TVアニメ『WHITE ALBUM2』放送記念!! 下川直哉氏スペシャル・インタビュー!

TVアニメ『WHITE ALBUM2』放送記念!上原れなさんインタビューに続き、アクアプラス代表取締役社長であり、フィックスレコードの代表である下川直哉氏スペシャル・インタビューを掲載!

int-131109-001-c001

――下川さんがフィックスレコードを立ち上げられたのは99年のことですが、そもそもゲームの音楽レーベルを立ち上げられた経緯を教えてください。

下川直哉 その頃はまだPC美少女ゲームに主題歌がついてない時代でしたので「主題歌をつけよう」という話になったんですが、同時にその歌が収録されたCDが欲しいという人たちもいるだろうなと思いました。そのCDを販売する為に音楽レーベルを立ち上げ、レコード流通に乗せた、というシンプルな流れです。

――その当時から気になっていたのが、例えばSACDを早いうちに導入されたりと、サウンドの音質について非常に耳が早いところです。そういった音に対するこだわりは当初からなんでしょうか?

下川 将来、データの容量が上がってくると、非常に高音質なものが求められる時代が来るだろうと考えていました。良い音で聴いていただく環境が当たり前になったときにも使える音源として残しておきたい、という考えでした。自分たちがレコーディングのときに聴いている音って、マスタリング前後でモノが変わりますので、「自分たちがOKを出した音源」そのものをリスナーに届けたい、っていう想いもありました。

――最初に見えている音をなるべく忠実に届ける、という。

下川 僕もハイエンド・オーディオ好きなので、自分たちが作った曲が音源になるならいい音の方がいい、っていう感覚ですね。オーディオ好きな人たちが皆さん良い音源を欲しがるのは当然だと思うんですけど、その“良い音”というのは、自分がオーディオ好きでないと理解できないと思います。

int-131109-001-c002

――ちなみに下川さんは元々聴いていた音楽ってどういったタイプのものですか?

下川 J-POPも含め、その時代ごとに流行ったものが大好きでした。もちろん、ゲーム音楽も好きだったので古代祐三さんたちの曲の打ち込みを一生懸命やってたりもしました。ただ、あまりカラーに染まりたくもなかったので、結果的には何でも聴いていましたね。

――ボーカル音楽のプロデュースでは、やはりそういった90年代のアーティストなどを想起しながら?

下川 僕自身の作る曲は90年代前半っぽいんですけど、会社としてはその作品に合わせたものを作っています。『WHITE ALBUM』では、1よりも2の方を若干若々しくということを意識しつつ、都会的な要素も少し混ぜていますね。『WHITE ALBUM2』のボーカル曲は、全般的に80年代後半から90年代前半のエッセンスを取っています。僕は流行りって螺旋状に回転していると思っています。1周回って同じポイントに来ても、少し進化していて高さが違うんですよね。今20代前半から10代の人たちがあまり聴き馴染みのないような時代のテイストを抽出しながら、若干現代の音に持っていき、「なんとなくノスタルジックだけど、古臭くもない」ように聴こえるよう作っていることが、僕的に挑戦しているポイントです。“今っぽさ”もそれほど叩き込んでないので、新しいとも感じないと思うんですけどね。逆に30代から40歳くらいまでの人たちにとっては、ノスタルジックでありどストライクで馴染みやすいはず。その間の20代後半は、微妙に古さを感じるかもしれません。

int-131109-001-c003

――なるほど。続いて『WHITE ALBUM2』についてお伺いしたいと思います。先ほどおっしゃっていたような音楽的エッセンスを入れていくというのは、物語の内容を確認してから決まったんでしょうか?

下川 企画会議で丸戸(史明)さんと舞台や設定について話をしてからですね。今回は高校生活で「バンド組もうぜ」からスタートしますので、割と現代っぽさや若々しさを意識した、ポップス寄りのサウンド作りで。ピアノの印象が「WHITE ALBUM」にあり、そこから雪のイメージを強く意識できますので、ピアノをベースにしています。曲に関しては丸戸さんから任せていただいているので、こちらのイメージでつけた音を聴いてもらう、という感じで自由にさせてもらっています。

int-131109-001-c004

――『WHITE ALBUM2』のなかでも最初に雪のイメージが飛び込んでくるのは、劇伴やそこでのピアノの使い方から受ける印象が非常に強いから、という点もあると思います。

