【特別対談】kz(livetune)×TAKU INOUE

【特別対談】kz(livetune)×TAKU INOUE

2020.03.18
対談

リスアニ!創刊号付録CDであるアリス☆クララ(のちのClariS)の「DROP」を手がけ、以降この10年のシーンをクラブミュージックの視点で牽引してきたkz(livetune)と、アイドルマスターの楽曲などで2010年代後半のシーンで大きく輝きを放ってきたTAKU INOUE。それぞれクリエイターとして、またDJとしてアニソンシーンとフロアを揺らし続けてきた二人に、2010年代のアニソン、そしてアニクラについて語ってもらった。新世代クリエイターたちによって彩られたこのディケイドを二人はどう見つめ、ビートを刻んできたのか。そして、そこから導き出される2020年代型のアニソンとは――。

お二人は今でこそ様々なクラブでも何度も共演されていますが最初に出会ったのはいつ頃でしたか?

TAKU INOUE最初は……MOGRA(秋葉原にあるクラブ)かな?

MOGRAですね。

TAKUMOGRAの6周年のイベント(2015年8月29日)ですね。

kzTAKUさんは気がついたらこの界隈にいたという(笑)。

TAKU最初は「Pon De Beach」(我那覇響)ですよね。あれを出した直後くらいに、MOGRAに急に呼ばれたんですよ。そのときにタイムテーブルがkz先生のあとだったという。

kz当時はもう「Pon De Beach」のために呼んだみたいなもんですからね(笑)。もうとにかくアーメン(・ブレイク。ウィンストンズ「Amen, Brother」のドラムをサンプリングした、鉄板のサンプリング)みたいな音が鳴っているという。

たしかに2015年はとにかく「Pon De Beach」でクラブシーンがざわついた頃でしたね。

kzざわつきというか、もうアーメンですね(笑)。

TAKU2番Aメロですね。

kzあれを聴いてもう「アーメンがいっぱい鳴ってる! やったー!」みたいな(笑)。

TAKUアニソンアーメン好き部が周りにはいっぱいいるから。

kzSilvanian Familiesとかね。アーメン的な音って、僕らも速い曲とかで結構入れてるんですよ。でもメインじゃなくて隙間を埋めるための汚しというか、ディストーションギターと同じ感覚で出していたのはあったんですけど、あそこまでフィーチャーしたのはなかった。「新しいバカがいるな」と(笑)。

TAKUそれでMOGRA界隈のDJたちがフックアップしてくれたのがこの出会いに繋がっている感じはありますね。

kzあの頃はTAKU INOUEはきっと綺麗な人間なんだろうなと。

TAKU俺もそう思ってた(笑)。こんな本性を暴かれることになるなんて。料理対決(2018年Twitter上で配信された、TAKU INOUEとDJ WILDPARTYによる料理対決(“BREAKFAST COLOSSEUM”のこと)までさせられ(笑)。

kzそうそう(笑)。ああいう曲を作るやつは何をしても大丈夫っていう謎の信頼がありましたね。TAKUさんもあの辺りからブレイクスルーした印象がありますね。

TAKUうん、あの辺からですね。「Hotel Moonside」(飯田友子/2015年)もその頃だったし。その間にkz先生も「SEVENTH HAVEN」(セブンスシスターズ/2016年)があって。

kz畳みかけ感がありましたね。

たしかにクラブシーンでの大きなうねりがあった、特にお二人の楽曲をフックにして、というのは2015年以降という印象がありますね。

TAKUそうですね、あの辺りからDJのブッキングも増え出して。

ちなみにTAKUさんはそれ以前のDJ活動はいかがでしたか?

