニ!Vol.23」にて「Project Itoh」特集も掲載中!劇場3作品の音楽を手がける池 頼広氏のインタビューを公開!

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発売中の本誌最新号「リスアニ!Vol.23」にて「Project Itoh」の特集ページを掲載している。その特集内にてコメントを寄せてくれた、伊藤計劃3作品の音楽を担当する池 頼広氏への貴重なインタビューが実現した。
『SDガンダムフォース』『Cobra』など様々なアニメ作品だけでなく、TVドラマ「相棒」「女王の教室」や映画「らせん」「ドラゴンヘッド」「ゼブラーマン」などジャンル問わず幅広く活躍する池氏。
今回リスアニ!WEBでは、「Project Itoh」作品のサウンド面についてじっくりと話を聞いた。

原作を読んでも音のことはなるべく想像しないようにしています

――まずは今回、伊藤計劃の劇場3作品の音楽を担当されることになったいきさつからおうかがいしてもよろしいですか?

池 頼広 以前、仕事をご一緒したことのある『虐殺器官』の村瀬(修功)監督さんからご指名をいただきました。『屍者の帝国』と『ハーモニー』に関しては制作スタジオも違うし監督も違ったのですが、おそらく3作品とも音楽を統一しようというどなたかの意向が働いたんじゃないですかね?

――そうすると伊藤計劃の物語に触れたのはこのお仕事がきっかけですか?

 そうですね。原作を読ませてもらって、なんて言うんですかね……これ、大丈夫かな? と不安になりました。もともとSF作品は好きなほうですが、これを映像化するのは大変だ、難しいんじゃないかなーって(笑)。

――音楽を制作するにあたり、原作からインスパイアを得たりするのでしょうか?

 原作を読んでも音のことはなるべく想像しないようにしています。僕が画を作るわけでも演出をつけるわけでもないので、文章から引きずられてしまうと、監督の感性とズレたものになっちゃうので。ドラマの音楽を作るときも台本はあまり読み込まないですね。特に初めて仕事をするチームだと感覚のズレが大きくなってしまうので。

――なるほど。ではすでに公開した『屍者の帝国』について、音楽をつけるにあたりどんな試行錯誤があったのでしょうか?

 『屍者の帝国』はエンターテイメント性の高い作品で、監督との相性も良かったのであまり苦労はなかったです。オーダー表をいただくにあたり、監督から「こういう音楽を作ってほしい」というかなり具体的な提案があったのですが、それがことごとく「僕の好みを知っているんじゃないか?」と思うくらいセンスが一致していて。もう、「この人は僕の生活をのぞいているんじゃないか」と思うくらいの勢いだったんですよ(笑)。

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『屍者の帝国』より

――テーマが明確だったんですね。

 僕はそれに寄り添うだけでした。しかも今回は音楽を作る段階でほぼほぼ画が完成していて、いわゆるシンクロスコアで曲を書くことができたので、作家としては最高の環境でやらせていただいた満足感はありますね。

――それは素晴らしい! たしかに映像を拝見すると、セリフの邪魔をしてないとか、音楽のテンポがカット割と一致していたり、完成度の高さを感じておりました。

 あるべき状態ですね。ところどころ画がない場所もありましたけど、なんの支障もなく作業を進めることができました。特に後半にはびっくりしましたね。ずっと音楽が鳴りっぱなしなんですよ。

――物語後半に向けて徐々に音楽が盛り上がっていき、パイプオルガンのシーンでクライマックスを迎える構成になっていましたね。

 僕ね、あのパイプオルガンの曲はぜひサントラにしたいなって思ってるんですよ。

――ものすごい迫力でした。

 そう。まさか僕も本物で録れるとは思ってなくて。

――え! どちらのパイプオルガンを使用したのですか?

 みなとみらいホールで録らせてもらいました。演奏者もパイプオルガン専門の方にお願いして、ほんと素晴らしい演奏でしたね。僕が作った曲なので正統なクラシックではないんですけども、わざわざアナライズ(楽曲分析)してきてくれて、譜面にメモが書いてあったんですよ。

――音響環境の整ったホールで鳴るパイプオルガンの音とはどういったものなのでしょうか。

 調律師がいて、オペレーターという演奏中にキーを操作する方もいて、皆さんプロなので簡単に音を作っていましたが、それはそれは緻密な計算をされてますよね。すごかったですもん。地鳴りのような低音ですからね、パイプオルガンの場合は。あれは魂を持っていかれますね。信者になっちゃいます(笑)。

――ちなみに、オーケストラのレコーディングはいかがでしたか?

