――収録曲を1曲ずつ詳しく聴いていきたいんですが、まずは「セイテイノア」。漢字に直すと「井底蛙」で、これは渋いタイトルだなと思いました。
叶 タイトルは悩みましたよね。
yuxuki waga 悩みましたね。カタカナにしたらインパクトがあるかなという話で、あえてこれにしました。
――かなりアグレッシブな曲調ですが、叶さんとしてはどんな印象の楽曲ですか?
叶 この曲は、ブランディング的に大丈夫かなという話があったんです(笑)。結構、自分のイメージと離れてるんじゃないか、みたいな……。でも「僕はこれが好きなので、これがいいです」と言いました。僕はイメージと実際が違うと言われることが多いんですけど、そのギャップが出ている曲なのかなと思っています。僕としてはマインド的にはすごく共感しやすい曲でしたね。
――世の中にうんざりしながらも、やりたいことをやればいい、という歌詞ですよね。
叶 思っているけど言わないことって、きっとみんなあるじゃないですか。だから歌っていて気持ち良かったですね(笑)。
yuxuki waga 歌詞のトゲがすごいですよね(笑)。
叶 僕から「もう少し尖った歌詞にしてほしい」とお願いしたのがこの曲なんですよ。最初にいただいた歌詞に、もっともっとパンチを強くしてほしいって。
yuxuki waga 2段階ぐらい強くなったよね(笑)。
――和賀さんとしては、作曲・編曲のebaさんとはどんなやり取りをされたんですか?
yuxuki waga まず、大前提なんですけど『夜明かし』という作品が、日が落ちたあとから夜明けまでの活動や心境を楽曲の流れで表現したものなんですね。だから、1曲目から順番に曲を聴いていくと、徐々に時間が経っていく感じなんです。「セイテイノア」は19時くらいで、「さあ、街に出て遊びに行こうか」みたいな楽曲ですね。ebaくんとは夜の街に繰り出すようなテンポ感がいいなと話していました。もう1つ、叶くんには“都会の夜の黒猫”というイメージがあったので、それも踏まえて曲を発注した感じですね。
――この曲は冒頭がシティポップっぽい感じで始まるのは、街に出て遊びに行くイメージからきているんですか?
yuxuki waga まさに、それが狙いですね。夜が始まるぜ!みたいな感じで。
――叶さんが歌唱する際に心がけたことは?
叶 歌うときに、良い子でなければないほどいいと思っていました。
yuxuki waga 叶くんはノってくると歌に良い感じのクセが出てくるんですけど、自然にロックな感じのバイブスが出るので、それを上手く収録したいと思っていました。かっこいいですよね。
――終わりの“清々すんわ”の吐き捨てるような感じもかっこいいなと思いました。
yuxuki waga あそこは元々メロがあったんですけど、レコーディング現場でセリフにしようという話になって。何回も“清々すんわ”って言ってもらいました(笑)。
叶 色んなテンションでやりましたね(笑)。
――2曲目の「Midnight Showcase」ですが、夜が更けてさらにアグレッシブな曲になっていますね。巻き舌やラップが強烈で。
叶 これはすごかったですよ……(笑)。割と早い段階にデモをもらったんですけど、練習する時間がほしくて収録をあとのほうにしてもらったんです。デモ音源を0.5倍速からだんだん速くしていって練習をしました。譜割りも難しくて早口だし、どうしたら歌いやすいか何度も聴き込みましたね。
yuxuki waga こんなに歌詞が長い曲、僕も見たことないですね(笑)。
叶 収録時間も長かったですよね。
yuxuki waga 7時間くらいかかったんだっけ?