TAKUそれ以前もDJはやっていたんですけど、当時はナムコにいたので、ナムコのゲームミュージックのDJという現場が多かったですね。

kz『鉄拳』のイベントとかありましたよね。

TAKUそうそう。あとはレッドブルのゲームミュージックをフィーチャーしたイベント(“Red Bull Music Academy presents 1 UP: Cart Diggers Live”)とかに出たり。

kzわりと硬いイベントでしたよね。こんな我々がやるしょうもないイベントではなく(笑)。

TAKUそうだねえ。お酒ばっかり出るようなイベントではなかったですね(笑)。

kzあとはあれも出ていましたよね。ショートサイズのジングルを作るやつ。

TAKU“CEDEC”というゲーム業界の技術交流会というのがあるんですけど、そこで、“サウンドクリエーター大喜利!各社対抗「ジングルライブ制作」”という、その場で初めて15秒ぐらいの映像を観て、35分ぐらいで音をつけるというやつがあって、そこで優勝したんですよ。

kz無茶苦茶クオリティが高かったんですよ。そういう真面目なものに出る人というイメージしかなかったので。

たしかに話を聞くと意識高そうなイメージですよね。

TAKUそうなんですよ、こんな感じじゃなかったんです……(笑)。

kzでも音楽に携わる以上はエンターテインメントを追求していかないと(笑)。

TAKUそういうことですね(笑)。

改めて、今回はお二人の活動から見るアニソンとクラブミュージック、あるいはクラブシーンとの関係性についてお伺いしようかなと。kzさんはこの10年でいうとリスアニ!としてはもちろん、ClariSでのお仕事からになりますね。

kzそうですね。「irony」が2010年になりますね。

TAKU「Tell Your World」は?

kz2011年。リリースは2012年だけど、CMは2011年末に流れたので。

もちろんその頃はMOGRAをはじめクラブシーンでも活躍されていましたよね。

kzそうですね。MOGRAが2009年スタートになるので。

ちなみにMOGRA黎明期というのはどんな現場でしたか?

kz当時だとまだカットアップが流行っていたので、アニソンそのままをフィーチャーするリミックスというよりかはもっと素材的に扱って、みたいなものが多かったですね。特に当時は『らき☆すた』周りの楽曲も多かったし、MAD(ムービー。ネットを中心に盛り上がった、アニメや特撮などを個人編集してアップするカルチャー)流れというか、カットアップとか刻みすぎて本人しかわからないというか。

TAKUSilvanian Familiesとかね(笑)。

kzSilvanian Familiesとか(笑)。本人だけ感動して泣くみたいなクラブトラックみたいなのがあって。

TAKU今でもやってますけどね(笑)。

kzだからそういうポップスにフィーチャーしている感じではなかったですね。今のほうがボーカルにちゃんとフォーカスしているんですけど、前はもっとダンス寄りという感じでしたね。

たしか2000年代末期はナードコアなど、ハードコアテクノとアニメのサンプリングというトラックもネットを中心に盛り上がっていましたね。

kzあ、そうですね。クラブ的にも“DENPA!!!”(2000年代に一世を風靡した、アニメとファッション、音楽が融合したクラブイベント)がひと段落した2009年にMOGRAができた頃で、その流れもあって当時はブレイクコアとか大暴れ系なクラブトラックが多くて、アンダーグラウンド寄りのリミックスが多かった気がしますね。

TAKUMaltine(Records)もその辺り?

kz設立はもう少し前ですけど流れ的には同時期ですね。あそこでやっていた人間がポップシーンで曲を書くようになったんですよね。当時からの仲間で、例えばPandaBoYも今や『ごちうさ』お兄さんとなっていますが(笑)。あとはfu_mouちゃんとか俺とか、そこらへんでワーワーやっていた人たちが表でポップスを作るようになったというか。

TAKU働くようになったという(笑)。

kz人間として生を全うするようになった10年だったと(笑)。

そうしたクラブ出身のクリエイターがアニソンを含むオーバーグラウンドに進出したのがこの10年であると。

kz「irony」もそうですけど、俺とかは強めのビートをちょっとずつ混ぜていって、「あ、ここまでやれるんだ」っていう解釈を拡大していくっていう作業を10年ぐらいでやっていたという。

