『「ガッチャマン クラウズ インサイト」オリジナル・サウンドトラック』リリース記念 岩崎 琢 インタビュー!

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4月に約2年ぶりとなるワンマン・ライブ『Taque Iwasaki “Soundtrack to the streets vol.3”』を成功させた音楽家・岩崎 琢。劇伴音楽の制作も精力的に行い、そのサウンドは2014年も『魔法科高校の劣等生』や『アカメが斬る!』をはじめとする数々の作品を彩ってきた。今回は、この夏に手掛けた『「ガッチャマン クラウズ インサイト」オリジナル・サウンドトラック』のリリースを記念し、本盤と10月に開催される彼のコンサートのコンセプトについて迫った。

“作品にダイナミクスをつける”ことを優先して、制作していきました

――4月のライブ以降は、制作の日々だったのでは?

岩崎 琢 そうですね。『ガッチャマンクラウズ インサイト』と10月からの『ノラガミ ARAGOTO』を。『ガッチャマン』はなんとか無事完成しまして、今は『ノラガミ』の制作中です(笑)。

――そのライブを通じて、ご自身のステージやフロアを意識したサウンドメイクをするようなお気持ちも生まれてきた?

岩崎 あまりないです。技術的には「キックの音をしっかり作らないといけないかな」とか思ったりはしたけど、それぐらい。今回のサントラの曲も、ライブでできる曲数は今までとあまり変わらないような気がします。

――今作も非常に幅広い分野のサウンドが入っていますが、そのなかでこれまで聴いたことのない音が入っているのも感じました。今回の劇伴制作の過程では、アニメスタッフの方々とどんなコンセプトのどんなサウンドを制作しようという話をされたんでしょう?

岩崎 それが何もないんですよ(笑)。中村(健治)監督も「こんなサウンドで」っていうタイプじゃないので、「前作があるからあとはよろしく」っていう感じ。結構お任せモードでした。

――二期目ですから、岩崎さんの中でサウンドを組み立てていくときに「今回はこれをやってみよう」というプランのようなものもあったのでは?

岩崎 いや、それもまったくなくて。基本的には劇伴ってやっぱりお話に依るものだと思うんですけど、今回は脚本が割と早めに上がっていたおかげである程度は「制作側が何を考えている」かがわかったので、それを踏まえつつの制作で。直接のやりとりはあまりなかったんですが、「このへんにいるよね?キミ」って見えない相手に向かってキャッチボールするような感じでした。

――その脚本からは、どんなことを感じられましたか?

岩崎 えっと……話が地味(笑)。でも中村監督の手がける作品の中のそれって、最後に向かってちゃんと意味のあるもので。ただ、いわゆる“バトルモノ”みたいなカタルシスは前作含めてあまりないので、脚本や絵にあまりにも沿いすぎると音楽がダレちゃう。そうすると本当に地味な作品になっちゃうから、そこにどう起伏をつけよう?というのは割と考えました。

――それでサンバのリズムがあったり。

岩崎 あのサンバの曲は「ミリオネ屋」っていう劇中のニュース番組のテーマで、初音ミクに歌わせたんですよ。「どうせそのうち誰かがホントにやるでしょ」と思って(笑)。それに、実際のニュース番組テーマ曲のパターンをちょっと茶化した体で作りました。

――では、今回岩崎さんご自身として新しく取り組んでみたことっていうのはあるんでしょうか?

岩崎 自分の中で新しい事というのは特にないかなぁ。それよりは楽曲の強度や派手さの程度を考えて、先ほど言ったように劇伴全体としてダイナミクスをつけることを優先したんですよ。なにしろ単純に、派手さを要求された部分もあまりなかったので。

――なるほど、だから「GATCHAMAN Make my day」のミックスも、割と音楽的というか。

岩崎 一作目が割とイケイケだったんで、二作目はちょっと大人になって進化した感じでしょうか。どちらかと言うと、ちょっと憂いがあったり割と泣かせるほうかな?と僕は勝手に思っているので、その曲に関しては今回のテーマは“泣かせる”です。

――メロディアスな部分で行くと、今の岩崎さんは「Hanabi」とかがお好きなモードに入られているのかな、という印象も。

岩崎 基本的にはこういうのそんなに好きじゃないんですけどね(笑)。ただ、一応「J-POPっぽいメロディの曲もできますよ」というのもたまには見せとこう!って思って。

――翻ってフロアを感じたのは、8bitっぽい「kollision」です。

岩崎 あれはバトル曲というオーダーだったんですが、オケを録ったあとに作った曲という大人の事情的なところもあってできたものなんです。

――あとやっぱり、岩崎さんの「Da sprang die Katze rot!」みたいな曲も好きなんですよ。ボワワワワっていうトランペットの音が印象的で。

岩崎 これはトランペットにエフェクトをいろいろかけていて、結構いろんな作品で使っています。これも同じくオケを録ったあとにできた曲なんですよ(笑)。

――劇伴のような依頼を受けて制作する音楽の場合、「岩崎さんならこういうものを作ってくれる」という想像に応えることもあれば、クリエイションとしてそれを超えるものを提示することもあると思うんです。今回は、おおまかに見てどちらのタイプでしたか?