 とんでもない時間がかかりましたね。曲数は多くはなかったのですが、さっきも言ったとおり後半がずっと音楽なので、トータルの尺が80分くらいあったんですよ。

――それは1本の映画作品としては……。

 長いですよね。映像を観るとあんまり音楽が鳴り続けている印象はないですけど、実は派手なんですよね。レコーディングは朝までかかって終わったのが6時頃。たしか金管を録り出したのが2時とか3時とかだったかな。あんなに長いことレコーディングしたのは初めてでしたね。

――池さんのなかで、『屍者の帝国』の“聴きどころ”はありますか?

 今回のオーダーで、“移動”というお題目があったんですよ。

――序盤のインドからカザフスタンに向かう途中にある、山越えのシーンですね。

 あのシーンは牧原(亮太郎)監督が、若いのに素晴らしいなと思うんですけど、映画のひとつの核を為す説明の部分として大切にしていらっしゃったんですよ。で、それを100%音楽だけのシーンにしてくれたのが僕としてもうれしくて。移動していること自体は、画とセリフでも簡単に説明できちゃいますよね。でも『屍者の帝国』はあそこでエスニックな音楽を入れることで、その説明のくどさを解消しているんですよ。

――この作品はほかにもイギリス、日本、アメリカと、場面が世界中に移り変わりますね。

 『屍者の帝国』はいわゆるロードムービーだと思うのですが、ロードムービーってともすると移動の説明が主軸になってしまって、観客が飽きてしまうことがあるんですよね。それをこの作品は構成力のうまさと音楽を効果的に使うことで、ちゃんとエンタメに仕上げていらっしゃる。観る人もラクなんじゃないかと思いますね。

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池 頼広氏

セリフがメロディのように聴こえる音楽を意識して作っていった

――さて、間もなく公開の『ハーモニー』の音楽制作についてはいかがでしたか? 制作スタジオも監督も変わり、かつ画も3DCDになっており、『屍者の帝国』とはガラッと雰囲気が変わりましたけども。

 『ハーモニー』は『屍者の帝国』よりもサイバーで未来の物語なので、オーケストラの曲で盛大にというよりも、テンプトラックに添って作りこんでいく制作になりました。なかむらたかし/マイケル・アリアス監督からのオーダーも、とにかく感情を出さないようにしてほしいという内容で。

――モノローグ主体で、主観視点のカットも多い映像ですものね。

 とにかくセリフが多いので、お客さんの集中力を削いでしまわないよう、僕がセリフに伴奏をつける感じですね。『ハーモニー』もほぼ画が完成した状態、シンクロスコアで曲を書くことができたんですが、セリフがメロディのように聴こえる音楽を意識して作っていった感じです。

――たしかにこの作品は情報量が多く、観るのに集中力を要しました。

 僕的には「いかにセリフを聞き続けられるか」をテーマに、ありとあらゆるアイデアや技術を駆使したって感じですね(笑)。

――世界各地を飛び回るのは『ハーモニー』も『屍者の帝国』も一緒なのですが、音楽に民族的な要素が少なかったのも印象的で。

 土地柄やキャラクター性を感じさせる音楽は、冒頭のシーンの砂漠の民たちが登場するシーンくらいですね。あとはバグダットのトァンのシーンで少しだけ。これは僕からの提案でした。監督は最初、ここも無感情でOKとおっしゃっていたんですけどね。『ハーモニー』は基本的に、アクションシーン以外はサスペンスとホラーの音楽なんですよ。

――なるほど。今のお話を聞くと、この作品の音楽的主題はミァハの神秘性と恐怖にあったのかなと。

 ミァハは怖いですよね。無機的な怖さ。音楽も、彼女が登場するシーンには同じ曲を流しているんです。これは設計として面白いと思うんですけど、ただミァハって作中ずっと、声を張らずウィスパーで話し続けるじゃないですか。なので彼女につけた音楽がいちばんセリフとの関係性を意識しましたね。もう、これでもかっていうくらい時間がかかりました(苦笑)。

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『ハーモニー』より

――公開前なのでネタバレはできませんが、池さんは今、映画『ハーモニー』についてどのような感想をお持ちですか?

 伊藤計劃の原作を読んで、『ハーモニー』がいちばん映像化するのが難しいなと感じたんですね。でも、こうしたモノローグを主体にした手法をとることで、「あ、いけるんだ」という発見がありました。物語としては、じっくり観ないとわからないので、やっぱり3回は観てほしい(笑)。セリフをよく聞いてくださいというのが僕からのお願いですね。

――(笑)。おそらくラストシーンに関しては、原作既読の方にも未読の方にも、一種の問題提起になりそうですね。

 ラストシーンからエンディングにかけての音楽はぜひ聴いていただきたいですね。

――やっぱり、音楽的にもラストシーンがクライマックスになりますか?