TAKUならしていく作業というか。

kzそうそう、耕していくというか段々と鍬を入れていくという。例えば突然「Pon De Beach」が10年前にあったところで、違うと思うんですよ。

TAKU当時と土壌が違うというかね。

kzアニソンで踊るというのを我々が10年かけてやってきたんですよね。

TAKUそこは耕してもらったなと思います。

たしかにこの10年で、kzさんたちがアニソンにおけるクラブミュージックの浸透というのを行ってきたというのはありますよね。

kzただ、俺はあまりクラブミュージックに行かないようにはしています。思いっきりフューチャー(ベース)とかにいったりしないし、要素は混ぜていくんですけど、そういうのをやるのは別の人がやってくれればいいなと思っていて、なので俺はポップスで止めているという感じですね。ただみんなでいろんなことを好き勝手にやっていったらいいなって思っていましたけどね。

「irony」など一連のClariS仕事のほか、この10年の中でハイライトに数えるとなると、やはり「SEVENTH HAVEN」は外せないかなと。

kz「HAVEN」はそうですね。いまだにあの呪縛から逃れられていない気がします(笑)。いうたら「Radio Happy」も5年前ぐらいですもんね。

TAKUそう考えると頑張らないと。

kz我々もこすりすぎですよね(笑)。

「SEVENTH HAVEN」も「Radio Happy」も、それぐらい鮮烈だったんですよね。

kz今でもかかりますからね。「ホテムン」も今でもかかるでしょ。

TAKUうん。

そうした楽曲たちによってMOGRAを中心としたアニクラシーンにうねりが出てきたと思います。

kzたしかに、あの辺から人が増えた気がする。

TAKUそれはあるね。MOGRAの周年イベントも入場規制がかかったのもあの辺だよね。

kz逆に言うと、あそこまで停滞というか、頭打ち感は正直あって。そこからのブレイクスルーはTAKUさんあってのものというのはあったんですよね。俺とかPandaBoYとか、fu_mouちゃん、イツメンで固まりすぎていて、「新人こねえな」って思っていて。若手はいたんですけど、ただポップスができてクラブトラックも、というバランスが整った人というのはそうそういるわけではないので、「パンちゃん以来いないね」っていう話をずっとしていたんですよ。そのパンちゃんの次がTAKU INOUEという感じだったので、ありがたいなって。救世主(笑)。

TAKUさんがフロアに登場した功績というのはクラブシーンの新陳代謝という点でも大きかったわけですね。

kzその流れで言ってしまうと、TAKUさんは最初DJうまくなかったんですよ。

TAKUうん、わかるわかる。

kzそれこそ最初俺とMOGRAに出たときとかは、低音の出し方とかビートの作り方はそれっぽいんですけど、でもナチュラルではないというか、見聴きしている感じなんですよ。それからクラブに入り浸り始めて、ドロップのビルドのバランスとか曲構成が明らかに変わったじゃないですか。

TAKUうん。

kz現場感が無茶苦茶出たんですよね。それってすぐわかるじゃないですか。今のTAKUさんはフロアが見える音作りをしているので、やっぱりお酒って重要なんだなって(笑)。

フロアに降りて飲み続けた結果(笑)。

kzでもフロアに居続けるってやっぱり重要なんだなって思います。

フロアで鳴っている音を知っているかどうか、というか。

kz鳴っているかというよりかは、お客さんがどう盛り上がっているか、かな?

TAKUDJ的にもかけやすいですしね。そういう盛り上がっている曲のほうが。

kz単にキックを重くすればいいってもんじゃないんですよね。そもそもTAKUさんのキックってそんなに重くないですよね。

TAKU重くない。全体のバランスとして迫力を出せればと思って作っているので。

kzちゃんと盛り上がる絵が見えていればということですよね。「(さよなら)アンドロメダ」とかもそうですけど、「ここでこうなるな」っていう景色を描けるというのがあるかという話で、それは現場にいないとできない。

ちなみに、TAKUさんから見てkzさんのプレイの魅力はなんだと思いますか?

