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INTERVIEW

2023.09.27

TVアニメ『わたしの幸せな結婚』音楽:Evan Call インタビュー/美世と清霞の関係性と心情の変化、和”と“洋”の要素が混ざり合った劇伴音楽のこだわり

TVアニメ『わたしの幸せな結婚』音楽:Evan Call インタビュー/美世と清霞の関係性と心情の変化、和”と“洋”の要素が混ざり合った劇伴音楽のこだわり

和”と“洋”、そして自身のルーツとなる要素が混ざり合った新鮮な挑戦

――今回の劇伴は、ピアノに加えてオーケストラが大きくフィーチャーされています。演奏は大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の音楽でもご一緒された、ブダペスト・スコアリング(Budapest Scoring)が担当されていますが、こちらにお願いした経緯は?

Evan ここ4年くらいよくご一緒しているオーケストラで、どんな演奏で何が得意・不得意なのかも理解していますし、指揮者も基本的に同じ方で、自宅からリモートで繋げて会話しながら作業ができるので作業的にすごくやりやすいんです。もちろん演奏者の弾き方も好きなのですが、特に部屋の音が好みで。日本のスタジオで録ると、もちろんミュージシャンの方は皆さん素晴らしいのですが、部屋の構造上、音のが少し近いように感じてしまうんですね。でも、向こう(ヨーロッパ)は昔からオーケストラレコーディングの文化があるので、その音の響きに向いた空間作りができていて。実際にブタペストのスタジオに足を運んだこともあるのですが、やっぱり音の響きが全然違うんです。音に深さが出るし、より幅の広がりが感じられて、よりシネマチックな感じになります。

――なるほど。あと、先ほど少し話題に出ましたが、今回は一部の楽曲で和楽器も使われていますよね。

Evan 全曲に入れるとくどくなるので、それは避けて、アレンジしながら「これは入れたほうがいいかな」と思った楽曲で使うようにしました。楽曲に彩りをつけるという理由もあります。例えば、日常曲もメニューに結構あったので、全部を同じ編成でやるとどうしても雰囲気が似てしまうんですね。なので少し違うテイストを感じられるように、曲によって和楽器をピックアップして入れる感じでした。

――別媒体のインタビューで、エバンさんは以前に三味線を習っていたというお話を知ったのですが、和楽器や日本の伝統音楽にも興味がおありなのでしょうか?

Evan はい。この数年は地方に引っ越したので習っていないのですが、東京にいたときは長唄の三味線のレッスンを受けていました。一度リサイタルみたいな催しで演奏したこともあって。先生のお母さまが長唄を歌って、私と先生が三味線を弾くっていう。そのときは着物を着て演奏しました(笑)。今はあまり弾く機会はないのですが、今回の劇伴でもオクツキ関連の楽曲などに入っている三味線は自分で弾いています。大正琴も自分で弾きました。

――三味線のどんなところに惹かれて習っていたのでしょうか?

Evan 元々日本の音楽が好きで、興味はあったのですが、アニメの『シュヴァルツェスマーケン』の仕事をさせていただいたときに、原作者の吉宗鋼紀さんという方のお母さんが昔、三味線をやっていて、その三味線を私に譲ってくれたんです。彼の家族は三味線をやっている人が多かったみたいで、私が教わっていた先生も彼のいとこで、紹介していただいてレッスンを受けていました。

――そうなんですね!意外な接点で驚きました(笑)。今回はその経験を活かすことができたわけですね。

Evan まあ演奏レベルは全然ですが、ちょっとした味が必要なときは自分で弾きたいなと思っていて。もちろん楽曲は自分が作っていますが、レコーディングした音源に自分のエッセンスが残っていないのは寂しいですし、自分の体で入れた音を入れておくと自分的にも嬉しいので。