 詳しくは言えませんが、あそこは歌い手を16人も呼んで、何重にもコーラスを重ねさせていただきました。歌っていただいた方たちはコーラス専門ではなく、本業でオペラの役がついているような方たちばかりで、厚みがすごいんですよ。なかなかな方々が集ってくれたので。

――映画の公開とその反響が楽しみですね。

 そうですね……体調を整えて、深く深呼吸しつつご覧ください。難しい話ですけど、前半を乗り越えることで、最後にご褒美がもらえますので(笑)。

INTERVIEW & TEXT BY 西原史顕

 

<池 頼広 プロフィール>
コンポーザー/ベーシスト。1963年8月25日生まれ、神奈川県出身。映像と音楽に融合を目的とするバンド“AIKE BAND”(アイクバンド)を結成、音楽制作を続けるかたわら、ライブ活動も開始する。
NECアベニュー第一弾としてアルバム『イン・ザ・ファーストセンス』でメジャー・デビュー。
1988年には“モントルージャズフェスティバル”に出演し、多くのミュージシャンと交友を持つ。
帰国後、AIKEBANDの活動を休止。同年、L.A.でクルセイダーズ等のギタリストであるデビッド・T・ウォーカーのソロ・アルバム『アヒムサ』のレコーディングに参加し、初めての海外レコーディングを体験する。
翌年からはL.A.を中心に活動を広げ、精力的にセッションに参加。ハワイでは、L.A.の一流ミュージシャンのレコーディングにアレンジャー/ベーシストとして参加する。
現在までに「文化庁メディア芸術祭アニメーション部門 “大賞”」「『BLOOD THE LAST VAMPIRE』が “大藤信郎賞”」など様々な賞を受賞。
2007年には、デビュー20周年記念ベスト・アルバム『Ike Yoshihiro The BEST – 20th Anniversary Selection – 』をリリースしている。
■代表作
TVドラマ…「相棒」「女王の教室」「野ブタ。をプロデュース」「受験の神様」「斉藤さん」「ケータイ捜査官7」
アニメ…『ソニックX』『SDガンダムフォース』『KARAS』『Ergo Proxy』『REIDEEN』『Cobra』
映画…「らせん」「ドラゴンヘッド」「KIDS」「MW-ムウ-」「ゼブラーマン」「宇宙ショーへようこそ」

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●作品情報
『ハ―モニー』
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11月13日(金)より、TOHOシネマズ新宿ほか全国劇場にて公開
<ストーリー>

まがいものの天国で、さまよう魂の物語――。
アメリカで発生した暴動をきっかけに世界を戦争と未知のウィルスのるつぼに叩き込んだ「大災禍(ザ・メイルストロム)」。
政府は弱体化し、やがて、人間こそ最重要の公共リソースであると位置づける高度発達医療社会が立ち上がった。<生府>の成立である。
<生府>により、人々は「健康」と「優しさ」を尊ぶ“生命主義”の名の下に、美しく管理されることになった。人々は、WatchMe(恒常的体内監視システム)を体に埋め込み、あらゆるリスクは遠ざけられた。人々は自らを優しい牢獄へと閉じ込めたのである。
霧慧トァンは<生府>の番人であるWHOの螺旋監察官。紛争地域の停戦監視などが仕事だ。だが彼女は、“生命主義”への違和感をぬぐうことができず、WatchMeの裏をかいて、禁止された酒や煙草を嗜んでいた。
かつて彼女には友達がいた。御冷ミァハ。成績優秀でありながら、<生府>の管理を憎悪する少女。個人用医療薬精製システム<メディケア>を騙せば世界を転覆させることだってできるとうそぶく歪んだ天真爛漫さ。トァンと零下堂キアンはミァハに心酔していた。
「私たちは大人にならないって、一緒に宣言するの」
ミァハの導くままに死を試みる2人。そしてミァハだけが死に、トァンとキアンだけがこの牢獄に取り残された。
13年が経ち、WHOから母国での謹慎処分を言い渡されたトァンは、善良な市民として暮らすキアンと再会。事件以来、対照的な生き方をしてきたふたり。ミァハ不在の食事は、殊更に彼女の存在を際立たせるものだった。
再会の最中、ある犯行グループによって同時に数千人規模の命を奪う事件が発生。
キアンもその犠牲となるが、死に際にある言葉を遺した…。
犯行声明として発せられた彼らの「宣言」により、世界は「大災禍」以来の恐怖へと叩き落される。それは、平和に慣れすぎた世界に対しての警告であり、死んだはずのミァハの思想そのものだった。
トァンはミァハの息遣いを感じながら、事件の真相を求めて立ち上がる。