TAKU会う前から「irony」とか「Tell Your World」とかは当然一般教養として聴いていたのですが(笑)、やっぱりkz先生の場合は曲が強いだけじゃなくて、長い歴史が培ってきた文脈というものが、プレイ中にもkz先生の向こう側に見えるんですよ。そこに興奮しちゃうんですよね。

kz気持ち悪いなあ(笑)。気持ち悪いなあ(笑)。

TAKU曲自体もちろんいいんですけど、曲が持っている文脈も含めて聴かせるという意味で、kz先生に敵うDJは今のところいないんじゃないかなって。

kzいやあ~(笑)。

そういったお二人のサウンドというものをきっかけの一つとして、それこそこの5年、クラブミュージック的なアニソンというものはよりポピュラーになっていったという印象があります。

kzでも俺の中では、モロにクラブミュージックというのは聴いたことがないんですよ。

TAKUそうそう。要素として引っ張ってくるというのはいっぱい出てきましたよね。

なるほど、純然たるクラブミュージックというより、クラブミュージックのエッセンスがあるアニソン、という言い方になりますかね。

TAKU我々のなかではPerfume以前Perfume以降というか、中田(ヤスタカ)先生というのはありませんか?

kzそうですね。あと「寝・逃・げでリセット!」(柊つかさ/2007年)以前以降という感じがありますね。あれはアレンジがnishi-kenさんで、中田さんと近い人の音でもあるし。

やはりそこは『らき☆すた』というのは大きいわけですね。

TAKUその辺りクラブ向けの音があって、2015年でブワッと出てきたというか。

kz俺はそこからぶっちゃけあまり変わってないかな。Perfume以降でそういうサウンドは増えたと思うんですけど、それから進化したというよりかは、どちらかというと同じ延長線上にあるなと思っていて。俺としてはクラブミュージックという視点で言うと、最近きたのは「Share the light」(Run Girls, Run!)1曲という気がするんですよ。

TAKUなるほどね。つい先日だ。

kzあそこで一気に来たという感じで。だから今まではクラブミュージックではなくPerfumeなんですよね。ちゃんとクラブミュージックのラインができたのは「Share the light」しか思い浮かばない。ゲームミュージックではいっぱいありますけど。あとは石濱(翔)くんの「アイカツ!」のリミックスとかそういう話になってくるんですけど。

ああ、アニソンというよりゲームの音楽のほうがその傾向は強いと。

kzやっぱり顕著なのは音ゲー以降なんですよね。結局アニソンってビートでどうこうするわけではなくて、それでいったらTAKUさんや石濱くんがデレ(アイドルマスター シンデレラガールズ)で変なビートをいっぱい作ってきたんですよね。あそこで実験的な音楽の土壌が出来たような気がする。「アイドルマスター」だからと言うのはある。

TAKU聴いてくれる人がいっぱいいるからね。

kzそこから、リスナーが受け入れてくれる土台がある状態で曲を作れるじゃないですか。ジャンルは違いますが広川(恵一)さんとかもそうだし、そこで変な作品を作ることができるという。

TAKU「アイドルマスター」ってそういう空気感があるかな。

kz「アイドルマスター」はやっぱりでかいんですよね。「アイドルマスター」と「アイカツ!」ですね。

「シンデレラガールズ スターライトステージ」にしても「Tokyo 7th シスターズ」にしても、音ゲーに合わせたサウンド作りというものがあるわけですね。

kzきっとボタンを押したくなる曲なんですよね。

TAKU必然的にビートが立ってくるからね。

kzだからビート強めな曲ってアニソンではなくゲーソンでやっているじゃないですか。アニソンは基本メロを立たせないといけないので。

近年人気のソーシャルゲーム、特に音ゲーとの親和性の高い音楽というのは、たしかに近年の大きなトレンドの一つかもしれないですね。

kzあとはソシャゲのいいところは、「ナナシス」も「デレステ」もそうですけど、走っている期間が長いじゃないですか。リスナーも訓練されてきて、「このコンテンツはここまでいってくれるんだな」っていう信頼感がコンテンツとリスナーの間に生まれるんですよね。