――日本でのレコーディングメンバーのクレジットによると、二十五絃箏は喜羽美帆さん、尺八は松本宏平さんが演奏されていますね。

Evan はい。お二人とは別の仕事でご一緒したことがあったので、その流れで今回もお願いしました。チェロの西方(正輝)さんとヴァイオリンの對馬(佳祐)さんも、「鎌倉殿の13人」で弾いていただいた方なんです。ほかにもピアノなど、基本的にソロが目立つパートは日本で録りました。もちろん向こう(ブタペスト)でもチェロやヴァイオリンのソロは録れますが、日本だとその場で細かく指定しながら弾いてもらうことができるのでそうしました。そのなかでも今回、ブダペストのオーケストラでもクラリネットを録っていますが、ソロのクラリネットは難しいフレーズが多かったので、自分の好きなクラリネット奏者(中ヒデヒトさん)の方にお願いして、珍しい録り方をしました。

――さらにアコースティックギター&マンドリンは、エバンさんと同じミラクルバス所属の作曲家・堤 博明さんが演奏しています。

Evan 彼も忙しい人だから申し訳ない気持ちもあるのですが、いつも無理言ってお願いしています(笑)。

――でも、逆に堤さんの作品にエバンさんが歌で参加していることもありますよね。

Evan そう、たまにあります。まあ自分が歌う分には1~2曲なのであまり時間はかからないですが、こちら側からお願いする場合、ギターは多いときは15曲くらい弾いてもらうことがあるので結構大変になってしまって。でも、いつも良い演奏をしてくれます。

――改めて、今回の作品ならではのチャレンジができた楽曲はありますか?

Evan 先ほどお話した和楽器に関しては、以前に劇伴ではない仕事で使ったことはあったのですが、こういった物語に付ける音楽でオーケストラと一緒に混ぜて使うのは今回が初めてでした。それと先ほどお話した「A Home for the Heart」のような和風のメロディの楽曲も、今まで作る機会があまりなかったので、それは自分にとってもチャレンジになりましたね。

――逆に今までのご自身の経験を活かすことができたと感じる部分は?

Evan 自分は元々民族音楽が好きで、音楽を始めたのもブルーグラスというアメリカの伝統的なフォークミュージックからだったし、アイリッシュも含めて色んなジャンルを音楽に興味を持ち始めた頃から聴いていて。日本の音楽もアニメやゲームをきっかけに知って、色々聴いてきたのですが、今までそういう部分を仕事で活かす機会があまりなかったんです。でも、今回はオーケストラやピアノに和楽器を入れたりすることで、そういう自分の好きなジャンルを混ぜることができて良かったです。

――ここまでアニメをご覧になってきたなかで、劇伴音楽の使われ方にはどんな印象をお持ちですか?

Evan すごく良いです。よく考えて音楽を付けてくれていて、きっと自分が楽曲セレクトするよりも全然上手いと思います(笑)。先ほど話した第1話のシーンも良かったですが、一番印象に残っているのは第6話の清霞が美世を助けに行くときのシーン、相手を倒したあとに蔵に行く場面ですね。そのときに使われている「Softly Sings the Heart」は3分ちょっとの長い曲なのですが、楽曲の展開とキャラクターの動きがバッチリ合っていて。清霞が扉を開けるときに楽器の編成が増えて、「今からすごいことが起こるのかな?」と思うようなシーンになっていて、素晴らしかったです。楽曲を納品するときはステムデータで渡すのですが、ステムの使い方や楽曲の選択肢のバランスも含めてシネマチックで素晴らしかったです。

――改めて、TVアニメ『わたしの幸せな結婚』は、ご自身のキャリアにとってどんな作品になりましたか?今の実感を教えてください。

Evan 昔の日本を舞台にした作品で言えば、去年の大河ドラマ(「鎌倉殿の13人」)もありましたが、それはどちらかと言うと日本国内を中心に観られている作品で。でも、今回のアニメは、海外の方にも多く観られているということで、世界中の色んな人に、自分は和と洋が混ざったような楽曲も作ることができると知ってもらうことができて嬉しいです。生まれ育ちはアメリカですけど、日本っぽい音楽を作るのも好きということをアピールしたいです(笑)。

――ちなみにエバンさんのご家族やアメリカの友人が本作の感想をくれたことは?

