【スペシャルインタビュー】株式会社スマイルデイズ代表・甲 克裕に聞く、「Smile Group presents アニメ音楽のこと!マッチング・オーディション 2021 supported by リスアニ!」について

様々な才能を発掘する「アニメ音楽のこと!マッチング・オーディション2021」、その中心人物となるのが、株式会社スマイルデイズ代表であり、数々のアニソンを生み出してきた音楽ディレクターとしても活躍する甲 克裕である。過去のオーディションでsajou no hanaのsanaを発掘したスマイルが7年ぶりに開催するオーディションで、彼はどんな才能を見出そうとしているのか。そこから見える“マッチング=人と人を繋ぐ場”というコンセプトの真意を聞いてみた。

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7年ぶりのオーディション開催に至った経緯とは

――今から7年前、2014年に「<アニメ限定!>スマイルカンパニー・オーディション2014」が開催されましたが、そのオーディションの中心にいたのが甲さんでした。そこからsanaさんを輩出されるなど実績もありましたが、改めて当時のオーディションを行った感触としてはいかがでしたか?

甲 克裕 以前オーディションを開催したときは、その前から会社として色んなオーディションを通年でやっていたんですよね。そのなかでうちに限らず“○○限定”っていうオーディションが当時流行っていたんですよ。僕も「限定」という言葉に弱い人間で(笑)、当時スマイルでもアニメの仕事をたくさんをやっていたので、それならアニメ限定でやってみようと思い、「アニメ好きな人集まれ!」とスタートしたのが7年前のオーディションでした。

――たしかに当時から渡辺 翔さんをはじめスマイルではアニメの仕事が多かったですし、それ以降、甲さんも音楽ディレクターとして井口裕香さんや早見沙織さんを手がけるなど、多忙なイメージでした。

 そうですね、色々やっていました(笑)。

――事務所、シーン全体としてもアニソンへの注目が集まるなかでのオーディション開催だったと。

 今回のオーディションに“マッチング”と銘打ったのですが、人と人が繋がっていくオーディションにしたいという想いがあったんです。例えば前回のオーディションで応募した子が、今ほかの環境で頑張っていたりして、それはそれで良かったって思うんです。そういう意味でも、オーディションはやり続けなきゃなっていう気持ちはあったんですけど、僕個人としても会社の組織図が変わったり色んな出来事があって、なかなか実現できなかったんです。

――なるほど。そこから今回のオーディション開催に踏み切ったのは?

 昨年からのコロナ禍でエンタメが一瞬止まってしまったときに色々なことを考えたんです。あれから業界も少しずつ変わってきたり、エンタメもオンラインライブなどの選択肢が広がっていったし、そのなかで「そういえば久しくオーディションやってないな」と思い、始めてみました。7年も経っていたのは自分としても驚きですけどね(笑)。

――7年ぶりということですが、アニソンを取り巻く様相も大きく変化していますよね。

 僕がパッと見ても変わったと思いますし、例えばキャラソン自体もやってはいるけど数は減ったなって思いますよね。主題歌周りでも安心安定の方が活躍する一方で、アニメというマーケットの中に様々な人たちが入ってきている。それはそれで良いムーブメントというか、ユーザーの人たちもアニソンだから聴いているわけでもないので、純粋に作品と楽曲やアーティストで聴いているのかなと。本当に純粋に音楽を受け取ってくれている気がするので、そう考えると7年前に比べて選択肢も広がりましたし、色々なやり方でできるようになりましたよね。一方で一度アニソンとして構築されたものが広がっていったあとに、良い意味で混沌としてきたなと思いました。

――たしかに近年は特にアーティストの出自も含めて、よりるつぼ化しているシーンだと思います。そのなかでスマイルとしてはどう立ち回っていこうとしているのでしょうか?

 僕がスマイルで働いていていいなと思うのは、「音楽を作るインフラがすべて揃っていること」なんですよ。作詞家も作曲家も編曲家もいて、エンジニアさんもいるし、なんならスタジオもあってライブもできるという、音楽にまつわるすべてが集約されているんですよね。あれもこれもってバラバラしていないというか、一本筋でできるというのが、僕も働いていていいなと思うところです。

人と人が音楽で繋がっていく場所に

――そんなスマイルが開催する「アニメ音楽のこと!マッチング・オーディション2021」ですが、前回同様に非常に広い間口での開催となります。シンガーからクリエイターなど部門も多く、さらには年齢性別国籍をはじめとした様々な点で制限がないという。

 マッチングと謳っている以上、ここを出会いの場にしたいという想いがあるんですよね。例えば極端な話、別の事務所で活動していた人も全然ウェルカムだし、別にそれを強引にひっぺがそうっていうわけでもない。良い意味で音楽として繋がっていく、1個の基地になればいいかなって思っています。そこから色んなところに巣立っていけたらいいのかなと。