TAKUいきなり一発目で「Hotel Moonside」や「SEVENTH HAVEN」とかいけないしね。

これはここ5年のトレンドでもありますし、2020年代も引き続きその傾向は強まっていきそうですね。

kzそうですね。あと最近は、トラックメイカーで若手で優秀な人が増えてきて、リミックスものが増えたのはありますね。

TAKUイキのいいのが出てきましたね。

kzこんなに若手がいっぱいいるのは昔はなかったので。それでいうとTAKUさん以降増えてきたというのはある。あのあとフューチャーが流行ったじゃないですか。フューチャーベースが流行ったのは2016年ぐらいだから、あそこから若手のトラックメーカーが増えて、フューチャーベースのリミックスも増えていったという。で、TAKUさんもフューチャーを作るようになって。

TAKUあれはなんでなんですかね? インターネットシーンとのリンクがあったのかな。

kzうん。例えば韓国勢もすごく元気なんですよね。そこだとNorとか、Zekkもそうだし。あと日本でもUjico*くんとかに感化されて、そこから最近また増えてきたのはめっちゃありますね。

韓国をはじめ海外も巻き込んだリミックス文化が盛り上がっているのは今っぽいですね。

kzフューチャーベースとかフューチャーハウスって、アニソンとめちゃくちゃ相性いいんですよね。

TAKUまたアニソンを聴いてきた若い人がそういうムーブメントを作っているというサイクルも出来ている。だから必然的に相性は良いはずなんですよね。

kzそれこそ10年前の俺の曲を小学生の頃に聴いて最近曲を作り始めました、という人もいるし。

TAKUそうやって10年前に撒いた種の芽が今出てきたんですね

kz撒いておいてよかったなって思います。

芽が出た新しい才能が、どうアニソンシーンと接近していくかというのは注目していきたいですね。

TAKUこれからアニソンにグッと入ってくる可能性もあるわけですよね。そういう若い人たちがフックアップされていくシーンになるかもしれない。

kzそれこそ『アズールレーン』のエンディングのカップリング(鹿乃「CAFUNÉ」)でAireが(田中)秀和くんの曲のアレンジやったり。そういうのが増えていくかもっていう感じですかね。この流れはそれこそ去年ぐらいからスタートした流れというか。

TAKUたしかにこれから来そう感はあるなあ。

ところで、この10年のシーンについて話が戻っちゃいますが、お二人から見て、クラブミュージックに限らず刺激的なクリエイターはどなたになりますか? 先ほどから田中さんのお名前は出ていますが……。

kz結局田中秀和なんですよ。みんな大好き。優勝。TAKUさんあります?

TAKU……ってなると秀和にならざるを得ない(笑)。

kzあとは田淵(智也)くんだなあ。なので名前を挙げるとリスアニ!のイツメンという感じになりますね(笑)。

TAKUあの二人は名前は挙げざるを得ない(笑)。

それこそkzさんは田中さんが「Star!!」を作った頃、田中さんに感謝する会というのを結成していましたね(笑)。

TAKUやってたね!(笑)。

kz俺とy0c1e(佐高陵平)で秀和くんを焼肉屋に呼んで、「Star!!」のジャケットを置いて、❝田中秀和ありがとうの会”というのをやっていて(笑)。もう今やったらキリないからやってないけど。俺にとって秀和くんはあの曲だったんですよね。あれは無茶苦茶よかった。

TAKU俺は……最近のになっちゃうけどchelmicoかなあ。

kz『映像研(には手を出すな!)』だ。あれはクラブミュージックですからね。アーメンを乗せたくなるでお馴染みの(笑)。

クリエイターとして、改めて2010年代というのはどんな10年でしたか?

kz中堅どころにいた人間たちが頑張っていた印象はありますね。俺も含めてですけど、20代中盤の人たちがめっちゃ頑張ったというか。逆に言うとTAKUさんが今注目を浴びているのもすごいんですよ。