下川 ファンからすると、原作でイメージのついているサウンドがありますので、当然聴き馴染みのある曲がかかるだけで、そのシーンは格別なものになるわけですよね。逆に、知らない人からすれば新しい曲だから、潔くイメージ通りの原曲を使うべきだろうと思いました。そのうえでどうやって違いを出すのか? ということを考えたときに、「あれ、この曲何?」って思われても「同じの使ってねぇ?」って言われてもダメだとも思いました。「アニメ用に良くなってる」と思わせるためには、映像とストーリーと音楽との3つがリンクしたときに出せる凄みみたいなものを推す以外に方法はないだろう、ということに行き着きました。

――なるほど。

下川 ですので、原曲をいかに上質なものにするか、ということをめざしました。そこで『WHITE ALBUM2』という人間ドラマを描いたアニメは、ほとんど生音で勝負することにしました。人間の揺らぎみたいなものを大切にすることで、人間ドラマを彩るというか。曲単体で「すごい」と思っていただくよりも、アニメを盛り上げるために、全体として凄みみたいな部分を出せるように作っています。最後まで見終わった人たちが「BGMが耳について離れない」って思ってくれればいいな、と思って。そういった部分も含めて、アニメでは音楽をかけていい範囲ギリギリいっぱいのところまで、かけさせてもらってます。僕は、見てる方々の気持ちをどう動かすか? という部分で聴覚が握ってるものは非常に大きいと思っていますので、今回は音楽が出しゃばり気味で引っ張っていく、という感じでやらせてもらっています。

int-131109-001-c005

――では、上原れなさんの歌われるボーカル曲も、BGMと同じようなテーマを持たれて録り直したりアレンジをし直されたんでしょうか?

下川 そうです。ほぼ生バンドにしていることもあり、意図的に少しパワー感のあるサウンド作りをしています。『WHITE ALBUM2』というのは落差が非常に激しいストーリー構成なんですが、アニメでは毎週OPにずっと同じ曲がかかるので、楽しい時期も悲しい時期もどちらにもとらえれるように、少しパワーを上げて中性的なサウンドを作る、という点に気をつけました。今話したこととは逆になりますが、OPはむしろなるべく変わった感が出ないようにもしています。聴き比べたら「全然違う!」っていう感じにはしてあるんですけどね。

――他にボーカル曲では、雪菜が劇中歌として中島みゆきさんの「悪女」をカバーしています。10年前の「WHITE ALBUM」がヒット曲として存在する世界というものも含めて、作品全体について音楽の歴史がちゃんと存在しているというのが非常に感じられるのですが。

下川 音楽モノとしての、現場が“新たな面白さ”を散りばめようとした遊びというんですかね? ただ、それを入れる以上は意味のあるサウンドであり、作品の世界観を崩さない雪菜が歌っていても大丈夫なものを選びました。「なんで雪菜が悪女を知ってるの?」という疑問もあるかと思いますが、僕の中では、雪菜のお父さんが聴いていたのを自分も聴いて覚え、今では十八番的な曲になっているんじゃないかって思っています。丸戸さんの設定じゃなく僕の中での勝手な設定ですけどね。

――劇伴含めいろんなところに音楽が張り巡らされているので、そういった“聴くアニメ”という見方もまた面白いですよね。

下川 そうですね、声優さんたちのお芝居の部分でも、すごく細かく頑張ってやっていただいていますし。間の使い方や表情に対しての呼吸とかも、すごくていねいに作り上げているので、やっぱりトータル・バランスの高さを体感してもらうアニメになっていると思います。

int-131109-001-c006

――下川さんの手がけられる音楽世界は、アニメやコンサートなど本当に色々な聴き方ができると思います。

下川 何よりも大事だと思うのは、自分が「こうだったらいいのにな」と思うものを実現させたい、ということです。丸戸さんも同じことを仰ってますが、自分自身が第一番目のファンであることが重要ではないでしょうか。クリエイター寄りにならず、ユーザー側として、自分が欲しいものや、泣けたり感動できるものに仕上げると、自然といいものになるんじゃないかな? と思っています。

――最後になりますが、下川さんとしてはアニメ版の出来について、今現在の手応えはいかがですか?

下川 自画自賛になっちゃいますけど、現時点では最高です。音楽・映像・声優さんもそうですし、シナリオはもう言わずもがなですしね。すごい完成度だと僕は思っています。僕がソフトを買う基準は、やはりそれに値するクオリティが揃っているかどうかなんです。この作品にはそれが揃っていると思います。

[プロフィール]
シモカワナオヤ/ゲームメーカーである株式会社アクアプラス代表取締役社長にして、音楽レーベル・フィックスレコードの代表。『ToHeart』シリーズや『WHITE ALBUM』シリーズなど数々のヒット作を手掛ける一方、同作などの音楽やSuara、上原れなといったアーティストの作曲/プロデュースを行っている。

関連リンク

この記事を書いた人