Evan 全然、誰からもきていないです(笑)。ちょうど放送が始まったときに、両親が日本に来ていたので一緒に第1話を観たのですが、父はいつもカウボーイハットとサスペンダー的な格好をしているカントリーカウボーイ的な人なので、あまりアニメには興味がなくて(苦笑)。友だちも、自分が日本に住み始めて12年くらいになるのでなかなか会う機会がないし、地元が小さな町なので、みんな別の場所に出て行ってしまって、帰ってもほとんど誰もいないんです。だから私が何をしているのかもあまりわかっていないと思います(笑)。

――本作のお仕事で、音楽家として何か新しい経験や気づきを得ることはできましたか?

Evan よりメロディが得意になったと思います。もちろん以前からメロディを意識して楽曲を作っていますが、今回は心情系の楽曲が多かったので、そういった曲調のものを作ることが多くて。今までも色んな仕事で心情系の楽曲を作ってきましたが、たくさん作っていると手癖が付くケースもあるんですね。でも、今回は、和と洋が合わさった普段とは少し違うテイストだったので、自分の手癖をなくして楽曲を作ることができて。もちろん「エバンっぽい曲だな」と感じる人もいると思いますが、それはそれで全然良いことだし、メロディを作るうえでより良くできるようになったと思います。


●リリース情報
TVアニメ「わたしの幸せな結婚」オリジナルサウンドトラック
音楽:Evan Call
2023年9月27日(水)発売

■mora
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【CD 2枚組】
品番:ZMCZ-16891
価格:¥3,520(税込)

●作品情報
TVアニメ『わたしの幸せな結婚』

【キャスト】
斎森美世:上田麗奈
久堂清霞:石川界人
斎森香耶:佐倉綾音
辰石幸次:西山宏太朗
ゆり江 :桑島法子
五道佳斗:下野紘

【スタッフ】
原作:顎木あくみ(富士見L文庫/KADOKAWA刊)
原作イラスト:月岡月穂
監督:久保田雄大
設定・監修:阿保孝雄
シリーズ構成・脚本:佐藤亜美、大西雄仁、豊田百香
キャラクターデザイン:安田祥子
色彩設計:岡松杏奈
美術監督:片野坂恵美(インスパイア―ド)
美術監修:増山修
美術設定:菱沼由典、曽野由大、吉﨑正樹
プロップ:高倉武史、ヒラタリョウ、みき尾
撮影監督:江間常高(T2スタジオ)
3DCG監督:越田祐史(スタジオポメロ)
着物デザイン:HALKA
編集:黒澤雅之
音楽:Evan Call
音楽スーパーバイザー:池田貴博
音楽制作:ミラクル・バス
音楽制作協力:キネマシトラス/KADOKAWA
音響監督:小泉紀介
音響制作:グロービジョン
脚本開発協力:森本浩二
アニメーション制作:キネマシトラス

【あらすじ】
この嫁入りは黄泉への誘いか、奇跡の幸運か――

名家に生まれた美世は、実母が早くに儚くなり、継母と義母妹に虐げられて育った。
嫁入りを命じられたと思えば、相手は冷酷無慈悲と噂の若き軍人、清霞(きよか)。
数多の婚約者候補たちが三日と持たずに逃げ出したという悪評の主だった。

斬り捨てられることを覚悟して久堂家の門を叩いた美世の前に現れたのは、色素の薄い美貌の男。
初対面で辛く当たられた美世だけれど、実家に帰ることもできず日々料理を作るうちに、少しずつ清霞と心を通わせていく――。

これは、少女があいされて幸せになるまでの物語。

©2023 顎木あくみ・月岡月穂/KADOKAWA/「わたしの幸せな結婚」製作委員会

関連リンク

Evan Call
公式X(旧Twitter)
https://twitter.com/realevancall

TVアニメ「わたしの幸せな結婚」
公式サイト
https://watakon-anime.com/

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