叶 当初の予定より大幅に長かったです(笑)。
――作詞・作曲・編曲はかめりあ(Camellia)さんですが、和賀さんとしてはどういうイメージで発注されましたか?
yuxuki waga これはテーマがちょっと面白くて、“千両役者”というイメージで発注したんです。叶くんって人によって違う印象を持たれる人で、かわいい、癒しキャラという部分もあるし、FPSをやっているときはぶっ飛んでるときもあるし(笑)、死生観を歌う儚げなところもあったりして、配信という舞台で様々な姿を見せるのが“千両役者”なんじゃないかというのがまずありました。それに加えて、叶くんも色んな人たちから、色んなプレッシャー、色んな願望、色んなイメージの押し付けなどを持たれているなかで、それらをすべて自分のものとして昇華してしまう強さがあって、“求められる自分と、自分が求める自分”をミックスして「かかってこいよ!」みたいな変幻自在なカリスマ性を表現できたら面白いのかなと思って。かめりあさんにはアンチヒーローというか、パンキッシュでカウンターカルチャーで強めな感じ、というお願いをしましたね。そして叶くんからは「エレクトロスウィングをやりたい」というリクエストがあって。
叶 好きなんですよ、エレクトロスウィング。
yuxuki waga なので「エレクトロスウィングにトゲを加えてほしい」とお願いしたら、とんでもない楽曲が上がってきました(笑)。
――叶さんはどんなイメージでレコーディングに臨まれましたか?
叶 僕はそもそもラップ調の曲があまり得意ではないのですが、でも今まで歌ってこなかったからこそ、ここはバシッとキメてファンの方にはしっかりギャップを見せたいという気持ちがありましたね。レコーディングには、かなり覚悟した顔で向かっていたと思います(笑)。今日は頑張らないといけないぞって。やっぱりラップはノリが大事な印象があったので、少しでも早くノれるようにしておかないといけないと思っていましたね。
yuxuki waga 叶くんのラップパートの収録のときに、1コーラス歌ったらこっち側のブースが「おぉーっ!」って沸いたんですよ。その場にいた人が全員ハッとした顔をして。あのシーンはめちゃめちゃ良かったです。
――苦手意識があったとは思えないくらいのかっこよさですもんね。
叶 大きな経験でした(笑)。
yuxuki waga リスナーの方の反応が楽しみな曲ですね。試聴だと一番激しいところが聴けないので。
叶 そう、試聴だとギャップのあるところが聴けないんですよね。
――締めのブロックのラップはマジでエグいですよね。
yuxuki waga 言葉がグルーヴしてるのがかっこいいなと思いました。ラッパーになれるかもしれない。
――3曲目の「K/D Dance Hall」はノリの良い曲調ですが、歌詞は命の奪い合いを描いたかなり物騒な内容で。叶さんの曲だからFPSのイメージなのかなと思ったんですが、この曲はどんなイメージで作られたんですか?
叶 歌詞が上がってきたときに、ここまで直接的なものがくるとは思っていなかったので驚きました。ワードも濁したりせずにストレートにドンときてるから結構びっくりしたんですけど、曲にすると逆にそれがすごく良くて。「K/D Dance Hall」は深夜が始まったなくらいのテンション感で歌っていましたね。
yuxuki waga 僕もまったく同じ印象でした(笑)。
叶 ストレートすぎてびっくりしましたよね(笑)。
yuxuki waga まんまやん!って思って(笑)。歌詞を書いてくれた烏屋(茶房)さんには、叶くんの人となりとか、ゲームが好きという話をして、ゲームに関連付けた曲ができたらシナジーがあるしいいなと思っていたんですけど、関連というレベルじゃないものができましたね(笑)。歌詞は叶くんに寄っている感じで、曲に関してはUKポップスみたいな感じですね。ゲームの曲はシンプルに作るとEDMとかになりがちですけど、あえてそうせずに深夜感とミックスさせたイメージでした。ここまでゲームの曲になるとは思ってなかったですが、めちゃめちゃ良かったです。
叶 すごくかっこいい曲になりましたよね。
yuxuki waga 歌も良かったですよ。叶くんのノリがめっちゃ良くて。
叶 ニュアンス強めの歌い方だったなって思います。ほかの曲よりもイメージしやすかったですね。
yuxuki waga これは勝手に僕が思っているんですけど、叶くんってたまに若い頃のチバユウスケみたいなロック感が出るんですよ。
――ああ、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT時代の。
yuxuki waga そう。そのかっこいいニュアンスが入ってるのがいいなと思って、レコーディングのときに毎回驚きがあるんですよね。
――この曲はライブでも盛り上がりそうですね。
yuxuki waga ライブ映えする曲は今回多めに入れているんですが、この曲は特にそうだと思います。