【キャスト】
霧慧トァン:沢城みゆき
御冷ミァハ:上田麗奈
零下堂キアン:洲崎 綾
オスカー・シュタウフェンベルク:榊原良子
アサフ:大塚明夫
エリヤ・ヴァシロフ:.三木眞一郎
冴紀ケイタ:チョー
霧慧ヌァザ:森田順平
【スタッフ】
原作:「ハーモニー」伊藤計劃(ハヤカワ文庫JA)
監督:なかむらたかし/マイケル・アリアス
脚本:山本幸治
キャラクター原案:redjuice
演出・CGI監督:廣田裕介
キャラクターデザイン・総作画監督:田中孝弘
プロップデザイン・作画監督:竹内一義
メカデザイン・エフェクト作画監督:渡辺浩二
色彩設計:成毛久美子
美術監督:狹田修/新林希文
編集:重村建吾
音楽:池 頼広
録音演出:名倉靖
音響デザイン:笠松広司
主題歌:「Ghost of a smile」EGOIST(ソニー・ミュージックレコーズ)
アニメーション制作:STUDIO4℃
制作:Project Itoh
配給:東宝映像事業部

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『屍者の帝国』
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公開中
<ストーリー>
“死者蘇生技術”が発達し、屍者を労働力として活用している19世紀末。
ロンドンの医学生ジョン・H・ワトソンは、親友フライデーとの生前の約束どおり、自らの手で彼を違法に屍者化を試みる。
その行為は、諜報機関「ウ ォルシンガム機関」の知るところとなるが、ワトソンはその技術と魂の再生への野心を見込まれてある任務を命じられる。
それは、100年前にヴィクター・フランケンシュタイン博士が遺し、まるで生者のように意思を持ち言葉を話す最初の屍者ザ・ワンを生み出す究極の技術が記されているという「ヴィクターの手記」の捜索。
第一の手がかりは、アフガニスタン奥地。
ロシア帝国軍の司祭にして天才的屍者技術者アレクセイ・カラマーゾフが突如新型の屍者とともにその地へ姿を消したという。
彼が既に「手記」を入手し、新型の屍者による王国を築いているのだとしたら・・・?
フライデーと共に海を渡るワトソン。しかしそれは、壮大な旅のはじまりにすぎなかった。
イギリス、アフガニスタン、日本、アメリカ、そして最後に彼を待ちうける舞台は…?
魂の再生は可能なのか。死してなお、生き続ける技術とは。
「ヴィクターの手記」をめぐるグレートゲームが始まる!

【キャスト】
ジョン・H・ワトソン:細谷佳正
フライデー:村瀬 歩
フレデリック・バーナビー:楠 大典
アレクセイ・カラマーゾフ:三木眞一郎
ニコライ・クラソートキン:山下大輝
ハダリー:花澤香菜
M:大塚明夫
【スタッフ】
原作:「屍者の帝国」伊藤計劃×円城塔(河出文庫)
監督:牧原亮太郎
脚本:瀬古浩司、後藤みどり、山本幸治
キャラクター原案:redjuice
キャラクター設定:千葉崇明
総作画監督:千葉崇明、加藤寛崇
色彩設計:橋本賢
美術監督:竹田悠介
3D監督:西田映美子
撮影監督:田中宏待
編集:肥田文
音響監督:はたしょう二
音楽:池 頼広
主題歌:「Door」EGOIST(ソニー・ミュージックレコーズ)
アニメーション制作:WIT STUDIO 制作:Project Itoh
配給:東宝映像事業部

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『虐殺器官』
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公開日未定
【キャスト】
クラヴィス・シェパード:中村悠一
ウィリアムズ:三上哲
リーランド:石川界人
アレックス:梶裕貴
ルツィア・シュクロウポヴァ:小林沙苗
ロックウェル大佐:大塚明夫
ジョン・ポール:櫻井孝宏
【スタッフ】
原作:「虐殺器官」伊藤計劃(ハヤカワ文庫JA)
監督・脚本:村瀬修功
キャラクター原案:redjuice
デザインワークス:荒牧伸志/山根公利/臼井伸二/神宮寺訓之/山田正樹
美術監督:田村せいき
撮影監督:山田和弘/中西康祐
色彩設計:茂木孝浩
CGディレクター:増尾隆幸
アフレコ演出:長崎行男
編集:長坂智樹
音楽:池 頼広
主題歌:「リローデッド」EGOIST(ソニー・ミュージックレコーズ)
アニメーション制作:manglobe
制作:Project Itoh
配給:東宝映像事業部

©Project Itoh / GENOCIDAL ORGAN
©Project Itoh / HARMONY
©Project Itoh & Toh EnJoe / THE EMPIRE OF CORPSES

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