岩崎 技術的な面では曲によりけりなんですが、基本的な方向性として大事にしたのは、やっぱり脚本に対して音でどう起伏をつけるかということ。だから、何か新しいことをやるとしても、それはその起伏をつけるための手段なんですよね。そういう意味ではオーソドックスな劇伴かも。

――ちなみに岩崎さんは劇伴制作のなかでいろんなボーカリストの方ともご一緒されていますが、歌モノに興味を抱かれることってあるんでしょうか?

岩崎 それが……最近あまり日本語のメロディが好きじゃないっていうことがわかっちゃったので、今は無理かもしれないですね。それに、自分の向き不向きっていうものもあるじゃないですか。好きならいいかもしれないけど、単に「こっちのほうが儲かる」っていうだけで向かないことをムリヤリやるのはどうなんだ?と。

――なるほど。

岩崎 周りの作家の方に「主題歌を書け」って言われることもあるんですけど、それってただ知名度の話じゃんか、と思って。たしかに歌を書いてヒットすれば、お金にもなるし記憶にも残るだろうし。僕だって未だに『ロミオの青い空』って言われることは多いですしね。でもそれって商売の部分の話で、作家としては大事な部分ではないと思っているので……そんな程度のことでしかないです。

――単純に、今の岩崎さんが歌モノを作られたらどんなサウンドになるのかな、という気持ちはあります。

岩崎 昔は歌のアレンジや曲を書いてましたし、別に嫌いじゃなかったのでできないことではないんだけど。でもどちらかと言ったらそういう日本語の歌を書くよりも、いわゆるクラシカルなものを書くとか、同じ歌でも横文字の言葉のほうが自分の中ではしっくりくる。そういうものを発表する場って、商業音楽のフィールドにおいてはかろうじてアニメだと思っているので、ほかに何かそういうことができる場があったらそこにも行っちゃうと思います。

――その「発表の場」という点ですと、10月はコンサートもございますが。

岩崎 今回は笠原弘子さんや伊集加代さんとか、いろんなボーカリストを呼びます。ただ歌ばかりというわけでもなく、それこそ初期の『焼きたて!ジャパン』とか『るろうに剣心』とかの曲もちょっとやってみようかな?と思っていて。

――となると、バックの編成も気になるところですが。

岩崎 それはね、来てみてからのお楽しみということで。ただおそらく、劇伴のコンサートとしては誰もやったことがないような編成になると思います。僕が前例を知らないだけかもしれないけど(笑)。いわゆるコンサートホールでの公演なので、基本はずっと座って静かに聴いていただければ。でも変に敷居を上げることはしないので、全然カジュアルな格好でお越しください。ただ、座席数は決まっているので、予約は早めのほうがいいかも。

――ちなみに、今回のようなコンサートホールでやろうという動機はどんなところにあったんでしょう?

岩崎 ここ2~3年クラブでのイベント的なライブを何度かやって、「岩崎=クラブ寄りの作曲家」みたいなつまらないカテゴライズに縛られるのもちょっと嫌だなと思って。でも、普通の室内楽のような誰でもできるようなことをやっても意味がないので、「どうやればオーケストラ的なものを、過不足なく最小限の人数で演奏できるか?」っていうコンサートホールでのいいやり方をずっと考えていたんです。その自分なりのひとつの答えが見えたので、今回やってみようと思いました。

――その提示を楽しみにするお客さんも、たくさんいると思います。

岩崎 うーん、僕自身もまだこれからアレンジをしないといけないところなので……どうなることやら(笑)。

Interview by 西原史顕/Text by 須永兼次


●リリース情報
「ガッチャマン クラウズ インサイト」オリジナル・サウンドトラック
8月26日発売

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品番:VPCG-83502
価格:¥3,000+税
<CD>
1.Sweet Summer Samba
2.Gatcha Rock
3.PAI PAI
4.Gatcha Dabada
5.Rustic days
6.Mr.Balloon
7.lacrime rosse
8.Violet Ape
9.Armée Rouge
10.kollision
11.Passion
12.Hopeful Wings
13.PAI PAI Ⅱ
14.primavera
15.Air
16.Nirvana
17.Conceited Fool
18.Bringen Sie den Palm
19.Da sprang die Katze rot!
20.in exchange for my life…
21.Hanabi
22.GATCHAMAN Make my day
23.Insight(TV size)/WHITE ASH ※OPテーマ 
24.60億の翼(TV size) ANGRY FROG REBIRTH ※EDテーマ

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