――決してスマイル所属が最終結果ではないと。

 昔は、他社さんで何かしているのを見るのはジェラシーで、「絶対スマイルでなんとかするぞ!」って思っていたのが、だんだんと僕も年を重ねて(笑)。シーンとしてみんなが活躍する場があればいいし、それでほかで活躍してくれるのも僕は嬉しいし、そこから何かのタイミングで一緒に仕事をすることだって絶対にあるし。そもそも「オーディションの通過者はデビューさせます」みたいに出口を決めてしまうとみんな辛くなるんですよ。

――なるほど、オーディションの通過イコールデビューというものではないと。

 sanaもそうですけど、オーディションのあともみんなで「彼女にはこれが合うんじゃないか」って悩みながら一緒にやっていて、結果的にsajou no hanaでアウトプットができたんですよね。なので、うちとしては即効性のあるオーディションは違うのかなと。大手の事務所さんのオーディションだって、その子たちがスターになってから過去資料を使うんですよね。いきなりスターになっていくのは今の時代ではなかなか難しいと思うので。それよりも、僕はどちらかというとちゃんと「(アニメ)音楽で生活していけること」が大事かなと思っています。

――音楽を志す人たちが、音楽を生業にできるようになることを目指すということですね。オーディションにはどの部門もデモや歌唱動画などの提出が必須となっていますが、どういったところを見て審査しようと考えていますか?

 少し生意気に聞こえるかもしれないのですが、デモを聴かせていただいて、ひらめくかひらめかないかなんですよね。極端に言えば、歌が上手くなくても何か光るものがあるなと思えばそこから先はあるし。あと、自分が思っていることが人から見たらそうではないことってあるじゃないですか。それは音楽でもあるんですよね。例えば昔過去のオーディション応募者で作曲家になりたいという人がいて、曲を聴かせてもらったら、メロを引き立たせるアンサンブル、いわゆる編曲が得意そうだなって思ったんです。そこで「作曲がやりたいのはわかるけど、アレンジが得意そうだからアレンジをやってみない?」って言ったら、あれよあれよという間に編曲の仕事が舞い込むようになって、結果その人は作曲ができないくらい忙しくなったんです。これは結果論かもしれませんが、作業を絞って1本でやるという志もいいとは思うんですけど、自分で決めつけず、チャンスを広げるという意味では色んな人とコミュニケーションをとっていくのがいいんじゃないかなと思います。

――甲さんをはじめ審査員が閃ひらめいたところから、本人が思わぬところへと道が拓ける可能性もあるわけですね。

 そうですね。ただ聴いているほうもそれはそれでプレッシャーがありますし、「この子は本当にやっていけるのかな?」と迷いながら審査させてもらっています。だって、自分が良いなと思っても「即デビューさせてあげるよ」みたいな話は簡単にできないじゃないですか。sanaのときも「とても良い」と思いましたが、「じゃあ君は合格!」っていうわけにはいかないんですよね。そこは実際会ってみないとわからないし、sanaも当時は十代だったので事務所としても親御さんとも話をなくちゃいけない。そこはじっくりとやっていきました。

――やはりというか、デモを一度聴いただけでサクセスストーリーは描けないという。

 1回じゃわからないですよ。デモを聴いたあとに一度会ってみて、色んな曲を歌ってもらってとか。sanaにもアニソンの定番曲を歌ってもらったり、「こういう歌い方になるんだ、じゃあこれはどうかな?」とかテストをどんどんやっていきました。なので本人は合格した気持ちにはなっていなかったと思います。

――たしかにsanaさんは事務所に行って歌い続けていたら、気がついたら事務所に所属してデビューしていたという話をされていました。あと、前回同様、応募部門のなかにはバンド形態での募集もかけていますね。

 バンドやシンガーソングライターについては、バランス力は見るかもしれないですね。メッセージ性や演奏力、歌唱力とか、さらにたくさん色んなバンドがあるなかで組んでやっているわけなので、そのバンドでしかないもの、光るものがあればいいなと思います。

――なるほど。

 バンドに限らずですが、やはり音楽は集団芸術だと思うんですよね。絵画みたいに1人の画家がすべてを仕上げるのは、音楽ではほとんどないじゃないですか。スタッフもそうですが、関わる人の数だけ意見がある。ガチガチに来られるよりは、「どういうものが出せるのか」という可能性を見せてもらって、そこでスタッフも知恵を出し合い、そこからチャンスが生まれると思うんですよ。そのチャンスが大きくなるかはやってみないとわかりませんが、そこからは努力の賜物の連続だと思うので。

――バンドとしても見るところは多いが、やはりそこからひらめくかどうか、スマイルでこの先何かを見出せるかどうかなんですね。

 例えば、バンドでドラムがいないとしてもそれをネガティブに捉えなくていいし、僕らもサポートドラマーはたくさん知ってるし、そこは事務所がサポートしますよという。

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