TAKUたしかにそうだよなあ。「ポンデ」が30歳のときで、それまではゲーム畑の人間だったので。

kzあとはオーイシ(マサヨシ)さんもそうだけど。人間いい曲を作るといつでもOKというか、いつでも人気者になれる(笑)。

TAKUだからちゃんとやってると返ってくるんだなって思いますね。もちろんコンテンツが盛り上がるという運の部分もあるんですけど、打てば返ってくることは間違いない。

kzあとはアニクラが盛り上がった10年でしたね。10年前からMOGRAがおかしなことを延々とやり続けたおかげで、全国的に広がっていったという。それをインターネットを通して、当時で言えばUstreamだし、今で言うとTwitchで中継されているわけだし。映像で「現場でこういう盛り上がりがあるよ」って提示したことで、波及したものがいろいろありますね。

2010年代型のアニソンが鳴らされるMOGRAが、いわばターミナルになって全国に伝播していったわけですね。

TAKUそれはでかいよなあ。どの国にDJしにいってもMOGRAファンの人が少なからず来てくれたりして、それはやっぱりびっくりしますよね。

kz聴いている人も元気にならないと界隈は盛り上がらないので。楽しい人を観ていたら、「俺たちも楽しくならないともったいないな」っていうマインドになるんですよね。例えば音源を買って一人で聴いて、あるいは教育するのが友達だけだったらそこまで広がりはないじゃないですか。でもおじさんたちが面白おかしく音楽をかけていたら「楽しそうだな」って人が集まるんですよ。それを観てトラックメーカーになる人も増えてきているし、そういうのも含めて成長しているなと思いますね。

TAKUそう考えるとクラブに行き続けてよかったな。飲み続けてよかったと(笑)。

kz地道でもやってきたことは、いろんなものに繋がっていったんだなと思う。例えばTAKUさんもクラブがなかったらこうなってないかもしれないし。

TAKUそれは絶対ある。

kzみんながみんなそういうふうにならなくてもいいんですけどね。TAKUさんも楽しかったからクラブに来たんだし。

TAKU間違いない。各々のやり方があっていいし、それが俺はクラブだったと言う。

kzさん以降の10年、TAKUさんがフロアに立ったこの5年という流れが見られましたが、ここから先の5年もフロアから新しい才能が生まれてきそうですね。

TAKU面白くなりそうな気がしますよね。

kzTAKUさんが出てきてから5年経ってますからね。そろそろもうひとりぐらい出てこないと。

TAKU面白おじさんが(笑)。

kz新しいおもちゃが(笑)。

TAKU俺もそろそろ引き継がないと(笑)。

kz新陳代謝は必要なんでね。曲の面ではもちろん。そういうと……石濱くんかな?

TAKU石濱くんはいいね。

kzTwitterも面白いし(笑)。

TAKUキャラ的にも曲的にも。

「Twitterが面白い」が一つの評価軸になると(笑)。

kzこの前いろんな作家と話していたんですけど、作曲家って真面目な印象があるじゃないですか。でもエンターテインメントを作っているのに真面目だけなのはよくないんじゃないかと思っていて。TAKUさんがこれほど盛り上がってるのは曲がいいだけじゃなくて、Twitterが面白いというのも絶対あるんですよ(笑)。

TAKU料理対決やったりとかね(笑)。

kzTAKUさんのよさってそこも含めてのものであると思っていて。

たしかに作っている人がこんなに楽しそうにしているというのが見えるというのはありますよね。

kzだから楽しそうにしてなきゃいけないなと思っていて。俺たち、めっちゃ楽しそうじゃないですか(笑)。

TAKUそれ大事(笑)。

それはパンチラインですね(笑)。

kzクラブ文脈とか音楽的な話も大事だと思うんですけど、楽しいや面白いってでかいなって最近また思うんですよね。だってTAKUさんは面白いじゃないですか。

TAKUいいのかなあ(笑)。まあでも、俺も楽しそうにしていることは重要なんじゃないかなって思いますよね。

kzだってクラブミュージックはパーティミュージックなんだから。

TAKUだよね。2020年代も明るく楽しく、でいきたいですね。

Interview & Text By 澄川龍一

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